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のちもちさんのレビュー一覧

投稿者:のちもち

242 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

こういうのがあれば歴史嫌いは減ります、確実に。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

誰が読むか、によって評価が異なるが、「過去に日本史の教科書を読んだ」人ならば、この本は読むべきです。日本史の教科書で見たことのある名称、テレビで見たことのある名称が、「懐かしさ」とともに蘇ります。そして何より「面白い」。歴史好き、ではない自分でも、我が国日本の歴史は知っておきたい、興味関心がある分野です。が、教科書、授業の日本史というのは、「キーワード」を覚えることがメインなんですよね。応仁の乱、墾田永年私財法、建武の新政...キーワードは確かに覚えていますが、その内容がおぼつかない。これって何の意味があるんだろう?って思っちゃいます。
本書は、それと正反対のアプローチで、その事件や事象がおこった背景を分かりやすく、丁寧に説明してくれているスグレモノ。いまさらながら「あー、そうだったんだ..」というものもあり(忘れてしまっているだけかもしれないが)、いや、今この時点で学べたのはプラスになるはず、と考えよう。
そして(考えてみれば当たりまえだけど)「背景」をベースにエピソードで語る日本史がこれほど魅力的だとは驚きです。約2日で、縄文時代からいっきにバブル景気まで駆け足しましたが、息切れすることなく、走りきった感じです。
本書の「背景ベース」の日本史は、おそらくは「かつて日本史を教科書で勉強した」人には強烈に響くと思われます。ただ、これをもって「受験」のツールとするにはちょっとキビシイかも。忘れている部分は多かれど、どっかに残っている記憶が引きずり出される快感、というのかなあ...現役世代にはそれがないから、歴史を初めて読む、にはちょっと不適かも。なので、年号のゴロ合わせ、は要らないと思われます。試験を受けない読者は、年号を覚える必要もないし。
さて、日本史は過去のもの(当然)ですが、過去に教科書に書かれていたものと変わっているものもあるようです。新たな発見があって、「修正」されるものなんですね。教科書に書かれた「過去のもの」も100%事実ではない、ってことですね。本書で初めてその「修正」を知ったのは、あの「前方後円墳」の名称。大阪・堺市のかぎ型の古墳ですね。条件反射的に「仁徳天皇陵」と刷り込まれていますが(これは記憶が鮮明だった)、この中で眠っているのが仁徳天皇かどうかわからないらしい。で、今は「大仙古墳」というんだって。
丁度子供が歴史を学び始めたところです。 悲しいかな「キーワード学習」は「修正」されていないようなので、本書を持ってサポートしたい。楽しければ興味を持つ。で覚えるもんね。

【ことば】...日本の歴史を研究している国は多いんです。世界史上類を見ない急成長を遂げ、稀に見る奇跡の復興を遂げた国、それが日本です。

経済的な側面だけではなく、日本史の魅力に取りつかれる外国人は少なくない。自国の歴史を知らない日本人も。自分の国を誇りに思う人が少ないのが、我が国、日本の特徴だともいわれている。自国の歴史があって、今の自分がいる。日本史に俄然興味が湧いてきた。

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紙の本

本は重要だなあ。本好きでよかったー

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

テレビ東京「ワールドサテライト」のコーナーで、著名人が推薦する本を紹介するものがある(らしい)のだが、その「まとめ」である。さすが、功なり名をなした方々だけに、紹介する本も、その本に対して語る内容もすばらしい。そもそも、やはりある分野で成功を成し遂げた方は、その分野に限らず、本を読んでいるんだなあ、って改めて。

ふとしたきっかけで読み始めた歴史小説の虜になって、自らも歴史小説家になった方。とりつかれたように、本によって人生を変えてしまった方。子供のころから宇宙が好きだった宇宙飛行士。
それぞれ、本との出会い、本の「活用」方法は異なるけれど、その人の人生において大きな意味のある本、それを持っているんだなあ、って感じた。

(成功しているわけではないけれど)自分には何があるんだろう?少なからず本は読んでいる方だけれども、「これ!」って言われたらはたして?もちろん何冊かは思い浮かぶけれど、それによって「行動」まで変わった、というのはないかなあ。これは本のせいではなくて、本人の行動力のせいだけれども。まあ、これから出会う可能性もまだまだあるしね。

インタビュアー(局アナ?)が、広げすぎず、集中しすぎず、その人の背景と紹介する本をうまく引き出していると感じる。当然、その人の著書はもちろん、本に関する「広い」知識がなければできない仕事ですね。いろんな分野の人がいろんな分野の本を紹介している中で、それについていくだけのミニマムの知識を持っているのは素晴らしいことだと、「脇役」に感動しました。

比較的、古典、外国もの、自己啓発モノ、が多いなあという印象だけれども、小説、というのをあげる方も少なくない。その本の中から、その当時の自らの環境を重ね合わせて「何か」を見出している、そういう印象です。専門職の方は、その分野に遠からぬ本をあげているけれども、経営者の方は「人間」がテーマのものが多いですね。
マーケティングやビジネス、といったものもありましたが、「人」というテーマの本が多く、それをご自身の中の軸に据えていらっしゃる経営者が少なからずいることは、感銘をうけます。そのようなトップがいるからこそ、「正しい」企業活動をされているんでしょうね。

意外にも、ここで紹介されている本を「読んでみよう」という気にならなかった。なんだろ?書評ブログなどで紹介されているものの方が「近しい」気がしました。自分のレベルが変わったら、きっと「読んでみよう」っていう気になるんだろうけど。
「いい本を探す」というよりも、「この方はこんな本を読んで、感動したんだ」という発見が面白い、と思います。


【ことば】...想像力の部分を切り捨てて合理性だけで社会を成立させようとすると、生きづらくなると思いませんか?

理的でありすぎることを危ないと感じていた心理学者ユングの本を紹介した占星術研究家の鏡リュウジさんの言葉です。まさに。自分の周りを見てみれば気づくことだけれど、「組織」になると抜け落ちる点ですね。合理性だけで成立したら、つまらないし、新しいことが生まれない。

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紙の本

紙の本神様のカルテ 1

2011/11/30 08:07

読後の感想は「涼」です

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かなり話題になった本で、ドラマ(?)にもなったよう。映像は見ていないので先入観なしに読み始める。タイトルから容易に想像できるが「医者」が主人公である。前半中盤にかけては「神様の」という意味合いは出てこない。かなり個性的なキャラクターの主人公である。夏目漱石を敬愛して話し方も古臭い...ってなかなか小説に用いるのに出てくるアイデアではないよなあ、ってヘンなところに感心。

主人公は、田舎の病院に勤める若い医者。「24時間365日」という崇高なビジョンを掲げた病院で働くが、「理想と現実」はどこにでもある話で、そこで「24時間365日」働く側としては、過酷な環境。その環境に対しては違和感を持ちつつも、また、「もっと楽であろう」大学病院への誘いとの選択に悩みつつも、職場の仲間、住居(集合住宅みたいなもの)の仲間とのやり取りの中で、また当然に「仕事」を通じて、何が本質であるのかを見つけていく、という内容。

登場人物や背景については、「漱石」流になっていたり、消化器系の専門で、アルコール依存症の患者対応をしつつも、自身も「お酒大好き」なところがあったり、医者という側面と、個人としての側面が、離れているようで一致する方向に進むようで、コミカルに描かれている展開が心地よい。 過酷な勤務をこなし、その環境に必ずしも満足していないように見えつつも、「職務」については真剣であること。その「熱さ」故に、周囲から変人扱いされながらも、「自分のコア部分」を強くもっていて、前を見る視点にぶれがない。その中で、最後には、見つけるんですね。自分にとっての「方向」を。

小説の中ではあるけれども、こんなキャラクターに好意を抱くのは当然かもしれない。医者を職業にしていてもその中でいろいろな選択肢はある。「医学」を極める人もいるだろうし、目の前の苦しんでいる人を(たとえ自分の専門外でも)助けることに生きがいを感じる人も。それを最後に選択する。悩んだ末、というよりは、諸々の「事件」を経験する中で、自然と選択が固まったのだろうし、そもそも自分の中にあった結論を肉付けして表出しただけのような気もする。

そして、意外にも(想定していませんでしたが)、泣ける場面がありました。正確にいえば、涙がでてきてしまった場面が。電車の中でしたが耐えきれかなった。それくらいのめり込めるストーリーなのです。

専門的にみれば、地方の医者不足や、医療全体の問題、もっといえば「命の問題」も含めて、結構「重たい」テーマなのかもしれないが、キャラクターの設定もあってか、軽快で読みやすい。ドラマ化されるだろうなあ、っていうノリでもあるが、若い人も、若い「と思っている」人も受け入れられる内容です。

【ことば】...法は患者を守るための道具であって、法を守って患者を孤立させていては意味がない。そこを判断する裁量くらいは現場の医者にあってしかるべきである。

重篤患者の「親族ではない」人への情報告知の場面。「決まりだから」親族以外には話さないのが正しいとは限らない。その患者に「命よりも大切なものをもらった」非関係者に告知する場面。当たり前なのかもしれないけれど、法は何のために存在するか、という本質を見失わなければ、答えはでる。

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紙の本

紙の本警告 目覚めよ!日本

2011/11/09 20:07

暗澹たる気に...抜け出さねばっ

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かなりストレートな著者の日本再生論。震災、原発事故、円高、不況、財政赤字...閉そく感漂う日本を救う著者の提言です。大部分は、通貨問題や政治の混迷、国家財政の債務超過などについての「現実」に警告を発していて、正直なところ、「わかっちゃいるけど身の回りの問題ではないなあ」って、軽くみていた自分には、かなり刺激的。「よくない」とは分かっているけれども、「どうよくない」のか、って知ろうとはしていなかった。貿易に関する仕事でもないし、TPP問題にも直接は関係ない。「対岸の火事」というところまではいっていないけれども、むしろ目の前の「自分の」問題の方が大事...わりとこういうひとって多いんじゃないかっていう気もする。
著者が10年以上も言い続けてきたこと、10年以上前に提言したこと、これらが現実に目の前に突き付けられた感じになってきている。震災や事故は想定していなかったとは思うけれども、著者の言うように、時の政治家、官僚が何か手を打ってきたのかどうか、かなり怪しい。震災後のゴタゴタをメディアで垣間見るだけでもなんとなくわかる。もちろん、首尾よく手を打った策もあるとは思うし(そういうのってメディアには上がらないだろうし)、手を打ってきたからこそなんとか今まで「維持」できているのかもしれないけれど...
事態はけして楽観的ではないようだ。まずはこういう意見、見解を知る、ってことも大事。メディアは「視聴率の取れる」報道を優先し、日本の将来を考えているわけではなさそうだ。でもそんなメディアに影響を受けるのも事実。本質的なところをはっきりと言えるような環境はないものなのか...それがひとつは2年前の政権交代だったのだろうけれど、著者の指摘するように、現政権は「過去を引きずる」状態がいまだに続いているようです。「人材不足」と著者は指摘するが、政治家でも官僚でも「なりたて」の頃は、著者のように意欲を持っていたはずなのにね...
先行きが不明、将来が見えにくいのが、最も「不安」を煽るんだと思う。増税は嫌だけれども、それが未来にむけてどうつながってくか、必ずしも成就しなくたって、未来図、もっと言えば「夢」を見ることができれば、一定期間の我慢をすることはできるはずだ(文句は言うと思うけれど)。
被災地の復興や増税、TPP参加など、まさに「今」の問題を取り上げているので、「リアルタイム」に、ビビットに感じるものはある。いずれの施策も「あちらを立てればこちらが...」というのは当たり前なんだと思う。それを「グレー」のままに先送りにするのは、最も危険なことだと、改めて知らされる。マクロ=国全体の(将来的な)利益とミクロ=個別に損を被ることになるかもしれない人たち。どちらを優先するか、ではなくて、どちらも優先する。それが政治、行政なんだよね。
たっぷりと「今の状況」を知らされたが、個人レベルでいえば、「自分の価値をあげること」がこれからは一番大事ということ。「会社員としての価値」ではなくて、ね。著者の提唱するような「国際的な」人間にならずとも、できることはあると思う。それを「グレー」のままに先送りしている場合ではない。もう、まったなし、だ。

【ことば】大切なことは...「自分はどのような人生を送りたいのか」を決定し、そこから...「自分への投資はどの分野にどれだけ必要なのか」...プランを作っていくことである。

自分への投資。お金もそうだし時間もそう。これがポイントだと思う。「今から」何ができるか、何をしたいか、ということ。まだ遅くはないはず。どんなものでも「リターン」のある投資は、自分(そして自分の大切な人)への投資だ。 投資に「時間」という概念も常に持ちたい。今だからこそできることがあるはずだから。

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紙の本

紙の本日本人の叡智

2011/08/10 07:56

日本人は「持っている」なあと実感。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

戦国時代から現代まで、どちらかといえば名を知られていない偉人の言葉を紹介。戦国から江戸、明治維新、昭和の戦争期、今の時代から鑑みれば到底想像すらつかない時代背景の中、「本質」を見抜いて、言葉として残した方々が、こんなにいることに、日本人として自信を持てるような内容です。
特に昭和戦争期には、(これこそ考えられないレベルの)「統制」があったものと思われますが、その中でも「正しい」ことを発信していた人はいるんですね。勝手に想像するに、「思っている」人はいても「言葉に出す」人は、少なかったのではないかと。流れの中でそのような「表面的な」時代の流れと相反するものは、歴史上も「伝わらない」ことが多いのでしょう。実際に、教科書はもちろん、公的な書物であっても見たことのない名前、言葉が多くでてきました。
「歴史」というだけである程度の「重み」を感じてしまう、ということもありますが、どの時代にも「傑物」はいたのだなあ、と思います。そして(敢えてそのような選択をしているのでしょうが)どの言葉も、今現在の世の中に通用します。通用する、というよりも、今のこの時代のために存在している、今のこの時代への提言のような気さえしてくる。時代は変わっても、人々の心や、為政者の振る舞い、などは変わっていない部分もある、ということなのでしょうか...
たいていの場合、「名言集」というものは断片的で「(読み物として)面白くない」ものが多い。それはその言葉が発せられた背景が知り得ないから、というのも一つの理由でしょう。本書は、ひとつひとつの言葉の解説は2ページ見開き完結、と短いながらも、その時代の環境がなんとなく感じられるものになっているので、ひとつひとつの言葉の「重み」を感じながら読み進めることができます。これを支えているのは、著者の「思い」の強さだと思う。歴史の中で埋もれていた言葉を見つけ出し、その背景とともに公開する、タイトルにもあるような「叡智」を感じることができるのは、確かに著者のそんな「思い」があるからだと。ひとつひとつについて多くを語るよりも、短く簡潔に伝えるほうがよほど難しいはず。
これらの言葉を得たことで何が変わるかは、今後の自分次第。ひとつ言えるのは、こういう機会を与えてくれた本書との出会いに感謝したい、ということ。自分の言葉が、もしかしたら後世に残るのかも....ないか。

【ことば】欠点の指摘は...発展や繁栄策とはならない...どうすれば...よくなるか...を言い当ててこそ尊い真の批評で、この批評こそ創作につながる。

1900年代前半の近代漆芸の名工、松田権六の言葉。います、「批判」をして「批評」と考える人が。テレビの中にも身の回りにも。それで何が(次に)生まれるか、ってことを考えてない、自己満足ですね。「受ける」立場からで感じたそのことを、「発信する」立場にも映さねばならないね。

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紙の本

地位が人を作るのか、そういう人が地位を占めるのか。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

代表戦だけのファンですが、長谷部選手のことはもちろん知っています。が、「代表」だけを見てきた自分にとっては、彼はとびぬけた技術を持っているのかどうかは分かりません。中田や俊輔などは「うまいなあ」という場面を見ていますけれど、ゲームキャプテンたる長谷部選手はどうなんでしょう?以前は、キャプテンである長谷部選手が後半に交代する場面を目にして、「なぜゲームキャプテンが?」という疑問を持ったこともありました。
評判になっている本書は、長谷部選手の「ありのまま」が語られています。以前に遠藤や俊輔の本を読みましたが、彼らの本が、当人が書いていない、とは言いませんが、この本は間違いなく、長谷部本人の言葉で書かれている、と感じます。タイトルにあるような、ちょっとキレイすぎる言葉が、読み終える頃にはなんの違和感もなく、「彼ならば」当然のように思えてくるような感じさえします。
サッカーが好き、という前提はありますが、カズなどの尊敬できる先輩方の薫陶を受けながら、真摯に「プロサッカー選手」としての道を歩んでいる姿が垣間見れます。テクニックがどうこう、というよりも、あらゆる試合に対して、日本の日本人の代表として、プロとして取り組んでいる姿、少々まじめ「すぎる」感じもしますが、与えられた「天職」に対して取り組む姿勢は尊敬の気持ちにすらなります。食生活や、マスコミ対応、試合前のコンディション調整...27歳にしてここまで徹底して...すごいですねー。W杯南アフリカ大会でのゲームキャプテンに選んだ岡田監督の眼力に畏れ入ります。本書にも自ら書いているように、本人も戸惑いはあったかとは思いますが、それでも「自分のスタイル」を貫いて、役割を全うしています。やはり、そもそもそのような資質は持っていたのでしょう。さらにW杯というサッカー選手にとっては究極の試合においてそれを任されるという、運命にも似たものが降りてきたのかもしれません。
さらにキレイゴトのようですが、「日本のサッカーを活性化する」ことを自らの目標のひとつに置いている著者、そして、W杯決勝T進出、アジアカップ優勝など、キャプテンとしてのひとつの金字塔をクリアしつつある中で、まだ現状に満足していないその視線。かっこいいなあ。
本書にもありましたが、途中交代や、ベンチスタートなど、本人も納得のいかない場面も少なくないはずですが、それをプラスにとらえることができるのは素晴らしいです。自分の技術の足りないところなど、改善すべきことを見出そうと切り替える強さ。テレビで見る限り、交代の場面でも、長谷部選手は不満な表情はしませんよね。W杯でPKで負けたときもそうでした。悔しい、納得いかないことも、表情にださず、プラスに転換できる。本書では伏せてありましたが、本人の中に「大きな目標」が、ぶれずにあるから、かもしれません。そして、いろいろな環境の人と接触し、そして(かなり意外なところですが)多くの本を読んで、刺激を受け、その刺激を活力にしている。インプットもアウトプットもできている人間です。いい男ですねー。
サッカーというよりは、「プロ」としての心得、として読める本です。次のW杯でも是非代表として、ゲームに出て欲しい。応援したい選手のひとりです。


【ことば】...気づかないだけで、日々の生活は頑張っている人々の姿であふれているのだと思う。自分のことでいっぱいいっぱいにならず、そういう姿に気がつける自分でありたい。

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紙の本

今、必要なことがあります。夢に向けて、できることから。

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

つい最近、憧れのT先生の講演を聞いてきました。「販促のコンサル」の方なんですが、「売る」ということに対しての考え方を変えてくれる方です。その講演の中でのキーワードをあげてみると、
・企業の顔が見えるメッセージを出す(「誰が」という部分)
・通販企業であろうとも、「お客様との関係性」が求められる
・「共感・共鳴」が大事。これがあって初めて「販売」が成り立つ。
・その製品を使ってどうなるか、買うのはその製品であるべき理由を伝える
等々...深ーく、感動したものです。そりゃあ、感激しました。セミナーという「多対一」という場面では珍しく、感動のあまり泣きそうになるほど。講師の方が発する言葉もそうなんですけれど、熱意とか、表情とか、すべてがこちらに向いていて、テクニックやスペックなど、表面的なものがそこには一切ないことに心を動かされたのかなあ、って感じています。
セミナーでそんな話を聞き、そんな記憶がまだ十分に残っている状態でこの本を読み始めました。偶然かわかりません。が、そこには日米の違いや、事例として挙げられている企業の規模の違いこそあれ、本質的には同じことが書かれているのです。
本書では、「あの」今やユニークさのみならず数字的な規模も知名度も何もかも世界的となったアップルCEO、スティーブジョブズの考え方、のみならず同じような考え方をもって、イノベーションを成し遂げた事例が並びます。そこに共通していることは...
・メッセージ、ストーリーを正しく伝えることの重要性
・製品ではなく、夢を売ること
・情熱が大事。これは今直面している仕事という範疇だけに限らない。
個人的には、iPhoneやiPadを使っていない。MACユーザーでもない(一時期だけ使用)のだが、やっぱり気になる存在であることは確か。「機能性」という点でiPhoneではない(後発の)スマートフォンを使っているが、これだってiPhoneの存在があったからこそ、スマートフォンに変えようという動機付けがあったわけで...やはりその存在は衝撃的ですよね。確かに世の中が変わっている感じがするよね。全員が全員、自分のようにiPhoneにしたわけじゃないけれど、その登場によって確かに「変化」が、しかも大きな「変化」が生じていることは確かです。
これから先は、この「変化」をどうつかんで、その流れに合ったことを考える必要がある。ジョブズのいう、
『パーソナルコンピュータが買えればいいという時代は終わった。今はコンピュータで何ができるのかを知りたいんです』
これです。これに対して的確なソリューションを的確なタイミングで提供、提案すること、これですね。この感覚を以って、伝えるテクニックについては、それこそアップルの広告展開に見られるテクニックだと思いますが、まずはイノベーションと呼ばれる考え方を徹底することだと思う。テクニックはあくまでも「考え方」というベースの上に載るもの。「それだけ」では成り立たないもの、なんだよ。
さて、「イノベーション」ですが、これはまさにテクニックや教科書で到達できるものではなく。常にアンテナを張りめぐらせ、興味の範囲を広げて、好奇心を持つこと。そして焦点がしぼれたら、そこに対して一心不乱に集中すること、だろうと思います。「イノベーション」を成し遂げた経験が自分にはありませんので、なんともいえませんが、ジョブズやこの本にでてくる事例を読んでも、尊敬する自分の周りの先生に接しても、これらの「熱さ」「真剣さ」は伝わってきます。
以前誰かから、「イノベーション=ふたつの相反する課題を同時に達成すること」と聞きました。そりゃあ簡単なことではないですよね。でもだからこそチャレンジする価値もある。本と講演と、ダブルで叩き込まれました。「熱い」気持ちで取り組む。なんらかのアウトプットをする。小さなことから、できることからはじめていこう。どんなイノベーションだって最初はそんな「小さな」ことだったのだろうしね。


【ことば】イノベーションが目的とするのはクールな製品や...技術をつくることではなく、人々を幸せにすることだ...

iPhoneの開発も、iPadも、ザッポスも、すべてこの考え方が根底にあるんだろうね。そして「誰かを笑顔にする」目標を目標を持って作る、って、すべての人(製品を作る人も)を幸せにする。それを読んだだけの人だって幸せになれる。これだね。これに向けて真剣に取り組むこと。

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紙の本

紙の本官僚の責任

2011/11/08 07:49

辛辣な勇気ある行動...でもちょっと脱力感が...

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「官僚的」という言葉は、「利己的」とか「閉鎖的」「旧態依然」という意味でつかわれることが多い。考えてみれば、自分の住んでいる国を代表して、そのかじ取りをするエリートであるはずなのだけれど(「エリート」という言葉も、ネガティブなイメージがありますわね)、マスメディアのせいなのか、国全体を覆う閉そく感のせいなのか、或いは、「見た目」でダメさがわかる政治家と同一視してしまうせいなのか、自分の利得に目が向いている感じは否めない。
本書は、自分の持っている「官僚」に対してのそんなイメージを増大させる内容だった。「そこまで!?」というものは多くはないけれども、「やっぱり...」という彼らの生態を見せつけられる結果に...本来は「国」「国民」に対して目を向けているべき存在であり、その志を持った人たちが、東大から官僚になるものだと思っていた。人ごとのように言うのは、自分とは無縁の世界であり、到底なれるものではない、と最初から別世界としていたから。ただ、そこにあるのは、利権や出世、安泰、といった「自分」に目を向けている姿しかないようだ。「伏魔殿」と発言して物議をかもした大臣がいたが、この本を読む限りは、言い得て妙、としかいいようがない。
エリートだって、官僚だって人間だから、自分の利益を求めるのはフツーである。聖人、仙人になるべき、とは言わない。中小企業だって、自分の利益だけを追い求めて、本来目をむけるべきお客様にまったく無関心な(無関心ならまだいい。単なる財布と思っている輩も少なくない)経営者もいるだろう。でも、官僚はそうであってはならないよね。だって、税金ですよ。彼らの「サービス」に対しての対価として、民間の自分たちが稼いだ金を捧げているわけで。正しい使い方や、将来を考えた使い方をしていただくなら一向に構わないのですが、なにせ問題は「見えない」ことですね。
政治家なら「選挙」があるので、またメディアの矢面に立つので(メディア報道のやり方の是非は別にして)、いい悪い、ってある程度判断(イメージ)がつく。でも官僚は出てこないからなあ。ヤミの中で何をしているんだか...
とはいえ、深夜まで残業しているというのを聞いたことがあった。たとえそれが政治家の答弁資料の作成であっても(つまり意味のないことであっても)それはそれで「仕事」しているように思っていたが、これとて、本書によれば「虚像」にすぎないようだ。「ポーズ」というのですかね。ワンマン経営の中小企業みたいだ。目を向けている先が完全に誤っていることを分からないのですかね?或いは分かっていても行動できない「縛り」が存在するのでしょうか。
「震災を増税のチャンス」と考えている官僚が存在する、という事実に驚愕です。もはや夢も希望もありません。じゃあ、いち個人として何ができるのか...選挙はないしね。でも政治家センセたちに「改革」してもらうしかないんだろうか...あー行き詰まり感が...

著者は2011年6月の管内閣末期の経済産業省の退職勧奨を受けた一人。唐突な、何の意味があるのか、っていう人事だったけど、なんとなく「オカミ」の思惑も透けて見えたような...


【ことば】「もう何を言っても変わらないさ...」結局、そう思ってあきらめている国民が多いのだろう。選挙の投票率があれほどまでに低いのは、そうした意思の表れなのかもしれない。

これが一番大きな問題かと。「変わる」「変える」と意気込んだ2年前の政権交代が、こうも裏切られてしまった今、「じゃあ、どうしたら?」という気持ちになるのは自明。「公」に頼ることはもはや絶望的なほど、無い。ということです。

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紙の本

「好き」が人を動かす。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

正直なところ、これまでの自分とはまったく無縁の世界。クラシックは嫌いではないが、敢えて聴くほどではない。楽器も何もできないし興味もわかない。ましてや指揮者なんてものは...指揮者がオーケストラに対してどれほどの影響力をもつものなのか、指揮者によって演奏がどう変わるのか、まったくわからない。
本書は、いまや世界的な指揮者として「超」有名な佐渡さんの、自らを語った内容。指揮という者に対してどうこう、という箇所はほとんど皆無で、「音楽が好き」で、その世界で生きていくためにどのような歩みをしてきたか、ということに徹底している。バーンスタイン、小澤征爾といった世界的な方々との出会いや、欧州を中心とした活動(オーディション、コンテストの体験等)など、「音楽好き」の青年がどのように世界を駆けあがっていったのか、というのが本流。
印象に残るのは、オーケストラの演奏家たちと「いっしょに音楽を作る」という姿勢、そして「テクニックではなく音楽を楽しむこと」を徹底した考え方を、終始一貫している、という点。生まれ育った環境に利点があったようだが、もちろんそれだけではなくて、本人の人に言えないような苦悩、努力もあったことと思うが、そこはサラっと触れているだけで、「演奏(会)の感激」を味わうために、それを演奏家、聴衆と分かち合うため「だけ」に専念して邁進している姿が浮かびあがる。
素敵です。「好き」なものを自分の人生の一部にできる、というのはなかなか困難なのが現実だとは思いますが、その困難を、「好き」という情熱が上回ると、著者のような世界に達することができるのだと感動します。本書の内容を表面的に理解すれば、けして器用な方ではないのかもしれませんが、出会った人々との交流を大事にして、そこから何かを「自分のために」活かす感性を持っています。意図的ではなくて、自然体でそうなっているのだと思われますが、ひとうひとつの出会いをプラスにして、一歩一歩「上」に進んでいる様子が見えます。
自分よりも少し上の年代ですが、本書が書かれたのは15年前、ということを考えると、改めて自分の人生を考えてしまいます。遅すぎることはけしてないのでしょうが、「好き」を徹底していく姿にあこがれと尊敬の念を持ちつつ、今からでも間にあうと信じて、自分を見つめ直さねばならない...
企業やビジネス関連のテクニック本もよいけれども、感動するのは、こういう「人間的」な内容ですね。すべて本音で、著者の思いがありのまま、ここに描かれているのは読んでいて爽快な気分になります。それが指揮者という自分(の興味関心)とは遠い存在であっても、ヒトとしてかっこいいなあ、って思うのは、分野とは関係ありませんね。残念ながら、「クラシックのコンサートに行ってみようか」という興味はまだわいてきておりませんが...

【ことば】画家と指揮者には共通する部分があるように思え...どちらもそれなりの技法は必要だが、それに固執していると、人を感動させる...ことはできない...愛する心があって初めて、哀しみや喜びを伝えることができるのだと思う。

分野は異なれど、そこに共通するものはあります。そしてそれはここにあげられた「芸術」の世界だけではないのかもしれません。テクニックはこの土台の上に立つモノ。「伝えたい」気持ちが初めに、土台にあってこそ、ということを改めて思う。

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紙の本

紙の本スコーレNo.4

2012/04/03 18:19

気持ちのよいストーリーです

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

熱中するような趣味もなく、興味関心も薄く、特技があるわけでもない。ごくフツーの女性が、学生から就職、恋愛、それぞれの時において、何を経験し、どう変わっていくか...そんな時系列ストーリーです。
けして自分に自信がないわけではないのだけれど、できのよい妹がいるために気後れしている自分、その背景から抜け出せず、就職しても自分を出せないでいるが故に、苦痛な日々を過ごす。それを変えるきっかけになったのは...極めて日常なんですね、すべてが。特にこだわりも思い入れもない主人公が、日常を過ごす中できっかけを得て変わっていきます。確実に成長していく様子が見て取れます。
大きくは4章だてで、中学時代、高校時代、就職してすぐ、働く部署が変わってから、という構成。それぞれが独立して描かれていますが、どこかで何かで「つながって」いるんですね。前の章にでてきたエピソードが伏線になっていたり、前の章で経験したトラウマを克服したり、と、非常に考え抜かれた、唸ってしまうような映画を見ているような感覚でした。
おそらく、女性読者は引き込まれると思います。自分はそこまで感情移入できず、少々第三者的な目線で読んでいましたが、「普通の何のとりえもない」主人公が変わっていく姿、というのを見ていくのは、とても心地よいものでした。その時はムダのように思えても、後で必ずつながってくる、ということも得られました。「何のとりえもない」というのは、実は主人公が「気付いていなかった」だけのことなんですね。
最後の方が、「ハッピーエンドになればいいなあ」と主人公を応援したくなるような気持ちにまでなっていましたね。自分と同い年の著者ですから、感動するポイントは「近い」のだろうと勝手に思うことにしました。ストーリーが面白いし、繰り返すけれども「あれとこれがつながっているんだ...」という感覚が妙に心地いいのです。
家族、恋愛、仕事。それぞれの場面で「平凡な(と自分で思っている)」主人公がいきいきと描かれています。「平凡」と「いきいき」が両立しちゃう...不思議ですが、違和感がありません。回り道をしたけれども、自分の大切なものを見つけたのですね。よかったなあー。

【ことば】音楽だとか食べものだとか、そういうものと同じ...わかるかわからないかじゃなくて、好きかどうか。大事なのはそっちです。

骨董品やの主人のことば。無理やりに「わかろう」とすることがすべてではない。人間だもの、「好き」「嫌い」という感情があってしかるべきなのだ。直感は意外に正しい。ただし、この言葉は一度でも「わかろう」と考え抜いた主人だからこそ言えるものであるのだ。軽くない。

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紙の本

紙の本人生に関する72章

2012/03/28 19:36

痛快!子を持つ親は読む価値「大」。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

数学者である著者が、(著者自身も驚きをもって受け止めた)「人生相談」の連載をまとめたもの。読売新聞で連載されたいた。著者は数学の先生であるのだけれど、その著作の軽快さ、ズバっと両断する言い回しは、まさに「痛快」である。どの本にも共通して言えること。勝手な偏見で「数学者」というと「偏っている」イメージがあるが(おそらく著者自身もそんなイメージを受け入れている)、非常に「人間っぽい」側面が見えるのだ。
本書でも、「子どもに対する親」という点で、「小さい頃は有無を言わせず世の中のなんたるかを教え込む」姿勢が表れている。子供の「通常ではない」振る舞いについての質問に対しては、この姿勢をベースに、「そんな子に育てた親の責任」と、バッサリ切るのだ。質問者からすれば多少耳が痛いことかもしれないけれど、妙に納得できるところがある。
一方で、子どもがある程度の年齢になった時点で「おとな」として接する態度を主張している。「子離れ」ということ。相談する問題点の内容もこの二つ(親としての教育、子離れ)に集約されるのかもしれない。
年代別に分かれている構成で、10代からはじまって60代以上までの質問と回答。 性格が明るくできなくて友達が少ない、という悩みには「個性」を尊重し、年代が上がってくれば、親も子も「人間として」生きることを説く。年代別なので若い質問は無関係と思っていたが、自分の環境(40代の親であり、10代、そしてこれから20代になっていく子を持つ)を考えてみると、どれも真剣に読む価値がある。
回答は迷いなく「一刀両断」というものが多いが、本業の傍ら連載をしている著者の「真剣さ」が伝わってくる。けして「片手間」ではない思いが通じてくるのだ。当然に相談者は真剣。その真剣さに呼応する真剣さがある。だから、多少きつくても、心が通じた回答になっている。
それぞれの年代で、それぞれの悩みがある。作りものではなくて、まさに「生きている」人たちの悩みがここにある。新聞の人生相談に投げかければそれで解決する問題ばかりではないかもしれないけれど、そこにあるのは「効いてもらう」価値だったり、誰かに「言ってもらう」価値だったりする。これをきっかけに相談者の中で「何か」が変わり始める感じがするのだ。
人生いくつになっても「悩み」は尽きない。だからこそ人生であり、人間である。「自由を履き違えてはいけない」と著者は繰り返す。完全な自由ではない人生だからこそ、それを感じる瞬間がうれしいのかもしれない。

【ことば】地球上の思春期以降のほとんどの男性は、エッチな絵が好きか、大好きかのどちらかなのです。

夫がエッチな本を見ているのが許せない、という妻からの相談。人生相談の回答に、淡々とユーモアを混ぜる回答者。こういった「心がなごむ」言葉や、「そうはいっても人間ってこうなんだよ」という内容が随所にみられる。「専門家」でない分、実社会の私たちに非常に近い、距離が近い感じがするのだ。不謹慎かもしれないけれど、本書の相談と回答を読むと、面白いのはそこ。

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紙の本

かなりスッキルします!読むだけでも変われる。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世の中に心理学、自己啓発本、数あれど、本書の「論理療法」に敵うモノはないんじゃ?って思えるほどです。著者も言っていますが、「論理療法」ってカタクルしい、モノモノしいイメージを想起させる和訳ですけれど、内容は至ってシンプル。こんな「解決法」があるんだー、って素直に沁み込む感じです。

単純化して言うと、「嫌な出来事」が起こって、「嫌な感情」が内側で湧き上がる途中に、「考え方」というステップが存在する、というもの。そのステップを根こそぎ変えるようにすれば、感情をコントロールできるかもしれない、というものです。
ポジティブシンキングとはちょっと違う。間に入る「考え方」が、論理的ですか?役に立ちますか?っていう問いを続ける。
人間は完全なものではないのに、「完全」だと考えてしまってませんか?
否定されたのは、自分の人格ですか?
恨みを持って生きていくことで、何かが変わりますか?

本書でも繰り返し出てきたフレーズですが、刷り込まれた感じがあります。もちろん、一度根付いてしまった、ネガティブな考え方、というのは払しょくするのは簡単ではありません。が、努力次第で変えることができる、というのは、前向きになれる重要な要素となり得るのですね。

そして何より「現実的」だと思ったのが、この論理療法を試みて成功したかのように思えても、「揺り戻し」があるかもしれない、という記述です。世の中が、人間が完全ではないのだから「論理的に考えると」また同様のスパイラルに陥る可能性もあるわけです。この方法が「完全」ではない、ということ。
そんな時は、また繰り返せばよい、という、至ってシンプルな説明。シンプルなんですが、これって真実ではないかなあって思います。もし「再発」してしまったら...って考えるよりも、そうなったらもう一回、って考えられるのは、これもかなりのプラス要素なんですね。

気持ちの問題は、本人にしか分からない難しい事項だと思いますが、その感情を「健康な否定的感情」と「不健康な否定的感情」に分ける、というのも実践する価値があることだと感じます。「いやな気分」を区別する、本人の気持ちによって整理する、ということ。文字にすると難しいですが、「心配」する感情から次の行動を考えるのと、「不安」で動けなくなってしまう違い、そんな区分。

この手法は「セルフケア」の方法として活用されていいですね。本書を手元に置いておくだけでも違ってきますが、すぐに自分の中で実践できる方法です。立ち止まって「考える」ことを実践すればよいのだから。


【ことば】...考え方を整理して気分を整理する、すっきるさせる、「気分の整理学」として、ごく一般の方に使っていただける...

考えてみればそうなんです。「病気」を治すという手法、それだけに特化しているわけではない。何か煮詰ったとき、迷ったとき、そんなときに使える「考え方」なんですね。「論理療法」という名称が邪魔していますが、シンプルで実践的な「考え方の整理法」であります。

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震災の惨さと、「使命」を持つ仕事と。

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もう1年が経ってしまうんですね、あの震災から。まさに「現地」である宮城県の県紙「河北新報」が、「その時」から「それから」で何を思い、何をして、何を残してきたか、という「真実」が語られます。
自らが被災者でもあり、当日の新聞発行が危ぶまれた中で、他の新聞社の協力や輸送、配達にかかわる人たちの「プロ意識」に支えられ、永く続いた「発行」を止めることなく動き続けた彼ら。震災という経験のない場を前にして、彼らが考え行動した記録が残されています。

首都圏にしか居住したことがないので、「地方紙」「県紙」という位置づけがいまひとつ分かっていません。そもそも「河北」という名称が何を指すのかすら...これは、福島県の「白河以北」、つまり「東北」を意味しており、ある意味では東北に対する侮蔑的な表現でもあるのだが、敢えてこれを題字としている、という。もともと気概あふれる精神がそこにあるのだ。

震災当日の「発行が危ぶまれた社内」、翌日以降の「被災地の取材」、インフラが壊滅状態の中での配達。これらは震災の惨さが現実のものとして生々しく突き刺さってくるが、若干は「新聞社目線」があるなあ、と感じた。「情報を伝える」という使命を担い、それに邁進する姿だが、それも必要だが、被災者への取材ってどうなの、って思ってしまう自分もいる。取材に行くんだったら支援物資を持って行ったほうが...とか、取材のための資源(ガソリンなど)を確保することがホントに正しいのか...って思ってしまう。

...という考えがアタマのどこかに居座っていたんだけど、実際に現場に赴いた記者の中にもそのような感情を持っている人が大多数であることがわかった。上空からの撮影のためのヘリから、屋上で助けを求めている人たちを見たカメラマン、原発事故により避難をして、避難をした場所から「現地」に電話取材をした記者がもった違和感、避難所で「私たちはもう頑張っている」と言われた記者...

中でも、刺激的な「その時」の写真を掲載しないことを決断したこと(全国紙は躊躇なく使用)とか、「死者」という言葉を「犠牲」に置き換えて掲載したとか、原発事故と同等あるいはそれ以上に津波被害について追いかけ続けたとか。

そこには新聞社としてのプロフェッショナルと、被災者としての同じ気持ちがある。そしてなにより、地元の新聞社として、そこに住んでいる読者のことを考える、彼らのことを想う気持ちがある。「地域密着型」なんて陳腐な言葉で言い表せない、本当の意味で「一緒に」なっている姿が浮かんでくる。

いいたいことはたくさんあるのだろう。特に「国」に対して、とか。もちろん本書にないだけで、本紙にはあるのかもしれないけれど。でも、本書ではそれを封印して、自社の考え方、地元のためを思う心、仕事に対する責任感、そんなことが繰り返される。

震災そのものの惨劇、そしていまだ戦っている被災者、まだ数多く残る行方不明者、これらを風化させてはならない、そのために「記録」を「報道」することに、そして地元の人たちとともに「復興」にむけて「ふんばる」ことを決意した新聞社。

本書に登場する記者やデスク、関係者の方は(実名で記載されているんだけど)、40代前半の方が非常に多い。苦しいだろうけれど、頑張っている姿に、同じ年代として、そこまでできていない自分に悔しさもある。


震災で被災した方がまだ戦い続けている中で、被災していない自分がいうのも失礼かもしれないが、自分の中でも「震災」によって、考え方が変わってきているんだよね。だから何ができるかわからないけれど、自分にできることをしていきたい。なんらかのカタチで回りくどくても、同じ日本人として何かできることはあるはずだから。

【ことば】全国紙や在京キー局は...一段落したら潮が引くように震災報道から切り上げる。だが地元紙はその後も長く被災者に寄りそい続ける。震災発生直後は見えなかった問題が、数ヵ月後に...苦しめることもある。

ドキっとする。「当時」も大変だったと思うけれども、「その後」も相当な苦難なのだろう。そんなときにこそできることもあるはずだ。それを思い起こさせてくれる役割もあるんだね。そういう情報は、既に入ってこない。たまにTVニュースで「特集」されるだけだ。何ができるか...考えてみる。

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考え方に「大いに」同意です!

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同年代の人間として、桑田さんの高校時代からずーっと見てきました。甲子園での活躍、ドラフト、怪我、メジャー挑戦、清原との比較...正直、あまりいいイメージは持っていなかった。多分に、「アンチ巨人」であるから、という理由もあるが、メディアによってつくられた(?)「ダーティ」なイメージが抜けなくて...

どちらかというと、不器用な清原の方に親近感を抱いていました。そんな中で本書を読み始めたのですが...世間にどう言われようと、どんなイメージで語られようと、彼の「野球」に対する思いが変わらない、野球を究極まで愛する姿勢に感動します。

本書を読んで、桑田投手の本心を垣間見ても、やはり、受け入れられる人とそうではない人に二分されるような気がします。科学的な考え方は野球においても人間関係においてもそうであるし、一方で「(野球の)神」という考え方も相当強烈に持っています。

が、桑田さんの信念は強い。野球人として、自分はどうあるべきなのか、というのを、ある意味客観的にも見れています。本書にも書かれていますが、信頼できる指導者に師事したことも大きいのでしょう。その中には、ご自身の父親も含まれています。

あまり書かれていませんが、逆に信用できない「大人」にも多く接しているようで、この辺が「二分」されるキャラクターをつくっている所以でしょうか...でも、もはやそれを超越した桑田真澄の存在があるように思えます。
たび重なる怪我、故障を克服した投手は、指導者として野球界に携わるべきです。そこは彼の考え方もあって、野球界の発展のためには「指導者の育成」を第一にあげていますが、そういう考えに今まで出会ったことはありません。確かに「自らの力」でのしあがる世界なのでしょうが、始めて野球に接する機会や、そこから興味関心を持つこと、能力を伸ばしていくこと、これには「指導力」が問われると思われます。

以前のように、「根性」至上主義ではなくなっているのでしょうが、他の競技に比べると、まだその根は残っているように思えます。自分も幼いころに父親にグローブ、バットを買ってもらったこと、キャッチボールをしたことを鮮明に覚えています。他のことは薄れていますが、これだけは鮮明に。だからこそ、(技術的な「指導者」には成り得ませんが)自分の子どもとも「野球」をしたい。そんな思いは強く持っています。

勝利や、金銭を求めるのはある意味当然のことだと思いますが、それが先に立っては野球をすること本来の楽しさが薄れてしまいます。メジャー移籍で大金が動くのもニュースになりますが、それは野球のダイナミックさとはちょっと意味合いが異なる。

負けても得るものがある。日々の努力の積み重ねはどこかで必ず実を結ぶ。それを実践してきた桑田投手が語るものあるから、一層重みがあります。

なにより、自分の中に大切にしているものを、力強く持ち続けることの大切さを本書から得られました。同年代として負けられません。引退してから大学院で勉強した著者の「本気」を感じて、刺激をいただきました。
「熱い」読後感を得られます。

【ことば】...どんなことでも本物に触れてみる、経験する、自分の目で見るということに勝ることはない...

ワイン、小説、歌舞伎、文化、歴史...これをしたことで野球がうまくなることはないが、自分の人生を豊かにすることで、人間として成長することで、必ず野球に影響してくる。こんな考えを持っている野球選手がいたとは!感動です。そう、無駄なことは何一つない。「本物」に触れることは、極めて大事なことだと思います。

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紙の本宇宙からきたかんづめ

2011/12/18 17:28

SF(ファンタジー)の楽しさが詰まっています。

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対象は「小学中学年以上」と記載されています。「コロボックル」の佐藤さんです。児童向けの「ファンタジー」ものは、自分の子どものころも、今の自分の子どもたちも、読んでいる「スタンダード」。本書は、その「ファンタジー」の前に「スペース」が付いた、そう「SF」なんですね。

「ぼく」がスーパーで出会った、不思議なかんづめ。それは宇宙から来た「地球調査」の基地なのです。そして科学の発達したその「宇宙人」は、日本語で「ぼく」の質問に答えてくれます。

「タイムマシーンはホントにあるの?」
「宇宙には変わったいきものがいる?」
「宇宙の『はし』はどうなっているの?」

子どもらしい質問?いえいえ、宇宙の謎に惹きつけられた大人も同じ質問をするでしょう。子どものころからずーっと、心にある宇宙の謎。考えることがすなわち「夢」、であるようなスケールの大きさ。いない、と誰ひとり証明できない宇宙人の存在。科学がどんなに発達したって届かない宇宙の神秘...

ここに、「SF」の原点があります。これらの「ぼく」が知りたい話は、地球人誰もが知りたいこと。そしてそれをきっかけに、誰もが知っている「あの話」が、宇宙と結びついたりします...オトナが十分に、いや、子ども以上に楽しめる!あー、温かい。も1回あの話を読みたい、そんな気になっちゃいます。

どこにでもある日常に、「宇宙」が入り込んでくる。そして怖いけど勇気をもってその扉を開く少年。そう、勇気を持って扉を開く、この「行動」があって「夢」に近づける。そして、心が求めているものは何か、っていうのを見つけ、そして最後は....

ドラえもんにも、スターウォーズにも負けない「夢」がここにあります。
そして、その「夢」を実現するのもしないのも、自分次第。追い求めなければ、けして実現できない、これだけは事実。
児童書を読むだけで「深読み」しすぎ、かもしれませんが、素朴なだけに、その面白さは「深み」があります。長く読む継がれているものには、当然にその「理由」がある。この分野の書も面白いね。機会があれば読んでみようと思う。

【ことば】おもしろい話は、どこでもころがっています。だれでも、よく気をつけてさえいれば。すぐにみつかります。ただし、つかまえるのは、たいへんです。

「まえがき」から、ファンタジー全開。存在しないものを扱うのがファンタジーという人がいます。存在するかもしれないものを扱うのがSFだという人がいます。「夢」や「幸せ」は、存在「する」もの。さて、著者の【ことば】の「おもしろい話」を「夢」「しあわせ」に置き換えたら...これが「生きる」ということなのだね。難しいことばを使わなくとも、表せる。佐藤さんってやっぱりすごいな。

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