MF さんのレビュー一覧
投稿者:MF
北の十字軍 「ヨーロッパ」の北方拡大
2002/02/15 23:41
絶賛
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ヨーロッパのキリスト教勢力は新大陸に進出し、アジアにも進出した。その過程で先住民をキリスト教に改宗させようと努めたが、その根底には「異教徒を撲滅しキリスト教を広める行為は(それが軍事的なものであれ)神による罪の赦免につながる」という考えがあった。この本ではそれを北の十字軍(ドイツ騎士修道会によるバルト進出)を通して明らかにしている。
この考え方(異教徒の権利を無視する考え方)に対しては当時から賛否両論があったようで、コンスタンツの公会議(1414年)でもこの点は論争となっている。この本ではその事も詳細に記述されているが、この部分は特に面白い。
西洋史に限らず、アメリカ史、中東史に興味のある人にも参考になると思う。
近代中国と海関
2001/09/10 23:36
シャープで丁寧な分析
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近代中国と西洋との関係を説明する際には、西洋の事情・文献を参考にしがちであるが、本書は中国の国内事情に照らして近代中国の通商事情を説明している。
特に、広東システムを中国の徴税システムで説明するあたりや、外国からの借款を中国国内の財政(再分配)システムで説明するあたりでは、非常にシャープな分析を披露している。丁寧に一次文献をあたっているあたりからも著者の丁寧な研究活動がうかがえる。
アメリカ経済史
2001/09/10 21:29
読んで面白い経済史の本
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アメリカ経済史の専門家である著者は、もっと(お堅い)専門的な経済史の本も書く事ができるのであろうが、この本ではアメリカの経済史を特徴づけることになった幾つかの要因を、その要因ごとに章立てて、分かりやすく解説している。
それらの要因はまさに現在のアメリカにも影響を及ぼしているものであり、たとえ歴史に興味が無くても、惹きこまれる事、請け合いである。
アジアのなかの琉球王国
2001/06/12 23:35
興味深く、読みやすい
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日本に従属させられる前のダイナミックな琉球が描かれている。当時、中国が海禁政策をとるなかで琉球が主要な貿易中継点となっていたこと、琉球が国を上げて(国王が率先して)貿易に従事していた事などを史料を引用しながら説明している。
琉球について多くの著書のある著者が入門用に書きおろした本だけに、エッセンスが詰まっていて、かつ、とても読みやすい。
銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎 下
2002/05/16 21:54
非常に面白い本
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上巻では各地の人類の進路を分けた要因を紹介しているが、下巻ではその要因が実際にどのように作用したかについて、幾つかの地域を例に挙げて具体的に説明している。オーストラリア・ニューギニア、中国、太平洋、アメリカ大陸、アフリカ。
結局は、母集団の大きいところで競争の機会を与えられた方が優位になるということなのであるが、考えてみれば、このことは生物学的な進化にとどまらず、ありとあらゆる競争について当てはまりそうである。企業間競争など現在のミクロの事象についても然り、かな。
銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎 上
2002/05/16 21:51
非常に面白い
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アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、南米では、どうしてここまで発展の仕方が異なったのであろうか。このような問いに対して、多くは近代史以降の説明を試みるであろう。
しかし、本書では、その近代史において前提となっている政治経済的環境、技術的環境がどのように準備されたかについて解説している。
ここで、著者は、ほとんど説得力の無い「民族的」な要因などは使わない。根拠とするのは、各地の人類を取り巻いていた自然環境であり、その自然環境の必然的な結果として近代(さらには現代)につながる諸環境が用意されたと語る。
鍵となるのは、家畜となる動物がいたか、栽培できる植物があったか、技術伝播・交流が可能であったかということである。細かい種明かしはここではしないが、非常に面白い本である。
長篠合戦の世界史 ヨーロッパ軍事革命の衝撃1500〜1800年
2001/09/10 21:31
軍事技術から見た世界史
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チポラの「大砲と帆船」と同様に中世から近代にかけての軍事技術(特にヨーロッパ)の発展についてまとめた本である。ただし、「大砲と帆船」よりももう少しカバーエリアが広い。ヨーロッパについては築城技術の発展にも触れ、またヨーロッパ以外の地域での陸戦(火気の使用法)についても論が及んでいる。
ヨーロッパ諸国の世界進出の舞台裏を垣間見たような気分にさせてくれる。
オスマン帝国 イスラム世界の「柔かい専制」
2002/05/16 21:44
オスマン帝国成長期の通史
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オスマン帝国の通史であるが、主に14世紀(トルコ人のアナトリアへの進出期)から16世紀末までの、オスマントルコの拡大期についての記述が中心である。時系列にオスマントルコの変遷を辿りつつ、イスラム教とオスマン帝国の関係、多民族統治の方法など当時の経済大国の政治的経済的特徴についても解説している。
オスマン帝国を理解する為の最初の一冊として非常に良い本だと思う。
ラテン・アメリカ史 2 南アメリカ
2002/02/19 23:31
知っているようで知らない南米の歴史
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「インカ帝国があって、スペインに征服されて」とは習うものの、肝心の近現代史について素通りされる事が多いのがこの地域の歴史ではないだろうか。
19世紀初めに独立を達成した後、二度にわたる世界大戦の影響も(他地域に比べれば)ほとんど受けず、現在に至るまで歴史的な断絶を経験していないという事に気付くと、旧に現在の同地域が見えてくる。
歴史に興味のある人に限らず、ラテンアメリカに興味のある人には面白い本だと思う。
イギリスの歴史 帝国=コモンウェルスのあゆみ
2002/05/19 20:29
コンパクトに要領良くまとめられた通史
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イギリスの歴史について非常にコンパクトにまとめられている。引用文献の何冊かを読んだ事があるためか、「どこかで読んだような話だな」という気もしたが、多分、いわゆる定番とされる見方を踏襲しているためであろう。その意味でも、最初の一冊とするのにふさわしい本だと思うが、近代以降については、歴史的事実が細かい点まではっきりしていることもあり、歴史のストーリーのピントがややボケているようにも感じられた。
経済史への招待 歴史学と経済学のはざまへ
2001/06/06 23:28
歴史学者がどのような人々なのかが分かったような気になる本
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この本は二部構成になっている。
前半は歴史(経済史)というのがどのような学問なのかについて説明しており、歴史家の学問に対するアプローチ及び仕事ぶりを、舞台袖からステージを見るような感覚で垣間見せてくれる。これは一般の読者にも、少しでも歴史に興味があれば、面白いのではないだろうか。
後半はヨーロッパ史の基本的な一次史料について紹介すると共に、その利用法などについて解説を加えている。これは正直なところ、一般読者である私にはピンと来なかったが、専門家にはこちらの方が興味深いのかもしれない。
オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家
2002/05/16 21:48
オスマン帝国における「西洋の衝撃」の解説書
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同じ著者の「オスマン帝国(講談社新書)」がオスマン帝国の専ら成長期を扱っているのに対し、本書はタイトルの通り、オスマン帝国の衰退期を中心としている。
もっとも、本書は時系列に通史を紹介している本ではなく、ネイション・ステイト(国民国家/民族国家)を政治的枠組とする西洋的国家観とそれとは全く異なる次元で帝国を捉えていたオスマン帝国を比較し、オスマントルコが徐々にヨーロッパに対して優位を失っていく中で、どのように西洋的国家観を受容(西洋の衝撃)していったかという観点から時代を辿っている。
「西洋の衝撃」というテーマはアジア史においても重要であり、その「西洋の衝撃」についてオスマン帝国を題材に丁寧に記述してくれている興味深い本だと思う。
欲を言えば、「なぜ、オスマン帝国がヨーロッパに対して比較優位を失っていったのか」という点についてもう少し説明が欲しかった。
ヨーロッパ覇権以前 もうひとつの世界システム 下
2002/01/25 23:15
スケールの大きな見方
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13世紀の世界を扱った作品の下巻では、著者の専門でもあるカイロを皮切りに、インド亜大陸、東南アジア、中国と進む。上巻に比べると、やや平板(一般的)な感じもするが、ポルトガルの進出は中国が国内事情を背景に東南アジア海域から突如姿を消したことによる力の空白を埋めたに過ぎない(なぜなら東南アジア諸都市は中継都市の機能を持ち得なかったから)とするあたりは、なかなか読ませる。
スケールの大きい考え方は、「すると、今はどうとらえられるべきなのか?」という現代的な問いにもつながる。頭の体操になりそうな本である。
ヨーロッパ覇権以前 もうひとつの世界システム 上
2002/01/25 23:13
スケールの大きな見方
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西洋諸国がアメリカ新大陸やアジアに進出する前の世界の状況を、従来のヨーロッパ中心史観を排して描いた作品。東西の当時の主要都市を個別に選び、その盛衰を通して、背後にある世界的な動きを浮き彫りにするという手法は、都市社会学・都市史専攻の著者ならではである。
話は西から東に向かい、上巻ではシャンパーニュの諸都市、ブリュージュ、ヘント、ジェノバ、ベネチア、サマルカンドなど中央アジア諸都市、バクダッドを扱う。
ゴールド 金と人間の文明史
2001/11/14 22:55
非常に興味深く,考えさせられる
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この本は、有史以来の(但し主に西洋の)「金」の生い立ちについてまとめている。具体的内容としては、通貨の生い立ち、通貨の中で金が本位とされていく過程、金本位制のルールの下での経済政策などを通して、人が如何にこの物質に魅惑され、ふりまわされてきたかを描いている。
盛り沢山の内容に疲れてきた頃に、やっとエピローグが来る。勘の良い読者はそこに辿り付く前に著者の真意を汲み取るのかもしれないが、たとえそうでなくても、このエピローグを読むとそれまでに示された多くのテーマが見事につながっていく。非常に興味深く考えさせられる。
