カンパネラさんのレビュー一覧
投稿者:カンパネラ
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本ドンと来い!大恐慌
2009/03/17 12:12
「資本主義論」として解析する
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
藤井厳喜の最新作は、金融恐慌という現在進行形の問題の解説という形態を取りながら、その最も深いところにおいては、「資本主義論」、あるいは「資本主義構造論」として読む事、また、解析する事ができよう。
私は時事解説的な部分よりも、寧ろ、本書中で、さりげなく述べられている「資本主義構造論」の方に知的好奇心を刺激された。
思えば、金融恐慌とは、まさに資本主義の内奥の本質そのものから発した現象であろう。
であるとすれば、個々の事象に拘るのではなく、「資本主義本質論」こそが今、問われなければならないだろう。
その視点から、読書界を見渡すと、成果は存外に寂しいものでしかない。
マルクスを借りるのでもなく、構造主義に依拠するのでもなく、日常的な言語で資本主義構造論を展開する藤井の筆致は中々に見事である。
「資本主義とは、資本の自己増殖活動である」
藤井は、こうかつての著作『何も分かっていない日本人』の中で述べている。
マルクス主義者でなくして、この認識を持っているとは、実に珍しいとはいえよう。
資本主義経済が、即ち「資本の自己増殖活動」であるならば、修正資本主義という形で、如何にそれを抑制しようとも、ブーム&バスト(バブルの発生と崩壊)が必然であるばかりではなく、終には、資本主義自体の自壊も、必然ではないのか?
藤井は、この点については、十分に論じつくしてはいない。
しかし、こういう批判は寧ろ、無いものねだりであろう。
藤井は、現代日本においては珍しい物真似をしない独創的な思索家である。
未だ思想家とは言えないが、思想家たらんとしている、思索家であろう。
彼には是非、本格的な「資本主義構造論」を執筆してもらいたい。
それが、彼にとっての重要な試金石となるだろう。
国際時事問題の解説をする人物は多いので、そちらの仕事は他人に任せて、氏にはそういったより深い思索に専念して欲しいと思う。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |