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祖師谷仁さんのレビュー一覧

投稿者:祖師谷仁

5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本

口述筆記とは思えない素晴らしさ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 素晴らしい本だ。この本はあとがきにあるとおり、高島氏がしゃべり、別の人がそれを筆記したものだ。口述筆記の本は読みやすい代わりに、中身が薄くなり質が落ちるのがふつうだ。しかしこの本は少しも落ちていない。口述筆記だと正直に書いていなかったら私は高島氏自身が書いたものだと思っていただろう。高島氏が目が痛み原稿が書けなくなったという事情によるものだから、他の粗製濫造本とは時間のかけ方が違うのだ。

 高島氏が文章家として取り上げたのは新井白石、本居宣長、森鴎外、内藤湖南、夏名漱石、幸田露伴、津田左右吉、柳田國男、寺田寅彦、斎藤茂吉の十人。新井白石は『お言葉ですが』の十一巻と重複する部分があるが、やはり面白い。本居宣長では『玉勝間』こそが最も面白いとか、夏目漱石の『坊っちゃん』は探偵小説であり、恋愛小説でもあるといった指摘など、目の覚めるような指摘が多い。戦前は右翼に攻撃され、戦後は左翼に攻撃される津田左右吉の不器用な生き方に自らを重ね合わせるところも好もしい。これらの作品をみんな読んでみたくなった。

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紙の本

紙の本小さな手袋

2009/03/16 23:00

穏やかなユーモア漂う大傑作

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 こんな本を一冊書けたらいつ死んでも悔いはないだろう、と思えるほどの大傑作。だが「大傑作」なんて大げさな言葉はこの本には似合わない。それほど、淡々とした、それでいてユーモアのある調子で書かれたエッセイ集なのだ。坪内祐三はこの本について、ポストモダンといった流行の文章に悪酔いしたあとで、行き当たりばったりに開いた二、三篇を読んだ、と書いていた。駄作は一篇もなく、そういう読み方がこの本には似合う。

 好きなフレーズだらけだが、とりわけ最後の一文に好きなものが多い。「気が附いたら、ちぇっ、登高なんて笑わせるない、と呟いていて、こうなるともう梯子酒は避けられないのである」(「登高」)「犬の挨拶に答えて頭を撫てやったら、お向いの奥さんが顔を出して、チエスがいつもお世話になりますと云うのである。これには何と挨拶していいか判らない」(「犬の話」)「手洗から戻って来たら、痩せた女は別の客と何やら愉しそうに話合っていた」(「小さな手袋」)。ただ一つの欠点を挙げれば、小澤書店の元版は正字・歴史的仮名遣いの美しい本だったのに、文庫化で新字新かなになり、版面の美しさが失われたことだ。本当に、このエッセイの素晴らしさを語る言葉が見つからないのが悔しい。

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紙の本

紙の本この世には二種類の人間がいる

2009/03/16 23:16

中野翠か林真理子か

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人間は本当はもっともっと多彩だし曖昧なはずだ、という中野翠があえて人間をさまざまな切り口から二種類に分類してみた。たいてい中野さんはその片方を選び、「私はこっちのタイプだ」と意識しながら書いている。

 例えば「それは大通りを探す人と路地を探す人だ」のくだり。裏通りを好む中野さんに対し、当時の女の友人はしきりと大通りを歩きたがったという。本文では匿名となっているが、過去の著書『東京風船日記』(新潮文庫)を参照すればこれが林真理子を指すことは明白だ。

 本書の大半について、林真理子は中野さんと逆の選択肢を選びそうな気がする。私は中野さんに意見に共感するところが多すぎて、自分の考えが相対化できず物足りない。次は林真理子による『この世には二種類の人間がいる』が読みたい。

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紙の本

『反貧困』の貧しい論理

15人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 絶賛ばかりの本だからあえて厳しめの書評を書いておきたい。たしかに第一章のある夫婦のリポートなどには迫力があり、いい加減に作られた本ではないことはよくわかる。ただ、湯浅氏はやっぱり法学部の人だ。彼は憲法や労働基準法、生活保護法を守らない社会を告発する。守れば社会は良くなると素朴に信じているのだ。NPOの活動をやって個別の案件に携わっている限りはそれが正しい戦法だろう。だが彼が為政者になったらどうか。この本をこれからのあるべき社会の構想として読むとかなりお粗末ではないか。

 最低賃金を大幅に引き上げれば貧困層は救われるか。その分、企業は採用を抑制し、なるべく事業を海外に移して国内の労働需要はさらに減る。結果として失業者は増える。失業給付を充実させると、その分税金や保険料負担が増え、国民の不満はさらに高まる。制度変更が狙った意図とまったく異なった方向に物事が進むというのが経済学の知見である。本書にはこういう視点がない。湯浅氏は経済学を学んだことがまったくないのだろう。彼が善意であるだけに余計に始末が悪い。

 湯浅氏は貧困層を連帯させて政府や企業に分配を増やせと要求する運動を進めているようだ。ただ労働分配率はもともと不況期には上昇する傾向があり、今回の不況でもそれは同じだ。そんなときに労働分配率を無理に増やせば景気回復への障害となる。貧困層が存在することは紛れもない事実(それはもちろん湯浅氏の言う通り自己責任ではない)で解決すべき問題であることも間違いない。ただ湯浅氏の示すような旧態依然の階級闘争で解決できる問題でないはずだ。

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紙の本

年金は少しも安心ではない

18人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 細野氏の本業は予備校の講師であり、わかりやすく教えるのが仕事だ。本人も認めるように年金問題のプロではない。理解が浅ければおかしな理屈をわかりやすく教えることになってしまう。この本ではこういう細野氏の弱みが露骨に出ており、厚労省の御用学者に籠絡されてしまった。

 厚生省の時代にまとめられた1999年の年金白書では、平成元(1989)年生まれの厚生年金加入者が支払った額のわずか65%しか年金をもらえないとの試算が示されている。つまり役所自身が若い世代の「支払い損」を認めていたのだ。ところがこの10年余りの間、厚労省は徹底的に不誠実になり、さまざまな姑息な手段を弄して真実を隠蔽し、若い世代にも年金は得であるような詭弁を弄するようになった。2004年にマクロ経済スライドと称する給付カットの導入などが実施されたが、若い世代が依然として大幅な損をすることは何も変わっていない。

 本書ではこうした厚労省の公式見解に沿った説明しかないうえに、未納者が支払うべき国民年金の保険料を厚生年金が実質的に肩代わりしていることについてもなんの記述もない。こんな本を読んで「年金は大丈夫なんだ」と若い読者が思ってしまうのが心配だ。

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