midoさんのレビュー一覧
投稿者:mido
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2009/02/06 12:18
こんな本を待っていました
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町の本屋さんや、近くの図書館で、「読める本」を見つけられない子どもたちが居ます。
私は、盲学校の図書館司書をしています。見えない・見えにくいと言っても、見え方は一人ひとり違います。盲学校の図書館には、点字版、録音版、拡大文字の本の他に、手で読む絵本(様々な素材を使って、手で触って、本の内容を分かるように工夫されています)等があります。殆どがボランティアグループの製作です。もちろん、出版されている「普通の本」も有りますが、これは1/10程度です。
以前、ろう学校の図書館にも居りました。ろう学校の子ども達も、聞こえ方は様々で、補聴器を付けて普通に音声で日本語を話す子ども達も居りましたが、手話を母国語とする子ども達は、手話は、書き言葉としての日本語と全く違う文法ですので、本を読むのが苦手でした。
盲学校にも、ろう学校にも、様々な障害の有るお子さんが在籍しています。長い文章や、難しい言い回しが苦手、じっと本の前に向かっていられ居ない、そばで読んだり、ページをめくるなどの支援が必要・・・そんなお子さんも居ます。
去年、高等部の生徒達が、北海道へ修学旅行へ行った時のことです。一人ひとりが「何を調べるか」を調べに図書館へやってきました。修学旅行用の北海道の本は何冊かあります。観光案内書もあります。けれど、学年相当の教科学習が困難な生徒達も一緒です。彼等達が読めるように「わかりやすく読みやすく書かれた本」は有りません。仕方なしに、児童書の棚から数冊抜き出して、地理・歴史等の書架に差し込んでおきました。ところが、本の表題の「小学生の」という文字を見付けて「これは小学生用だからダメ」と言われてしまいました。
1月の「図書館ニュース」で「赤いハイヒール」を紹介しました。さっそく高等部の生徒さん、小学部のお母さん、4月に特別支援学校への異動を希望されている先生が借りに来ました。
高等部の生徒さんが返却の際、バーコードリーダーを手にしながら「僕、一人で読んだんだよ。アンネリーは、やぼったいサンダルを取り替えに行ったんだよ。赤いハイヒールに替えたんだよ。ボーイフレンドに会えたんだよ」と言いました。今の子どもたちは、パソコンを何の説明を受けずに、ゲーム感覚で利用します。文字の大きさ、音量、速さを事も無げに、自分の都合の良いように替えてしまいます。
小学部のお母さんは、司書室に居た私に、わざわざ「日本でも国の補助で、LLブックがたくさん出版されると良いです。卒業しても、地域の図書館でLLブックを借りられると良いです」と言いに来ました。
4月に異動する先生には、特別支援学校の子ども達のために、「赤いハイヒール」をプレゼントしました。
「赤いハイヒール」は、私が接してきた子どもたちの全員が読める本です。町の本屋さんや、近くの図書館に「やさしく書かれた本」が普通に有って欲しいです。もし図書館が積極的に購入したら、著者も出版社も増えるのではないでしょうか。身の回りに読める本がないと、本から遠ざかってしまいます。世界が広がりません。しかも、自分では「こんな本を読みたい」と自己主張が困難な人達が大勢います。
「赤いハイヒール」が、そしてたくさんのLLブックが日本中にあふれることを願っています。
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