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  3. みす・れもんさんのレビュー一覧

みす・れもんさんのレビュー一覧

投稿者:みす・れもん

132 件中 31 件~ 45 件を表示

紙の本

紙の本チェーン・ポイズン

2010/10/28 21:21

とにかくもう一度最初から読み直したい。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本の紹介文には「ミステリ」とある。けれど、読み進めてみると「どのへんがミステリ?」と思う。そう思いながらも読み続けていったのは、自殺した女性の本当の姿を知りたかったからだ。その辺が「謎」と言えば言えるかな、そう思った。

本書は会社を辞めてから約1年後に毒を飲んで自殺した女性を追う雑誌記者と、「1年後に死ねる薬をあげます」と謎の言葉をかけられた自殺願望のある女性とが、交互に語る形をとって進んでいく。

雑誌記者は、自分がインタビューをした2人の男が同じような毒を飲んで死んだことに疑問を抱く。しかもこの2人は自殺のきっかけとなりそうな出来事が起きてから約1年後に死んでいるのだ。2人とも、である。そこへ、見も知らぬ女性「高野章子」が会社を辞めてから約1年後に毒を飲んで自殺したとの情報が入る。
この3人は何故、同じような毒を飲んで死んだのか。そして、何故きっかけとなるような出来事が起きて1年も経ってから死んだのか。それが知りたいと、雑誌記者は女性の空白の1年を埋めようと走り回る。

一方、自殺願望のある女性。
同じことの繰り返しの中で36歳という年齢を迎えようとした頃、その自分の生活が虚しくなったのだろうか。公園でふと「死にたい・・・」と呟いてしまう。そこへ声をかけてきた人物がいた。「1年待ちませんか?」と。女性は1年後を待とうと決めた。あと1年待てば楽に死ぬことの出来る方法が手に入る。それまでは待とう、と。

さて、最後はどうなるのだろう。
死を心に決めた女性はどのような1年を送るのだろう。
雑誌記者は自殺した女性の姿に迫れるだろうか。
そんなことを思いながら、ページをめくっていった。

けれど・・・。
正直にいうと、読み終えた今は少し茫然としている。作者の仕掛けたどんでん返しにしてやられたのだ・・・。もう一度読み返したい。このトリックの衝撃が大きくて、他の部分が頭から飛び出してしまった(苦笑)。
あぁ、やはり内容をかみ砕いて消化するためには再読しかない。

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紙の本

紙の本ダーリンは外国人 1

2010/10/14 13:41

国籍なんか関係ない。すべては個人の個性。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

気軽に読めるコミックかなぁという感じで読み始めたのだけれど、意外といろいろと考えた。
いろんな人と付き合えば付き合うだけ、自分の価値観というか、固定概念というものが見えてくる気がする。そうやって、他の人の価値観なりを受け入れられれば、頭が柔らかくなるような。
著者は外国人のダーリンと一緒に暮らすようになって、いろんな考え方があるのだなぁと感じた。で、少しずつ考え方の違う2人が上手く付き合うにはどうすればいいのかということを考えていったのかな。

でも、このダーリン:トニーさんは普通の「外国人」じゃない(笑)。っていうより一般的な「人」とは違う。ちょっと変わり者だ。悪い意味じゃなくて、とてもユニークってこと。
積極的に学ぶことに取り組む姿は素敵だと思う。様々なことを知るということを、楽しんでいるふうに見えるんだ。それは素敵。
だけど、ときどき自分の価値観を人に押しつけようとする傾向があるみたい。それはどうかなぁと思う。でも、それは議論のきっかけなのかな? それで話し合ってお互いの思いを知れば、さらに世界は広がるもの。

不思議に思ったことを素直に口に出して、思ったことや感じたことを話して、そうしてお互いに理解を深めていく。それはお互いの世界観を広げていくことなんだろうな。それって、相手が「外国人」だろうが日本人だろうが、関係ない。誰が相手でも同じだ。でも、日本人は総じてこういうコミュニケーションが下手な気がする。妙に恥ずかしがったり、妙にムキになったりして。もったいないかもしれない。

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紙の本

紙の本天使の代理人 下

2010/09/30 13:42

「人工中絶」というテーマの宿題を与えられた気分

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終えた今、一番感じるのは、この作品を男性が描いたということへの驚きだ。妊娠について考える女性の複雑な思いがリアルに表現されているように思う。文庫の最後に多くの参考文献が紹介されている。この作品を産み出すまでに、著者がどれだけの力を傾けたかということを表しているようだ。

中絶手術の申し込みをしたものの、まだ迷っているようだという女性を説得するために活動していたはずの「天使の代理人」が、いつしか運営者の冬子の思いから離れて一人歩きし、「絶対に中絶してはならない」という脅迫まがいのことをするようになってしまった。冬子の思いは違う。産まれてきたがために、母子ともに破滅してしまうケースもあり得ると考えているのだ。その過激な活動がある不幸な事件のきっかけとなってしまった。ここで「天使の代理人」の活動はターニング・ポイントを迎える。

男性は信用できないから、精子バンクを利用して自分だけの子供を作るといって妊娠した女性。彼女は出生前検査で胎児に障害があるとわかったら迷わず中絶を選ぶような女性。完璧な子供しか要らない、そうでなければ精子バンクを利用して妊娠した意味がないと考える。検査の結果は? そしてそれを知った彼女の決断は・・・。

妊娠・出産。一度も考えたことのない女性というのはいないだろうと思う。その言葉に対する思いは人それぞれだろう。自分の身体に宿った胎児は誰のものなのだろうか。宿した女性の思うがままにして構わないのだろうか。いろんな考え方をする女性が本書には登場する。それぞれ、いろんな言葉を持っている。だけれど、誰もがその自分の言葉に対する迷いも持っているわけだ。自分の意思は揺るがないと思っていたって、いざ目の前に事実を突きつけられたら、どうすべきなのかわからなくなる。不安になる。

本書は「中絶=悪」ということを訴えているわけではない、と思う。「妊娠・中絶」について、読者のみなさん考えてください、と言っているように思えた。

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紙の本

紙の本悪夢のエレベーター

2010/09/22 22:22

頭を柔らかくしたいときに素直に楽しめるコメディサスペンス

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

難しい本に疲れたときにはこういう本が読みたくなる。馬鹿馬鹿しくて、しょーもないけれど、何故か一気に読んでしまう小説。設定自体にリアリティはない。それは確か。でも、テンポがいいんだな。著者は脚本家でもあるとのことだけれど、そうだな、コミカルな舞台を見ている感じ。内容はコミカルどころではないんだけど(苦笑)。

いくつかの視点で描かれる物語。1つめはバーテンダーの小川順の視点。職場の飲み会で酔いつぶれた女の子をマンションまで送った時に妊娠中の妻からの電話。「産まれそう!」だって。慌ててエレベーターに乗り込んだところで気を失う。目覚めるとそこにいるのはヤクザっぽい男とオタクっぽい男と、暗い女。その3人によるとエレベータが故障して動かないらしい。パニックになる小川。何てったって子供が産まれそうなんだから。
が、そんなこんなで大騒ぎしているうちに変な展開に。

次はオタクの役を任されたオカマ「マッキー」の視点。「役を任された」って・・・。そう、上記のエレベーター故障事件は故意に起こされたもの。さてさて、何故こんな事になったのだろうか。

そして、ヤクザ風の男・三郎の視点。この事件の首謀者(といっていいのかな?)。けれど頼りない男。一番真剣なんだけど、一番コミカルかもしれない。何をやっても失敗してしまう人間の典型のような男。思いもよらず犯してしまう罪。それも勘違いで。一体、どうしたっていうんだ!

エピローグでは・・・。本当の首謀者が明らかに。

笑えるサスペンスとしては上出来。グロい表現もあるけれど、読み終えたあとに不快感も残らない。

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紙の本

紙の本四畳半神話大系

2010/08/17 13:29

人生なんてそんなもの。1つの選択で劇的に変わったりしないんだ。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は4話で構成されている。
第1話を読み終わった段階で、「あぁ、これは『太陽の塔』と同じようなものか・・・」と思い、第2話の途中で頭に「?」が浮かんだ。読んだ覚えのある文章がそのまま散りばめられており、主人公も第1話と同じ時間に生きている。少なくとも第1話の続きではないらしい。そこで気づく。カバー裏面にあるではないか。”4つの平行世界”と。そういうことなのだ。

主人公「私」は、大学に入ったばかりの春にどのサークルで華やかなキャンパスライフを送ろうかと迷う。数ある新入生用のビラの中で特に惹かれたのは、次の4枚。映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関〈福猫飯店〉。そして、この4つのビラのうちどれかを選択した時点で、「私」の人生は平行して進んでいく。映画サークルを選択した人生、奇想天外なビラについていった人生、ソフトボールサークルに入会した人生、秘密機関に身を置いた人生。これらの人生が平行して進んでいくのである。
どこかの本か、それとも映画だったか、ドキュメントだったか、それは定かではないが、以前、聞いた(読んだ)ことがある。人は何かを選択するとき、その時点で選択肢の数だけ人生が並行して進むのだと。それ故、異次元だかなんだかわからないが、この世には人の数の何倍もの人生が平行して存在しているのだと。

同じような文句が各話に散りばめられているということは・・・。そうである。どの道を選択したところで、結末はそう変わらない。同じ人間が歩くんだ。1つの選択で劇的な変化が起きるなんてそうそうあるものじゃない。しかし、決して退屈ではなかった。それぞれの繋がりを見つけては愉しんだ。最後の第4話なんて、全てを締めくくるにふさわしい話だ。

私は著者のこの文体が好きである。もったいぶったような言い回し。笑いをこらえられないほどに格好付けた喩え。そのくせ、実際に起きていることと言ったら、些細なことなのである。まぁ、中には程度を越えたものもあるが。
そして、どこかネジが歪んだ登場人物も好きだ。近くにはいて欲しくないけれど。

人生なんてそんなもの。深刻にならないで愉しもう。そんな声が聞こえる気がする。

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紙の本

紙の本悪人 下

2010/07/31 17:36

本当の「悪人」は誰なんだろうか。私には無責任に影に隠れたまま当事者に石を投げつける人間たちこそが「悪人」だと思えて仕方ない。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終えた今、思うのは・・・。
直接の加害者も、間接の加害者も、確かに罪を犯した。人の命を奪ったのだし、奪うきっかけを作ったのだし。
だけれど、本当の「悪人」は、一番の「悪人」は、この2人じゃない。そう思う。
本当の「悪人」は、匿名で被害者の遺族や加害者の家族のもとに、誹謗中傷を続けた見えない人間たちだ。その行為には「悪意」以外の何物も見いだせない。恐らく、自分の快楽・自己満足のためだけに人を傷つける。そして、素知らぬふりで誰にも責められることなく暮らしている。そういう人間が一番の「悪人」ではないのか。

裕一の本心はどうだったのか。誰にもわからない。けれど、その心の中にあるのは「悪」だけではないはず。殺人を肯定することは絶対にしてはいけない。それは許される行為ではない。わかる。それはわかるんだ。でも・・・。
裕一に温もりを求め、失いたくないがために一緒に居続けることを望んだ光代を責められるだろうか。心に何の曇りもなく、ただまっすぐに責めることができるだろうか。

被害者をもてあそんだ男。彼もまた本心はどうだったのだろうか。その中には「怯え」がなかっただろうか。そして、それを隠すために軽々しい態度をとっていたのではなかったのだろうか。それは傍目から見て決して気持ちのよいものではない態度だ。腹立たしさも感じる。しかし、彼の心の中もまた、「悪」だけではなかった気がする。

冒頭に書いた通り、本当の「悪人」は、人を傷つけ喜ぶ傍観者たちではないか。自分たちは罰も受けず、罪悪感も持たず、ただカヤの外で他人に石を投げ続けている。それこそが「悪」ではないのか。そう思えて仕方がない。

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紙の本

性格も変わっていれば、経歴も普通じゃない。でも嗅覚は抜群の弁護士

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なかなか見られないぞ。こんなキャラの弁護士。
ひねくれているというか、正直だというか。
とにかく何でも疑ってかかれというのが信条のようだ。
まぁ、表面だけに騙されて客観的な判断ができなくなってしまうと、法律家としてはいかがなものかと思うものね。
客観的な事実を集めて、それをもとに判断する。
一見すると無関係に思えるようなものでも、真実へのヒントになっているものもある。
そういうのは、ミステリ小説によくある設定だけれど。

なんとなく「特上カバチ!」とかを思い出すけれど(同じ法律もののコミックということで)、キャラが全然違う。
でも、人間の本質というか、人間を描いているという点では同じかも。

最初は依頼者の敵か!と思わせておいて、最後には一番弱い人が得するように持っていく。
かなりの腕の弁護士だと見たぞ^^

2巻以降も楽しみだ。

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紙の本

こんな弁護士いるわきゃない!だけどそれが面白いのだ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第2巻は男と女の話が多かったような気がする。
定年離婚とか、内縁の夫が亡くなった時の遺産相続の話とか。
あとは専業主夫の話も。

感情が先に立ちやすい問題だけに、いったんこじれてしまうと、元に戻すのは大変。冷静に横から見れば簡単な話に思えちゃうんだけどね。
だけど、それを本人たちに諭すのは、相当な器量が必要になってくる。
あと、話の持っていきかたも大切だよね。

九頭(くず)弁護士は、少し斜めから人を見ているのか、ホンネを見抜くのが上手い。
「なんで?!」って思うくらい見透かす設定は、迷探偵の推理と似ていたりして。
刑事ドラマでも「なんでそれでわかっちゃうんだっ!」って思うものがあるよねぇ。
根拠は何ですか?ってツッコミたくなるけれど、でも何となくこの人ならわかっちゃうのかもとも思う。

弁護士の話だけれど、法律はメインテーマじゃない。
人間ドラマなんだよね。
だから面白い。

さて、3巻はどんなドラマが始まるんだろうか。

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紙の本

紙の本街の灯

2010/07/05 01:21

探偵とも助手とも言えない、そんなベッキーさんに一目惚れです。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

初めて手にした北村薫氏の作品。
舞台は昭和初期の東京。
主人公「わたし」は社長令嬢の花村英子。
そこへ、新しい運転手として雇われてきたのが別宮(べっく)みつ子という若い女性だった。
まだまだ上流階級の女性はお供無しで外出することもままならない時代。女性の運転手というのも珍しい。英子の父は優秀な経営者らしく斬新な思考の持ち主だったのだろう。
英子は別宮に初めて会ったとき、たまたま読んでいたサッカレーの「虚栄の市」のヒロインの名前が頭に浮かび、以来、彼女を「ベッキーさん」と呼ぶことにする。

ミステリーはそれなりに読んできたが、ベッキーさんのようなスタンスの人物は珍しい。探偵というわけでもなく、かといって助手というわけでもない。ベッキーさん自身が謎めいていて、「何者なんだろう」という興味をかき立てる存在なのだ。
世間知らずのお嬢様(賢くはあったと思うが)である英子を、少しずつ交わす言葉で徐々に教育していく様は、読んでいて気持ちがいいほど見事である。

昭和初期のお嬢様方の会話や街の雰囲気、なんだか緩やかな空気が感じられて、それもまた心地よかった。

本書は「ベッキーさんシリーズ」の第1冊目。
「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3作品が収められている。

第2冊目は「玻璃の天(文春文庫)」。
第3冊目は、直木賞受賞作である「鷺と雪」。
「鷺と雪」で「ベッキーさんシリーズ」は最終巻となるらしい。
早く一気に読み切ってしまいたいものだ。

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紙の本

紙の本チア男子!!

2012/03/16 20:27

熱い熱いチア男子たちの物語。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

柔道一家に育った晴希。幼い頃から柔道をする姉の背中を追いかけながら育った。自分の才能に限界を感じていた彼は大学生になったばかりの頃の怪我をきっかけに柔道部を辞めた。そして、同時に柔道部を辞めた幼なじみの一馬が言った「俺はハルと新しいこと始める」という言葉でチアリーディングを始めることになる。一馬の亡くなった母親がチアリーディングをしていたのだ。二人っきりで始めたチアだったけれど、徐々に仲間は増えていき…。

チアリーディングというのをちゃんと観たことがないので、いろんな技の名前がどんどん出てくると少し混乱。表紙の裏にあるイラストを見ながら確認できるものもあったけれど、そうじゃないものはとりあえず名前だけ覚えるって感じになった。うーん…。もっといろんな技を図解してくれるとイメージしやすかったかなぁと残念。けれど、登場する大学生の男子たちのキャラクターは魅力的で、いろんな傷を隠しながら強がってる姿は、微笑ましくもあり、切なげでもあり。
チアリーディングを初めて数ヶ月で形にしてしまう身体能力には驚いてしまう。そのトレーニング方法について詳しく記されているので、それなりにリアリティもある(流れた時間と内容の濃さにギャップは感じるが…)。でも、そんな細かなことはどうでもいいんだ。彼らのチアに懸ける思いが熱い。それぞれに大事なものを目指してステップアップしていく。

学祭での舞台を目指してスタートしたチアメンバーは7人。初舞台が終わったあと、チアリーディング全国選手権を目指して再スタート。メンバーは16人になっていた。
16人というのはチームとして成立する最低限の数字なのかな? 第二ステージから加わった9人だけれど、あまり触れられなかった男子もいた。もったいないなぁ…。ヤクザな世界に憧れている"金"さんの舎弟、"銀"と"銅"なんていっつも二人一組扱い。それでもスポットライトはほとんど当たらなくて。人数を減らすわけにはいかなかったんだろうか(舞台の様子を読むと16人は必要だったんだろうという印象も受ける)。少しキャラがかぶることもあって、名前がちゃんと頭に入るまでは混乱するところもあったかな。

途中で少し読むスピードが落ちて、時々止まったりもしたけれど、最終章は泣きながら読んだ。お互いにぶつかりながらも最後はチームとして一つになった彼らの気持ちが熱すぎて、涙が止まらなかった。だから朝井さんの文章は好きなんだ。

「星やどりの声」が朝井さんの作品では一番好き。この作品は二番目かな。最新作も早く読みたい。

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紙の本

磯野家をモデルにしていることで、わかりやすい。けれど、やはり「相続税」って難しい。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

同じ著者が書いた「磯野家の相続」は、日本人に一番馴染み深い家族を使って小難しい”相続”をわかりやすく説明した良書だった。波平に隠し子がいたら?波平に前妻の子がいたら?など、ほのぼの家族をどろどろ家族にしちゃったけれど(本書ではカツオがかなりやらかしている)。
今度は、相続についての協議が終わったあと、忘れた頃にやってくる「相続税(の申告)」についてだ。

前書と同じく被相続人(死亡した人)は、波平。相続人は主にフネ、サザエ、カツオ、ワカメの4人。これに例えばサザエが波平より先に死亡した場合は?(タラちゃんが代襲相続人になる)とか、遺言書でノリヘイに遺贈したら?とか、イクラちゃんを養子にしたら?などといったケースで、様々な視点から「相続税」について解説している。

それにしても「相続税法」ってのは、なんでこんなにややこしいのだろう。「相続税」に限らず「税法」全体的にややこしいんだけれど。が、給与をもらっている人ならほとんどが所得税や住民税は源泉徴収だし、固定資産税は市町村から納付書が勝手に送られてくるわけだし、自ら申告する・・・なんてことは滅多にない。
「相続税」の申告というのは、一生に一度も経験することがないという人のほうが多いのだろう。しかし、今後は控除額の減額などということが考えられる。もしかしたらその一生に一度あるかないかの経験をするかもしれない。
そうなったらまずは何から手をつければいいのだろう。

税理士に一任するというのも一つの手ではあるが、そこまで他人任せにしてもよいものだろうか。ある程度、税理士の口から出る用語が分かっていたほうが、いいに決まってる。税金については、何も知らないより、少しでも知識があるほうが得することが多いのだ。

いくら易しく書いているといっても税法特有の用語の難しさは避けられない。似たような言葉が多く登場するので、途中で投げ出したくなる人もいるかもしれない。それでも他の「相続税」について書かれた本よりはとっつきやすいのではないだろうか。
磯野家という超有名な家族を題材にしているから、人間関係もイメージしやすい。無機質な「妻」「子」なんていう言葉より、「フネ」「サザエ」と書いてくれると、それだけで絵が浮かんでくるってものだ。

自分には関係ないよなんて思っていたら、いつの間にか「相続税」の更正決定通知かなんかが届いたりして、そのうえに「延滞税」やら「無申告加算金」やらがくっついてきたりするかもしれない。その前に、基本的な知識を頭に留めておくためにも、一読しておくと心の準備ができるのかも。
それに、「相続税」の賢い節税術についても触れられているので、読んでおいて損はない一冊だ。

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紙の本

紙の本三つの秘文字 下

2011/11/25 16:00

上巻以上の怒濤の展開。息をつく暇もなかった…。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

上巻の冒頭で死体を発見した主人公・トーラは、上巻の最後には自分を傷つけようとする者から逃れようと、夫・ダンカンの実家に身を寄せていた。しかし…。そこもまた安全ではないことが、下巻の冒頭で明らかになる。一体、どこまで逃げれば安全だと言えるのだろう。トーラの敵は世界中の何処にでもいるような気分になってくる(実際はイギリスの片隅での事件なのだが)。

心にも身体も傷だらけのトーラ。満身創痍と言ってもよい。謎を追いかけるのはやめようという自分と、追いかけ続けようとする自分と闘ってばかり。結局は後者が勝つのだけれど、何が彼女をそこまで駆り立てるのだろう。「医者」としての良心なのだろうか。それとも…?

上巻では少しずつしか進まなかったように思えるくらい、下巻のストーリー展開のスピードは素晴らしかった。次から次へとトーラを死へと追いやろうとする”者”たち。下巻の途中で謎解きそのものは終わる。けれど、トーラの危機は去らない。そこからまたこれまでにも勝るとも劣らない”冒険”が幕を開ける。ホッと息をつく暇もないくらいだ。

シェトランド諸島に受け継がれる伝説を巧みに物語に織り込んだミステリ。謎解きとしては今一つ追い切れなかった部分もある。ストーリーを追うので必死だった。再読時にはもっと深く読み込めるだろうと期待している。それだけの力を持っていると感じる。

本書の原題は「SACRIFICE」。「生贄」と訳せばいいのだろうか。読み終えた今、そのタイトルの持つ意味がよく分かる。

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紙の本

紙の本三つの秘文字 上

2011/11/23 17:58

閉鎖的な小さな島で見つかった身元不明の女性の遺体。発見したトーラの運命は?! 誰が敵で誰が味方なのだろうか…。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

産婦人科医であるトーラは、夫が決めた新居に引っ越したばかりであった。しかし、その小さな島がトーラを歓迎しているようには感じられないうえに、夫は家にいない時間が多く、トーラは鬱々とした日々を送っている。そんな時に可愛がっていた一頭の馬が死んでしまう。法律では禁じられているものの、そのまま業者に渡してしまう気にはなれなくて、庭に埋めようと穴を掘っていた雨の日、思いも寄らなかったものを見つけてしまう。心臓がえぐられた女性の遺体だ。しかも、背中にはメスのようなものでつけられた三つのルーン文字…。なぜ彼女はこんなところに埋められたのだろうか。

閉鎖的で小さな社会の中で起きた事件。なぜだかトーラが思う方向へ進んでくれない。何かが、あるいは誰かが、または何もかもが、邪魔をするのだ。誰がトーラの味方で、誰がトーラの敵なのか…。
降り続く雨や、凍り付くような寒さも、禍々しい雰囲気を醸し出している。

最初は些細なことで苛つくトーラに苛つきながら読んでいた(苦笑)。なぜに彼女はこれほどまでに落ち着かない状態なのだろうか。それが少しずつ明らかになっていく。周りにとけ込めない苛つき、夫と上手くコミュニケーションがとれない苛つき、職場での上司の評価が気になるための苛つき。そうして、産婦人科医でありながら、自分自身さえ妊娠することができないことへの苛つき…。彼女は自分への不妊治療を続けているのに、子供を授かることができない。

死体を見つけたときに現れた警部補のアンディ・ダン。彼は最初からこの死体の身元を探すことに消極的だ。なぜか何でもないことのように扱おうとする。彼は味方なのか、敵なのか。
ダンの部下であるダラク巡査部長。少しも隙を見せない完璧な女性。トーラにとって、彼女は味方なのか、敵なのか。
そして上司である医長のケン・ギフォード。彼に妙に魅力を感じてしまいながら、恐れも抱くトーラ。彼は味方なのか、敵なのか。

この小さな島では誰もが幼い頃からの知り合いなのだ。そこでの結束力のようなものが、余所者であるトーラを近づけまいとしているようだ。ギフォードも、アンディ・ダンも、そしてトーラの夫であるダンカンも。
夫でさえ何かを隠している…。誰を頼ったらいいのかわからないのに、死体を掘り起こしてしまったことから始まる様々な危険に身を晒さなければならないトーラ。その恐怖がよく伝わる。小さな島に伝わる伝説がまた、よい具合に謎と恐怖を煽ってくれる。

遺体の背中に刻まれた三つの文字は一体何をあらわしているのだろうか。彼女が殺される直前に生んだと思われる子供はどうなったのだろうか。そして、彼女はなぜトーラの家の庭に埋められたのか。
謎の中心に踏み込んだと思ったら、また引き戻される。引き戻されては、また新たな手がかりが見つかる。少しも目を離せない展開にページをめくる手を止めることができない。

下巻はどんな展開になっているのだろうか。
早く早くと気持ちが急いてならない。

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紙の本

紙の本魔女は甦る

2011/11/19 22:03

それを生み出した「魔女」が手に負えなくなった「悪魔」は、もうどうしようもないのだろうか…。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スプラッタ映画のワンシーンのような場面でストーリーは始まる。数十片にバラバラにされた死体が発見されたというのだ。それは十数年もの間、刑事として様々な死体を見てきた男でさえも、危うく嘔吐しそうになるほどに酷い状態だった。さぞかし身元判明に時間がかかるのだろうと思いきや、所持品から意外と早く身元がわかった。製薬会社の元社員で、非常に穏和な青年だそうだ。

果たして、死体は本当に彼なのか? まずはそれが頭をよぎる。
死体が発見され、「さあご覧なさい」とばかりに歯科医の診察票が見つかり、歯科医が彼の死体に間違いないと断言する。普通のミステリなら、この流れに疑問を抱かないだろうか?
しかし、これはそんな処に引っかかっていられるようなミステリ(?)ではなかった…。

最初は少々冗長な感じがして、ページをめくる手もそれほど早まらなかったのだけれど、3分の1を過ぎた辺りから、逆に止まらなくなってしまう。次々と情報が集まるに従って、事件が展開し始める。その合間、合間に、被害者の過去、刑事の過去のエピソードが挟まれ、読み手を飽きさせない。

被害者のエピソードも、警察庁から派遣された刑事のエピソードもかなり辛い。残酷すぎるほど、残酷な話だ。
それらのエピソードがストーリーに生きてくる。

冒頭の殺人事件の実行犯の意外性。先に例が無いわけではない。というより…。これ以上はネタバレになるからやめておこう。ただ、実行犯がそのまま犯人というわけでは無いというのが、本作の特徴か。
警察庁から派遣されてきた刑事はいわゆるキャリア組だ。けれど、麻薬捜査に長らく執着しており、それがため昇進はできない。その刑事がなぜこのバラバラ殺人事件に首を突っこんできたかと言えば、この事件に「クスリ」が関わっているからにほかならない。

「クスリ」は、人に良い影響を及ぼすこともあれば、その逆も大いにある。要は使い方次第。その悪い方に使いこなしたのが、現代に甦った「魔女」だ。人の精神を、肉体を思いのままに操ろうと思えば可能。いや、人だけではなく、他の動物たちの方が先に「魔女」の餌食になる。「動物実験」という名の下に。それが予想を大きく外した結果をもたらしたとしたら…? 「魔女」の手に負えなくなってしまったら?
「魔女」でさえ対処ができないのなら、誰が「魔女」が創り出した「悪魔」を退治できるのだろう。

ラスト前はパニック映画のような雰囲気で、少し乱暴な気がしないでも無いが、読者に疑問を投げかけるようなラストシーンはよい。
「これは始まりの終わりにすぎないのだ」
この後、世界はどうなっていくのだろうか。

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紙の本

紙の本適当な日本語

2011/09/15 23:01

「適当」っていうのはいい言葉だなぁと思う。ガチガチでもなくユルユルでもなくちょうどよい加減の言葉。とても読みやすい「日本語」の本。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

自分でも「言葉」には細かい方だと思っている。ちょっとした言葉遣いが気になって仕方がない。
ファミレスでの「ご注文はおそろいでしょうか?」「こちら、カルボナーラになります」「5,000円からお預かりします」「以上でよろしかったでしょうか」などなど・・・。なんか聞くたびにモヤモヤしてしまうのだ。
だからといって、私自身が本当に「正しい」言葉遣いをしているのか?と問われれば、「はい!」と元気よく断言する自信はない。

本書のポイントは「言葉」より「気持ち」を大切にということかな。それが本来の日本語の使い方と異なっていたとしても、その「気持ち」を酌み取ってコミュニケーションをとりましょうと。「その言葉は間違っている!」と頭ごなしに決めつけるのではなく、もし本当に不適切であれば、「最近の若者は・・・」などという筋違いの枕詞をつけずに、「それはこう使うのだよ」と教えてあげればいいではないの。そういうことだ。耳が痛い・・・(苦笑)。

タイトルに使っている「適当な」という言葉には「適切である」という意味と「いい加減」という意味を含んでいるのだと金田一先生は言う。
話し手、聞き手、その場の状況を勘案した「適切」さ。そして言葉への柔軟な態度を意味する「いい加減」さ。この2つを合わせて「適当」と呼ぶのだ。

第1章「適当な日本語相談室」では、日本語に関する31の相談に金田一先生が答えている。その答えに前述したように「言葉」より「気持ち」だよという部分がよく表れている。言葉は変化するもの。けれど、変わらない言葉というものもあるわけで、そのあたりの使い分けというか、なんというか。要するに「適当に」ということなのだ。臨機応変に。そのTPOに合わせた言葉を、ということかな。「正しい(と思っている)言葉」を重視しすぎるあまりに人の気持ちを無視してはいけない。

第2章は「今こそ使いたい懐かしい言葉」。ここでは10の言葉をあげている。その中にはないけれど、「おいたしちゃだめよ」なんて最近言う人はいるのかしら?

第3章は「パソコン&ケータイ時代の感じ選び」。同じ読みだけれど意味が違う言葉を並べて、どれが正解でしょうというクイズが36題。それほど難しいものはないけれど、ところどころ気になる点も。ある例題では「常用外」だけれどもOKとなっていて、違う例題では「常用外」だからNGとされていたりする。この違いはなんだろうなぁと引っかかるのだけれど、こういう妙なこだわりがいけないのかしらねぇ(苦笑)。

言葉に関しては、絶対的に「正しい」というものがあるのだろうか。時代と共にどんどんと変わっていく「言葉」。最初は「おかしい」と言われたものもいつの間にか受け容れられてしまうことだって多い。「正しい」言葉なんて無くて、その時々に合わせた「適当」な言葉だけがあるんじゃないかなぁ。読み終えた今、そう思う。

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