もう青くはない空さんのレビュー一覧
投稿者:もう青くはない空
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声とかたちのアイヌ・琉球史
2007/10/16 14:15
学問論として読む共著書
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
アイヌは近代に至るまで文字を持たなかった。他方、琉球は15世紀以降の外交文書であった『歴代寶案』が、はじめての自前の文字史料であるという。
本書は、文字の無かったアイヌ社会の口承文芸と、16~17世紀に首里王府によって集成された祭式古歌謡集である『おもろさうし』を対象とし、文字の無かった時代の「歴史認識」「歴史観念」はどのようなものであったかを明らかにしようとする試みである。これは意欲的な書物であり、アイヌ、琉球、それぞれの分野のこれからの研究にとって大きな流れを作ることを期待したいし、これからの研究の進展を大いに期待したい。その反面、本書の冒頭に、編者である吉成直樹の「はじめに」が置かれているが、その内容を読む限り、なぜアイヌと琉球を比較するのかという根拠としては弱い。そもそも、アイヌ語の口承文芸を「日本」「日本語文学」の枠内で比較して扱えるのかどうか、検討する必要があるように思う。北方諸民族世界と日本の間に位置づけるほうが穏当のような気がする。
この論集の面白さは、専門分野によって、ものの見方がこうも違うのかという驚きである。広いパースペクテヴィを持つ研究と、限定された範囲に限って論じるものの両極端がある。また、世代の違いによる違いもある。若い世代は、比較的難解であり、それは生硬な文章に関係がありそうだし、高齢(とは何歳以上を指すのかわからないが)の世代は、わかる人がわかればよいという高踏的なスタンスである(かなりの高齢でありがら判りやすいものもある)。昔ながらの職人芸である。ただ、高踏的な論文は、内容の一切がわからなくとも濃厚な学問の香りを味わうことはできる。これこそが、研究が大衆化される前のあり方だったのだ!
本書を読み終わった感想を一言で述べなさいといわれれば「いろいろあった」(清水義範からの借用)ということになるが、「いろいろあった」うちでも、一番最後にある高橋論文が、この論集とどのようにかかわるのか、最後まで理解できなかった。
共著は単著と違って、統一性をもたせるのは大変な作業なのだと思う。だから、最初からまとまりなどを期待せずに、いろいろな珍味が並んでいると思えば、楽しく読むことができる。読みたいものからはじめて、次第に琉球やアイヌまで幅広く読み進めていくと、これまでまったく知らない世界に足を踏み込むことができるかと思う。硬軟、パースペクティヴの広狭、いろいろ考えさせる「学問論」として本書を読めば面白い。やっぱり難しいのは理解できないけどね。
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