K男さんのレビュー一覧
投稿者:K男
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グラビアの夜
2007/05/21 23:10
著者の本領、業界ものは面白い
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不倫など、男女の道を外れゆく恋愛のどろっとした部分を書く代表作と並んで、林真理子氏のもうひとつの得意技がある。それは、25年以上マスコミに身をさらしているが故の業界ものである。この作品は、マンガ雑誌の水着グラビアページの裏側を描いた快作だ。
インタビューなどを読むと、林氏にとっては、業界はのし上がっていくものだったという。自身もコピーライターから、今や直木賞の選考委員を務めるまでになっている。そのヒエラルキーの構図がこの作品では違う様相を見せている。
舞台になるのは、二流のコミック誌のグラビア班。登場するスタイリストもカメラマンもモデルも、みんな二流のポジションにいるのに、そこから上を目指そうとしないのだ。とても安穏としたところで、それぞれが満足している。
唯一、文芸を志望している編集者だけが、グラビア班から抜け出そうとしている。しかし、彼は数年後に再びグラビアの仕事へと戻っていくのだが。
現代社会が抱える格差とは、ピラミッド型をしているのではなく、意外にも別の形へと変化しているのではないか。そんなことを思わせる一冊。
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