樹崎 さんのレビュー一覧
投稿者:樹崎
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ハックルベリ・フィンの冒険 完訳
2002/01/05 16:19
ハックが教えてくれた、本当の自由
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この作品は、小学生のときに、「トム・ソーヤの冒険」の続編として、今度は、ハックが、どんな冒険をするのだろう…と、期待に胸を膨らませながら、読み始めたのを覚えています。初めは、「トム…」に比べると、ハックの一人称ということもあり、地味で、(テーマが大きすぎて)つかみ所が無く、単純明快な「トム…」の方がお気に入りでした。けれど、歳を重ねて、何度も読み返すようになったのは、この作品。物語の中で、ハックが一生懸命考えていた問題は、自分自身にも問い掛けるものがあったからなのでしょうか。
「トム…」で、大金持ちになり、ワトソン夫人に引き取られたハックですが、酒乱の父親に連れ戻され、これ幸いとばかりに、汲々とした文明生活を抜け出して、筏でミシシッピー川を下るという大冒険に出かけます。相棒は、逃亡奴隷のジム。ミシシッピーの大自然の中を、自然児ハックが、何物にもとらわれず、自由奔放に生きる姿は、眩しくて、大きな憧れを抱きました。
ですが、そんなハックにも、黒人奴隷の逃亡を助けることは、卑しい悪事だという認識があって、ジムを奴隷制の無い自由州へと逃すことに、罪の意識を感じて、苦しみます。冒険の中で育まれていく友情。ハックには、なぜ、ジムが他人の所有物であるのか、分からなくなってきます。そして、ジムを人と意識する自分も、普通ではないかもしれない…と、真剣に悩んで、神様に懺悔したりするのです。
当時のアメリカは、黒人奴隷制度を認める州と、廃止した州が混在する状況で、作者自身、こうした制度に批判するものの、完全に否定しきれず、最後の最後で、トム・ソーヤを登場させ、冒険物語のラストとして締めくくっています。
社会秩序や通念の道徳が、必ずしも、正しいとは限らないものです。おかしいことはおかしい、逆に、正しいことは正しいと、自分で決断できる自由を持つこと…確かに、自然児でない我々には、とても難しいことかもしれません。けれど、ハックの冒険のように、ちょっと困難だけど、朗らかで気持ちのいいもの…やはり、そういうものには、憧れるのです。
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