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投稿者:ヒヨコ
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日本人はなぜ謝りつづけるのか 日英〈戦後和解〉の失敗に学ぶ
2008/09/18 18:54
日本人はなぜ謝りつづけるのか
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本書は英国人元捕虜をめぐる問題を扱っているが、今の日本で生じている問題や、私たちの「人間」に対する意識や価値観の危うさを、感じずにはおれない。
昨年九月、教科書検定意見撤回を求め、沖縄の人びとが立ち上がった。翌日の地元紙の一面には大会の写真が大きく掲載され、かれらの届かなかった叫びや怒りが、こちらに強く伝わってきた。
本書を読み進めていくうちに、私には、その時の沖縄の人びとと英国人元捕虜が重なってみえた。かれらがここにいるという事実は、無視されているようだ。その存在をしっかり受け止められないまま、かれらの問題も流行もののようにもてはやされ、やがて忘れられていく。むしろ、忘れ去られようとしている。
だが、日本と英国では、国民の認識に違いがある。最近の日本で「戦争」というと、沖縄での問題のように、事実そのものがかき消されたり、歪められたりする現状にある。一方で、本書によれば、英国では捕虜問題は多くの国民に認知されており、これまでの日本の「お詫び」に違和感を覚え、それを表現している。日本は戦争から目をそらしており、十分に議論できる環境ではないのだ。私はごく普通に学生生活を送っている身だが、私たち若い世代も戦争に無関心なままでいるしかなく、漠然と不安が募っていくばかりだ。ましてや元捕虜をはじめとする英国の国民が、安心して日本の言葉を受け容れられないのも当然な気がする。
「捕虜問題」とはいうが、結局、当事者である英国人元捕虜は、議論の渦中では「いていないような存在」だ。かれらが求めているのは、その生が終わるまで消えることのない、個々人が負っている傷跡や苦しみ、怒り、痛みなどへの気づきだけではない。かれらがそれを抱えて生き、そして今ここに生きていることへの気づきだ。近年、いじめや暴行事件などが報道されると、「相手の側にも落ち度がある」といった意見が聞かれるが、相手を自身と同じ生身の人だと感じられない、他者への想像力に欠けている点では、捕虜問題と同じだ。この点においては、現代の日本に生きる私たちの、「人間」に対する意識や価値観の危うさを露呈している。
戦争を体験した世代に残された時間は、今この瞬間にも、確実に少なくなってきている。「戦争」について、私たちの置かれている現状に目を向けながら、本書を通じて、今一度考えてみるのはどうだろうか。
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