Pokharaさんのレビュー一覧
投稿者:Pokhara
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藍から青へ 自然の産物と手工芸
2011/09/30 06:36
硬派な物づくり系の本
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
こういう物づくり、ナチュラル、自然派な本が巷にはあふれているけれど、
この本は硬派で他とは一線を画していると思う。
どう硬派かと言うと、物の素材を植物、鉱物、動物に分けて、それぞれから
作られた物の歴史や工程について、多面的な半端ない知識、かつ平易な文章で
解説している点がだ。
特に鉱物の章の水晶彫刻の説明で、地球を構成する元素で最も多い酸素とケイ素
から水晶が作られ、それと全く同じ成分なのにどこかで運命が分かれると石英
になる話。そしてその石英からガラスができ、ガラスと薪、木灰、森の木々を
混ぜると緑味のある「森林ガラス」ができあがる話などは大変面白かった。
また、文章だけではなく、梶原敏英さんの物をまっすぐ射抜いたような写真も
素晴らしいと思う。一方的で感情的なエフェクトをかけることなく、作品の
持つ本来の雰囲気をそのまま、しかも魅力的に写している。
この本で取り上げられた作品の作家さん、著者の石田さん、写真の梶原さん、
それぞれが自分の役割に対して真摯であるからこそ、こういう本ができるのだろう。
なかなかこういう本には巡り会えません。
垂直の記憶 岩と雪の7章
2011/10/17 11:11
至って謙虚でリアル
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本物のクライマーが書いた自伝は至って謙虚でリアル。エベレスト無酸素登頂とか、五大陸制覇みたいなメディア受けする記録を狙っている人たちが言うこととは次元が異なると思った。雪崩に襲われて死にかける描写はこちらの息が詰まるほどの迫力。山野井夫婦のギャチュンカンへの挑戦を描いた澤木耕太郎の「凍」や、同じクライミングでも道具を使わないフリー・クライミングの自伝物として「ユージ・ザ・クライマー」なんかと併せて読むと面白いと思います。
岳 18 (ビッグコミックス)
2012/08/31 18:12
よく頑張った!
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
まずはこんなに山そのものや、山愛する人の持つ空気を味あわせてくださった石塚さんに心から「よく頑張った!」と感謝の言葉を送りたい。谷口ジローなど色々な登山漫画を読んだけれど、日常的な山登りの魅力をここまで表現した漫画に出会ったことがない。
自分が登山を始めた時期に連載が始まり、巻が増えるとともに自分の山登りも少しづつレベルアップしてきた。先日は北アルプスの槍ヶ岳山荘を訪れ、その小屋の談話室で「岳」を読んだ。周りを見たら、他の登山客も「岳」を読んでいた。みんな山も「岳」も大好きなんだな。
その「岳」がついに今回で最終巻となった。ラスト2巻はこれまでの雰囲気とガラリと変わっているので当然賛否があるけれど、自分はクライミングも少しだけかじっているから、こういう生死スレスレのところを縫うように山を登る勇ましい三歩の姿も見ることができてとても嬉しかったし、谷口ジローの山岳漫画に劣らない迫力に夢中になりながら読ませてもらった。
アメリカの山へはまだ行ったことがないけれど、ここに取り上げられた場所をいつか訪れてみたいと思う。「岳」は物語としては終わってしまったけれど、どの巻からでも、何度でも読み返せる漫画なので、これからも岳に会い続け、自分も山を楽しみ続けたいと思う。
犬を飼うと12の短編 (ビッグコミックススペシャル)
2011/10/07 09:12
泣けるマンガ
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
自分の中の、今年読んだ泣けるマンガ・ランキング1位はこれかもしれない。
「星守る犬」よりも断然リアルで、ペットを飼ったことのある人は本作品を読んだら泣かずにはいられないんじゃないか。
谷口ジローは山岳漫画だけでなく、こういうドラマも描けるところが凄いな。
K2非情の頂 5人の女性サミッターの生と死
2012/02/02 06:55
登山ノンフィクション最高峰
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
国籍も時代も異なる5人の女性登山家の、それぞれのおいたちからK2(パキスタンにある世界第2位の山)への挑戦、そしてその後の人生に至るまでを仔細かつドラマチックに書き上げている。
読み始めは聞いたこともない女性登山家について「ふーん」程度の気持ちで読んでいたのだが、中盤くらいからどんどん引き込まれ、最後の方は彼女ら本人となって猛烈な山を登っている気持ちとなり、それを見守る家族や恋人のやりきれない不安な気持ちになっていた。そしてつきなみな表現だが、最後は涙なしには読めないくらいの感動に満たされた。
こういう完全に自分を忘れて山の本の世界に没入できたのは、沢木耕太郎の「凍」(山野井泰史さん・妙子さんのギャチュンカン北壁登攀を描いたノン・フィクション)以来だと思う。個人的には登山ノンフィクション最高峰の1冊。おすすめです。
我々はいかに「石」にかじりついてきたか 日本フリークライミング小史
2011/10/14 06:46
壁にしがみつく懲りない面々
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本は日本のフリー・クライミング、ボルダリングの歴史を俯瞰しつつ、そこに関わった人々の人格まで深く学べてしまうところが面白い。
著者自身も70年代半ばの創世記とも言うべき時代から湘南鷹取山を登っているし、その後コズミック・デブリ登攀、アストロマン・オンサイト(一撃で登ること)など実績はお墨付き。さらに元クライミング・ジャーナル編集長というだけあって文章は語るように軽快で楽しい。一見面倒なことは嫌いそうなことを書きつつも、注釈をつけなくても良いはずの細部に至るまで注釈をつけて細々解説してくれるあたりにお人柄が見える。
まだフリー・クライミングとしての定義や、海外の情報などもない時代に、公園などの岩を自然発生的に登っていた時代から、アメリカのヨセミテへの憧憬が生まれた時代へ。そしてアメリカからヨーロッパへと舞台は移ろい、その中から平山ユージや小山田大といったスーパー・スターが生まれていく。
その歴史を俯瞰しつつ、著者の界隈に集まった壁にしがみつく懲りない面々の人格まで(かなりの笑いを伴って)理解できてしまう。その方たちというのが今のT-WALLなどクライミング・ジムの経営者だったり、目白にあるカラファテという登山用具店の方だったりするのも興味深い。この遊びに関わった人なら一度は接触しているであろう人がきっと出てくる。
こんな本は早々ないです。フリー・クライミング~ボルダリング好きなら本棚に必ずあって損はないはず。
マッケンジー彷徨 川が空へと流れるほうへ
2011/10/02 12:07
等身大の感覚で書かれた旅の本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
学業も仕事もパッとせず。一人で逃げるように旅を続けてきた三十路の男。
その男が中学生の頃から憧れていたカヌーイスト、野田知佑の本に憧れ、
マッケンジーへ数千キロのカヌーの旅へと出掛ける。
旅の本と言うと、出かける先は発展途上国やスリリングな自然の世界であっても、
それを書いている本人は貧乏気取りのインテリで、日本に戻ってその気になれば
それなりの収入を得られる人が殆どであるように思われる。
それと比べてこの本の著者は、何をやってもピンとこず、社会にうまく溶け込め
ないまま旅を続け、気が付けば30代半ばを迎えていたというのだなぁと感じられる。
漫画で言うと花沢健吾の作品に出てくる主人公みたいだ。
そんな主人公も、パドルを持って川に降り立てばどこにもいない冒険家に変わる。
蚊の大群を振り払い、何匹ものグリズリーを咆哮して追い払い、村ののけ者
インディアンと共に泥酔し、トラウトを銛で捕え、カリブーの肉を食らう。
かといっていつも冒険に満ちている訳ではなく、ダラダラとカヌーを漕ぎ続ける
合間に何かが起こる間合いも、非常によく旅のリアルな感覚を伝えてくれる。
沢木耕太郎に、藤原信也。蔵前仁一に西江雅之。星野道夫に、妹尾河童。
どの旅人の本も好きだけれど、これほどボクら一般人の目線や感覚で書かれた
紀行書はこれまでなかった。もしかすると新しい旅の名著が登場したのではないか。
オーパ!
2011/09/29 13:43
写真満載 臨場感たっぷり
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
多数のカラー写真と開高健の熱い文章で、まるで自分もアマゾン河で一緒に釣りをしているような気分に浸れる一冊。
無窓
2011/09/22 14:41
豆腐
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本の「豆腐」を読んでハッとした。
谷崎の「陰影礼賛」が好きな人ならきっとグッとくるはず。
形といい味といい、ここまで無駄をそぎ落とした、
そして労働の中から生まれる「用の美」を体現した食い物は
豆腐をおいて他になかろう。
まさにこれぞ日本な食い物である。
民芸的な物を買い求めるよりも、何も考えず豆腐を食って
旨いという言葉以外、後に何も残さないのが潔いのでは。
なんてことを考えながら読んだ。
あ、本の感想じゃなく豆腐のこと書いちゃった。
見えない音、聴こえない絵
2011/11/05 18:45
アーティストの目線
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
アーティストの目線というのは子供の頃から一風変わっているのだろうか?
小学生の頃、ポパイの模写だけでは飽き足らずに等身大のポパイを描いてみたくなり、大きな模造紙に寝そべって自分の輪郭にあわせて鉛筆を這わせた話など、いかにもアーティストの好奇心とそれを実行に移す力を感じさせるエピソードだ。
新宿の道端に放置された使い古しのまな板を見て身体に電気が走り、そのまま家に持ち帰った話もすごい。普通の人が見過ごすものをズバっと感じて、即行動に移す。この感覚から大竹伸朗の世界が生まれるのだなぁと。
ちなみに大竹さんの他の本としては、モロッコ旅行記の「カスバの男」もとても面白い。同じ外国を旅しても、見る人が違えば景色はここまで違って見えるのかと関心させられる。特に電柱に貼ったポスターを剥がさずに何十枚も上から重ね貼りして、天然のコラージュになっている話にグっときた。
大竹さんというと独特なコラージュを目にする機会が多いけれど、実は文章も個性的で凄く面白い。
クライミング・フリー 伝説を創る驚異の女性アスリート
2011/09/15 09:11
ただ登るだけではなく
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ただ岩壁を登るだけではなく、道具を使わず、自分の手と足だけで重力と戦うこと。
シンプルで、直接的で、自然であること。
そして、結果だけではなく、その過程を重視すること。
時に男も恐れる壁に勇猛果敢に挑み、時に潔く諦めるべきところは諦める。
彼女の考えは単なるスポーツ理論というよりは、より自分を高める為の精神論に近く、
ある意味日本の仏教の精神にも通ずるところがあると感じた。
非常に学ばせられるところの多い本だと思う。
登山やクライミングの好きな人以外にもぜひ手にとって読んでみてほしいです。
OPUS 下
2011/08/29 12:09
上巻よりも更に引き込まれる
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
下巻はメタフィクション(物語の中に物語が入れ子になっている)のオンパレードで、
漫画から主人公が現実に出現したり、ページの尽きた果ての世界まで飛んでしまったりと
読者の予測を超える展開が山ほど盛り込まれています。面白い!!
2012/07/31 10:45
現代の坂本龍馬か?
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
プレハブの建物に車輪をつければ車両扱いになる。それを賃貸駐車場に停めて住めるとしたら、35年ローンの家を買うことや、その為に東京に縛られて放射能を恐れ満員電車に揺られる生活に意味はあるのか?
日本人の無意識によってできた現代の社会システムは匿名が故に壊すことはできない。けれど上記のように今の世の中で当然と思われていることに疑問を持ち、視点を変えて、たとえ一見稚拙に見えても解決策を実行に移せることは今を生きる上で非常に重要だと感じた。それはあの日、仕事よりも命を優先して西へ避難しようとした人たちにも繋がっている。
匿名化した社会でこれまで存続してきた政治、マスコミ、電力、土地神話ももはや崩壊していることに誰もが気づきながら、空気を読んで、つまはじきになることを恐れ、発言しないまま今日まで来てしまったが、そんな中でこのような人が出現して、動き始めていることは非常に興味深い。もしかすると現代の坂本龍馬になるかもしれない。
実際、世界中でも「中東の春」に見られるようにSNSの力で持って若者が蜂起し、独裁政権を倒し、それが別の国にまで飛び火している。幻想が幻想のままで終わらないようなことが世界中で現実に起きているのだ。
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