hontoユーザーレビュー
最近の投稿分から優秀なレビューをご紹介します。本もレビューも読みごたえあり、オススメです!(週1更新)
今週のイチオシレビュー
多情所感 - キム・ホンビ(著),小山内 園子 (訳)
ユーモアと優しさと奮闘
投稿者:くらげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいると、まるで友人の話を聞いているかのように錯覚してしまうほどの親しみがあり、面白く読み続けているとあっという間に時間が経っているようなエッセイ集。文章にユーモアが効いていて、韓国のことわざを引用した言い回しや韓国特有の文化も随所に登場する。
大きく第1章と第2章に分けられ、第1章では作家が社会に向ける姿勢や意見、そう考えるようになった契機が綴られている。また、第2章では優しさに端を発する人との関わりや連帯の記憶を描いているように思う。
趣味のサッカーをやっていて良かったことは、""ちゃんと大家さんとも戦えるようになったこと""(?)という導入から始まる「恐怖と抑制」との戦いのエピソードや、新人客室乗務員として初フライトに臨む日の優しい記憶などを読んでいると、日常生活を送る中で様々な意味で特別だった瞬間が目に浮かんでくる。
特に第2章では友達の作ってくれた料理やシリアル、じゃがいもなど、食事と絡めたエピソードが綴られており面白かった。
六人の噓つきな大学生 - 浅倉 秋成(著)
本書は多様なテーマに挑んだ傑作だと思います
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある就活で最終選考に残った6人に課された最終課題は、グループディスカッションで「内定に相応しい人物を一人選ぶ」というもの。議論の最中に、各々の汚点を暴いた告発文が届く。一体誰の仕業なのか、そして内定者に誰が選ばれるのかをサスペンス仕立てで描く。逆転に次ぐ逆転にあっという間に読了。人の裏表を描くとともに、就活の欺瞞を活写。さらに一人の成長物語にも仕上がっており、とても面白かったです。本書は多様なテーマに挑んだ傑作だと思います。
「自分の長所・短所は何か」「大学で何を成したか」等の問いに、臆面もなく針小棒大に答える。この繰り返しに疲れ果て、最初に内定を出してくれた会社に就職しました。それにしても正直に話した会社からは落とされ、脚色をして話した会社からは内定通知を貰うという欺瞞に憔悴するとは、まだ当時は純粋だったなぁと、本書を読んで思い出しました。本書は就活の核心を見事に描いた作品と思います。
禍 - 小田 雅久仁(著)
予期せぬ結末の数々。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
耳、鼻、口といった人間の「からだ」をテーマに、未だかつて誰も見たことがない景色を見せてくれる本作。
各短編の主人公と共に読者である我々も全く予期せぬ、とんでもない結末へと一直線へと進んでいく。
日常の何気ない風景がほんの些細な違和感をきっかっけにどこまでも瓦解していく様は、おぞましいと感じつつも目をそらすことができない。
強制的に読者を歪な世界へと誘う、その吸引力、没入力は圧巻。
また本作は、映画やドラマといった直接的な映像表現を前にしても一切引けを取らない。
それほどまでに本作で描かれる光景は、我々読者の脳内に対して直接的に広がっていく。
自らの想像を遥かに凌駕する世界を体験する、それこそが読書の醍醐味であることを本作は思い出させてくれるのだろう。
今週のピックアップ
水衣集 - 日高 堯子(著)
自然界と人の世界のあわい。
投稿者:雨宮司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日高堯子が己が短歌の真骨頂を詠んでみせた歌集だ。コロナ禍の只中に詠んだ短歌を含んでいるらしい。様々な人間界の問題は背景に描き、それらの影響を受けながらも淡々と生きていく、鳥獣虫魚や草木を描いてよどみがない。もちろん、人間の世界をメインに据えた短歌もまた多いが、印象に残るのは自然界の動植物だ。表看板に据えるだけあって、自然界を描いた作品は厳しい読みをクリアしていく。それらとの相関関係を結んで巧みな表現になっているのが、人間界、特に己が身辺にいた父母の晩年の描写だ。意外とドライな詠みになっているのは、動植物を見るまなざしがフラットになっているのと無縁ではなかろう。久しぶりの実り多き収穫だった。
捨てなくても大丈夫 - 宝島社
スゴイ部屋に圧倒され、、
投稿者:ももじろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に圧倒されました。
一般庶民の私としては、スペースのサイズ感がすでに感覚を狂わせられました。
私の部屋の片隅がぐちゃぐちゃで、他人から見たらゴミの山なんだが、自分的には、どこに何があるのかはほぼ把握できている。
しかし、本書掲載の写真なぞからは、あまりの広さの物たちの積み重なりが広がり、、、皆さん大丈夫かな?と心配になった。(余計なお世話だな。)
私なんかはまだまだヒヨッコもヒヨッコということ。
上には上がいるっていう事ですね^_^
どの世界も広いなぁ。でも
だからこそ面白いし、魅力的なんですね。
その生きづらさ、発達性トラウマ? - 花丘ちぐさ(著)
前向きに
投稿者:fuku - この投稿者のレビュー一覧を見る
虐待とはいかなくても、不適切養育を受け、生きづらい人に向けた本。
個人的にとても救われた箇所は、
【未発達の親から愛をもらうのは難しい。それよりも、自然や動物、
友達からたくさんエネルギーをもらって乗り越えていくほうが賢明。
様々なものから生命力を育んでね】
という部分。
親の不完全さとそれが子ども時代の自分に及ぼした影響を理解しつつ、
でも親と直接対決するのではなく、自分が幸せになることに集中すべき
なのだと学んだ。
変な家 - 雨穴(著)
発想が面白くて、読みやすい
投稿者:しろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと気になっていた作品で、映画化や文庫化とおめでたい展開が続いているのを機に手に取りました。
間取りから謎を読み解く、という発想が斬新で面白く、読んでいて楽しかったです。
台本のような形式の文章が読みやすく感じました。
面白さと怖さが続きを読みたい意欲につながり、一気に読破しました。
読み終わっても謎が残る、読者に考えさせる余地を残して終わる作品で、大団円では終わらないので、怖さの余韻が不気味さを引き立てている作品です。
ひげがながすぎるねこ - 北澤 平祐 (作)
ねこの表情にやられてしまう
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙の通り、ひげのながすぎるねこ。
長いひげは邪魔になるし、大変なことが多い。踏んづけられるし、ラーメンと間違えて食べられそうになるし、大なわとびにされるし・・・。
ページをめくると、そんな不満が顔に出ているねこと目が合う。不満そうな顔が何とも可愛い。確かに長いひげは大変そうだけど、みんなは喜んでいるみたい。
そして自分にとっても悪いことばかりじゃない。
ねこの何ともいえない表情にやられてしまう、かわいくておかしい一冊だ。
ときめく和菓子図鑑 - 高橋 マキ (文),内藤 貞保 (写真)
和菓子好きにはたまらない1冊
投稿者:きのこごはん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1つ1つの和菓子が大きく載ってて、解説文も簡潔だからとても分かりやすかった。
12か月毎の和菓子ページ、
羊羹やどら焼きなどのお馴染み和菓子のみならず
ういろうなどの地域和菓子も紹介されてて
ページを眺めるだけでも楽しかった!
表紙からも感じる優しくて穏やかな色調も素敵で、
全ページフルカラーで見やすいし分かりやすい。
和菓子について知りたいときはもちろん、
ふとしたときにでも眺めていたい1冊。
もしもなんて来ないと思ってた猫 - オキ エイコ(著)
感動の大作です
投稿者:轟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネットでずっと追いかけていて、待望の書籍化でした。
動物飼いならヒヤッとしてしまいそうなリアルなテーマを、クスッと笑える猫たちとコミカルな表現で読みやすい一冊です。
軽いタッチが重くなりすぎなくていいなと思いながら読み始めましたが、意外とドラマ性の深い内容にうるっと来てしまいます。
心が温まる作品です。読み終わった時には、自分の家の猫を抱きしめたくなります。