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惠。さんのレビュー一覧

投稿者:惠。

348 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本ハニービターハニー

2012/04/20 11:57

いい大人になった今だからこそ読める、恋愛短編集。情けなくって甘えた登場人物たちのおはなし。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の第一次的肩書は歌人。
短歌を読んでデビューしたひとだ。
しかし今や詩、小説と幅広い分野で活躍している。

わたしは基本的に恋愛小説は苦手だ。
甘すぎたり、
中途半端に甘かったり。
苦すぎたり、
中途半端に苦かったり。
どろどろしたり、
いらいらしたり。
そういう感情をわざわざ
フィクションで追体験するのが面倒臭い。

でも不思議と著者の恋愛小説は読める。
短篇だからか。
それとも著者の感性に共鳴するところがあるのか。
不思議なくらいすんなり入ってくる。

描かれているのは特別な光景ではない。
どこにでもよくあるお話し。

本で追体験しなくても、
そこらへんに転がっている。
だけど、読み始めると引き込まれてしまう。

それはもしかしたら、
登場人物のほとんどが情けないからかもしれない。


たとえば。

「好きなひとができた」と告白する同棲中の彼氏に対して
「わたしのことは、好きじゃなくなった?」と訊くズルイ「わたし」。

彼が親友の彼になる前からずっと彼のことが好きで、
本物の彼氏じゃないから、とことん甘やかす浮気相手の「わたし」。

いつ泊まりにくるかわからないのに
朝はジャムトーストがいいという男のために
普段は食べないジャムを常備する「わたし」。

情けないのはきっと、惚れているから。
好きだから。
理性ではだめだと思っても
「好きって気持ちがあるから」と
その状況に甘えてしまっていう。
その状況がはがゆい。
もっと言うと、甘っちょろい。

でもわたしはもうそこそこいい大人なので、
その甘っちょろさを甘っちょろいなと思いながらも読めてしまう。
これがもっと若いころだったら、
読めなかっただろうな。

人生ではがゆい目に遭っているのに、
何が楽しくて本の中まで同じ思いをせにゃならんのだ!
なんとか思って。

しかも時折、ド直球のことばが登場する。
「でも、全部許せるなら、愛だよ」
この緩急が癖になる。

個人的には
ネクタイのセンスを褒めたら、
ああ、なんか水玉って人気みたいだねと興味なさげに
返事したというくだりが
記憶に残っている。

この状況だけ読んでぴんとくるはくるだろうな。
こういうの、そこらへんにごろごろ転がっている日常だもの。
その真意に気付くのは大抵、何かが起こったあとなのだけれど。




『ハニー ビター ハニー』収録作品
・友だちの彼
・恋じゃなくても
・甘く響く
・スリップ
・もどれない
・こなごな
・賞味期限
・ねじれの位置
・ドライブ日和

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紙の本学園大奥

2012/04/20 11:26

ラブコメ…なんだけれど、急に著者のメッセージが組み込まれた。ソレが腑に落ちない。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宮木氏のラブコメということで興味をもって読んでみた。
裏表紙にあるとおり、笑いの渦に巻き込まれはしたけれど、
「ラブコメ決定版」と謳うには難ありな気がする。
(帯や説明は大袈裟に書くのが付き物なんだけれど)

公立小学校での男子の「動物」さに嫌気がさし、
私立中の丸学園(女子中学校)に入学した和美。
しかし2年前に共学となった学園では、
生徒会長、生徒会監査役を務める
唯一ではなくって「唯二」の男子を頂点とする
大奥(一般的な生徒会に当たる)に牛耳られていた。
上様と呼ばれる生徒会長に恋をした和美は、
外部入学者への風当たりの強さにも負けず
中学生らしく青春を謳歌するはずなのだが…。


上様と呼ばれる憧れの先輩。
女子校にありがちないじめ。
猿にしか思えない低俗な幼なじみからの突然の告白。
母親の愛読書だった「My birthday」を駆使してのおまじない。
外部入学者という共通項が結んだ友情。

いたってふつうな
(少なくとも宮木氏やわたし世代にとっては)
女子中学生の日常がコミカルに描かれている。
ターゲットを子どもから大人までとしているからか、
文章も平易で読みやすい。

が、全7話中、6話目で何かが変わる。
その「何か」とは、雰囲気や文体ではなくて、
突然作品の中にメッセージ性が出現するのだ。

そのことに関して著者は
「あとがきという名のいいわけ」でこう述べている。
が、六話を書き始める直前に、東日本大震災が起こりました。
――こんなときに誰が小説など読めるだろう。
――しかもこんなおちゃらけたコメディなんて誰が読みたがるだろう。

そして書けなくなった、と。
しかし連載だったので書いた、と。

6話でこういう一節がある。
 現実社会では「国民のための政治」によって「新しい風」を吹かせるはずだった日本政府の政権交代が、普通に見て散々な結果、結果というか渦中というかマジでこの国終わるんじゃないのかというか、そういう感じになっている。あたしたちのような中学生にだって「このままじゃうちら将来ヤバいんじゃないか」ということが判るくらいだ。むしろ、大人よりも子どものほうが本能的にそれを感じている気がする。


東日本大震災が起こって国に失望したという著者は、
そういうメッセージを本書に込めた。
そして作品は当初の予定とは異なるものとなった。

著者は言う。
本当は、物語に著者のメッセージを組み込むことはしたくないです。そもそも私は著者の独自の倫理観や自己主張の透けて見える小説が大嫌いです。

わたしは、物語に著者のメッセージが組み込まれても良いと思う。
倫理観や自己主張を盛り込むのもアリだろう。

でも、今回の方向転換については疑問を持たずにはいられない。
メッセージを組み込む云々というのは、
作品の完成度があってこその問題ではないだろうか。

本作の場合、7話しかないのに6話目でテーマががらりと変わってしまった。
そこまで読んできた読者をおいてけぼりにして。
その点が納得いかない。

震災があって書けなくなったというのも分からなくはない。
なのに書かなければいけない――辛かっただろう。
でもそこはプロとして書いてほしかった。

会社人がプライベートで何があっても仕事をするように、
震災があっても通常業務に従事せねばならなかったように、
プロはプロとして貫いてほしかった。

著者は言った。
――こんなときに誰が小説など読めるだろう。

でもわたし思う。
こんなときだからこそ、フィクションを読みたいと。
現実はげんなりすることばかり。
現実逃避と揶揄されようが、本の世界に逃げ込みたい。
本の世界でリラックスしたい。
本の世界だからこそ笑いたい。
現実で笑うことを許されなくても、
本の世界ならば許されるから。

だからこそ、
「ラブコメ」を書き上げてほしかった。
宮木あや子ならばそれができる気がした。

でもしてくれなかった。
そしてわたしは著者に失望した。
(読み続けるけれど)

失望とは期待の裏返しなのだろう。
国に失望したひとたちは、国に期待していた。
そしてその一方でおそらく、
期待さえできなかったひともいるのではなかろうか、
とまたまたげんなりする方向に考えてしまうわたしである。

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紙の本クレイジー・クレーマー

2012/04/19 14:03

嗚呼、くろけん(笑)。良くも悪くもくろけんらしい作品。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

先日読んだ『鬼面村の殺人』(折原一著)の感想で、
好きだけれどお上手ではないユーモアミステリ作家として挙げた
東川篤哉氏が解説を書いている本書。

本書の著者であるくろけんも東川氏と同じく、
好きだけれどお上手ではないユーモアミステリ作家と
わたしの中ではカテゴライズされている。


大型スーパー家電コーナーマネージャーの袖山。
彼がルーティンワークの他に戦うのは、
万引き常習犯「マンピー」と
クレーマーの岬圭介。

大胆に犯行を重ねるマンピーのせいで
純利益はゼロに近づくばかり。
岬は岬で執拗ないやがらせを繰り返す。
岬の嫌がらせは袖山のプライベートにまで及び、
ついには殺人事件まで起こってしまう…。


あぁ、くろけん(笑)。

わたしとしてはアリなのだけれど、
好き嫌いのわかれる結末だろう。
リアリティを求める読者には
けちょんけちょんにされるかもしれない。

でもいいのだ。
くろけんだもの(笑)。

くろけん作品を読んできた読者には
すぐにぴんときてしまうトリックだ。
トリックにすぐ気付いた場合、
山場での失望感のほうが多いのだけれど、
くろけん作品においては異なる。

先に気付いてしまったが故、
ショックが軽減されるのだ。
そのへんがくろけんのすごいところ(たぶん誉めている?)。

文章は相変わらずお上手ではない。
ただ、その自覚があるのかないのか定かではないが、
一文一文が短く、勢いで読めてしまう。
斜め読みしても内容がわかってしまうのだ。

クレーマー。
サービス業従事者としては胃の痛い話だ。
ノンフィクションの世界のわたしとしては
「早く警察に相談しろよ!!」と突っ込みたいところなのだけれど、
それをしちゃうとストーリーが巧く転がらないので
いたしかたない。

お上手ではないけれど、なんだか好きなくろけん。
これからもこういうゆるい感じで
ユーモアミステリの世界を生き延びていってほしい。

東川氏曰く、
バブルを引き当てた東川氏に嫉妬しているようだけれど、
たぶんバブルは長くは続かない。
地道にこつこつやっていってほしい、
とファンは願う。

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紙の本鬼面村の殺人

2012/04/19 13:38

最近のユーモアミステリも嫌いじゃないけれど、やはりこれくらいの筆力があるものが良い。黒星警部シリーズ第一弾。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

面白かった―っ!!!

いや、正しくは
面白かった―っ(笑)!!!
「(笑)」がつく。


著者初期の作品。
黒星警部シリーズとしてシリーズ化されていたもよう。
テイストとしては我孫子武丸氏の速水兄弟シリーズや
赤川次郎氏の大貫警部シリーズに似ている。
カテゴライズするならばユーモアミステリか。

シリーズの主役は黒星警部。
密室が大好きでミーハーで、
簡単な事件も複雑にして断崖絶壁で犯人を追い詰めたい、
あるいは関係者全員を集めてみんなの前で謎解きを披露したい、
そんなお茶目で可愛い警部さん。
(実際は可愛くはないんだけれど、可愛いのだ!)

休暇を利用して訪れたどぶろく祭で、
ひょんなことから作家先生に間違えられ、
山奥の鬼面村までやってきた警部。
国際芸術週間の催しで行われる、
消失トリックの謎解きをしてみろと
挑戦状をたたきつけられる。

そして翌朝、目を覚ますと五階建ての合掌造りが
忽然と消えていた!

消失トリックを解明すべく、
ほんものの「作家先生」である葉山虹子と共に
村内を捜査する警部の死体が転がって…。


あぁ。
荒筋を思い出すだけでくすりとしてしまう。

ユーモアあふれる黒星警部と虹子のやりとり。
会話は楽しいし、名警部でないところも楽しい。
そして何よりもトリックにかける著者の探究心が素晴らしい。

ユーモアミステリという分野は好き嫌いが分かれると思う。
「ユーモア」の部分が、
「おちゃらけ」にしか見えない読者もいるだろう。
でもわたしには、その「おちゃらけ」が魅力的だし、
それと対比するかのようにびしっと決まる推理との
緩急のバランスが好みなのだ。

最近「ユーモアミステリ」のジャンルで
バブルを起こしている作家がいる。
東川篤哉氏だ。
わたしは東川作品も嫌いじゃないけれど、
折原、我孫子両氏のユーモアミステリと
東川氏のそれとは大きく異なると感じている。

それは、著者の筆力の差だ。
描写、場面展開、構成などにおいて、
折原氏は読者をすんなり導いている。
これに対して東川作品では、曖昧な場面も多く、
勢いだけで読ませてしまっていることも多々ある。
(勢いだけでも読めない読者もおそらく多々いる)

ユーモアもあり、トリックがちゃんとしている。
その二点が揃っているのが東川氏。
その二点に加えて文章が洗練されているのが
折原氏だ。

折原さんはやはりお上手な作家さん。
これからも意欲的な作品を上梓していってほしいと
強く願う。

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17人の「彼女」たちの日常。ぴりりとした短篇集。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もしかしたら遠い昔に読んだことがあるのかもしれないけれど、
記憶にある限りではハジメマシテの作家さん。
折原一作品をよく読むので、
その関係でお名前をよく拝見しているだけかもしれない。

本書には17篇の短篇が収録されている。
どれもが女性を主人公にしたお話だ。
彼女(パートナーの意味)、妻、母、娘、
人生における「女」が演じる役割が描かれている。

「女を描く」となるとやはり
恋か愛かがテーマになってくる。
しかし不思議なことに、男と女の対峙はほとんど描かれていない。
17篇のうち5篇が不倫ものなのだけれど、
そこに不倫につきもののどろどろは感じられない。
むしろさくっと描かれていて、
その湿り気のなさが空恐ろしい。

後半部分にはママ視点の作品が多く、
未婚のわたしには入り込めない作品も多かった。
わたしに子どもがいたりしたら、
もっと考えさせられるところがあっただろう。

全体に的にぴりりと小気味良い短編集。
ただ、作品により話者の入れ替わりが
すんなり飲み込めないものもあり、
幻想や幻覚と現実との区別を
もっとわかりやすく描いてくれたら尚良し、かな。

篠田節子の解説がよかった。



『彼女たちの事情』収録作品
・ホーム・パーティー
・紫陽花
・妻の声
・花火
・飾りたかった絵
・あなたに借りた本
・クリスマス・イブ
・着物の魔術
・冬の観覧車
・返す女
・シンクロニシティ
・小さな耳
・ずっとそばにいて
・歯と指
・尽くす女
・凍った約束
・注意に注意

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紙の本北風の吹く夜には

2012/04/10 21:58

メールだけで構成された異色の恋愛小説?! ただ、訳書ならではの違和感が拭えない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

きっかけは一通の間違いメール。
エミという女性が「ライク」という雑誌の定期購読を解約を申し込んだアドレスは、
雑誌とは一字違いのレオ・「ライケ」氏だった。

激昂したエミのメールにウイットに富んだ返信をしたレオ。
それをきっかけに、ふたりは頻繁にメールをやりとりするようになる。

既婚で子どものいるエミ。一方レオは彼女と別れたばかり。
ふたりは「会わない」ことを約束し、メールを続ける。
そしてある日、「会う」約束をしてしまう。


メールを介してやりとりするふたりの男女。
映画の『ユーガットメール』を彷彿させるのだが、
内容は大きくことなる。
なぜならば、本書に登場するふたりの男女は会わないのだから。

日々のことを語り、
自分自身の内面を語りあうエミとレオ。
ふたりのお互いに対する興味は、
メールを重ねる度に膨らんでいく。
それでも「会わない」ことを選択するエミとレオ。

「会いましょう!」と言って(書いて)も、
それは冗談だとわかっている。
なぜならば、わたしたちは「会わない」ことにしたのだから。

エミとレオは自分の心と、そして生活と葛藤する。
そんなふたりの気持ちの変化を追体験する形で
見守るのが読者の役割だ。

本書は全編、メールで構成されている。
約300ページの本書に収まっているメールの数は膨大だ。
長いメールもあれば、一行だけのこともある。
手紙と違って読み返すよりも前に、
感情に任せて送ってしまった内容もある。

メールを介する男女のやりとり。
10年ほど前ならば手紙であったけれど、
こういうやりとりは、普遍的なものだ。

そしてエミとレオの会話(筆談?!)。
ふたりのやりとりは、人間関係でよく見られる
ある種の「ゲーム」だ。
このやりとりも普遍的なもの。

普遍的なものは受け入れられやすい。
ベストセラーになった理由にはそういう点もあるのだろう。

ただ、これは翻訳書だから仕方のないことなのかもしれないが、
エミやレオの言葉遣いが、とても不自然。

例えば英語の「I love you」。
「私はあなたを愛している」との翻訳は
間違いではないけれど、
違和感を覚えてしまう。

文化、習慣エトセトラ…
バックグラウンドが異なる言葉を訳するというのは
とても難しいことなのだと想像する。
「超訳」ではないのだから、
意訳の多用もよろしくないだろうし。

そんなわけで、エミとレオの会話は
わたしの心には響かず。
ついでにいうと――これも翻訳のせいか――、
安全な場所を手放す決意もないまま
レオを求めるエミの狡さが鼻につき、
共感するところもなかった。

わたしにとってエミは
『深く深く、砂に埋めて』の友利子よりも
よっぽど「嫌な女」である。

ただひとつ爽快だったのは、
ラストにレオが取った行動だ。
わたしはその行動が「正解」だと信じている。
他に正しい解など存在しない、
それくらい適切な行動を彼はとったのだと。

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紙の本深く深く、砂に埋めて

2012/04/10 21:24

現代を舞台に、真梨風『マノン・レスコー』

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

描きすぎが気に入らないも『殺人鬼フジコの衝動』で
垣間見られるテーマ性に惹かれて、
真梨作品に次々手を出している。

本書は『孤虫症』に『女ともだち』続く「どろどろ三部作」の第三弾。
刊行順だ本書のほうが『女ともだち』よりも早いのだけれど、
著者曰く、
「『深く深く、砂に埋めて』の前に『女ともだち』読んでください」
とのことなので、素直に従った。

この著者のアドバイスの理由は、
勘のいい人ならば途中まで、
勘が悪い人でも最後まで本書を読めばわかる。

端的に言うと、二作はリンクしているのだ。
それもある一点において。
そしてその時系列上、『女ともだち』のほうが早いのである。

裏表紙にあるように、
本書は『マノン・レスコー』に着想を得て誕生したという。
わたしは『マノン・レスコー』は未読だけども、
オペラのあらすじならば、なんとなく分かる。

そんなわたしの読み終えての感想は、
「うむ、なるほど、マノンだな」。
そして
「深く深く、砂に埋めたのだろうな」。

本書において「マノン」役を担うのは、友利子という美女。
女優として一世を風靡するも、
仕事よりも簡単に贅沢できる方法を覚え、
男の元をいったりきたり。

しかしこの友利子、
不思議なことに「嫌な女」ではない。
計算高くもなければ、お金に汚いわけでもない。

ただ純粋に、いわゆる「贅沢」を求める女なのだ。
綺麗な洋服を身にまとい、まばゆい宝石を身につけ、
とろけるような料理に舌鼓を打ち、
スイートルームから夜景を眺める。
そういうことが、ただ単に好きなだけなのだ。

その好きなことを追究するためには金がかかる。
しかし彼女はそのお金を生み出す方法を持っている。
だから友利子はお金持ちに抱かれる。
世間に何と言われようと気にならない。
ただ純粋に、自分の欲望に向き合っているだけなのだ。

しかしそんな女に心から陶酔してしまった男は悲惨だ。
自分が友利子の心を満たせないことに
不甲斐なさを覚え、時には悪事に手を染めてしまう。

本書は友利子と、彼女に魅せられた男たちの物語である。

可愛い女、友利子。
そして可哀そうな女でもある友利子。
彼女は幸せだったのだろうか。

本書の結末は賛否分かれるところかもしれないが、
わたしは友利子にとってはある種、
ハッピーエンドではなかっただろうかと思っている。


可愛い女たちが登場する真梨作品、
とってもハマってます。

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紙の本女ともだち

2012/04/09 14:57

どろどろ三部作第二弾。女の妬みと嫉みを思う存分堪能しましょう。でも女ってやっぱり可愛い生き物だと思うのです。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

描きすぎが気に入らないも『殺人鬼フジコの衝動』で
垣間見られるテーマ性に惹かれて、
真梨作品に次々手を出している。

本書は『孤虫症』に続く「どろどろ三部作」の第二弾。
刊行順だと『深く深く、砂に埋めて』の方が早いのだけれど、
著者曰く、
「『深く深く、砂に埋めて』の前に(本書を)読んでください」
とのことなので、素直に従ってみた。

物語に登場するのは(主に)五人の女たち。
そしてその五人のうちの一人、楢本野江が書く原稿が
女たちを繋ぐ。

同じマンションに住む二人の独身キャリアウーマン。
それぞれがそれぞれの部屋で遺体が発見された。
被疑者として逮捕されたのは山口啓太郎という46歳のドライバー。
殺された二人のうちのひとり吉崎真紀子の「客」だった男だ。

真面目なキャリアウーマンである真紀子の裏の顔、
それは売春婦だった――。
しかし山口は犯行を否認。
そして犯行否認のまま、裁判が始まった。


一見すると(残念ながら)ありふれた殺人事件なのだが、
作中、この事件は大きく取りざたされる。
その理由は、事件の残忍性にある。
殺された真紀子の遺体は性器が抉られ、
子宮が持ち去られていたのだ。

マスコミはこぞって犯行の残虐性、
被疑者(被告人)山口の残忍性を報道する。
しかし月刊グローブのライター、楢本野江は
山口の無実を信じ、違った角度から
この事件を報道し始めた。

そして事件の調査が進めるうちに、
野江は真相に辿り着くのだが…


解説の石井千湖氏曰く、
著者1997年に起こった「東電OL殺人事件」から
着想を得て本書を書きあげたそうである。
もちろんデフォルメはされているだろうけれど、
殺害された真紀子に、その「着想」の一端が伺える。


タイトルの「女ともだち」は、
単純だけれども意味深だ。
あっさり取ろうと思えはできるし、
深読みしようとすればどこまでも深く掘り下げられる。

読み返して思うのだけれど、
このタイトルは上手い。
その理由はネタばれにもなるから書けないのだけれど、
いいタイトルだ、と思う。

女の妬みや嫉みが存分に描かれた作品である。
ドロドロとした感情が次々と出てくる。
書く人によっては下品になりかねないテーマなのに、
実に、読みやすい。
どろどろなのにサラリとしている。
この矛盾を生むのがすごい。
ここが作家、真梨幸子の力の見せ所なのだろう。

殺人事件にまで発展している作品を読んでの感想としては
どうかとは思うのだけれど、
やはり女って可愛らしい。

醜くって可笑しくって時に哀れで…
でもやっぱり結論としては、女は可愛い。

そういうお話でした。

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紙の本孤虫症

2012/04/09 14:27

デビュー作はこうであってほしい。真梨幸子、突き抜けたデビュー作。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

真梨作品はこれで二度目まして。
初めて手に取ったのは『殺人鬼フジコの衝動』。
衝撃的なタイトルに惹かれたのだ。

だが、『殺人鬼フジコの衝動』は描きすぎていた。
悲惨さを強調しようと描き、
その裏にある因果応報、血の業のようなものを
浮かび上がらせようとしていたのだけれど、
わたしにはまるでコメディのように映ってしまった。

しかし、その描かんとしているテーマ性が気になった。

というわけで読んでみた本作。
著者のデビュー作である。

タイトルにある「孤虫症」とは実在する病である。
どういう症状か――は先に知ると面白さが半減するので
説明しないでおく。
ただ、「実在する」という情報を頭の片隅に置いておくと、
「ある意味」で本書が数段楽しくなるかもしれない。


さて本書は3章で構成されている。

1章は麻美という主婦による「私」視点で展開する。
2章も「私」による独白型での展開だ。
しかし1章と大きく異なり、
ストーリーテラーの「私」は、麻美の妹、奈未である。
この章では、1章で一度描かれた出来事が
別の角度から再度、描き出される。
そして真相が読者の前に露呈する…はずだったのだけれど、
その「ほんと」の真相がわかるのは、3章でのこと。

この3章構成、すごく練られているな、という印象。
デビュー作はこういう「アツイ」ところがあるから好きだ(著者によるけれど)。

物語の冒頭で登場する麻美という主婦。
はっきりいっていけすかない。
夫と娘とマンションで「そこそこ」の暮らしをしているのにも拘わらず、
別にもったマンションで週に三度の不倫セックス。
しかも曜日を決めて、毎曜日違う男と、だ。

そんな不貞の妻を襲った突然の性感染症。
しかしそれだけで収まらず、
不倫相手が次々に亡くなるという事態にまで陥ってしまう。

「ま、自業自得だよな」と思いつつ読み進めると、
事態は思わぬ方向に進んでいくのだが、
それは読んだひとだけのお楽しみ。


感想はひとこと、おもしろかった―――――!!!!


文章は雑だし、構成はぐちゃぐちゃ。
ところどころ何がなんだかわからないところもあるのだけれど、
「書きたい」何かがすごく伝わってくる。

『殺人鬼フジコの衝動』のように
凄惨さ、残酷さの描写に頼ることなく、
内面の「いっちゃってる」具合をどこまでも追い求め、
突き抜けるくらいまで描こうとしている。
こういうアグレッシブな姿勢がすごく好きだ―――――!!!!

無難なものより、書きたいものを書く、
批判されようとも書きたいから書く、
デビュー作にはそういう情熱が欲しい。
その点、真梨氏は完璧だ。

解説を担当している豊崎由美氏も、
著者のこの姿勢を絶賛していた。
わたしは豊崎氏の文章も文体は、
たった140字以内のつぶやきでさえも好きではないが、
この点は、氏に100%同意する。

後味は確かに良くない。
しかし本書は後味の良さを提供するための作品ではない。
だから、後味が悪くて「良い」のだ。

うんうん。
真梨さん、面白い(興味深い)ぞ。

本書は「どろどろ三部作」の第一弾だそうなので、
他の二作も読んでみることにしよう。
楽しみっ!!!

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結論:焼きドーナツは楽しい☆

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

遅ればせながら焼きドーナツブームが到来(@我が家)。

手っ取り早く始めたかったので、
シリコン型とレシピがセットになったのの購入を目論む。

しかしここで鉄壁のディフェンスが(大袈裟)。
ブームは既に彼方に去ってしまったのか
書店を回れども回れども見つからず。
ようやく見つけたのが本書。
ホントは他のが欲しかったのだけれど、ね。

気持ちが高ぶっているときに始めないと、
「今度」は永遠に来ないなんて事態に陥るので
購入。

そして即作ってみた。

ホットケーキミックスで甘めのドーナツ。
小麦粉とベーキングパウダーでチーズとハムのお食事ドーナツ。

うむ。
簡単。

でもって、そこそこおいしい。

が、
同梱されているドーナツ型が小×12個サイズに対して、
レシピの分量は24個分。

ならば半分の量で作ればいいじゃない!
って思いやってみようとしたのだけれど、
24個分で卵が1個というレシピなので、
半分じゃ卵が余っちゃう。
でも半分の卵じゃ卵焼きにも少ないし…。

と、やはり24個分で作ることに決定。

うーむ。
このあたり、どうにかならんのかね。
うまくいかないものだなぁ。

いや、その気になればなんとかなる問題だとは思うのだけれど。

結論。
焼きドーナツは楽しい☆


しかし、基本のレシピがすごく少ないので、
別の(最初に狙っていたもの)を購入するつもり。

ただ問題は、売っているかどうかなんだよなぁ。

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紙の本警官倶楽部 長編ミステリー

2012/04/03 12:07

警察マニアが大活躍のドタバタコメディ…じゃなくって、警察小説?!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

決してお上手ってわけではないのだけれど(失礼!)、
なんだか好きな大倉作品。
きっと、主人公やその他の登場人物、
テーマ性なんかが好みなのだろうな。

さてさて本書。
「警官倶楽部」というタイトルから察しがつくように、
警察官が登場する小説…ではない。

警察関連マニアが組織する
警官倶楽部のメンバーが活躍する小説だ(ややこしい)。

警察組織あるいは警察官に関する
オタクで構成される警官倶楽部。
もちろん、メンバーに警察官はひとりもいない。

しかし各メンバーのオタク度は本職顔負け。
盗聴、鑑識、現場、パトカー、制服エトセトラ。
マニアやオタクの集中力はすさまじい。
趣味が高じたそのレベルは最早
「エキスパート」と言っても過言ではない。

そんな善良な市民で構成する警官倶楽部だが、
今回、必要に迫られて犯罪に手を染めることになった。

その犯罪行為の名は強盗。
新興宗教の集金をかっぱらったのだ。

しかしその新興宗教の実態はとんでもないもので、
そこから警官倶楽部の面々は事件に巻き込まれることになる。
ついでにメンバーの息子の誘拐も起こり、
悪徳金融の借金取り立てに悩まされ、
なんだかんだともう、事態はじっちゃかめっちゃか、だ。

登場人物も多く、
誰がどの台詞を喋っているのか、
把握できなくなること数えきれず。
読み返しても、やはり誰の台詞かわからない(苦笑)。

このあたりがわたしが「お上手ではない」という理由なのだけれど、
誰の発言かわからなくても、
勢いで読み進めてしまえるパワーがある。
それだけ「なんだか楽しい」小説なのだ。

事態もしっちゃかめっちゃか。
台詞も誰が誰だか。

でも!!!
勢いで読んで楽しめる!!!
ある意味、すごい作品ではないだろうか(誉めているつもり)。

ごっちゃごちゃなんだけれど、
読後感はそこそこ爽快。
続編を強く希望する。

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紙の本陽だまりの彼女

2012/04/02 14:32

個人的に誠に遺憾なラストでした。それは、わたしが愛してるが故なのだけれど。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ハジメマシテの作家さん。

お名前は耳にしたことはあるのだけれど、
なんとなーく、苦手な匂いがぷんぷんしていて、
スルーしていた。

が、書店に平積みされていた本書の宣伝文句が気になって読んでみた。
「女子が男子に読んでもらいたい恋愛小説」


なんだか惹かれる宣伝文句でしょう?
どういうのか気になるじゃない。

というわけで、
恋愛小説にひさびさに挑戦!

感想を率直にいうと、
「憤りを感じずにはいられない」、だ(苦笑)。

と言っても、
作品が悪い、お上手ではない、という理由ではない。
本書の中でキーとなる「ある存在」に対する認識が、
著者とわたしのでは随分異なるが故、の結果である。

と、回りくどい書き方をするには理由があって、
その「ある存在」が作品内で非常に大きな意味を持つので、
その正体をここで明かすわけにはいかないのだ。
ネタばれになってしまうもの。

その「ある存在」に対する著者の認識が、
わたしにとっても非常に不満!
とてもじゃないが納得がいかない。

と、ここまで憤るのはわたしが
その「ある存在」を愛しているからこそ。

その認識の差を除けば、悪くはない物語だとは思う。

文章は読みやすいし、
主人公である「僕」の心の揺れも丁寧に描かれている。

ただ、ラストがある種のファンタジーなので
読者の好みは分かれるかもしれない。

わたしは…
「ある存在」に対する認識のズレがなくても、
このラストは好みではないなぁ。

文章も悪くはないし、
テイストも嫌いじゃない。
だけど、もう一冊に手が伸びない気がする。

さて。
冒頭に戻って。

本書は
「女子が男子に読んでもらいたい恋愛小説」
だそうだけれど、
一体どこがどうしてそうなのか、
読み終えてもよく分からないままだ。

誰か、教えてください(他人頼み)。

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紙の本ワーキング・ホリデー

2012/04/02 14:13

ひと夏の…経験?!父と子の初めて尽くしが奏でるハートウォーミングな良作!好きです!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2012年の個人的テーマを「全方向に全力でおもねる」
と設定したわたしとしてはあまり大声では言えないが、
実は、坂木作品はそれほど得意ではない。

『青空の卵』から始まるひきこもりシリーズ(最終巻未読)で
その存在を知り、
「これはハマるな」と確信して数冊購入して早数年。

まだ数冊しか読んでいないのに飽きてしまった。

特に『短劇』がいけなかった。
ちょいブラックという好みの分野だけに、
変に目の肥えたわたしには物足りなさすぎたのだ。

とはいえ、購入したからには読まねばなるまい。
と、軽い決意で手に取った本書。

はっきり言おう、
参りました。

そして見直しました。
「こんなのも書けたのですか、坂木さん!!」




「初めまして、お父さん。」
ある夏の日。
ヤンキー上がりの3流ホスト大和の前に突然現れた
しっかり者の小学生、進。
大和のことを「お父さん」と呼ぶ進の出現で大和の生活は一変!
ホスト稼業を引退し運送業に転職。
そして始まった「はじめての」父子生活は、
さぐりさぐりの連続で…。



今まで死んだと聞かされた父親の存在を知ってしまった小学5年生の進。
彼は夏休みを利用して、まだ見ぬ父親と暮らしてみようと決意する。
そして実行する。
しかも、父親の職場がホストクラブだというのに、
そのホストクラブを訪れちゃう。

このあたりが「しっかり」している。
大和の元交際相手で進の母親である由希子の
教育方針がそっくりそのまま活かされている。

そしてこの「しっかり」がちょびっと生意気で、
でも時に子どもらしいところもあって可愛らしい。

一方、父親の大和は単純で単細胞。
でも曲がったことは嫌いで弱いいじめなんかしない、
男気のあるタイプ。

この全くタイプの違う男ふたりの暮らしが物語の核となるところ。

大和にとっては初めて尽くしの父親体験。
進だって、父親との暮らしは初めて。
だからふたりの暮らしはさぐりさぐり(笑)。

なのだけれど…
根がすこぶるいい大和だから、
進との距離も縮んでいく。

でも親子だからこそ、時に反発しあい
離れていたからこそ距離感がつかめず、
悩んだりぶつかったり。

周囲の個性的かつあったかい人々を巻き込んで
すごくハートウォーミングな連作短編集となっている。

読後感は爽やかでしかもあったかい。
すごくすごく好きだなぁ。

続編『ウインターホリデー』が刊行されたので
文庫化したら手に入れよう。

坂木作品は手持ち(あと2冊かな、積んでいる)だけに
しようと思っていたけれど、
このシリーズはこれからも追いかけていくことに決めた!




『ワーキング・ホリデー』収録作品
・宛先人不明
・火気厳禁
・こわれ物注意
・代金引換
・天地無用

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紙の本樹海伝説 騙しの森へ 推理小説

2012/04/02 14:11

叙述トリックは難しい。そこに挑戦し続ける著者が好き。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

叙述トリックに尋常なまでの情熱を注ぐ作家、折原一。

叙述トリックは難しい。

著者が心血注いで生みだしたトリック。
しかし残念ながら読者の目は慣れてくる。
そして「もっともっと」を要求する。

だけど…そんなにバリエーションないんだよな、
叙述トリックって。

だからマンネリ化する。
それはある意味、仕様のないことなのだけれど、
新しい作品が刊行されるたびに読者は
あの感動を超える作品を求めてしまう。
そして大概、がっかりする。
それは仕様のないことなのだ。

と、理解していても求めてしまう。

わたしももちろんそんな「求める」ひとり。
だけれども、がっかりはしない。
むしろ愛おしく感じてしまう。
これはある種の病かもしれない。

本書は樹海シリーズの第一作。
叙述トリックなのであらすじは書かない(ネタばれ防止のため)。

先にシリーズの『黒い森』を読んでしまっていたので、
だいたいのトリックは見当がついた。
そしてその通りの展開だった。

でもいいんだ。
刊行順に読まなかった自分が悪い。
刊行順で読んだら読んだで『黒い森』で
予想通りの展開を読むことになるのだろうけれど、
それはまぁ、それでいい。

驚きを求めて読書をするのも一興。
著者の心意気を買って本を買うのも一興。

十分満足した一冊だった。
(ただし、人にはすすめませんが)

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紙の本鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ

2012/04/02 14:10

買うのは著者の心意気なのだ!!(自分に言い聞かせる)

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終えの第一感は…
「そうですか。そうもってきましたか」
といったところ。

何度も書いているが、叙述トリックは難しい。
「折原=叙述トリック」と言っても過言ではないほど
著者は叙述トリックに心血を注いでいる。
そのせいでマンネリを揶揄され事態になるとわかっていても。

そう。
叙述トリックには「マンネリ」という恐ろしさがつきまとう。

にもかかわらず著者は、叙述トリックをシリーズ化してしまった。
しかもシリーズの舞台まで固定して。

富士の樹海。
その中に建つ一軒家。

それがこのシリーズの舞台なのだ。

この飽くなき研究心とチャレンジ精神を見よ。
デビュー作では生き生きとペンを走らせていたのに、
時を経るにつれ、技巧にたよったり無難にまとめたりと、
「そこそこ」を狙う作家が多い中、
こんなにも挑戦し続ける作家が他にいるだろうか。
しかも自分で自分をがんじがらめして。
ただでさえ高いハードルを更に上げて。

そう。
わたしは著者のチャレンジ精神を買って読んでいるのだ。

そう。
そうなのだ、
わたしは著者の…(以下略)


そう言い聞かせてわたしはこのシリーズを追いかけるのだ。


無難な物語を紡ぐ作家よりも、
書きたいことを書く作家が好き。

万人受けするものよりも、
好き嫌いの別れる作品が好き。

だから…
これからもわたしは折原一を応援する。

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