巡遊伶人さんのレビュー一覧
投稿者:巡遊伶人
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村上春樹、河合隼雄に会いにいく
2007/11/24 16:31
こころの達人と冥界の取り持ち人の対談
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
そう、こころの達人河合隼雄と、冥界の取り持ち人村上春樹の対談集なのである。先日、村上作品のナビを期待して読んだ内田樹「村上春樹にご用心」が私的には大きくハズレで、その消化不良気分をスキッと払拭してくれる一冊だった。
この対談は、村上が「ねじまき鳥クロニクル」を書き終えた時点でなされており、随所に作品の引用がなされている。対談集でありながら、「ねじまき鳥クロニクル」攻略本としても読むことができるのではないか。ひいては、村上春樹攻略本として。
村上:「(前略)もうひとつ、『壁抜け』みたいなことをするときには、やはり力がないとできないんですね」
河合:「『壁抜け』をするというときでも、体力がなかったらまたイメージも変わると思います。壁を抜けても迫力がなくなるんじゃないですか」」
『壁抜け』という意識の中におけるワープ現象について、この二人はそれを現実の中にあるものとして話す。もっというと、認識を超えた存在の上にたって議論しているのである。そのうえで河合隼雄は、「ねじまき鳥クロニクル」というのは村上春樹が自分のからだをかけた作品だという。とかくファンタジーといいながら「つくりばなし」が蔓延するなかで、村上作品というのは“からだが入っている” のだというのである。
まるごと一冊読み終えて、もう一度読み返した。浮かぶのは、河合隼雄における村上春樹という患者に対するカウンセリング実例、という図式である。この対談(カウンセリング?)で、世界的心理学者が村上というさまよえる魂に見たものは何だったのだろう。河合隼雄のカルテ、それを知りたいとも思うのだが、それは見果てぬ夢なのである。
黄金旅風
2008/03/16 12:43
クセになる味・・
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
とうとう、飯嶋和一の世界に足を踏み入れた。
この作家の名前を知ったのは、どこかの書評欄で8年ほど前に「始祖鳥記」という作品が紹介されていたのが始まりだったか・・。書店で立ち読みをして、そのくどくどしい文体に思わず買うのをやめて帰ったような記憶がある。それ以来飯嶋作品は、たとえば「雷電本紀」など古本屋さんでみかけても、パスしてきた。
正直言って飯嶋作品は、きわめて読みづらい。
歴史小説の宿命として相当量の資料文献を基に書かれているのは分かるのだが、その資料文献が整理されることなく小説の中におきっぱなしになっている感がする。歴史小説の大家に共通する文章の流麗さにあえて逆らうかのように、ごつごつとしているのである。
ただ、この作家はきっと、このごつごつ感で読ませる作家なのだろう。譬えはよくないが、灰汁のすっかり取れていないラーメンを食べたような・・。散々くさしてからいうのもなんだが、読み始めると、ふしぎに引きずりこまれてしまうのだ。関が原から30年ほどの長崎。日本が長いながい鎖国に向かうターニングポイント。稀代の海商の人生とそれを取り巻く人間模様・・。濱田彌兵衛という英傑、平尾才助という義侠、天才鋳物師平田真三郎。・・面白い。
雑然としているけどまた行きたくなるラーメン屋、といえば失礼だろうか。
読み終えた翌日、古本屋さんから、「始祖鳥記」「雷電本紀」を買ってきた。
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