池上泉山さんのレビュー一覧
投稿者:池上泉山
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高校生レストラン、本日も満席。
2008/03/25 19:17
カネカネの20世紀から離れた21世紀の次元の高い生き方の見本。
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三重県多気郡多気町に、日本で唯一の高校生レストランがある。
県立相可(おうか)高校の調理クラブが自主的に運営している。
営業日は土・日・祭日と学校の長期休暇日のみである。営業時間は午前11時からだが、午前10時から客が行列するから、10時半に開場し、ただちに満席となる。2時間で売り切れとなる。
初めはクラブ活動としてテントで営業していた。地元で採れる伊勢いも入り手延べ半生うどん「とるる麺」と特製豆腐田楽でスタートして大評判になった。
高校生がまじめに一心に働いているので、町民の支持者も増え、町を挙げてのプロジェクトが組まれ本格的なレストランを作ることになった。
県下に建築科のある工業高校が4つあり、呼びかけて設計コンペをやり、立派な店ができた。1位となったのは四日市工業高校案。
(店内には各工業高校の模型が展示してある)
と、なんだかメルヘンのような話だが、すべて事実なのだから、不思議なレストランとしか言いようがない。(私は車を走らせて行ってきました)
指導している先生は大阪の辻調理師学校(料理の東大といわれ有名)で鍛えられ、教師となった村林新吾先生がスカウトされて担当。
料理の技術だけでなく心がまえ、マナーも厳しく教えて評判となった。
実際このレストランに一歩足を踏み入れると、頬の赤い数十人の高校生が一斉に「いらっしゃいませ」と大声で言ってくれる。
奇妙な感動が身の内から起きるのを禁じ得ない。ここまでになる苦労もさりげなく触れられている。
同僚からの批判。天狗になる生徒。月曜日に、授業中に居眠りするクラブ員。しかし、教頭や町職員のサポートのもと、全国コンクールで連戦連勝となっていく。
繰り返しになるが、まるで熱血テレビ番組のようでもあるが、現在進行中の事実であるのは間違いないから、不思議なレストランとしか言う言葉がない。
村林先生は松坂市の料亭の息子に生まれ、在学中に父が急死したため料亭は閉店して修行を続けたそうだ。正月以外は年中無休で指導に当たっている。
仕入も高校生が市場まで、午前2時から行っているそうだ。
レストランで250食提供している以外にも「青春弁当」という弁当を190食、地元のスーパーで売っている。店舗でも「行楽弁当」を50食、売っている。
つまり、土・日だけで490食を売り切っている恐るべきレストランだ。
全国から連日見学者が来訪し、21世紀のモデル教育として注目されているのもむべなるかな。
この本を読んで、朝起きして、高校生レストラン「まごの店」へ食事に行ってみてはいかがだろう。
スタジオ・ジプリの世界の現実版が1000円の美味しい昼食とともに繰り広げられているのを、目の当たりにすることができることは請け合う。
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