朋末順さんのレビュー一覧
投稿者:朋末順
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太宰府天満宮の定遠館 遠の朝廷から日清戦争まで
2009/09/02 18:36
歴史書なのにヘルマン・ヘッセのような味わい
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今年の夏休みに生まれて初めて大宰府天満宮を訪れた。この大宰府天満宮に「定遠館」なる建物があることはまったく知らなかった。地元出身の著者も知らなかったそうなので、東京からの旅行者である私が知らなくても仕方あるまい。
夏休みの旅行から戻り、蒸し暑いさなかの東京でこの本を手にした。旅行前に読んでおくべきだったと悔やまれた。名所大宰府が、俄然深みを帯びて見えてくる。こういう本を読んでから旅をするのが、本当に贅沢な旅なのかもしれない。
定遠館を軸に、万葉の時代から日清・日露の時代まで、タイムマシンに乗ったかのように話は縦横無尽に移動する。それなのに目まぐるしい感じはしない。巻末の略歴を見ると著者はサラリーマン生活をしながらこの本を書いたようだが、相当深い教養の持主なのではないだろうか。その教養に支えられいるから、時代が飛躍しても違和感なく読めるのだと思う。
更に、ところどころに散りばめられた著者自身のエピソードが結構面白い。ダメモトで大宰府天満宮に定遠館のことを問い合わせたらその親切な対応に驚いたこと。小学校のころ行った「だざいふ遊園地」のことや、中学校のころに天満宮近くの「紫藤の瀧」の流れを悪戯でせき止めたことなど、どこかヘルマン・ヘッセの初期作品が醸し出す雰囲気に似ている。
この著者の次回作も是非読んでみたい。
老いぼれ記者魂 青山学院春木教授事件四十五年目の結末
2018/06/06 21:14
素晴らしいのだが・・・
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著者経歴から察するに、記者の執念・作家の目・学者の洞察が高いレベルで融合した名著である。ベストセラー作家ではないが、『長い命のために』を皮切りに『また会う日まで』などの傑作を生みだし、最近では『大本襲撃』の筆力に圧倒された。本作も、事実確認を丹念に積み重ねつつも、表現は変幻自在で、その場面、その場面での登場人物が目の前に立ち上がってくる。いつの間にか引き込まれる。
事件そのものは、欲深く、生臭い。どの関係者も好きになれない。事件の中心人物だった元女子学生と作者の電話でのやり取りも記載されているが、拒絶的でかたくなで、一言でいえば厭な人間である。この作家が真剣勝負を挑むような相手ではない。
人生最後の一冊になるであろうと作者は書いているが、こんな汚い人間たちを描いた著書を最後の一冊にして欲しくない。『長い命のために』等で見せてくれた、きれいな魂の物語を、私は次作で読んでみたい。
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