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勁草書房編集部・鈴木クニエさんのレビュー一覧

投稿者:勁草書房編集部・鈴木クニエ

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編集者から著者への手紙

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

9月上旬刊行の遠藤比呂通著『人権という幻――対話と尊厳の憲法学』を担当した、勁草書房編集部の鈴木クニエと申します。この本のきっかけをぜひ紹介させてください。

著者の遠藤比呂通さんは、東大法学部卒業後、憲法学の樋口陽一氏の下で助手論文をまとめ、東北大学法学部で助教授を務められてから、大阪・釜ヶ崎の弁護士になった方です。

2年前の勁草書房入社後、つてを辿って遠藤さんに原稿依頼の電話をかけたところ、いきなり90分の大講義が始まってしまいました。1対1。電話では逃げられません。嬉しくも、ほんとうに大変な会話が続いたのを覚えています。その後、ゆっくり頭を落ち着かせて手紙を書きました。それがここでご紹介するものです。長くてすみません。そしてやはり少し恥ずかしいです。でも、できあがった本を眺めると、この手紙への長いお返事を遠藤さんは書いてくださったんだなと、改めて感じています。


遠藤比呂通先生
前略
 先日は、突然のお電話にもかかわらず、いろいろとていねいにお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。法律から逃げまくり、ロースクールで習ったことがすっかり抜けていて、かなりお恥ずかしい状態でした。蟻川先生の授業のノートという最強のあんちょこさえ手元にあれば、もう少しまともだったはずですので、どうか呆れずにお付き合いいただけると幸いです。

 お話をうかがってから、あれこれと考えていました。いまも考え続けています。ですから、このお手紙でなにがしかの出版の方向性をご提示できそうにはありません。しかし、もしお願いできるようであれば、少しずつやりとりを続けさせていただいて、可能性を探っていきたいと考えております。

 まず、私自身が最初に遠藤先生にご執筆いただきたいと考えた経緯をまとめておきます。
 もともとは蟻川先生の企画を考えていたところ、「遠藤×蟻川」で何かできれば面白いかもしれないと、ほとんど教え子の妄想を思いつきました。そのうち、それはそれとして、遠藤先生お一人の企画もできないかという考えが頭をよぎりました。そのときに、思いついたのが、伊藤正己先生のタイトルを活用させていただいた「弁護士と学者の間」というテーマでした。タイトルありきの話で申し訳ありません。

 ただ、このタイトルは、現在の司法制度改革や法化社会といわれる日本において、きちんとまとめられるべきものだと考えています。そして、このタイトルでお書きいただくには、遠藤先生をおいてほかにはいらっしゃらないと思いました。(中略)理論と実践の「架橋」という点からは、やはり遠藤先生が最適だと感じています。
 それは、なぜか。この前のお電話でお話しくださったことが、強く心に残っています。「架橋ということを考えると、それは理論に戻る。法が何を実現しようとしているかを考えざるをえない」という主旨のことをおっしゃっていただいたかと思います。現場で、個々の人々の権利に直面している先生が、こうおっしゃったことがうれしくてなりませんでした。

ロースクールにいると、なまじ社会人を経験した学生のほうが「ビジネス」を振りかざし、「理論」や「理念」といったところを軽んじるような印象をもっていました。「そんなことを言っても、現実には役立たない」というような、よくある言い方です。それが嫌で仕方ありませんでした。
私が自分に引き付けすぎて理解しているのかもしれませんが、もう1点引き付けさせていただけば、同居人がまさに理論と実践の問題をひきずっていました。同居人は、通信社にフルタイムで勤務しながら大学院に通い、ジャーナリズム論で修士論文を書き、現在博士課程に在籍中です。しかもきわめて理論系の指導教官についています。その彼が仕事仲間からつきつけられるのが、「はいはい、正論正論。理屈はわかったから、で、明日からおまんま食べるために、そいつをどうやったらいいの?」という類の反応です。思わず、お電話させていただいた日、家に帰ってから、先生がおっしゃっていたことを同居人に伝えてしまいました。とても元気づけられたようです。分野はちがうものの、理論と実践の間で考えている人間だったからでしょう。

 こういう状況の中、現場に携わる遠藤先生が「架橋は理論に戻る」ということをおっしゃる理由を、もっともっと具体的にうかがいたいですし、それをいろいろな人に伝えたいと思っています。小手先だけのビジネスロー的架橋ではなく、橋脚を揺さぶる架橋こそ、必要ではないでしょうか。そして、いろいろな人と一緒に考えていく契機にしたく存じます。
ただ、まだどういう内容でどういう構成ならば、先生のお考えをもっともよく表現できるかがわかりません。今度、ぜひ釜ヶ崎でお目にかかりながら、やりとりをさせていただき、先生に「それは書きたい!」という設定作りに取り組みたいと思います。
 もちろん、もうひとつの話題であった「憲法訴訟を乗り切る、たった4つの冴えた方法~適用違憲・立法事実・合憲限定解釈・二重の基準~」をどう盛り込むかも大事です。決して簡単なことではないでしょうけれど、あれこれ考えるのはとても楽しそうで、かなりわくわくしています。

 すっかりまとまりのないお手紙になってしまいましたが、お電話を牛並に遅く反芻した感想文として読んでいただければ幸いです。釜ヶ崎で、もしくは東京においでの機会がありましたら東京ででも、ぜひまたお話をお聞かせいただきたくお願い申し上げます。
草々
2009年9月25日

追伸 私の生れは東京ですが、育ちは横浜です。近くに日本三大ドヤ街の寿町があります。ずっとカトリック系の学校に通っていたことから、教会にも通うようになり、その縁で寿町にも出入りするようになりました。私自身は結局、体験学習的なところに終始してしまいましたが、妹は大学生あたりから長らく夜回りに参加していました。
 何もしていないので、おこがましいのではありますが、私にとって寿町は異世界ではありません。地続きの現実です。多くの人が自らと切り離して考えているように感じますが、この地続き感だけは得手勝手なものだとしても持っていたいと思います。

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