yutsuさんのレビュー一覧
投稿者:yutsu
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絆 ニューヨーク1897
2009/06/16 01:14
タイム・トラベル・ミステリー。
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
過去で生活をすることになったダグラス。過去と現在の比較を違和感なく出来るのがすごいです。
今の時代に、例えばホームズを読んで、え、そんなの調べればすぐわかるんじゃないの、という感覚を持つことがあるのですが、そんな知識を持ってその時代に行くみたいな感じで。鑑識課員であるダグラスが19世紀末へ行き、時代と知識を比較しつつ、鮮やかに(本人は自信満々というわけでなくとも、おそらく周りから見れば鮮やかでしょう…)その時代では思いもつかないようなことを判明させていきます。しかし魔法使いのように、ではなくて、警察がそれを目指す過渡期というのもまたオツ。
自分がこの時代に来たのは、高祖父の親友であったらしいルイス巡査を殉職させないためではないか、と考えたダグラスは、殺人事件の捜査に協力しつつ(観光もしつつ/笑)、ルイスが死ぬ ことになった火事を防ごうと行動を起こしますが、それは意外なものへと繋がり…。時間を経て、高祖父からダグラスへと通 じるものもあり、ストンと気持ちのいい終わりでした。
(俺の知っている歴史──)
ふと疑問が浮かぶ。ダグラスが知っている歴史は、「時間旅行者の誰も干渉しなかった歴史」なのだろうか? 誰かが干渉した末に、大統領になるべき者が幼少時に殺され、他の者が大統領になった歴史ではないのか?
(これも悪魔の証明か……)
時間旅行者の誰も干渉しなかった歴史だとは証明できない。またその逆も証明できない。可能性だけはあるが、考えても無駄 だ。ダグラスがこの十九世紀末にいること自体が、理論を越えているのだから。
カモメに飛ぶことを教えた猫
2010/06/05 21:13
猫たちは、カモメに飛ぶことを教えることができるのか。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
日光浴をしていたふとった黒猫ゾルバのところに、原油にまみれ力尽きたカモメが落ちてきた。弱ったカモメはゾルバにみっつの頼みごとをする。
ゾルバは雄猫なのにママになり、育てると約束したのは食べ物にもなりうる鳥。そして飛べない猫がカモメに飛び方を教えるために、タブーを破って人間に力を借りる。
原油で海を汚したのは人間という生き物。いちばんはじめの救いの言葉はなんともしらじらしくも見えるのだけど。
たくさんの壁が、壁として存在はしていても、それは塞ぐものではないのだと、意識次第では簡単に跨ぎ越すことは可能なのだと、その広い度量 で猫たちは教えてくれる。他のものの立場や尊厳を尊ぶことすら。
カモメとの約束でひなに飛ぶことを教えなければならないのに、猫に育てられたひなは「わたしは猫がいい。飛びたくない」と言い出す。ゾルバたちにあんなふうに愛されているなら、そう言い出したフォルトゥナータの気持ちがわからないとは言えない。チンパンジーにいじめられ、泣きながら「わたしをふとらせて食べるつもりなの?」と問うフォルトゥナータに真剣に語るゾルバが、愛しい。
猫たちは、カモメに飛ぶことを教えることができるのか。
最後の詩人のためいきと共に吐かれた言葉がたまらなく好き。
牧かほりさんのイラストもキュート。ひなが猫たちに囲まれて、きゅーっと伸び上がっているところとか、ゾルバの背中でくったりとくつろいでいるところは特に。幸せ。
猫に頼られるような詩人になりたいと、本気で思いました。
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