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はぴえださんのレビュー一覧

投稿者:はぴえだ

52 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本うた恋い。 1 超訳百人一首

2010/09/27 22:16

時を超えて届く想い

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今更ながら、和歌というのは、一球入魂ならぬ一首入魂なのだなと。
溢れる想いをたった31文字に詰め込んで送る。
短いからこそ、それは濃密で、切実で、情熱的で、心に突き刺さる。

実のところ、和歌にここまで揺さぶられたのは初めてのことだ。
学生の頃、国語の授業で和歌と向き合ったことがあったが、こんなには心惹かれなかった。
勉強と、楽しみの読書、という差のせいもあるかとは思うのだが、超訳というのが大きいのではないかと。
超訳は、直訳ではないので、堅苦しさが抜け、意味が伝わりやすくやさしい。とっつきやすいのだ。
作者の想像力と瑞々しい感性が、和歌と見事に融合して、恋愛小説や恋愛マンガに負けないドラマチックな世界を構築している。
失礼ながら、簡素で単純な印象を受ける絵柄なのにも関わらず、色っぽさや優しさ、儚さが感じられる。得も言われぬ雰囲気があるのだ。
加えて、言葉の選び方が絶妙。
参考文献の多さからみても、しっかり勉強している様子がうかがえる。自分の中に知識を取りこみ、それをきちんと昇華させてから編み直し表現されているので、読者にとって分かりやすく、受け入れやすくなっている。自然と作品の世界に入り込むことができ、楽しむことができるのだ。

百人一首?かるた?意味なんて知らなくても別に、というのが恐らく大多数で、私もその内の一人だったのだが、このマンガを読んだことで、和歌ってこんなにも素敵なものだったんだ!と気づかされた。

今回のこの作品では、主に恋の歌にスポットが当てられているが、巻末には百人一首すべての超訳が収録されており、それもまた大変興味深い。
スポットが当てられている恋歌紹介の後の、豆知識も後日談のようでおもしろかった。

超訳だと、正確に意味が伝わらないのでは?という懸念を抱く方もいるかもしれないが、楽しみの読書として触れるのであれば、これで十分だし、古典の、和歌の入門書としても、ある意味優秀なものだと私は思う。

恋愛マンガとしても、バラエティに富んでいるので、和歌自体に興味はなくとも、ぜひご一読願いたい作品である。

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紙の本さみしさのレシピ

2010/11/07 21:01

La solitude ne diminue pas

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

あまり言い方はよろしくないが、非常におとなっぽい印象の作品。
この作者の文章は瑞々しさが特徴なのだが、今回は何と言うかアンニュイさをまとっていて、えもいわれぬ雰囲気があった。
具体的に述べてみると、けだるげで、どこか突き放した感じ。
さみしさ、憂鬱さ、雨。微妙な関係、距離。
淡々とした中に、激しさを抱えていて、冷たいように見えて、実は温かさを通り越して熱さがあったりする。
こころを燃やして傷ついていた状態から、ゆっくりと再生していく様が描き出されている。

BLというと、基本的にエンターテイメント的な文章の書き方であったり、ハーレクイン的な文章の書き方が主流のような気がするのだが、一穂さんの文体というのは、主流とは少し違って、なんとなく純文学的な匂いがするのだ。
今作品では、それがより濃く見られ、はっとさせられる文章があちらこちらにちりばめられている。それらは決してきらきらしているものではないのだが、心に突き刺さり、胸を打つのだ。絵空事ではなく、現実的に。

誰しもふと寂しさを感じる瞬間があるし、ひとはみなそれを抱えて生きている。事情はひとそれぞれで、いろんな形がある。
それを肯定的に描いたのが、この作品なのではないかと、私は思うのだ。

まるで違うふたり。けれど実は、どこか似ているふたり。
さみしさが消えることはないのかもしれない。だからこそ、寄り添って生きるのだ。
すこしでもさみしさがうすれるように。ふたりでしあわせになれるように。
お互いのしあわせを願って。

静かで、しっとりとした、けれども熱をもった、レイニー・ロマンス。
BLだからといって、侮るなかれ。こころを揺さぶられる一冊である。

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紙の本愛はね、

2011/04/05 22:43

さみしさの行方

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

愛はね、という言葉の響き。
とても優しく、可愛らしい印象。
そんなイメージで読み始めたら、見事に裏切られる。

苦しくて、せつなくて、やるせない。

恋愛もので、“せつなさ”というのは鉄板だが、それを平易な言葉で描き切っているので、知らず知らずの内に、のめり込まされてしまう。
ただ、リーダビリティの高さの要因は、文章(文体)だけではない。
テーマ選びのうまさ。
誰しもが抱いている、さみしさや孤独を、物語の中心に据えている。
それって、とても分かりやすいし、物語に入り込みやすくしてくれる。
感情移入がしやすい作品というのは、物語を楽しむには読者にとって大変ラクだ。
けれど、この作品はそんなにたやすくはない。

幼馴染に対する恋心や、家族への思慕を、ずっと長い間、自分の中に封じ込めたがため、身動きが取れなくなっている望。
そんな彼の苦しい心境が、丁寧に描かれていて、その分かりやすさに、読者は否が応でも彼に肩入れしてしまう。
その心はもう、読み進めていくのが苦しくなるくらい、さみしさで塗りつぶされていて、いたたまれなくなる。
濃密なその苦しい世界は読者の視野を狭くして、どうして誰も彼を分かってくれないの?助けてくれないの?とやりきれない気持ちを抱かせる。
しかし、ある事件をきっかけに望は変わる。
そこへたどり着いた時のカタルシスたるや。
すべてはこの時のための必然で、物語の何もかもを受け入れられるような気持ちになる、いろいろなことがあったのにも関わらず。
そう、それは、それだけ感情の降り幅が大きく、心を激しく揺さぶられた証なのだ。
この作品の難しさとは、苦しさとの戦い。
読み終えた時、心から逃げなくて良かったという、大きな喜びを与えてもらった。

胸をぎゅっとさせられる話。最後にはやさしい気持ちになれる話。
くすぶる想いも残るけれど、またそれは別のお話らしい。

久々に投げ捨てたくなりつつも、抱きしめて離したくない本と出逢うことができた。
これで終わりでも、うつくしくあるとも思うのだが、最後のおまけの短編を読んでしまうと、また胸を焦がすような続きを期待したくなるのである。

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紙の本星を泳ぐサカナ

2011/11/21 21:40

物語に溺れる

12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作品をすきになるには、いろいろな要素がある。
今回の場合は、タイトルのセンスと、言葉の紡ぎ方だろうか。

私は、この作者の書く文章がとても好きで、「君が降る白」以降欠かさず読んでいるのだが、もし今この時に、朝丘作品の存在を知らなくとも、どこかでこのタイトルを目にしたとしたら、きっと手に取ったに違いないという、奇妙な自信がある。
吸引力が半端ないタイトルなのだ。

「星を泳ぐサカナ」

インパクトはあるのだが、どこか静かで、それでもキラキラしたうつくしさを感じる。
魚が、夜空を、星のまわりを、ひらひらと泳ぐ、自由でふしぎなイメージ。
きれい。
一体、どんな話なんだろう?と好奇心をくすぐられる。

わくわくしつつ、本を開くと、すいーっと、浸水するように物語の世界に引き込まれる。

せつない恋。

夜空に瞬く孤独な星のようなひと。
純粋培養で、愛されて育ったが故に自然とあいを知り、つよさをもって、愛し、自由に泳ぐサカナのこ。

孤独だからぬくもりを求め、けれど過干渉をきらい、それでも寂しさを持て余す人と、そのきまぐれに救われて、その寂しさをあいし、くるんであげたくなる子の話。

あたたかさを知っていると、つめたさを知りたくなる。
自分とはまるで正反対のものに惹かれていく性。
そんなふたりの恋の話。

星とサカナがぴったり重なる瞬間なんてあるような、ないような感じなのだが、きっとサカナが星に近づいて泳ぎ、寄り添っていくのだろう。

恋愛って、何にせよ、そんな感じだと思うのだ。
それをとても上手に、物語へ昇華し、瑞々しい文章で表現している。
ありふれているものをありふれたものにしない、その豊かな感性に感嘆を覚える。

つめたくて、あたたかくて。
きれいで、きたくなくて。
やさしくて、いじわるなことばで、私の心を刺す。
そう、あっという間に私の中に浸透していき、物語に溺れさせられてしまった。

だいすきで、だけどなんだか少しくやしくて。
だからこそ私は今、もっと多くの人がこの物語に、恋に、溺れてしまえばいいのにと、この文章を書いている。

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心を燃やして

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

燃え尽きました!

作者も燃え尽きたのでは?と思うほどの力作であるが故に、冒頭の一文通り、読者の私も読み終えた後、灰になった。
燃え尽きるだの、灰になるだの、風に飛ばされ空っぽか!というような表現だが、いろいろなものが胸に突き刺さり、あふれそうなほどにいっぱいになってしまい、満足させ過ぎられて放心状態というのが、正しい今の私なのかもしれない。
どうしようもないほどに、揺さぶられ、感動させられ、心を苦しい程かき混ぜられたのである、いい意味で。

結末は、1巻のラストで明らかにされていたので、バッドエンドを想像して不安になる必要もなく、極端に言えばただ淡々と読み進めればいいはずだったのだが、ラストにたどり着くまでの道程があまりにいろいろなことが巻き起こり、どうなってしまうの?とハラハラドキドキ。まさかっ!?な展開の多さに、一度読み始めたら、どっぷりと抜け出せなくなる。

読者を惹きつけるストーリー。

よくここまで練ってきたなと思わされたし、途中、あまりに伏線が多くて、これ本当に全て回収されるのだろうか?と訝しげだったが、最後まで読み切った今、広げられた大風呂敷はきちんと畳まれたよ!と感心するばかり。

魅力的な、けれど決して完璧などではないキャラクターたち。一人ひとり丁寧にきちんと書き込まれていて、きちんと厚みがある。迷ったり悩んだり、成長していくさまを描き出している。

最終巻では、もう一人の主人公・劉輝にスポットが当てられている。いろいろ苦しんで、苦しんで、それでも逃げずに、答えを出し、一回り大きくなり、ある意味スタート地点に立つ。その姿は、ずっと読み続けてきた読者としては、とても感動的だ。

最終巻は言わずもがなだったが、シリーズの後半からずっとシリアスな展開が続き、重苦しさがどーん!と。ただしシリアス一辺倒ではなく、ちょこちょこと笑えるシーンが挟まれていて、バランスが取れている。喜怒哀楽がすべて用意されていて、キャラクターと一緒に、泣いたり、笑ったり、怒ったり、嬉しくなったりと、感情の起伏が激しくなった。
疲れるくらいだけれど、読書する身としては、こういう作品は本当に楽しい。

長いシリーズだけあって、いろいろなことが描かれている。身につまされることもある。ただ面白いだけじゃない。
老若男女全ての人が読んで楽しめる作品なんじゃないかと思う。
少女小説はちょっと……などと尻込みせず、一度ぜひ手に取って欲しい作品である。

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想いは伝わる

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2巻で語られているのは、六歌仙の時代。
一般的に、知られているようで、知られていないところではないかと。
恥ずかしながら、私自身、名前を数人知っているくらいで、ほとんど知識がなく、今回初めて目にした人物もいる状態で、なるほど~!と読ませていただいた。

1巻に引き続き、2巻も学術的な押し付けがましさがなく、敷居が高くないので、気軽に楽しむことができる。
敷居が低いというのは、古典が苦手な人に取ってとても大事。なんとなく興味があっても、小難しいと避けたくなってしまうもの。
この作品は、その辺をうまく処理し、エンターテイメントに見事変換されているので、簡単に楽しみを得ることができる。

この巻では、主に小町、業平、秀康の三人と、周囲の人々にポイントが絞られ、恋だけではなく、生きる道をも描かれている。

和歌を心の拠り所にして生きる人。
愛を語るために詠む人。
立身出世のために詠む人。
人それぞれ。

奇妙な友情、恋の駆け引き、夫婦の絆、余生への焦燥感が、色鮮やかに展開されている。
遥か遠い昔の人々と、今を生きる私たちと重なる部分などあるのだろうか?と考えていたのだが、読み進めるにつれ、いつの時代も人はそうは大きく変わらないものだな、と思わされる。

今、私たちは、いろいろなツールで人と繋がることができる。
そのさまざまなツールが、遥か昔は和歌くらいのものであり、それはそれは貴重な存在だったのだ。
それが故に、どんな場面でも、どんな内容でも、一首、一首に、詠む人の懸命さが窺え、心に迫りくる。

小町の心を、業平の心を、康秀の心を、さまざまな人の心を、作者が優しく、熱く、ドラマチックに伝えてくれる。
和歌の意味だけでなく、超訳での言葉の選び方や、話(和歌)の並べ方も非常に絶妙で、その構成力に感心させられるばかり。
ラストの話など、それは秀逸で、良い意味で寂寥感で胸がいっぱいになり、たまらない気持ちにさせられた。

遥か昔の人々に、大きな声で伝えたくなる。
あなたのその想いは、このコミックの作者が上手に汲み取り、遥か遠くの、今を生きる私たちに、届いているよ、と。

強く、鮮やかに、心に残る。
一人でも多くの人に、手に取っていただき、末永く読み継がれていってほしい作品である。


追記:
言及し忘れましたが、特装版は、DVDが付いています。
このDVDも非常にいいです。
アニメーションではないのですが、フルカラーで音楽と字幕が入っています。
サウンドノベル的な作り。
コミックスと根底は同じですが、音や動き的なものが入ると、目新しくて、これまた一興。
お財布に余裕がある方はぜひ特装版を手に取っていただきたいです。
見ごたえがあります。

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紙の本ヴォイド・シェイパ

2011/05/01 22:32

空虚の先にあるもの

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ふしぎな読み心地のする作品だ。
ジャンル分けを試みるとしたら、時代小説に分類されるかもしれないのだが、全くもって時代小説の匂いがしないのだ。
舞台は、侍が生きる時代だが、文章がお約束にとらわれておらず、自由で、作者特有のシャープさがあって、とても現代的。
そう、本来あるはずの、時代小説を読む時に感じる、突っかかりがほとんどなく、現代物を読んでいるようにしか感じられず、とても新しい。
表現方法が「スカイ・クロラ」シリーズに通ずるものがあり、詩的で、独特のリズムがあるので、いつもの森作品と舞台装置が違っていても、森博嗣の作品でしかあり得ない仕上がりになっているのだ。
ただこの二つの作品、大きく異なる部分もある。
それは、難解さが取り払われ、シンプルで分かりやすくなっているという点。
「スカイ・クロラ」という小説は、シャープで詩的で美しい作品であるのだが、刊行順にしても、舞台装置にしても、難解さが付き纏うシリーズ。
私が読んだ森作品の中でも難解度最高峰に位置しているのではないかと思われる作品なのだ。
その作品と似ている印象が強い今作品「ヴォイド・シェイパ」もやはり難解なのでは?という先入観があったのだが、実際読んでみると、モチーフや舞台装置が分かりやすくなっているので、自分の中での理解度が圧倒的に「スカイ・クロラ」の時よりも上がっている気がするのだ。
どんな小説でも完全に理解し切ることなどできないと私は考えていて、今回だってばっちり理解した!という気などさらさらないのだが、何かを受け取った気持ちになることはできた。それが今作品では「スカイ・クロラ」時よりも、多く感じることができたのである。

「ヴォイド・シェイパ」で描かれているのは、剣の道なのだが、それは人の生きる道に読むことができる。
生と死は、永遠の命題。
分かったかも!と思った瞬間に、するりとすり抜けていってしまい、その想いは消えてなくなってしまう。
答えは、あるかもしれないし、ないかもしれない。
道まだ半ばであるのと同時に、新シリーズ開幕なのだから、はじまりの物語といってよいのだろう。
それでもすでに多くのことが詰まっている。
手触りは冷たく静かだが、実は熱く胸を打つ、美しい作品である。

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変わらない美しさ

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とても豪華な一冊。
カラーあり、二色刷りありの、連載していた当時そのままの完全収録版。

約40年以上前の作品と云うことで、私はその当時を知らない。
それでも、普通のコミックスとは一線を画していることは良く分かる。
本自体の作りもそうだが、内容が素晴らしい。

ヒロイン、ノンナのシンデレラストーリー。
スポコンあり、ロマンスあり、友情ありの、青春・成長物語の、バレエマンガ。
古い作品なので、セリフなど一つ一つ拾いだせば、どうなの?と思う部分もあるし、画面の構成やペンタッチなどもううーん、と感じるところもある。
ファッションのセンス一つとってもそう。
ただ、これらはその当時は最先端だったんだろうな、というのが垣間見える。ファッションなんて最たるもので、今に通ずるものもあり(ファッションの流行は巡るので)、それに気づく。
マンガって、その時代の鏡のような部分も担っていて、流行を取り入れていくのは当然のことだと思うのだ。
けれど、それだけではただの流行りものになってしまうし、長くは読み継がれていかない。
テーマが普遍的なものであると同時に、バレエという特殊な素材を上手に調理している。バレエを知らない読者(私)に優しくバレエを教えてくれるし、興味を抱かさせる。
きちんと噛み砕いて、紙面にプレゼンテーションしてくれているので、すっと頭に入ってきやすいし、バレエを通して成長していく少女の姿、その青春を上手く描き出している。
キャラクターの設定もこれまた絶妙。
主人公のノンナは、天才少女というわけではなく努力型、どこにでもいそうな女の子で感情移入しやすい。時として、なんでそんなにめそめそするんだ!というくらいで、読者をイライラさせるのだが、少しずつ成長していくところに好感が持てる。
ノンナ以外のキャラクターも魅力的。彼女を精神的に支えていく友人たちに、ライバル、そして師匠であるユーリ。
ノンナが、彼らと、どのような関係を築き、どのように変わっていくのか、とても興味深い。
見どころ(読みどころ)がたくさんあって、読者を飽きさせないのだ。そういうところが、多くの人たちに長く読み継がれていく所以ではないだろうか。

1巻はまだまだ旅の途中というところで終了している。続きがものすごく気になる。
ライバル・ラーラとの戦いの行方。ユーリとの関係。ノンナ自身、この先どのような成長を見せるのか?
2巻が非常に楽しみなのである。

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紙の本ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

2009/09/28 22:35

すべての女子のものがたり

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本を読んでこんなに苦しくなったのは、初めてだ。

女子の人間関係が丁寧に描き出されている。
母と娘、友人同士・同僚同士の関係。
女子が誰しもが抱いているであろう思いが散りばめられている。

すべてがあまりにリアルで、自分の中に、チエミやみずほを見出してしまったり、重ねてしまったりして、どうしようもなく引き込まれ、大いに揺さぶられた。
キャラクターと、自分を同一視というのは言い過ぎだが、あまりに近くに感じ、心を寄せ過ぎてしまうと、その世界にどっぷりつかってしまって、どうしようもなくなってしまう。身動きが取れなくなってしまうというか……。
実際、逃げたくなってしまった瞬間が幾度となくあった。
それでも、この作品には読ませる力が、魅力が、溢れていて、結局は逃れることはできなかった。
そして、たどり着いたラストには、苦しみや悲しみ、やるせなさだけではなく、感動もきちんと用意されていた。

たまらないけれど、とても大事だ。

現実を生きている上での、閉塞感や言葉にできなかった思いを代弁してくれている、すべての女子の、物語。
ほとんど気づくことのない、あいの物語。

新たなる辻村深月の一面を見せてくれた今作品は、多くの人に最高傑作と言わしめる作品だと思う。

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紙の本ナラタージュ

2008/03/17 22:08

届かないラブレター

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんて、せつなくて、はがゆい。

読み終わった後、主人公の気持ちを想い、くやしくなって、本を投げつけたくなった反面、ラストのほんの少しの真実の中に見出された、微かな幸せを拾い上げた時、何だかとてもいとおしくなり、本を抱きしめたくなった。

ふたつの気持ちがせめぎあっているのだ。

小説を読んで、こんなに心を揺さぶられたのは久しぶりかもしれない。

誰にでも読みやすい、優しい透明感のある文章で。
けれども読み進めると、決して優しくはなくて、身を切られるような疑似体験をさせられる。

こんなにも、想っているのに。
こんなにも、すきなのに。
こんなにも、すべてを奪われているのに。

……どうして?
とても不思議に思った。

それでも、私は読み終えた今、自分なりに一つの答えをうっすらと導き出すことが出来たような気がしている。

うすっぺらい恋愛小説ではない。
きっと本を手に取り、読み進め、本を閉じた時。
何かを見つけることができる、貴重なラブストーリーだと思う。

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紙の本身代わり伯爵の結婚

2007/08/09 21:22

距離は未だ縮まらず……

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

身代わり伯爵シリーズ第二弾。
 一応、王宮ファンタジーと銘打たれている物の、王宮ものだということを、ファンタジーだということを忘れるくらいのラブコメっぷり!
 何も考えずに、ただ楽しく読めばいい!というラクさがいい!
 ヒロインとそのお守り役の天然対決が……(爆)。超天然(ヒロイン)VS天然(お守り役)、二人がまとまる日は果たしてやってくるのかっ!?
 今時、ここまでの王道ラブコメは逆に天然記念物のような気がします。
 ライトノベルが大好きで、気軽に、肩の力を抜いて、楽しく読書したい人に特におすすめです。

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紙の本おとぎ話のゆくえ

2010/07/27 00:12

おとぎ話の先には何が見える?

10人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作者の作品には、いつもふわふわとしたやさしさがあった。
しかし今作品では、それらが大分なりを潜めていて、シビアで、ストイックな印象を強く感じた。

今までの作品にはなかったキャラクター設定。どこか似ているふたりではない、まるっきり正反対の二人。はっきりとした光と影。
ストーリー展開的には、はっきりくっきりというよりも、あいまい。ささいなことが積み重なっていき、いつしかというようなパターン。
題材的には、物語の世界でよく使用されるもの、身分違いの恋――おとぎ話。それらのほとんどはラストでハッピィエンドを迎える。

もともとこの作品は、BLというジャンルの中にあるので、ラストは決まっているも同然。それにも関わらず読んでいて、本当にこの作品はハッピィエンドになるのか?という怖さがあり、事実、読み終えた今でも実のところ、幸せな未来が想像できずにいたりする。
BL=ファンタジーという図式が私の中では確立しているのだが、この作品はその図式に当てはまらないような気がしてならない。
ストーリーが現実に寄り添っているように感じられてならないのだ。


たとえ魂が上等であっても、生まれや育ちは選べない。
世の中には、両方上等なものを持って、生まれてくることもある。
理不尽だが、それこそが事実で現実。
けれども、それを打破する力は誰の中にも眠っているし、誰にでも平等に未来はある。
大っぴらには書いてあるわけではないけれど、物語の端々からそれらが感じられる。
失礼ながら、BL作品を読んでいて、このようなメッセージが伝わってくる小説はそうそうあるものではなく、とても稀有だ。


「おとぎ話のゆくえ」では、モラトリアムが描かれている。
主人公の片割れ、来杉。人と、自分側から関わることを徹底的に避けて生きている。流れに逆らわず、飄々と日々を過ごしている。自分以外には責任を負わず、何も選ばず、ただ流されるがままに。
それがもう一人の主人公・若様(湊)と日々を過ごしていく内に、変わっていく。来杉だけではなく、若もまた変わっていく。
必然的に惹かれあい、そして選ぶのだ、いつか壊れてしまう日がくるかもしれないとおびえつつも。
生まれや育ちは選べなくても、これからの未来は自分自身で選ぶことが出来るからこそ。確かに、自分で何かを選ぶということは責任を伴う。それでも覚悟を決めて選び取り、モラトリアムにピリオドを打つのだ。二人の選んだ関係は、それはそれはおとぎ話の結末のよう。先がどうなっていくかは、これから。モラトリアムの終焉をおとぎ話に乗せて描き切っている。

「ハッピーエンドのゆくえ」は、日常(現実)への回帰を語っている。
モラトリアム後、普通の日常に埋もれていく息苦しさ。ただそれこそが本来、誰かと繋がって生きていくという姿。自由ではなくなった苦しみ。それと引き換えに手に入れた温かいぬくもり。幸せと苦しみというのは、本当に半分ずつなんだということを描き出している。
選び取って、育てていき、普通に変換していく。その積み重ねが、おとぎ話を現実に塗り替えていくということ。幸せに浮かれている部分だけをではなく、苦しみさえも、対比をつけて両方をきちんと、冷静な視線で描き出している。

「共犯者のゆくえ」は、主人公二人を見守る話。
ここでの主人公(本編主人公の友人であり幼馴染)は、普通さを嫌悪しているが、普通に生きるということは、実は案外難しいことだと思う。
自分自身で選び取った、彼らとの共犯者という立場。
今の関係が変わってしまったとしても、それを受け入れる覚悟はできている。意外なまでの強さと、優しさ。
作品の終わりに、世界は閉じ切っているわけではないと教えてくれた。


BLは本来、恋愛小説なわけだから、激情だってもちろんある。
けれども、恋愛の熱だけではない、現実をもかすめていく。
それがこの作品の真骨頂なのではないだろうか。

物語は、自由だ。
読者がすきに選び取ればいい。

私は、今回はこういう風に感じ取った。

この書評だけ読むと、硬さを想像されるかもしれない。
けれども、作品中の文章の連なりには、ユーモアも散りばめられていて、読みやすく作られている。絶妙な匙加減。
言葉の選び方や、文章の運び方にも以前からセンスを感じてはいたが、今作品ではそれがさらに研ぎ澄まされていたような印象を受けたし、一歩踏み込んで作品を描き切ったことにより、深みを増しているように感じた。作者は新境地――新たなるステージを迎えたのではないだろうか。

純粋に、心から良い作品だと思う。

一人でも多くの人に、この作品が届いてほしいと、願ってやまない。

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紙の本君に降る白

2010/02/20 22:15

想いは白い雪のように降り積もる

9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトル通り、イメージカラー、白な作品。

設定的には、どこにでもありそうなものなのだが、料理法がとてもうまい。

BLではどうかよく分からないのだが(何せ読んでいる作品数がそんなに多いわけではない)、一般的な恋愛小説では、比較的よく見られるタイプの設定なのだ。そう、特にケータイ小説なんかでありそうなパターン。
どこかで見た気がする、と思いはするものの、冒頭で挙げた通り、白いピュアなイメージと、表現の上手さが私を掴んで離さなかった。

まどろっこしいところもあるんだけど、心をくすぐられる、少し文学的匂いがするエピソードの積み重ねに、言葉選び。
それだけでは、堅苦しさも出てしまいそうではあるのだが、少しのユーモアも交えられていて、読みやすさを与えている。

主人公(たちかな?)の心情が、丁寧に描かれていて、心を揺さぶられた。
せつない、苦しい、愛しいという感情が切々と胸に迫ってきて、たまらなくなる。途中しんどくもあったが、読み終えた時はほわっとした。

瑞々しい文章。透明感のある世界。
一度ぜひこの作品に触れてみてほしい。

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紙の本図書館戦争

2008/05/20 22:39

甘酸っぱい物語はいかが?

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

架空の時代設定に、独自の図書館の設定に、なれるまで最初は苦労した。
けれども、年号が異なるだけで、地域設定は大して変わらず、時代背景もそんなに変わらない、パラレルワールドで馴染んでしまえば、こっちのもの。
読み進めていく内に、そんなものはこれっぽっちも気にならなくなり、どんどん楽しくなっていった。

戦闘系の話かと思いきやそうでもなく、戦闘系の皮を被った、青春小説だった。

ヒロイン・郁の成長物語。
元気いっぱいの山猿娘が、おもしろくて、可愛くて、愛おしい。
何て純粋なんだろう、と。

きっとこの小説を中高生が読むと、ものすごーく主人公(ヒロイン)に感情移入できるんだろうな、と思う。

大人が読むと、何だかとても甘酸っぱく感じる。
こっぱずかしかったり、ニヤニヤしたりして、がんばれー!ってエールを送りたくなる。

自分にもこんな日々があったよね、と、あの日の自分に想いを馳せてしまう。

ハードカバーだし、そこそこページ数もあるし、読書馴れしていない人には手が出しにくいかもしれない。
だが、本を手に取り、開きさえすれば、あなたもきっとこの作品の虜となる。

そんな確信が、私の中に深く根付いているのである。

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紙の本最果ての空

2009/12/13 22:16

いばらの道を行く

10人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんてせつない・・・・・・

読み終えた直後の、最初に溢れ上がってきた想い。
そして、何て不器用な・・・・・・とも次に思い・・・・・・
けれど、それでこそ篠塚なんだなあ、とも思い至り。

「エス」、「デコイ」でサイドキャラクターとして登場している、篠塚を主人公に据えた物語。
キャラクターがすでに出来上がっている状態だったので、BL展開に持っていくのには懐疑的で、どうなんだろう?と思っていた。
読み進めていけば、そんなものは杞憂に過ぎず、ある意味自分の中で、思い描いていた通りだったんだけれども、物語は淡々とうつくしく紡がれていて。
あおるような文章でないからこそ、寂しさが、孤独が、際立って、たまらない心持ちにさせられる。
もうBLとかなんじゃなくて、篠塚という一人の男の生き方のお話だと思う。
人間ドラマ。
そして、警察小説としても、まあ少し軽めかもしれませんが、中々読ませる作品だと思う。

BLというカテゴリなので、そういった表現が皆無というわけではありません。
そういうのを我慢してでも読む価値のある作品だと思うので、ぜひ一度手に取ってほしいです。

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