おばさんのレビュー一覧
投稿者:おば
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2003/06/10 22:32
田中芳樹氏も絶賛???
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舞台は、大正時代の帝都東京。
アメリカ帰りの探偵・木暮十三郎が遭遇する奇妙な怪奇・伝奇な事件簿。
探偵小説にありがちなニヒルなくせに、貧乏暮らしと美女に弱い一面。
本屋でちらっと見かけたとき「田中芳樹氏絶賛!!」と目に入れば、「これは買いだな」と思ってしまった一冊ですが、正直個人的な感想をいえば、いまいちインパクトに欠けた作品だったかと…(作者ならびに作者ファンの方、ゴメンナサイ)。
たしかにテンポのいい作品ですが、先の読める展開がそう思わせたのかもしれません。
「田中芳樹氏絶賛!!」という帯をみなければ、ひょっとすると感想はまた違っていたかもしれませんが、いまのところは★3つが正直な感想です。
ただ、次回作も既に出ているようで、それに続くかのような終わり方もあり、次回作も読んでから再度評価を改めてみようかとも思います。
ところで、主人公が作品中に博士の秘密の地下研究室に侵入し、その地下研究室の落とし穴から落ちた洞窟(B2Fですよね)の水路と、さほど距離の離れていない庭先(1F)の池の水がつながっているという設定は、おかしくはないのでしょうか?
紙の本繫がれた明日
2003/08/20 23:13
最後に自分を支えてくれるものは…。
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主人公は、19歳の時に自分の恋人にちょっかいを出している男のところへ文句を言いに行き、不幸にも相手を刺し殺してしまいます。
しかし、主人公は「自分だけが悪いわけでなく、相手の方こそ非があった」との想いを胸に抱きつつ、刑期を務めていきます。そして、仮釈放。
保護司や母親、地元の協力者のもとで「殺人犯」の負い目を背負いながら、保護観察中の期間を過ごしていたある日、主人公が「殺人犯」だというビラがまかれ、自分はおろか妹までもが、同じような差別的な扱いを受けてしまいます。
そして、主人公はそんな状況の中、世間や警察の「冷たい目」、被害者の家族や元恋人から生涯向けられ続ける「恨み」、昔の遊び仲間や友人たちからうける「悪意や励まし」、さらに仮釈放中で自分と同じ境遇だった元殺人犯たちの「声にならない心の苦悩」に接し、自分の犯した「罪」とそれに対して自分と自分の周りの人間が一生涯背負い続ける「罰」の意味を深く思い知らされるというものでした。
さて、新聞紙上を騒がせている事件のうち、未成年者によるものが多く目に付くようになった昨今ですが、そんな情勢だからこそ未成年にはこういう作品には接してもらいたいと思いました。
東野圭吾『手紙』同様に「人の命の重さ」と「家族の絆の強さ」について、読後にじっくりと考えさせられる作品でした。
紙の本手紙
2003/08/08 22:34
その時、自分は?残された家族は?友人は?
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父親を不慮の事故で亡くし、母親の願いは子ども二人を大学にまで行かせることであった。しかし、その母親も過労により他界。
残された兄は高校を中退し、生活費と弟の学費を肉体労働でかせぎ、そんな兄の苦労を見ている弟は、自分も働くという意志表示を見せるのだが、兄は母親の願いを自分の使命とし、なんとしても大学まで進めようとする。
しかし、肉体労働者の兄は身体を壊してしまい、ちょっとした心のすき間に入り込んだ「魔」によって、資産家独居老女宅に空き巣に入ってしまう。
そこで、ふとしたことから弟の昔のエピソードを思い出し、長居したために老女に気付かれ手をかけてしまい、強盗殺人罪となってしまう。
物語は、そんな強盗殺人の罪を犯した兄を持つまじめで優秀な弟が、兄の存在が露見した途端に評価がひっくり返るという辛い想いに幾度となくあわされ、そんな中で自分はどう生きるべきかを模索しながら進んでいきます。
最初に読み始めたときは、結末はハッピーエンドで終わるのであろうと思われました。
しかし、読み進めていくうちに、今までの事件報道や小説では描かれていなかった「加害者の家族の苦悩」が描かれていました。
さきほど「苦悩」と簡単に表現しましたが、実際の加害者の家族の方は物語に出てくるような「よき理解者」には恐らく巡り会えないでしょう。
そう考えると帯にも書かれていたとおり「あなたが彼ならどうしますか? あなたは彼に何をしてあげられますか?」という著者の問いかけには、答えが見つからなかったです。
あえてラストについてはふれませんが、多種多様な犯罪がちまたを騒がしている現在。また、誰もが免許を有する自動車社会の今日。不慮の事故を起こして相手をあやめてしまうことがあるかもしれません。
その時、自分が加害者となるかもしれません。
この作品の主人公のように加害者の家族となるかもしれません。
身近な人に主人公のような立場の人が出てくるかもしれません。
その時、自分は? 残された家族は? 友人は?
ラストを数回読み返し、何度も何度も深く考えさせられる作品でした。
紙の本陰陽師 太極ノ巻
2003/06/20 21:58
巻末にもご注目(^^;
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みなさま待望の人気シリーズ「陰陽師」シリーズの6作目。
同出版社の絵物語「瘤取り晴明」や他出版社・長編「生成り姫」を入れると8作目となる作品です。
物語は、いつもの晴明と博雅のふたりのシーンから、いつものように事の顛末を知っているのに知らないようなそぶりを見せる晴明と、その晴明に翻弄されながらも巻き込まれていく博雅との掛け合いで始まります。
こうして、京の都で起こる奇想天外な物の怪や妖しの様々な事件は、晴明と博雅の絶妙なコンビ(?)によって、事なきを得ていくのであります。
さて、いつものシーンで幕を開け、いつものように二人で出かけ、いつものように事件を解決し、いつものように二人で酒を酌み交わす。
このような、いわばパターン化された流れなのに、その世界に引き込まれるのはなぜでしょう?
それは、著者があとがきで記載しているように「フーテンの寅さん」みたいなところがあるからなのかもしれません(あるいは、「水戸黄門」や「遠山の金さん」などと例える方があっているかもしれませんが)。
しかし、マンネリ化しないのは著者が自然とその世界に入り込んで作品を作っているように、我々読者も自然と入り込めているのが、この作品の魅力なのだと思います。
そんな独特の世界にみなさんも足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
ところで、本作品の巻末には著者の著作リストが記載されています。
「陰陽師」をはじめ、いろいろな作品・シリーズが記載されており、「絶版」「版元在庫なし」といったことも記載されています。
そちらの方も著者のファンはもちろんのこと、これを機に著者の別作品をご覧になりたい方には楽しめるものだと思いますので、文字通り最後の最後まで本作品をお楽しみ下さい。
紙の本僕の生きる道
2003/05/28 22:29
自分自身の人生を後悔しないために…。
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ここ数年で一番といっても過言でない同名タイトルドラマのノベライズ版です。
ドラマはドラマでよかったのですが、改めて活字で見ることにより、各々のセリフが身にしみていきます。
この内容はみなさんがよくご存じの通り、余命あと1年を宣告された主人公が今までの人生を振り返り、残された人生をどう前向きに生きて、足跡を残していくかということが描かれています。
そして、それを支える妻・親・医師・同僚、そして生徒達…。と、事細かな説明は、これ以上は無用でしょう。
ただ、著者が伝えたかったことは、みどり先生や教頭先生のセリフにも表れている通り「人は必ず死ぬ」ということ。
「幸せな人生を送るということは、心が満たされて初めて得られるものである」ということ。
そして、生きているということは「おいしく食べられる」ということではないかと感じました。
「生と死」というテーマのこのドラマを見ていて、アニメ一休さんのある話を思い出しました。
それは、正月でにぎわう町中を一休さんがドクロの杖を持ち、「お気をつけなされ〜」と説いてまわる話です。
町人からは、「正月から縁起が悪い!」と石をぶつけられてしまいます。
これは、正月を迎えるということは1つ歳を取るということ。そしてそれは、「死」へ1つ近づいているということを一休さんが伝えたかったという話でした。
この一休さんの話もそうですが、人は確実に「死」へ向かっているのです。「死」の形は、この話のような病死かもしれない。突然の事故死かもしれない。あるいは、天寿を全うした老衰死かもしれない。
いろいろな形はあると思いますが、「生」がある以上、必ず「死」があるということです。それはわかっていることですが、あまり意識されていないことです。
だから、この本のように「今やれることを今やろう」と感じました。
自分自身の人生を後悔しないために…。
紙の本奪取 上
2003/05/14 21:31
読めば、引き込まれる面白さ
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真保裕一氏の作品は、「ホワイトアウト」以来ですが、本作品はそれ以上に面白い作品でした。
上下巻での作品量は、少し読むのがためらわれるかに思えましたが、冒頭からぐいぐい引き込まれ、あれよあれよと言ううちに読み終わったというのが実感です。
偽札づくりに関する細かいデータ(?)や印刷技術についても、素人にはわかりづらい単語などでしたが、そんなことは全く気にならないくらい、ストーリー展開が面白く、読んでいると頭の中で映像が浮かび上がり、それぞれのキャラクターが動き回っているような感じでした。
迷っている方は、まず読んで見てはいかがでしょう?
読めばきっと、この世界にどっぷりと浸かっていることでしょう。
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