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さーにんさんのレビュー一覧

投稿者:さーにん

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紙の本いまここに在ることの恥

2008/09/18 13:16

耳に痛い一冊

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルの「いまここに在る恥」とは どのようなものでしょうか。

本書冒頭に収められたエッセイ風の書き下ろし作品「灼熱の広場にて」で筆者は まず自身の立ち位置から来る行動に対する「恥」を晒しています。
それは、地獄絵図のような難民キャンプで、取材し報道するジャーナリストとしての使命は果たしても、同じ人間として苦しむ人に自らの手をさしのべようとしなかった苦い記憶の掘り起こしです。

ひとことで言えば、無責任な傍観者であることの恥ずかしさ。 
痛める心も自己満足にすぎないと自覚する恥でしょうか。

次に筆者の目は、時代の空気を読んだり追従することにばかり熱心で、報道の精神を忘れたかのような今の日本のマスコミの恥ずかしさに向けられています。
圧倒的な支持率を誇った小泉政権下では、イラク派兵問題や付随して巻き起こった憲法改正問題という国家の一大事にさえ、首相のコメントに面と向かって異論や質問を差し挟む政治記者がいなかったといいます。

このように時代の空気におもねるマスコミの姿勢への筆者の批判は激烈です。
しかしその批判は、マスコミが報道した情報のみを受け取り、ときには疑いもせず事実だと信じ込んでしまう浅薄な私達の「恥ずかしさ」にも向けられています。

そしてさらに筆者の視線は、時代の空気に迎合した報道をするジャーナリズムと与えられた情報をまるごと受け取る国民で構成された国として日本全体を捉えています。

確固とした思想を持たず実体のない空気に流される日本の現状は、ファシズムによる支配を受けているのとなんら変わらないと指摘しています。


傍観者であること。
多勢の意見に流されたり、まわりと同じである安心感に浸って まともに自分の頭で物事を考えられないこと。


筆者が自らを傷つけ晒した「恥ずかしさ」は、私達の身の内にもあり、著者が怒りを持って指摘した日本の現状は、私達ひとりひとりが作り出し私達ひとりひとりを覆っています。

「恥」は、その中に埋没してしまえば感じなくなってしまうが、人が人である以上、刹那に頭をかすめ表面に浮かび上がってくる 「恥」 の感覚があるのではないだろうか・・ と、著者は私達に問いかけています。

「いまここに在ることの恥」。
たしかにわたし自身の内面にも潜んでいる恥ずかしさだと思い当たるだけに、非常に耳の痛い一冊でありました。
しかし、耳の痛い言葉だけに目をそむけてはいけないと思うし、多くの人に読んで考えてほしい とも思います。

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