いわきりさんのレビュー一覧
投稿者:いわきり
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人形寫眞文庫 木本黒陽
2008/03/23 10:11
人形というもの
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本書は球体関節人形作家の木本黒陽の初期作品から07年度末に発表された最新作までを、作家自らのカメラと言葉で編した1冊である。
木本の人形はどれも石塑粘土を使った1点もの。売れてしまえば買いあげた持ち主以外は見ることのできない、ごく個人的なものになってしまう。
なので今回のように、すでに作家の元を離れてしまった人形作品を、レゾネのようにすべて網羅してくれるのは、見る者にとってはとてもありがたい事と思う。
この本は洋美術書を模したような作りであり、ブックカバーはない。いわゆるソフトカバーでいながら、手にとったときの実存感を味わうに十分な重厚さの紙を贅沢に使っている。
ささやかな高級感とややもって少女趣味がかった装丁とに彩られ、木本の蟲惑的な人形世界が展開されていくのだ。
木本の人形は全身の表現としての模索を軸に、1作ごと精度・練度を増していく。
斬新さはない。王道を窮めていると見てもいい。そこが、素晴らしい。
過剰なフリルも、ともすれば胸やけしてしまう陶酔もなく、淡々と作品と向き合える、そんな本に仕上がっていた。
本書はシリーズ物として続刊していくとのアナウンスがある。
次回はどんな作品と出会わせてくれるのか、今からとても楽しみだ。
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