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ココちゃんさんのレビュー一覧

投稿者:ココちゃん

77 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本野獣流攻める矢倉

2009/01/04 00:15

しゃらくせい、べらぼうめ~

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんて文章が載る将棋の本はかなり珍しいと思います(笑)。
文章が面白い先生の授業という感じで、なかなか読みやすく良いです。
ただし参考図の入れ方はイマイチで、ページをめくることが多くなってしまいます。

本書は矢倉の本ですが、現在流行の難解な4六銀3七桂型矢倉や森下システムではなく
アマ初段を目指す方向けとして、先手番からガンガン仕掛けていく将棋を紹介しています。

第一部はジェットコースター矢倉と題して、
急戦矢倉、3七銀戦法、先後同型矢倉、スズメ刺し戦法を紹介。
急戦矢倉は二枚の銀を6六と4六に配置し3筋を目標に攻めます。
この指し方は現在手に入る棋書にはないものなので、指してみたい方は必見だと思います。
似た形ですがカニカニ銀とは違いますので、あわせて使うと面白いかもしれません。
3七銀戦法、先後同型矢倉はじっくりした展開をあえて嫌い、
野獣流の5七角7九玉という攻撃的な構えから攻め倒します。
スズメ刺し戦法は端に戦力を集中させる戦法ですが、
本書では後手番(相手側)が無策に進めているのが気になります。

第二部は矢倉アドベンチャーと題して、
ウソ矢倉、本格的相矢倉、角にらみ合い型を紹介。
ウソ矢倉は後手の戦法で、それを先手が積極的にとがめにいく順を紹介します。
本格的相矢倉は、現在ほとんど見ない形なので使いづらいような、逆に資料として貴重なような…難しいところです。
角にらみ合い型は先手が3筋、後手が7筋の歩を手持ちにし攻撃力が上がっている状況です。
脇システムより先手の条件がいいので、現在の後手は避けてくると思いますが。

全体的に後手番(相手側)にミス手、ウソ手が多いです。
先手番に気持ちよく攻めさせるためなのでしょうが…。
個人的には相手がキッチリ指して来た時、はたと困ってしまうような本はイマイチです。
初段向けであっても正直に対策を載せ、この場合こういう方針で指しましょうとする方が、上達につながると思うのですが…

あとちょっと使いづらい、応用しにくい形が多いのも気になります。
第一部急戦矢倉は形を決めやすいため使いやすいですから、
同じ方針で後手番の米長流急戦矢倉などを紹介すれば良かったかもしれません。
しかしながら歩の突き捨てや大駒の切り飛ばしなど矢倉特有の攻め手筋は豊富ですから、
よくわからないまま4六銀3七桂型矢倉などを指している方は、一読してみると面白いと思います。

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紙の本新鋭居飛車実戦集

2008/12/23 00:03

もっと熱い文章を!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

居飛車党三人の共著である本書は、
一人あたり4戦の自戦記とコラムからなっています。
しかし残念ながら不満な点がいくつかあります。

まずみんなが対振り飛車を2戦も取り上げている点です。
これはおそらく編集側の要望だったと思いますが、
振り飛車戦は先に出版された振り飛車実戦集があるので
本書では相居飛車戦に絞って欲しかったです。
もちろん居飛車視点の振り飛車戦という価値はありますが。

二つめは個性が見えてこない点で、文章に熱さがないです。
1戦につきかなりページ数を割いているにもかかわらず、
誰が誰だかわからない文章になっています。
淡々としていて読みやすいというプラス点もありますが、自戦記という体裁を取るからには、
グッと引きつけられるような、「読ませる」ものにしてほしかったです。
唯一コラムのみ個性が出てはいますが…

読ませることを重視しない実戦集となりますと、
ひとつの戦型に絞ってたくさん集めたものにしたり
スター棋士が年度ごとに書き上げるとか
○○VS△△100番勝負、といったものが興味深く面白いと思います。

良かった点としては
一局あたりのページ数が多いので解説が豊富です。
オススメの一局は村中四段の対佐藤紳五段戦で、
なかなか面白く勝負を分けたポイントも上手く印象深く書かれていました。

棋譜並べが好きな方は手を出されてみるのもいいと思います。

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紙の本楽しく勝つ!!力戦振り飛車

2008/09/05 22:28

定跡書?実戦集?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

△ゴキゲン中飛車、▲石田流、▲中飛車を解説した定跡書です

しかし三戦法扱っていること、実戦編にかなりのページを割いていることで
解説が少ないです
そのわりに居飛車側に無難に指させているので、
テーマごとの結果図は模様勝ち程度が多くあり
アマチュアがそこから勝てるのかな?と思ってしまいます
楽しく勝つ!!とありますが、残念ながら狙い筋などは
あまり紹介されてない印象です

また石田流では鈴木式の解説はなく(コラムのみ)、
最新の升田式の解説がされています

序盤は注意点のみ紹介されており
ある程度知識がないとこれだけでは指せないですし
かといって変化も少ないため
定跡書としては初心者向けか高段者向けにしたかったのか
どっちつかずな印象を受けました

実戦編は局数が多いので、そちらに期待されるのであれば
楽しめると思います

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紙の本南の右玉

2011/11/17 21:14

右玉以外もアリ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書はタイトル獲得7期を誇る南九段の初の定跡書です。
初著作かなと思っていましたが、約20年前に次の一手本を出されていたようです。

「南の右玉」というタイトルですが右玉のみの本ではなく、また角換わり右玉もなく矢倉VS右玉がメインで、
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△9四歩という出だしからの、
序盤から出方をうかがう後手番の指し方を南流として、解説した本です。

普通の振り飛車のスタートにも見えますが、相手の選択次第で右玉・袖飛車・振り飛車を選択します。
先手の1つめのポイントは▲9六歩と端を受けるかどうかで、端の突き合いがあると居飛車穴熊がやりづらくなります。
2つめのポイントは早めに▲6八玉と上がるかどうかで、
後手がおとなしくしていればスムーズに玉が囲えますが、袖飛車で玉頭を狙う作戦があります。
解説は右玉7局・袖飛車4局・振り飛車(陽動振り飛車を含む)9局・その他急戦3局、計23局です。

戦法の本ならば「先手がこうきたら振り飛車」と解説されるのが自然ですが、
「臨機応変」を後手番の極意とする南九段、この先手の対応ならこの戦型と決めているわけではなく、
例え同じ出だしであってもおそらくは戦法の流行や相手の得意戦法なども考えて、
右玉・袖飛車・振り飛車を選択されていると思われます。

思われます、と書いたのはここに本書の残念な点その1があるためで、
誰といつ指した将棋なのかわからないため、
読者には作戦選択の理由がいまいち伝わりにくくなっているからです。
例えば「持久戦が得意な棋士だから袖飛車で先攻しよう」とか
「藤井システムを警戒して居飛穴はないな、よし振り飛車だ」といった意図があったはずです。

残念な点その2は、総棋譜が載っていないことです。
本書は南九段の実戦をもとに初手から中盤まで解説されているのですが、
それならば参考棋譜の形で巻末に載せておいてほしかったです。
互角でこれからの将棋だ、で終わっている将棋はもちろんのこと、
優勢になっても袖飛車と右玉は玉が薄く勝ちづらい将棋なので、
終盤の指し回しが参考にできないのはかなりツライです。
誰といつ指した将棋か分かれば読者側でも調べようもあるのですが、
そもそも総譜が載っていれば当然対局データも掲載されるでしょうから解決ですが…。

これはマイナス点ではないですが、先手の▲2五歩が早いのも気になるポイントです。
南九段は矢倉の大家なので先手の棋士が▲2五歩を決めてウソ矢倉を警戒しているのだと思いますが、
アマチュアでは▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩であれば振り飛車を意識して、
▲2五歩と▲4八銀は同じぐらいか、あるいは▲4八銀の方がよく指されるでしょうか。
なので南流を指せるケースは意外と少ないかもしれません。

せっかく面白い作戦の定跡書なのにちょっと不親切な点が気になり評価が低くなってしまいました。
アマチュアが南流を使えるようになるためには、本書ではサポート不足でしょう。
指し回し自体は素晴らしいので、残念な点に我慢できる方であれば面白く読めると思います。

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紙の本早分かり中飛車定跡ガイド

2011/07/24 15:00

コンパクトにまとまってはいるが…

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

定跡伝道師の異名を持つ所司七段による新しいタイプの定跡書が登場しました。
どうやら「新・東大将棋 定跡道場」シリーズは中途半端に終わってしまったようで、残念です。

「早分かり中飛車定跡ガイド」というタイトルですが、▲居飛車VS△ゴキゲン中飛車の解説です。
「東大将棋」シリーズよりも易しく、1冊で主要なゴキゲン対策を扱おうという意欲的な本ですが、
その代わりに変化手順や終盤までの解説はほぼなくなっています。

第1章は「超速▲3七銀」です。
玉を囲う前に▲4六銀とするのが肝なので、個人的には超速▲4六銀が正しいと思うのですが(笑)。
本書では後手3二銀型を中心に3二金型、4二銀型も扱われます。
型の違いごとに後手の方針が変わる点の解説はなされていますが、変化は少なく、
中盤の入り口辺りで手順が打ち切られていますので、指すには他の棋書で補う必要があります。

第2章は「角交換型」、丸山ワクチンの名が一般的です。
▲居飛車が持久戦を目指していることもあり、本書では一例の紹介に留まっています。
主流の後手が向かい飛車に転換する以外の型も載っている点は○です。

第3章は「超急戦▲5八金型」です。
本筋としてタイトル戦で指された最新の将棋も載ってはいますが、
この章だけで超急戦回避型までも扱っていることもあり内容はかなり薄めです。
また▲7五角型は「遠山流中飛車急戦ガイド」よりも浅い変化量で解説が終了しているのに、
結論は逆になっているので、研究の精度に少々疑問が残るところです。

第4章は「▲2四歩早突き型」、ほとんど消えた変化ですが再確認に使えそうです。

第5章は「▲7八金型」です。
今までの棋書と違い△3二金型だけでなく最近流行の馬を作らせる指し方も載っています。
これは後手の勝率がかなり良いのですが、本書では先手十分になっているのが面白いところです。

第6章は「▲4八銀型」で、相穴熊や居飛車側のみ穴熊、さらに急戦などが扱われます。
穴熊関連は「遠山流中飛車持久戦ガイド」が本書よりもずっと詳しいです。

第7章は「▲2五歩保留型」で、二枚銀戦法など解説されます。
後手は歩損甘受で銀交換に出る作戦が主流だったと思いますが、
掲載戦型は多い本書なのに何故かこの変化はノータッチで、
もやもや感が残ることになってしまいました(笑)。

基本中の基本から最新形、さらには珍しい型まで扱っているのに、
1冊でまとめるのは無理があったようで、どういった棋力の持ち主を対象にしているのか疑問に感じました。
変化が浅く解説は少なめで有段者には物足りず、
方針がわかりにくいため級位者はこの後どう指すの?となるでしょう。
残念ながら本書は中途半端な1冊だな、というのが正直な感想です。
これなら「定跡道場」シリーズの構成でゴキゲン中飛車を出してほしかったですね…。

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紙の本とっておきの右玉

2009/08/06 21:55

「細川流」右玉

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アマ強豪の細川さんによる自身の得意戦法である右玉の本です。

この本の戦法は相手の構えを見てから採用を決める普通の右玉と違い、
先手から即角交換して右玉を目指すというもので、細川さんオリジナルのものです。
▲7六歩△3四歩▲2二角成!△同銀▲6八銀とするので、損な戦法の可能性があります。
まえがきに「この本は棋理を追求しようとする方には向きません」とあります。
(少々悪くとも)自分の土俵に引きずり込むぞ、そんな考えが嫌いな方には向かないでしょう。

第1章は先手右玉6七銀型対居飛車で、
知らないと指せないような右玉ならではのカウンター手筋が豊富に紹介されています。
早々に形を決めているため、後手には飛車先保留などの工夫が可能であり、
また先手なので薄い玉であっても最後は攻めなければならない、
と、指しこなすのは難しそうです。

第2章は先手右玉6七銀型対振り飛車です、と言っても先手は右玉ではなく左に囲います。
どういうこと?と思われるかもしれませんが、
相手が居飛車(飛車が左)の場合、飛車を避けて右玉にするので、
相手が振り飛車(飛車が右)の場合は、左に玉を囲うことで同じように指せるというわけです。

第1章同様、先手は形をかなり決めてしまっており、玉を堅くは囲えません。
そこでバランスよく大きく模様を取る指し方をするわけですが、指しこなすのが難しいです。
また後手は手損もせず角交換振り飛車が指せるという理屈になるので、
アマ有段者レベルでは後手の振り飛車が勝ちやすいのではないでしょうか。

第3章は先手右玉7七銀型対居飛車
▲7六歩△8四歩で即角交換を封じられた時の指し方です。
いわゆる角換わり右玉の形になり、7七の銀は受けに強いので普通の右玉を学べるでしょう。

第4章は後手で千日手に持ち込めるかどうかの考察。
一般的には右玉は積極的に攻める戦法・構えではないので、後手でゆらゆらと指すのが普通です。
積極的な右玉といえば佐藤永世棋聖ぐらしか浮かびませんし(笑)。

第5章はいろいろな右玉の変化。
細川流にかぎらず、右玉はバランス重視の特殊な構えなので、
相手の地下鉄飛車や桂頭狙いなどに対応できないと簡単に潰れてしまいます、その受け方やカウンターの仕方を紹介。
この章は右玉党はもちろん、右玉への対策としても押さえておきたいです。

第6章は自戦記、しかし2局しかありません。
変則的な戦法なので解説は少なめでも参考棋譜がたくさんある方が良かったのではと思います。
また終章は各章のまとめですが、ポイント解説程度なのであまり意味がありません…。
これなら出題してわからなかったら○ページを見なさい、
という形式の方がコンパクトで良かったかもしれません。

本書は特殊な戦法を奇麗にまとめた力作なのですが、
かなり使い手を選ぶと思います。少なくとも勝ちやすくはないでしょう。
我こそは!という力自慢の方はチャレンジされてみては。

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紙の本最新の相掛かり戦法

2010/04/28 23:05

不人気?な相掛かり

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

プロ最前線シリーズ第2弾はなんと「相掛かり」でした、将棋連盟のやる気を感じますね。

と言いますのも、「将棋世界」2010年1~3月号で、
勝又教授による相掛かり特集が組まれているので…。
相掛かりの権威ともいえる中原永世名人へのロングインタビュー、
本書の著者である野月七段のコメントなどもあり、
そちらも併せて読まれるとより楽しめると思います。

まえがきに「相掛かり戦法の専門書はここ最近発売されていない。」とありますが、
調べてみると「羽生の頭脳8 最新のヒネリ飛車」(1994年3月発行)以来のようです。
(まぎらわしいサブタイトルですが相掛かりも扱われています。)

相掛かり戦法は初手▲2六歩に△8四歩と指してくれてようやくスタートになります。
▲2六歩に△3四歩とされれば、まず相掛かりにはなりません。
「受け方がよくわからない」「攻め合いが怖い」(まえがきより)戦法であること、
そして前述のように棋書も少ないことから、アマではあまり指されない戦法でした。
野月七段は大好きな相掛かりを、アマにも指してほしいという気持ちから本書を書かれたようです。

本書では、飛車先交換後▲2六飛と浮く形と▲2八飛と引く形にわけて解説されています。
現在プロ間の主流は▲2八飛から棒銀をみせて後手の出方をみる戦法のようですが、
どうして主流が移ったかも含めて▲2六飛型から解説されます。

一口に▲2六飛型と言っても、腰掛け銀にする、桂を主に活用する、
ひねり飛車にする、などあります。
そして後手の陣形も△8四飛と浮いた形、△8二飛と引いた形、
などなど組み合わせはいろいろです。
第2章から第5章まで、先手の攻めと後手の対抗策という形で紹介されていきます。
基本的には▲2六飛型での攻めはいずれも、玉が薄かったり、浮き飛車への当たりが厳しかったりで、
プロの眼では先手が難しいのでは?という結論に落ち着いています。
といってもこの結論にたどり着くまでにトッププロも何度も攻め倒されて対策を考えたわけですし、
小気味よく攻められるのでアマならば面白く戦えるのではないでしょうか。

第6章が本書のメインで▲2八飛と引き▲2七銀~▲3六銀とする形の解説です。
序盤早々に棒銀の作戦を明示していますが、
プロは簡単に潰れませんので牽制がメインの狙いになります。
本書ではアマがまずい受けをした時のために、
棒銀で攻め倒す順もきちんと紹介されてはいますが(笑)。
後手としては受けに徹するか、反撃をみせるかなど、
ちなみに最新定跡では8五飛と牽制するようです。
どれも難しい戦いになるようですが、
著者の野月七段が「みなさんはこう指すのがよいのではないか」、
という具合にオススメの指し方を解説しているのが印象的でした。

私は相掛かりはまったく指さないですし、定跡も全然知りません。
ですが、豊富な攻め筋の紹介、盤面図の下にもコメントがある丁寧な解説で面白く読めました。
相掛かりを指される方は必読ですし、指してみようかなという方もぜひ読んでみてください。
まあ相掛かりの本は貴重ですから、「言われなくとも」という感じでしょう(笑)。

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紙の本乱戦!相横歩取り

2011/03/23 23:05

まさかの相横歩取り

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

囲碁将棋ジャーナルでの丁寧な解説が印象的な北島六段による「相横歩取り」専門の定跡書が出ました。

相横歩取りの定跡書は、「羽生の頭脳9 激戦!横歩取り」(現在は9・10合本の文庫が出ています)と、
東大将棋シリーズの「横歩取り道場 第二巻 相横歩取り」があり、両方とも良書として知られています。
しかし「羽生の頭脳9」は1994年発行と古く、結論が変わってしまった手順もありますし、
「横歩取り道場 第二巻」はアマ初段レベルでも難解であり、そもそも絶版になっています。
本書は「羽生の頭脳」のように級位者にもわかりやすい解説で、
かつ「横歩取り道場」のようにたくさんの変化を載せる事に挑戦した意欲作と言えるでしょう。
また本書での良い工夫の一つに、盤面図を通常のマイコミの定跡書のように1ページ2図のページと、
東大将棋シリーズのように1ページ3図のページとの使い分けがあり、
参考図を多く載せることができており、膨大な変化をわかりやすくしてくれています。

相横歩取りは通常の横歩取り(後手は歩損するかわりに手得を活かす)とは全く違い、
後手のうえに角交換で手損し、しかも先手に急戦定跡か持久戦かの選択の余地があるという戦法です。
もちろん結論は出ていませんし、プロのタイトル戦でもまれに登場するぐらいの戦法なのですが、
通常の主張のある8五飛戦法や一発狙いに向いている4五角戦法に比べると、
正直アマ有段者レベルでは後手を持って選択しづらい戦法な気がします(笑)。

第1章は先手が横歩を取らない変化について簡単に説明されています。
後手としては避けられない変化ですが先手としても妥協の作戦であるため、
本書で紹介されている指し方で後手面白く戦えると思います。
この章は相横歩取りでなく通常の横歩取りが好きな方にもオススメです。

第2章は相横歩取り▲7七銀型です。
「壁銀を立て直す本筋の一手」とあり、タイトル戦でもこの形がみられました。
後手が角交換から△7六飛と横歩を取りつつ金取りに出るのが相横歩取りのスタートであり、
▲7七銀と飛車に当て△7四飛と引いて3四にいる先手の飛車にぶつけるという、
序盤早々華々しい展開です。
先手は▲7四同飛と飛車交換する急戦定跡と▲3六飛として手得を主張する持久戦があります。
▲7四同飛の急戦では△同歩に▲4六角がプロ流行の手で最善手なのでしょう、
本書でも一番力を入れて解説されており、▲4六角に対する応手だけで6つもの変化が載っています。
さらにそこから枝分かれしていきますから本当に膨大な変化量です。
先後とも飛角を持ち合っているため攻撃力があり即終盤戦に突入するため、
詰む詰まないの結論まで解説されている変化もあります。
なお▲4六角以外の「先手面白くない」結論が出ている手についてもきちんと解説されています。
最後に飛車交換拒否の▲3六飛からの持久戦を後手視点で駒組みや狙いが紹介されています。

第3章は相横歩取り▲7七桂型です。
長所は好機の▲6五桂が狙える事、短所は▲8八銀が使いにくい事だそうです。
▲7七銀型では面白い狙いだった後手の手が今度は通じなくなっていたり等、
第2章との違いを明快に解説が上手くされています。
しかし第2章同様に変化手順が多くあるのですが、第2章の目次にはあった「▲4六角に△8六歩…28」という、
変化を探すのに便利な項目が無くなっているのが少し残念です。

第4章は相横歩取り▲7七歩型です。
銀や桂が行ける所に歩を打つわけですから、いかにも感触が悪いのですが、
この指し方にもそれなりに主張があるようです。
後手を持つ方はもちろん必読ですが、先手で対相横歩取りに対策を決め打ちするのにも使えるかもしれません。

第5章はその他の横歩取りです。
いわゆる3八歩戦法と言われる戦法で、相横歩取りとの関連は薄く、
4五角戦法のようにすぐに激しい終盤戦になります。
いろいろな戦法をまとめた定跡書で見たことがありますが、本書の解説が一番詳しいです。
面白い戦法に目をつけられたなーという印象です。

本の出来自体は素晴らしく、しかも類書は無いようなものですから、
相横歩取りを指す方には当然オススメなのですが、そうでない方にはどうなんでしょう(笑)。
ただ、若干マイナーな戦法であっても積極的に定跡書を出してくれる姿勢に、
感謝し応援したいと思います。

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紙の本ライバルに勝つ最新定跡

2010/10/14 23:29

残念な構成の改悪

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かつて「終盤は村山に聞け」とまで言われた故・村山聖九段に対し、
現代で「序盤は村山に聞け」と言われるほどの研究を誇るのが本書の著者村山慈明五段です。

本書は第一作「最新戦法必勝ガイド」第二作「アマの知らない最新定跡」の続編です。
できればタイトルを統一して「~最新定跡・2」や「~最新定跡・○年版」としてもらえると、
該当定跡の探しやすさや進化の流れがわかりやすくなりますし、
本棚に並べた時の見栄えも良くなるでしょうから(笑)嬉しいです。

三冊通しての特徴ですが、出版当時のプロの最新研究「のみ」が惜しげもなく披露されます。
特に三冊目の本書はかなり局面を限定して、深く詳しい研究成果が載せられていると感じました。
当然ながら、戦法を一から学ぼうという人には過去の二冊以上に適さない本となっています。
村山五段は純粋居飛車党なので「相振り飛車」が扱われないのは当然ですが、
「相矢倉」や「急戦矢倉」も研究外なのか、一度も扱われた事がありません。
また過去二冊で大きく取り上げられていた「藤井システム」が先後とも扱われていないので、
プロ間では戦法として苦しくなってきて、定跡の進歩もあまり無かった事が想像されます。

本書にはちょっと残念な点があります。
過去二冊では局面図が指し手の掲載ページとずれているようなことはなかったのですが、
本書ではほとんどが合っていません。
おかげで何度もページを戻したり進めたりすることになってしまいました。
また変化手順を掲載する際には、過去二冊では「必ず」前の局面図から一手だけ進んだ図で再掲し、
そこから手順を進め解説し局面終了図も載せるといった、読みやすいよう工夫がされていました。
(本書でもそういう配慮がされているケースも「多少は」あります)
おそらく変化手順や参考図が膨大になりすぎたため、仕方なくといったところなのでしょうが、
それならば「定跡道場」のように1ページ3図にするといった手もあったかもしれません。

最後に簡単に内容にふれておきますと、
第1章後手番ゴキゲン中飛車は▲3七銀急戦について、
第2章ゴキゲン中飛車超急戦は▲1一竜△9九馬に▲3三角の変化で現在最新の△2七角を解説。

第3章先手番ゴキゲン中飛車は歩交換拒否△6四銀型と居飛車穴熊の最新形、
第4章先手番石田流は稲葉新手▲5八玉の変化です。

第5章横歩取り8五飛対新山崎流は△7四歩に角交換から▲7七角する形と△8六歩の合わせ、
第6章横歩取り8五飛対5八玉型は(旧)山崎流で▲3八金としない形を解説。

第7章同型角換わり腰掛け銀は60手ぐらい進んだところが第1図というとんでもない定跡です(笑)。
第8章一手損角換わり対早繰り銀で、
後手が保留していた△8五歩を伸ばす反撃に対し先手はそれを受けずに攻める定跡です。

読みづらさもさることながら、プロでも互角の最新形の紹介なので難しいです。
「ライバルに勝つ最新定跡」ですが、本書を読むことで勝てるようになるライバルって…、
いやいや、お互いに強すぎるでしょう(笑)。

ちなみに現在プロの公式戦・研究会でさかんに指されているわけで、
これから消えていく定跡手順、ひょっとすると既に消えた変化手順すらありそうです。
なので、本書の内容が有効な時期は短いかもしれません。
棋力向上向けではないですが、プロの最前線に興味のある方は面白く読めるでしょう。

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紙の本遠山流中飛車持久戦ガイド

2010/03/23 21:57

持久戦は難しい…

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

遠山流中飛車持久戦ガイドと銘打たれた本書ですが、いわゆる「遠山流」の解説のみの本ではありません。
遠山四段が先手中飛車や後手ゴキゲン中飛車における、
オススメの作戦や最新流行の形を紹介するという形式です。

ちなみに「遠山流」とは△ゴキゲン中飛車VS▲丸山ワクチンで後手が取る作戦です。
序盤早々に△7二金として8三をカバーし▲6五角の打ちを防ぎ、5筋の交換を狙います。
玉と銀が初期位置なので一瞬壁の悪形になるのですが、5筋交換できれば大きいことと、立て直しが可能なことで成立します。
勝率も良く一時期流行った戦法ですが、あの羽生名人も「そんな発想はなかった」と驚いたそうです。

最初は先手中飛車から解説されます。
第1章先手中飛車・5筋&角交換編はは△居飛車が5筋の位取りを拒否して、
さらに△2二玉から堅く囲うために角を交換してきたケースです。
先手中飛車としては手損もなく手持ちの角が使いやすいという動きやすいありがたい形で、
5筋を強引に突破、飛車を8筋に回す、いきなり角を打つ、と多彩な攻めが可能になります。
まずは基本となる攻めパターンを覚えてもらおうという位置づけの章のようです。
実戦では居飛車も工夫して細かな形の違いで選ぶべき攻め方が変わりますが、その事も解説されているのが良いです。
また後手が8筋から逆襲してくるケースにも触れられています。

第2章先手中飛車・5筋交換編は第1章同様△居飛車が5筋の位取りを拒否しますが、
△4四歩と角交換を避けるケースです。△居飛車は基本的には穴熊を目指しますが、
▲中飛車はいきなり攻め潰しにいく急戦、素直に組み合ってポイントを稼ぐ形、相穴熊を目指す形の2つの持久戦が解説されます。

急戦は4筋を突き、5筋に合わせ歩を打つ定番の攻め形で「ナニワ流ワンパク中飛車」や「楽しく勝つ!!力戦振り飛車」等、
既存の棋書でも似た定跡が解説されています。さらに2009年末には「パワー中飛車で攻めつぶす本」が加わっています。
しかし急戦は、現在本書のみで解説されている居飛車の対策が「攻略は大変で形勢不明」と遠山四段は解説されています。
「居飛車と振り飛車、どちらかに肩入れすることなく局面を公平な視点で見てある」との言葉通りで、
この戦型で苦しめられている居飛車党にも参考になるでしょう。

そこで持久戦が紹介されますが、オススメの作戦と言うわりにはさらりとしか触れられていないのが残念です。
もっとも持久戦は定跡解説は難しいので主張点、具体例の紹介に留まるのも仕方がないのでしょうか。

第3章先手中飛車・5筋位取り編は第2章で形勢不明とはいえ受ける展開を余儀なくされた後手が工夫します。
位取りをあえて許すことで無難に穴熊に組もうとする戦法です。
従来はこの位取りを許して穴熊にする作戦は、
消極的で先後問わず簡単に中飛車が良くなると思われていました。
しかし実際にはポイントを押さえた駒組と反撃方法を知っていれば、
充分戦えるとプロ間でも見方が変わってきました。
中飛車側からの手段は袖飛車+穴熊や美濃+6筋位取り
といったものが解説されています。
▲中飛車なので△居飛車が千日手に誘い込むような順も出てきます、非常にプロ的な手段です。

第4章後手ゴキゲン中飛車・5筋位取り編は第3章と関連しています。
居飛車は同じように位取りを許して穴熊に組みますが、一手の違いが大きく後手の中飛車は袖飛車戦法が採れません。
この辺りは具体的に▲居飛車の防御の間に合う様が詳しく解説されていますので、わかりやすいです。
第3章とは逆に▲居飛車が千日手を避ける必要があるので、似た局面でも考え方がガラリと変わるのが面白いです。

第5章後手ゴキゲン中飛車・角交換編は冒頭でふれた「遠山流」の解説です。
5筋の交換ができた場合、居飛車が防ぐために6六歩を突いたら今度はそれをとがめる、といった手順が出てきます。
「遠山流」は既存の棋書で解説されていません、しかも▲丸山ワクチンには普通に対処しても一工夫で後手の勝率が良いため、
遠山流は勝率が良いにもかかわらず消えつつあります。
「これは自分で書くしかない」という遠山四段、見事に後世に「遠山流」を残しました(笑)。

そして最後第6章自戦記編でまとめです。

持久戦に絞って解説した本書ですが、プロでも指されているような手順・対策・定跡などがメインで、
中飛車の基本の出来ている方向けの棋書に仕上がっています。
解説自体は丁寧でわかりやすいのですが、
結局どういう方針で指せばいいの?という状況で終わっていることも多く、
読んで即勝ちにつながるような本ではありません。
アマでも高段者クラスの方が、じっくりと力をつけるための本なのかもしれません。

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紙の本角交換振り飛車 応用編

2009/07/16 22:19

手強い応用編

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

鈴木八段の浅川書房2作目が登場しました。

本書「角交換振り飛車」は基礎編・応用編に分かれており、
それぞれ▲7六歩△3四歩▲2六歩に対する次の手からなる5つの戦法が解説されます。
応用編はそれぞれ△9四歩、△5四歩(本では先後逆表記)の二戦法の解説と、
角交換振り飛車基礎編・応用編で紹介した戦法の自戦解説からなっています。

まずは△9四歩~△9五歩の第1章「端歩突き越し戦法」。
序盤早々から後手が端の位を取るという大胆な作戦で、持久戦になれば端が活きてきます。
基礎編の△8八角成、第3章スピード角交換戦法との大きな違いです。
そこで居飛車は急戦を仕掛けてくるのですが、「▲6五角問題」「三枚換え定跡」が強敵となります。
トッププロが大一番で指したくらい難解ですが、これらをクリアしないとこの戦法は指せません。
本書の解説が大きな助けになると思います。

次は△5四歩で第2章「ゴキゲン中飛車から角交換振り飛車へ」。
ゴキゲン中飛車に対する居飛車の作戦、即角交換、▲2四歩、丸山ワクチン、二枚銀の最新形を解説。
超急戦には触れてないなど、このページ数でゴキゲン中飛車を解説するのは無理なので、
思いきって「他の本を読んでください」とし、解説・自戦記を増やした方が良かったかもしれません。

本書では二枚銀は手強いので、▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲4八銀と二枚銀を狙ってきた場合には、
△8八角成とする角交換振り飛車が有効ではないかと考え、第2章の主役が登場します。
この戦法は佐藤永世棋聖が最初に指したもので、
先手の角打ちに対し△1二飛~△2二銀と見るからに愚形を一旦は取り、
形をほぐし持久戦になれば手持ちの角が活きるという狙いを持った作戦だそうです。
当然居飛車はそうはさせじと急戦を仕掛けてきます。
これもまた非常に難解な展開であり、指すにはかなり本書で研究する必要がありそうです。
なのでアマチュアはおとなしく二枚銀をさせた方が勝ちやすそうな気もします(笑)。

第3章は「角交換振り飛車と実戦」で鈴木八段の自戦解説。
奨励会三段との練習局や大和杯の自戦記は珍しく、面白いです。
スピード角交換戦法だけ実戦例がないのが少し寂しいです…。

本書の戦法は序盤が難しくなっています、応用編なので当然とも言えますが…。
基礎編に比べると、アマに「面白そう、指してみたい!」と思わせる戦法ではないかもしれません。
それでもこの二つの戦法は現在(2009年7月)他に定跡書がないので、
気になる方は「買い」だろうと思います。

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紙の本鈴木大介の将棋 中飛車編

2008/12/08 23:24

シリーズ第1作

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中飛車と石田流を得意とする鈴木八段の新シリーズです
第一巻は中飛車編で、先手中飛車と後手中飛車を解説しています

第1章は先手中飛車で初手▲5六歩から中飛車を目指します
後手居飛車の対策や方針は非常に豊富ですので
先手としては臨機応変な対応が必要です
8筋攻めに対する逆襲、居飛車穴熊に対する強襲、角交換型など
さらには相振り飛車まであります

しかしパターンが多すぎるための、ページ数の都合上かと思いますが
変化手順に解説不足があるのが不満です
具体例ですが居飛車穴熊対策で、角交換を避ける展開にされた時の説明がありません
この変化は類書や鈴木八段自身が専門誌に連載している講座では
説明されている重要な変化ですから
本書では解説がないというのはかなり残念です

第2章は後手中飛車でいわゆるゴキゲン中飛車を目指します
こちらは先手居飛車の出だし、対策ともかなり絞られています
さらに後手中飛車側も鈴木八段オススメの作戦のみ解説することで
最新の鈴木流の解説をコンパクトに上手くまとめることに成功しています
対二枚銀などはかなり詳しく、本書が初の作戦も出ています
ただし▲5八金超急戦はこの本だけでは対応できないと思いますし
本書のみでゴキゲン中飛車を指すというのは難しいでしょう


せっかくの新シリーズなのに、ちょっと残念です
おそらく先手中飛車で一冊、後手中飛車で一冊にしていれば
ページ数に余裕ができ解説が増え、素晴らしい出来になっていたのでは…

とはいえ既存の定跡をある程度知っている人ならば、「買い」だと思います

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紙の本高崎一生の最強向かい飛車

2010/08/27 21:42

指すチャンスは少ない?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

若手振り飛車党の高崎五段、以前若手四人による共著「新鋭振り飛車実戦集」で自戦記を書かれていますが、
高崎五段単独では初の棋書執筆になります。
高崎五段はプロに成り立ての頃は四間飛車党でしたが、
現在は力戦形の振り飛車も指されていて、本書の向飛車もそうです。

向かい飛車といえば、振り飛車の中では一番棋書が少ない戦法であり、
「最強向かい飛車」は先手番でのみ指せる戦法であり、角道を止めません。
初手から▲7六歩△8四歩▲5六歩△8五歩▲7七角△5四歩に対し、
▲8八飛で向かい飛車というオープニングです。
後手番でも指せる角道を止める向飛車とはかなり違うのでご注意を。

△5四歩には▲5八飛の中飛車も有力で、
鈴木八段の「パワー中飛車で攻めつぶす本」などが参考になります。
ちなみに▲7六歩△3四歩なら▲7五歩から石田流を、
▲7六歩△8四歩▲5六歩△3四歩なら▲5五歩から位取り中飛車を、
高崎五段は勧められています。
残念ながらアマ将棋では最強向かい飛車の出だしになることは少ない印象で、
石田流・位取り中飛車を指すことが多くなるかと思います。
▲5六歩△8四歩▲7六歩からの最強向かい飛車もありますが、
こちらも▲5六歩△3四歩から相振り飛車への誘導が多いでしょう。

本書では第1章・急戦編と第2章・持久戦編が定跡の解説ですが、
なんと現在急戦は居飛車側に細心の序盤作戦を採られると上手く行かないと序章で明かされます。
じゃあ本書の半分近くを占めている急戦編の解説って?という感じでしょうが(笑)、
プロ定跡の進化を見ていく流れになっており、6つの居飛車の対応を丁寧に調べてあります。
細かな形の違いで仕掛けが成立したり、全然ダメになったりするのは勉強になりますが、
即戦力を求めて本書の急戦編を読むと肩すかしを食うことになってしまいます。
必勝法の紹介ではなく研究の発表というイメージでしょうか。

というわけで「最強向かい飛車」は第2章・持久戦編がメインとなるのですが、
やはり角道を止めていないのが大きく、柔軟で面白い作戦が多いです。
相手が角道を止めれば8筋から動く、端歩を受ければ4筋へ飛車を転換する、居飛車が急戦をみせればそこで角道を止める、
挙げたのはあくまで一例ですが多彩さは伝わると思います。

第2章・第4節・緩急自在で解説されるのが「最強向かい飛車」の最新形のようです。
現代将棋の肝である「後回しできる手は後回しにする」策を、
居飛車が採ってきた場合、そこで改めて最初に見送った向かい飛車からの急戦に出るのが有効なようです。
第1章ともつながる面白い結論であり進化だと思います。

最後は第3章・実戦編でまとめです。本書の持久戦に該当する将棋が3局掲載されています。

急戦編は丁寧で細かい定跡解説、しかも結論は向飛車容易ではないという正直なもの。
持久戦編は狙う駒組や方針が明快で、居飛車の作戦ごとの分類がわかりやすく作られています。
高崎五段の気合の入った良書だと思います。
いくつか挙げた注意点により評価を星ひとつ下げましたが、本の出来は素晴らしいです。

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紙の本佐藤康光の石田流破り

2010/07/01 23:33

メインは実戦編

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

永世棋聖の資格保持者の佐藤康光先生、シリーズ2冊目は「石田流破り」でした。

佐藤先生は2009年第34期棋王戦第2局でこそ、
久保二冠の新手・新戦法(現在久保流や久保式と呼ばれている)に苦杯を喫しましたが、
それ以前の鈴木八段との棋聖戦や、リベンジマッチとなった久保二冠との第35期棋王戦でも石田流を粉砕しています。
しかも独創的な対策を用いた将棋、巧みな受け潰しでの勝局、繊細な攻撃手順による勝ち方、など名局揃いなのです。
かなり石田流に対して自信を持っておられるのではないでしょうか。
本著も前著同様にかなり実戦編のウェイトが高いつくりになっています。
解説されている8局中4局が久保二冠との対局ですので、そのクオリティの高さは想像できると思います

第1章は後手石田流がなぜ指されないかの解説、3・4・3戦法にと最新の▲2五歩早決め型が紹介されています。
なお3二飛戦法は解説されていません。

第2章は先手石田流破り・飛車先突き越し型・講座編、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の形です。
この形は先手としては避けようがなく、鈴木流、久保流、升田式の3つの戦法から選び、序盤から妥協の許されない戦いに突入します。
後手としても積極的に良さを狙えますが、もちろん簡単ではありません。
鈴木流も久保流も升田賞を受賞したほどの新手ですから難しいのは当然でしょうが。
上記の3つの戦法全てに対応できないと指せないですから、アマチュアではむしろ後手の方が怖いかもしれませんね。

鈴木流に対しては最新の△6二金~△4四歩という対策のみが解説されています。
ちなみに実戦編では△5四角という独創的な対策の将棋が掲載されていますが、有力なのかはよくわかりませんでした(笑)。
久保流に対しては、2010年7月時点では棋書はないこともあり(専門誌に久保二冠による講座が連載中です)、
力を入れていろいろと解説されています。

ただし升田式に関しては現在流行の▲7七銀型のしかも最新流行形のみ解説されているので、
先手の狙い筋や一応先手不満とされてはいる▲7七桂型、穴熊を目指すような持久戦の指し方に対しては、
他の棋書での勉強が必要になってくると思います。

第3章は先手石田流破り・飛車先突き越し型・実戦編で対鈴木流1局、対久保流2局、対升田式2局と充実しています。
対久保流では最初にふれました棋王戦第2局の将棋があるのですが、
専門誌や久保二冠の自戦記でも出なかった、先手の決め手が紹介されており、
敗局でも突きつめて考えるのは佐藤先生らしいなと感じました。

第4章は先手石田流破り・飛車先保留型・講座編、▲7六歩△3四歩▲7五歩に△4二玉や△8八角成とする指し方です。
△4二玉に対し先手はすぐに▲7八飛と回るのは無理気味なので▲6六歩から石田流本組を狙うことになります。
アマチュア間ではこちらの方が後手は自分の好きな作戦(銀冠・棒金・穴熊など)が選べるので、好まれているのではと思います。
ただし本書では有力とはいえ銀冠作戦のみが解説されていますので、他の作戦を採りたい方は不満でしょう。

また△8八角成は▲8八同飛の久保二冠との実戦がベースですので実戦編に近いつくりになっています。
▲8八同銀も有力なのですが軽く触れられているだけですので、本著のみで指すのは不安かと思われます。

第5章は先手石田流破り・飛車先保留型・実戦編なのですが、
何故か講座編で解説されていない右四間飛車や△7二飛戦法の将棋が載っています(笑)。
指すためにはこれらも他の棋書で研究が必要になると思います…。

全体の感想ですが、何というか中途半端な印象を受けてしまいました。
久保流の解説とその実戦編こそかなり丁寧に書かれていますが、
鈴木流は講座も少なめで最新対策の実戦譜もありませんし、
升田式や飛車先保留型については、得意戦法とするには分量がかなり少ないと感じました。
石田流に詳しい方が最新定跡を勉強する、自戦記のレベルが高いので棋譜並べに活用する、
本著はそういった読み方で楽しむ本だと思います。

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紙の本佐藤康光の力戦振り飛車

2010/03/06 21:31

意表の第1巻

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

永世棋聖の資格を持つ佐藤康光先生、
近年も詰将棋、自戦記、手筋、大局観、入門書と、
多岐に出版されており、将棋ファンを愛されていて著作意欲にあふれる先生です。
今回は久々の定跡書、しかもシリーズとして刊行されるということで期待大です。

しかしながら本格派居飛車党の代表格だった佐藤先生が力戦振り飛車の本を書かれるとは…、
10年前なら御本人すら想像されなかったのではないでしょうか(笑)。

本書は「1筋位取り力戦振り飛車」と「力戦向かい飛車穴熊」の2つの先手番の戦法を扱っています。
いずれの戦法も定跡本は無く、そもそも定跡自体がまだまだ出来ていない新しい戦法です。
アマで指している人は少なく、自分の土俵・ペースに引きずり込みやすい戦法だと思います。

「1筋位取り力戦振り飛車」は後手番での「端歩突き越し戦法」(後手なので9筋)に近い点があり、
そちらは鈴木八段の「角交換振り飛車 応用編」という定跡書に紹介されています。
佐藤先生は「△端歩突き越し戦法」は後手で端に2手費やすのでリスクが大きいこと、
先手での「▲1筋位取り力戦振り飛車」に、より積極的な意味を見出せることから本戦法を推されています。

この戦法は初手から▲7六歩△8四歩▲1六歩△3四歩▲1五歩といきなり端の位を取ります。
また▲1六歩に△8五歩なら以下▲7七角△3四歩▲8八飛と位にこだわらず指すそうです。
後手としては端の位を取られて、おとなしく指していたら悪くなってしまいます。
そこで序盤から暴れてくる乱戦の変化が多いのですが、終盤まで踏み込んだ順も解説されています。

ただ、本書は講座編よりも実戦編に力が入れられており、
(「1筋位取り力戦振り飛車」は第1章・講座編が約40ページ、第2章・実戦編が約80ページで5局紹介)
重要な変化手順であっても実戦編でのみ紹介されていたりします。
その点は「定跡書」として考えると、プラスとみるかマイナスとみるかは意見が分かれそうです。
もちろん佐藤九段VSトップクラス棋士の棋譜なので、
自戦記としては最高クラスではあります。

第3章・講座編、第4章・実戦編で解説の「力戦向かい飛車穴熊」も、
▲7六歩△8四歩▲7七角△3四歩▲8八飛という変則的な指し手ですが、
「1筋位取り力戦振り飛車」よりは普通の出だしです。

後手からもいきなり暴れるような順はありませんが、
今度は先手がどこに「良さ」を求めるかが大事になります。
本戦法は先手が穴熊を志向することもあり持久戦が中心のため、
講座はさらに短く、やはり実戦編がメインです。
この戦法に関しては定跡より感覚を掴んでほしいという佐藤流のつくりが
プラスに出ていると思います。

いわゆるメジャー戦法ではないうえに、先手番での突っ張った序盤の戦法なので、
万人にオススメではないかもしれませんが、読んで面白い戦法だったのは保障します。
第2巻がどういう内容になるのか楽しみです。

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