pappyさんのレビュー一覧
投稿者:pappy
光圀伝
2013/01/03 22:27
現代に求められる優れた指導者を育成するための教育書
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
これは伝記であるよりも教育書である。優れた指導者を育成するにはどのようにしたら良いかを記した指南書である。もとより光圀は偉人ではない。大火による災害への対処・復興を成し遂げ、近親者の弔いを果たし、文事を発展させ、家名を盤石とした優れた指導者である。そのような指導者をいかに育てるかは現代において最も望まれるものであり、それが伝記の形で記載されている。
現代は道徳教育は役に立たない教科としてないがしろにされているが、江戸時代においては道徳教育こそが教育の中心であった。そして歴史学は道徳を実例として理解するための学問であった。そのような時代において、青年達は必死で道徳を修養し、自らの精神的な基盤として培っていた。そして命がけで義を、徳を、仁を、実践しようとしていた。それが優れた指導者になるための基礎となったである。 光圀伝は、そのような江戸時代の厳しい教育現場を克明に描写したものであり、指導者とはいかにあるべきかを記したものである。現代教育の欠落したもの、現代の指導者に不足しているものが何であるかを痛切に批判している書と考えて良いだろう。
光圀の時代には戦国の世が終わり太平の時代が到来した。これは現代にも通じる。しかし民主主義の現代では政治家が幼少の頃から指導者としての十分な教育を受けることは期待できない。たいした素質も教育も受けていないものが指導者になっているから政治が荒むのだ。であるとすれば現代においてこそ道徳教育をいっそう充実させて、人民の精神性を高めることが教育の要となるだろう。その中で選ばれた逸材が指導者となれば良い。
「天地の狭間にあるもの、悉くが師だ」、「史書は命の記述であり、決して死者の名簿ではない」、「大義とは人の苦しみを知り、喜びを見いだすことである」など、多くの言葉が心に残った名著である。
放射線医が語る被ばくと発がんの真実
2012/02/20 12:33
多くの福島県民に読んで欲しい
16人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
フクシマの放射能汚染による被害がそれほど深刻ではない、とする立場で記載された書籍である。
これまでに出版された多くの書籍が放射能汚染を深刻に考えて数年後にはパニックが生じるさえとするものが多い中で、ていねいに放射能被害はそれほど深刻ではないことを示している。注目すべきはチェルノブイリ事故後の小児甲状腺癌の増加に関する記述である。放射線被害を深刻に考える書籍では、この報告によりフクシマでも今後がん患者が増加すると予測している。一方で本書ではフクシマでの放射性ヨウ素の人体摂取は少なく、放射性セシウムの摂取で発癌した例はないことからがん患者は増加しないとしている。
放射線の専門家同士でこのように意見が食い違っていることは意外なように思われるが、データが解釈次第で大きく評価が変わることはしばしばあることなので驚きには値しない。慎重に判断すれば本書の記述の方が正当であるように思われる。
そして、チェルノブイリ事故に関する調査報告書にあるように、放射能被害を過剰に深刻に考えたために受けた被害の方がずっと甚大であるとの指摘には共感させられる。福島の住民はいたずらに不安をかき立てるような報道もあって非常に困惑している。自ら線量計を購入して、放射線量のわずかな増減に一喜一憂しているフクシマの住民にはチェルノブイリの教訓があまり生かされていないように思われる。ぜひ、多くの福島県民に読んで欲しい書籍である。
『永遠の0』と日本人
2014/01/01 07:38
散華した特攻隊員に感謝
11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「永遠の0」、「風立ちぬ」、「終戦のエンペラー」の批評とそれに関連する大東亜戦争、とくに特攻隊についての考察をまとめた書籍である。作品についての理解を深めることができるのはもちろんのことだが、単なる批評ではなく、公正な戦争論としてまとめられている。戦後GHQが日本国民に施した精神的武装解除は甘美な麻薬として多くの日本人の心に浸透したが、ようやくその効果が薄らいできたのだろう。10年前であればこのような評論は日本人にはまったく受け入れられなかった。勝てば官軍となるのは戊辰戦争も大東亜戦争も同様であり、常に敗者が悪者に仕立て上げられる。だから、このような公正な評論は歓迎されるのだ。とくに最後の特攻隊についての記述には感銘させられた。戦後統治にあたり特攻の影響がかなり大きかったことは賛同できる。さもなければハワイのような属国にならずとも、朝鮮、ベトナムのように東西冷戦の影響を受けて分断されていたかもしれない。散華した多くの若者に感謝したい。同時に特攻がGHQの洗脳工作を招いたことを理解し、未だにその洗脳から充分に醒めない日本人を嘆かわしく思う。冒頭の昭和天皇の言葉がつき刺さる。
ジェノサイド
2012/03/11 11:44
作者の豊富な見識と筆力に感銘した
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
謀殺と盗聴にまみれた現代の世界情勢に対するのみならず、人類史および薬学などに関する作者の豊富な見識に深い感銘を受けた。そのような見識により、現代世界に新たな知性が誕生した場合にはどうなるかを考察し、国際的なスケールで小説化したものがこの書籍に他ならない。
ストーリーの秀逸さはもちろんだが、人類を行動させてきたのは恐怖であること、人間は大量殺戮を行う動物であること、歴史学は支配者による殺戮を英雄譚にすり替えたものなど、物語の各所に現代世界や人類に対する作者の深い洞察によるメッセージが記されていることも見逃せない。たとえ映画化されたとしても、それらのメッセージは小説でしか味わうことができないので、ぜひ多くの人々に一読されることを勧める。
関東大震災、アフリカなどで行われた虐殺の様相を詳細に描いているのは、人類が虐殺を行う動物であることを強く印象づける。
合衆国憲法は民主主義の仮面を被りながら独裁を許す制度であることを知り、アメリカが発展した理由がわかったような気がする。
日本人に、世界を相手にしたこれだけのストーリーを書いた知性が現れたことを誇らしく感じる。
春を恨んだりはしない 震災をめぐって考えたこと
2012/04/03 13:08
震災で考えた控えめな文明論
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
筆者が震災で見聞きして考えたことを綴ったエッセイである。
未曾有の災害の中で感じたことが素直に記されているが、表題を含め多数の文学的引用が散りばめられており、謙虚な文明論に昇華されている。
その中で、自然にはいかなる意思もない、支援とは手を添えること、などあらためて気づかされるフレーズに感心する。災害が多い国土で培われた無常観は戦争に明け暮れる国のものとは本質的に異なるとするのも新しい発見である。
原発についての記述も簡明で受け入れ易い。原発の根源的な問題が材料工学にあるとするのはよく理解できる。文明とは集中であるとしているが、火薬の七桁も高いエネルギーを持つ原子力は集中の極みであり、人はそれを御し得なかったのだ。それ故に人類が分散型の文明の構築を考える必要を訴えかけているのは当然と思える。
私も自分は何をすべきかを今さらながら祈ってみたくなった。
道徳教育はホントに道徳的か? 「生きづらさ」の背景を探る
2012/01/25 18:08
真摯に道徳を深く追求した好著
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
タイトルから軽いエッセイかと思ったが、内容はかなり深く、日本の道徳教育の根本的な問題までを深く掘り下げながら論説している。
現代人に比較的受け入れやすい反利己主義的な思いやりを取り上げて、その問題点を示し、自己愛の拡張としての思いやり、という考え方があることを示した。
教育の現場では、戦前・戦後とも利他主義を推奨する傾向が維持され、児童たちの内面には建て前の利他主義と本音の利己主義とが共存するようになった。
そもそも道徳とは共同体の中で、不文律として形成されていったものだ。そのような道徳観に対して、近代以後に西洋からもたらされた市場モラルによる道徳観が幅をきかせてきた。それは共同体道徳から発生したものであるが、多くのルールにより規制することにより成立するものであるので、あいまいさがなく、現代人には受け入れやすいものとして広まってきている。しかし、市場モラルによる道徳はルールに従うことを強制するあまりに、グレーゾーンを狭め、現代における多くの問題を発生させている。
ルールさえ守れば良いとする市場モラルは、あくまでも不文律な共同体道徳を土台にしていることを理解し、ルールの手前にある道徳観をもっと重視することが必要としている。
たしかに共感を基軸とした共同体道徳は人生観の根底にあるのがふさわしいが、紛争などにより共感が失われた関係ではルールにより厳密に白黒を判断する市場モラルの役割も重要となる。著者の記すように市場モラルを必要悪として認識することが肝要なのだと考えられる。
夜と霧 新版
2012/09/24 23:55
人間の本質を真実から記述した哲学書
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ユダヤ人強制収容所での生活体験から過酷な環境に生きる入所者の心理を心理学者の立場で綴ったもの。限りなく死と隣り合わせに生活する中でも徐々に「慣れる」ことができたことから、「人間はなにごとにも慣れる存在だ」とするドストエフスキーの言葉を裏付けた。
文字通り必死に生きようとする中で、人間の感動は消滅するが、一方ではささやかな出来事にも感動するようになる。もはやなにも残されていなくとも愛する妻に思いをはせることは、心の支えとしての伴侶がいかに貴重かを思い知らされる。人間はひとりひとり、どのような状況にあっても、自分がどのような精神的存在になるかについて、何らかの決断を下せるのだ、とは、つい境遇に甘えて不平を口にしてしまう我が身に重く反省を強いる。
強制収容所で亡くなった女性の「運命に感謝しています。だって、わたしをこんなにひどい目にあわせてくれたんですもの」という言葉には、つまらないことをくよくよと悩んでいる我が身を思わず羞恥心で満たした。
生きる意味を考えるのではなく、生きることが私たちからなにを期待しているかが問題なのだ、との命題には今後も考えていく必要があるだろう。苦しむとはなにかをなしとげること。つまり苦しむことでさえ課題だったのだ。
極限状況で詳細に自分と他人との心理を観察して分析した記述には真実があふれており、机上の論理を積み重ねただけの多くの哲学書が色あせて感じられた。
宇宙はなぜこんなにうまくできているのか
2012/02/28 08:00
宇宙論の知識を整理できる
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
初心者向けに記載されているので簡単に読み進めることができるが、宇宙の加速度的膨張などのかなり最新の内容も含んでおり読み応えがあった。新聞・テレビなどで最近の宇宙論はある程度把握していたつもりだったが、この書籍により知識の不足分を補い整理することができたのであらためて総括的に理解を深めることができた。
タイトルの疑問に対する回答は巻末に提示されている。人類は多くの生物の中で偶然に高度の文明を形成するまでに進化することができたことや、地球は奇跡とも言えるようなさまざまな偶然が積み重なって人類を育む星となったこと、などと比較して考えても著者の提唱するマルチバースの考えは理に適っているように思われる。裏返して考えれば、人類の栄華などは実際はとてももろく儚いものであることが身に染みて実感させられる。
なぜ日本は破綻寸前なのに円高なのか
2012/02/18 15:27
日銀は無策の将なり
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
誰もが思っている疑問に率直な解答を示している書籍と考えて良いだろう。そしてその解答は、インフレ誘導こそが最善の手段であり、それを行わないでいる日銀をはじめとする財界人たちの無能さを明らかにしている。とくに注目すべきは巻末の為替講座である。これによって先物取引では金利が安い方が為替が高くなる必然を示している。すなわち景気を良くするために低金利政策を行えば、為替が高くなりデフレを誘導するために、ますます景気が悪くなることが良く理解できる。すなわちグローバルな経済では従来の金利引き下げは景気を改善しない。日銀の政策の誤りが現在の円高・デフレの原因であったのだ。
蜩ノ記
2012/02/09 00:17
美しく生きるには死を怖れてはいけない、しかし残されたものを気遣わなければいけない
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
貧しい農村に幽閉されつつ死を怖れずに凛として精錬潔癖な生き方を貫いた武士の話、とも考えられるが、むしろ、死を畏れなかったから、主人公は武士らしい生き様を貫くことができたのではないか、と捉えた方が良いように思われる。いつの世にもありがちだが、狡猾で強欲に生きる下劣な人間が多い中で、清く正しく生きることはそれだけで困難なのだろう。そのような下劣な人間の間にて、10年後の切腹を命じられてその日に向かって生き続ける主人公が、家族や領民達を慈しみ続ける姿はひときわ美しく感じられた。小説としては前藩主の側室の秘密が少しずつ解明されていく経緯は面白く感じられた。
私自身も無謀な権力に立ち向かうべきか、それとも権力に追従して命を長らえるべきかで迷っているところだが、なかなか死を畏れずに凛として生きることは難しいことを実感している。最後に和尚が、この世に残るものを気遣いつつ、この世をいとおしい、と思って逝かねば、残されたものが行き暮れよう、と語ったことがせめてもの救いのように感じられた。
蜩の鳴く農村の姿が鮮やかに目に浮かんだ。
天地明察
2012/02/02 15:13
凶作にて重税を課すのはただの無為無策
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
水戸光圀ではないが、思わず「うぬう」と唸りたくなるような傑作であり、もし些かでも文士を志す者ならば、この著作の前に、恐れ入りました、と平伏させる代物でもある。凡庸な草食系、算術好きの青年が日本独自の和暦を開発し、改暦の大事業を成し遂げた話であるが、豊富な語彙と詳細な時代考証に裏打ちされて、優れた文芸作品として昇華している。
さほど重々しく書いてはいないが、算術でも暦術でも自分の誤謬については決死の覚悟で臨んでいることが随所に現れ、武士ではない主人公にも武士の精神が十分に浸透していたことが伺い知れる。
とくに感心したのは保科正之の明晰さであろう。凶作にて重税を課すのはただの無為無策であるとし、改暦の必要性、手法、影響などをつぶさに検討して、大事を成す姿は現代の政治家にはぜひ見習って欲しい。
主人公がなんども失敗しながらも、少しずつ布石を重ねていって最後に改暦を成就させたのは、鮮烈な勝負の世界を見るようですがすがしい。
アミノ酸と生活習慣病 最新アミノグラムで探る「いのち」の科学
2012/10/10 21:07
21世紀はアミノ酸の時代になる
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
専門科向けのアミノ酸に関する学術書。基本的なアミノ酸の知識から臨床との関連性まで詳細に記述されている。アミノ酸は種々の生理活性物質の前駆物質として重要であるだけでなく、骨格筋代謝にBCAA、消化管粘膜にグルタミンが重要など、多くの知見が盛り込まれている。うつ病、パーキンソン病のみならず、多くの疾患が生理活性物質の枯渇により発症することを考えれば、その原料となるアミノ酸の補給は極めて重要であり、多くの疾患の症状の改善効果が期待できる。
その意味では19世紀に原因不明であった脚気や壊血病などが、20世紀になってビタミンの発見に伴って次々と解決されていったように、21世紀はアミノ酸の時代と考えても過言ではないように思われた。
大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ
2012/03/04 12:13
一般向けの死生学の啓蒙書として推奨できる
14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
経験談や冗談を交えて一般向けに比較的平易に書かれた死生学の啓蒙書と考えて良いだろう。医学的にはあまり専門的な記載はなく、ワクチン接種やがん治療などで専門家なら首をかしげるような部分もあるがそれにはあまり突っ込まない方が良いだろう。
高齢社会において多くの人々が死生学についてよく考えるきっかけを与えたことは評価できる。「できるだけの手を尽くす」は「できる限り苦しめる」と同義であることは多くの医師が同意することであり、おだやかな自然死を迎えさせる医療はこれからの主流になるだろう。とくにがんの治療により亡くなっている人がかなり多いことは多くの人々に知ってほしい点である。
とくに評価されるのは、死の準備のための具体的な行動が明記されていることだ。意思表示不能時の事前指示書の書き方など、これから死に向けて準備を始めようと考えている人には参考になるだろう。
2012年5月21日 金環日食観測ノート カード型太陽日食メガネ付き
2012/02/25 15:24
大人には少し物足りないかも
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
金環日食観察用に購入。付属の眼鏡はこぶりだが、大人でも使用できる大きさ。ちゃんと太陽を見ることができた。眼鏡には柄がついていないので、手で持たなければ観察できないのは少し不便かもしれない。しかし、そのために大人でも子供でも使用できるのは良いだろう。内容はフルカラーできれいだが、簡単な日食の原理と楽しみ方が記載されている。月の公転軸が5度傾いていること、皆既日食との違いが記載されており、日食を理解するには十分な内容。小学生向きの印刷物なので大人には少々物足りないかもしれない。
「原因」と「結果」の法則
2014/01/01 18:56
清い心と理想を持ち、努力することを推める啓蒙書
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
簡潔に言えば、すべての結果の原因は自身の心にあるとする書である。人の心が行いとなり、結果を生じる。だから清い心を保ち続けなければいけない。心の中からあらゆる悪いものを取り払い、良いものだけで満たす。苦悩は誤った思いの結果である。目標やビジョンを持つべき。穏やかな心を持て、ということ。
この書籍の内容については、批判的な立場に立てばいかようにも反論することができるだろう。人間の歴史は不条理に満ちていることを示している。戦争などの大きな社会の流れに抗うことはどんなに努力しても困難である。搾取される側にも原因があるなどとは考えられない、というように。
しかし、この本はそういった具体的な事象を用いた批判にはふさわしくない。この本は歴史や現実とは別に、そのように心で思うことが大切であると啓蒙しているのではないか。ひたすら信じて祈ることを推めているのであって、その意味では宗教書に近いものだろう。
だから、この本にはすなおに受け入れることができる人と受け入れられない人とに分かれるだろう。それで良いと思う。
