想井兼人さんのレビュー一覧
投稿者:想井兼人
紙の本タルト・タタンの夢
2017/01/08 19:32
一気読み
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久しぶりの一気読み。
舞台は小さなビストロ、パ・マル。ここで大事件が発生、することはない。もちろんn推理小説につきものの殺人事件も。
ここを訪れる客は何かしら抱えている。抱えながら変わり者のシェフ三船の生み出すフレンチを楽しむ。そんな客の抱える問題を、わずかな糸口から読み解いていくパ・マルの面々。そして、舌鼓にとどまらない心の解放も成し遂げていく。
殺人事件だけが推理小説ではないことを強く示してくれた1冊。
紙の本歴史を哲学する
2009/03/13 00:04
歴史ってなに?
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小・中・高校の時の歴史は、とある出来事について、その内容と登場人物、そして年号を覚えるというだけのもの。暗記物と揶揄されていた。それを哲学するとはどういうことだろう?
本書は大学の講義という雰囲気で構成されていきます。集中講義のように一日単位で章展開していき、徐々に深みへと誘われていくような感覚で読み進めることができる構成です。
さて、歴史とは「過去に起こった出来事」です。それは動かない事実のはず。筆者はそれを「出来事としての歴史」とし、「記述としての歴史」と対比させています。出来事として、過去に確実に起こったことではあるが、歴史家が抽出し記述することで初めて「歴史」になるという。それは過去に意味を付与することと言い換えることができます。
歴史は過去の出来事です。ただし、現在の視点があるからこそ生きてくる出来事です。だからこそ歴史は転換していきます。
「これから起こる未来の出来事をも勘案するなるば、このような意味生成の過程は完結することはありません。その限りで、歴史は絶えず語り直されるものであり、出来事は新たな意味を重層的に身に纏うもの」で、「歴史記述は「修正」や「改訂」を免れることはでき」ない性質を持ちます。
このような歴史の性質は、それを学ぶことの重要性を我々に教えてくれます。
歴史は決して過去の出来事に留まるものではなく、時間の経過、つまり我々の見方の変化に伴って解釈を変えていくものだからです。我々の見方は、社会とは無関係に形成されるものではありません。あくまでその時々の社会から強い影響(規制)を受けているものです。そういう意味では、歴史は現代の鏡ということできます。決して「暗記科目」として忘却するべきでものではありません。
2009/02/23 21:44
宇宙への実直な思い
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2009年2月12日、機能停止しているロシアの軍事通信衛星コスモス2251号とイリジウム社運用の通信衛星イリジウム33号が衝突した。そして、多くの宇宙ゴミが発生した。宇宙ゴミは衛星軌道上に数千~数万個周回している。いずれも宇宙開発がもたらした負の遺産だ。この事実は、宇宙開発に対してマイナスのイメージを抱かせる。
さて、前記ニュースに触れた時、宇宙飛行士の宇宙ゴミに対する思いを知りたくなり、野口聡一氏の『スィート・スィート・ホーム』を紐解いた。
本書は野口氏の宇宙飛行士という狭き門を勝ち抜き、厳しい訓練に打ち勝って、宇宙空間に身を置いた体験記である。地球を慈しむような思い、太陽の雄大な力などインタヴューで語られることから、シャトルで使用する道具開発の苦労など細かなことまで記されていて興味深い内容である。特に宇宙飛行士として選ばれながらも宇宙には飛び立てていない段階の歯がゆい思いや、さらに2001年2月1日のスペースシャトル「コロンビア号」の事故により衝撃を受けたまま飛散した残骸を山中に拾いにいったエピソードなど、野口氏の気持ちが実直に記されている。重力から解放された身体内では、血液は頭に向かう。頭に血が上り、鼻が詰まったような状態になるのだそうだ。嗅覚が鈍くなり、味覚もまた鈍くなる。そして、宇宙飛行士はスパイシーな食べ物に惹かれる。練りワサビやカレーなど、外国人の飛行士にも人気だという。宇宙での夜明けの時に感じる太陽の力など雄大な世界も興味深いが、食生活などは身近なエピソードとして興味深い。
また、本書は大橋マキ氏による宇宙飛行士を支える技術者のインタヴューも掲載されていた。このインタヴュー中に一度だけ宇宙ゴミについて触れられていた。ただ、宇宙ゴミが地上約400キロの軌道上に建設中の「有人宇宙研究所」に対する衝突の危険性について触れられているだけだ。野口氏が宇宙ゴミについて触れることはなかった。
宇宙開発の負の遺産について、開発側の意見を窺うという当初の目的は大外れとなってしまった。今も地球の周りを数千から数万個の宇宙ゴミが猛スピードで浮遊している。望遠鏡では認めることができないスペースデブリ。宇宙開発という夢だけでは許されない宇宙汚染。それでも多くの人たちが命がけで宇宙へとチャレンジしている。その魅力を野口氏は伝えてくれた。宇宙飛行士未満の時にやるせない気持ちを抱いていた氏だからこそ、実直な語り口になったのであろう。その語り口が本書の最大の魅力なのかもしれない。
紙の本ミュシャ展 国立新美術館開館10周年・チェコ文化年事業
2017/05/14 07:47
地方の悲しみ
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大規模展覧会は東京中心と決まっている。
人口と消費を考えると、それは致し方ない。
しかし、やはり地方に住む者としては悲しみ、妬みを覚える。
特に国立の美術館・博物館の催しの場合、その気持ちは大きく膨らむ。
ただ、昨今、特別展の図録を市販するようになった。
以前からそうなのかもしれないが、個人的にはここ数年のような気がしている。
これだけでも楽しもう。
悲しさはある、虚しさもある。それでも楽しもう。
ミュシャも様々な図書が刊行されているが、いま東京では本物があるということを意識しつつ、図録を楽しもう。
2021/12/14 20:46
毎日が発見
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毎日何かしらの決め事があります。
暦の大きな括りとささやかなイベントを毎日紹介する1冊。
小学生のころ、給食の時間にその日の出来事を放送委員の生徒が放送していたけど、そんな取り組みにぴったりの1冊です。
紙の本書評の仕事
2020/11/07 17:46
書評執筆という仕事
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本を選択する際、様々な媒体に形成された書評は大いに参考になる。ただ、その執筆は大学の先生や研究者などによる副業ばかりと思っていた。最近ではウェブサイトやブログに執筆する人たちも増えている。本書はプロの書評家による書評家の仕事をまとめたもの。文章術だけではなく、時間の使い方や本の選択などにも触れている。
紙の本景観考古学の方法と実践
2018/10/17 20:36
これも考古学・・・
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考古学といえば、土を掘って、土器のかけらを取り出して、それをくっつけて元に戻して、研究を行い、最後には博物館入りする、というイメージだった。
でも、違うアプローチもあるようだ。
本書ではデジタル機器を駆使しての新たな考古学の方法論を示し、それの実践事例と研究成果を提示している。
こういう考古学もあるのかと驚いた。
今後、この方法論がどのように展開していくのか、興味深い。
紙の本ミニ・ビオトープでメダカを飼おう! ビオトープで楽しむ小さな生き物の飼育
2016/12/25 09:07
どうかな?
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メダカを飼おうと思った。それで、本書を開いてみた。
本書にはさまざまなメダカの飼い方が、具体例を写真で示されながら解説されている。
一軒家に住まわない我が家にとって、メダカの飼い方は限られてくる。
ベランダで飼う手もある。
しかし、それもなかなか面倒くさうところもある。
本書で紹介されていたガラスボールのミニ・ビオトープ、これはいける気がした。
また、本書にはさまざまな水草や水槽のメンテナンスの方法も紹介されている。
ビオトープ手始めとして、本書は便利な1冊だ
2021/12/30 15:15
難しい・・・
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東アジアの思想原理である朱子学の世界観と基本概念を丁寧に解説した『朱子学入門』に続編とのこと。
決して概説書とは思えなかったけれど、今まで教科書の上で字面を眺めるしかなかった思想に少しでも触れられたところはよかった。
概説書ということであったが、それでも難しかった。
紙の本FREE,FLAT,FUN これからの僕たちに必要なマインド
2021/12/05 16:23
情勢は常に変わるのだ
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社会情勢は常に変転する。
新型コロナウイルスの世界的流行は、そのことを嫌というほど教えてくれた。
コロコロ変わる情勢のなか、私たちに問われる資質を本書は教えてくれる。
「FREE/フリー」 常識から解放され、ひとりの人間として自由に生きる
「FLAT/フラット」 一人ひとりが異なる意思を持つリスペクトされる存在である
「FUN/ファン」 一人ひとりが意思を決めて生きられれば、楽しく幸せな社会になる
ただ、しっかりと社会情勢と向き合ったうえで、自身を持たなければいけないことは言うまでもない。
常識から解放されるのは良いが、社会情勢を無視してはいけない。
皆がリスペクトされる存在ではあるが、我がままを貫いてはいけない。
皆が意思を決めていることはよいが、やはり、我がままではいけない。
本書のような人生訓を説く本は、社会情勢と絡めながら刷新していく。
でも、読み解く価値が含まれていることは間違いない。
新たな時代を生き残るマインドはどのようなものか、本書から学べるところは、今でも多いと思う。
2021/07/11 18:02
食べられなくても・・・
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銀座久兵衛といえば、言わずもがなの名店。
その久兵衛で実践されている技を豊富な写真をもとに紹介。
魚をさばくところから、調理方法までわかりやすく教えてくれますが、それが実践できるかどうかは読者次第。
たくさんの魚が紹介されており、それを見るだけでも楽しい1冊だ。
紙の本藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方
2021/07/05 16:10
考え直す機会
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会社のなかで、年功序列で決まった給料をもらう働き方はいつまで続くのだろうか。
コロナ禍でリモートワークが浮上してきたが、それを継続できている企業はどれほどあるだろう。
働き方、そしてその考え方を変えることは相当に難しいことのようだ。
でも、じっくり考える機会は設けるようにしたい。
読書で考えることも大切で、本書はそのためにも役立つ1冊だ。
本書は、自分の仕事の時間給を割り出すことも大切さを説く。
自分の仕事っぷりの実際を把握し、その先を見据えることの重要性を説いているのだろう。
自己肯定感を醸造することも大切で、企業戦士を叱咤激励するようなやり方は考え直さなければならないはず。
歯車に終始しない、出る杭になるにはどうするか。
しっかり考えるときが来ているのだろう。
紙の本役職定年
2021/07/05 16:02
人生100年時代をいかに生き抜くか
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人生100年時代、定年とされていた年齢も徐々に高年齢化するものと予測されます。
そうすると、役職についている人材がいつまでも役職に居座り、その下の世代は役職付かないまま長く働くことになりかねない。
それは社会を円滑に動かすうえで問題になるはずです。
いや、そもそも年齢を重要基準とすることがよろしくないのでしょう。
新卒者に雇用の扉を開くことも、新卒者という“資格”の幅を広げるという愚な考え方も見直すべきなのではないか。
働く能力に応じた仕事を肩書関係なく実行できる体制ができれば、その企業は間違いなく伸びるに違いありません。
年齢と働きについて考え直させる1冊と言えるでしょう。
2021/06/19 17:56
詩人夢二、画家夢二
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美人画の作り手として知られる竹久夢二について書いた1冊。
若いころは詩人だったそうだ。
そのたゆまない好奇心が詩と画という世界に夢二を導いたのだろう。
画と詩で夢二の生きざまをまとめあげており、彼の人生というより、彼の人生観を感じることができる仕上がりとなっていた。
紙の本地域の未来・自伐林業で定住化を図る 技術、経営、継承、仕事術を学ぶ旅
2021/02/23 16:52
自伐林業という方法
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「自伐型」林業という形態があるそうだ。
それは、自分では山林を保有せずに、それを誰かから借りたり、受託あるいは請負で実施する林業スタイルとのこと。
広大な山林を所有せずとも、その気になれば誰もが参入できる方法のように思う。
本書はその取っ掛かりを与えてくれる1冊だ。