サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 春都 さんのレビュー一覧

春都 さんのレビュー一覧

投稿者:春都 

1 件中 1 件~ 1 件を表示

終着点としての真相

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本格ミステリの短編集ということで、最近読んだ恩田陸の『象と耳鳴り』とのあきらかな違いが、僕には興味深かった。読者への挑戦状こそついていないものの、あちら(象耳)も同系統の短編集である。謎があり、推理があり、解決がある。だが、二作品の印象は全くといっていいほど異なる。どちらをより評価するかは好みの問題だろうけれど、本格ミステリが「放浪探偵」も「象耳」も内包できる事実は、このジャンルにとって強みに違いない。

『象と耳鳴り』において真相を解明することは、物語の終わりを意味しない。語られてきたストーリーの裏側にあったもの、たとえば人物の心理であったり、犯罪の悲哀であったり、舞台の不可思議さであったり、そういったものが現われてくる窓口として、真相がある。いわば、新たな物語を生み出す手段としての「本格ミステリ」なのだ。ストーリーが終焉を迎えたあとに見えるもの、それが恩田陸が『象と耳鳴り』で描いたメインの像である、と僕は思っている。

 しかし、この作品の真相解明は、なにも生み出さない。物語はそこで終わる。なぜなら、『放浪探偵』の「本格ミステリ」とは、手段でもなければ窓口でもなく、それ自体が目的だからだ。物語の終着点としての真相である。スケールの大きい謎小さい謎、考え抜かれた伏線やミスリード、丁寧に作りこまれたロジック、それらはすべて「真相解明」に矛先を向け、物語のなかに配置されている。そして作品を構成する様々な要素は、ラストにいたって集約し、読者に驚きを与える真相に姿を変え、その役目を終える。同時に物語も終わる。だから、そこになにか生まれようはずもない。

 先にも述べたが、どちらのタイプが本格ミステリとして優れているか、僕には決めかねる。フェアプレイの犯人当てとして成立している『放浪探偵』も、物語の裏側にあるものを感じさせてくれる『象と耳鳴り』も、どちらも本格ミステリとして成功していると言っていいと思う。方向性は違えど、このジャンルに不可欠な、というより僕が「あってほしい」と思うものを、しっかりとつかんでいる気がする。好みとしては「象耳」なのだが、ここまで忠実な本格を見せてもらうと、やっぱりすごいねえと感心せざるを得ないわけで。

 ちなみに収録編でよかったのは、『黒い家』本格仕上げみたいな「烏勧請」、騙しがおみごと「水難の夜」、島田的っていうかアトポス「阿闍梨天空死譚」。最後のはたぶん他の編よりもだいぶ前に書いたからだろうけど、肩に力がはいりまくりで、そこが逆にクセがあってよかったりした。「有罪としての不在」はややこしすぎてきれいじゃない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。