笛呂男さんのレビュー一覧
投稿者:笛呂男
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2007/12/01 18:12
緻密な研究に基づいているにもかかわらず、非常に読みやすい
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
正直、読んで良かった。とても勉強になり、なるほどと思わされることが多かった。小説のようなタイトルだが、本書はサブタイトルにある「働きすぎ日本人の実像」を、アンケートとインタヴューに基づいて描いた一般向けの啓蒙書だ。具体的には、長時間労働、サービス残業、なかなか消化されない有給休暇など、労働時間に関る問題を取り扱っている。アンケートは著者の所属する労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施したものであり、信頼できるデータであると思う。統計的手法を用いて分析したものを図を用いてわかりやすく説明したりと、一般の読者を意識した書き方も良かった。
著者がこの本をとおして発しているメッセージで特に印象に残ったのが2つある。1つは、われわれ日本人は、自己の便利さを追求することで、他人の、ひいては社会全体の長時間労働を促しているといえるのではないだろうかということ。深夜営業のスーパーなどは便利だと思っていたが、それが他人の長時間労働で成り立っているということは考えもしなかった。なんだか申し訳ない気持ちになった。
もう1つは、人生をトータルで考えたとき、仕事はとても重要だが、「ゆとり」もかなり大切だということ。ついついがんばりすぎてしまう人は、もしかするとうつ病になったり、過労死したりするかもしれない。過労自殺にまで追い込まれる可能性もある。そうなることを著者は心配しているのだろう。著者のやさしさをうかがい知ることができたように思う。
最後に。愛犬や読者にまで向けて謝辞を書いているところはなんだかほほえましく思った。
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