RYOUKOさんのレビュー一覧
投稿者:RYOUKO
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紙の本短歌入門 今日よりは明日
2004/07/31 17:11
読みやすいが、内容は豊かで深い短歌入門書
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久しぶりに紀伊国屋書店に行った。電子マネーを特集している雑誌、新書の「デジカメ写真は撮ったまま使うな」「手づくりの木の道具木のおもちゃ」などを、一応手にとって見てみてから買おうと、新聞の切抜きを持って行った。
1Fで、雑誌はすでに売り切れていた。
エレベーターで、新書のある2Fに上がった。エレベーターから出ると、「短歌」のインデックスが目に入った。迷わず進んだ。小島ゆかりさんの「短歌入門」に出会った。新書も手に入れることができたが、帰る道すがらこの本を読み、寝る前に読み、寝て起きてと読み継ぎ、二日で読み終えた。途中で疲れて読みさす本も少なくないのに、久しぶりに集中できたという満足感が嬉しい。
私は、あわただしく日々を送っている。それゆえというかそれだからというか、ともすれば埋もれてしまいがちなささやかな感動を、折り折り歌にして十年になるだろうか。歌が好きになったのは、式子内親王に魂をぎゅっと締め付けられて以来である。この本にも取り上げられている百人一首の
玉の緒よ絶えなばたえねながらへばしのぶることのよはりもぞする
や、娘も教科書で学んだという
桐の葉も踏みわけがたくなりにけりかならずひとを待つとなけれど
万感を凝縮したような
忘れてはうち嘆かるるゆふべかなわれのみ知りてすぐる月日を
などなど、どの歌も私の体の中を通って滑り落ちない。
小島ゆかりさんにも、笑っても泣いても揺るがない美しい品性があって、歌はもとより、散見する文章にも好んで目を通してきたから、予定外でも迷わずすぐ買ったのである。
私に響いたゆかりさんの歌は
をはることなき自問自答(モノローグ) 水鳥がみづもに描く水脈の円
ゆふぞらにみづおとありしそののちの永きしづけさよゆふがお咲(ひら)く
らつきようの上に泪のつぶ落ちてらつきようは泣くわたしのごとし
などだが、「泣くわたし」には、点々が涙のようにうたれてあったりする。
この本は、短歌入門書としてとてもよくできた本である。関心があれば、中学生からでも読めよう。平易な語り調も交じった文章で、しかし、きっちりと短歌の歴史・本質を学習させてくれる。そして、著者は歌のこころを読み取る達人であると思った。感性の豊かさにユーモア・ウィットも兼ね備え、ファンが多いことにうなづける。
短歌とあまり縁のなかった親しい友人たちに「読みやすい本ですが、内容は豊かで深いですよ」と紹介したいと思っている。
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