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  5. 果てない言葉をめぐる 須川善行さん 宮川真紀さん選書フェア

フェア 開催終了 ジュンク堂書店  福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

開催日時:2017年03月01日(水)~2017年03月31日(金)

果てない言葉をめぐる 須川善行さん 宮川真紀さん選書フェア

果てない言葉をめぐる 須川善行さん 宮川真紀さん選書フェア

果てない言葉をめぐる 須川善行さん 宮川真紀さん選書フェア



2017年3月1日~3月31日まで
ジュンク堂書店福岡店1階壁面フェアコーナー


 日本語によるフリースタイルラップバトルが流行し、それがTVやインターネットを通してお茶の間まで流れるようになりました。言葉と言葉を組み合わせ、金色の衣を纏い、アメリカン・ドリームの野に降り立つ者が現れました。
『いひおほせて何がある』と、300年前にだれかをたしなめたのは芭蕉であり、『電話するなら電話すると電話しろッ!』と数十年前にだれかに言ったのはタモリです。私たちはもはや、俳句や音声だけでは飽き足らず、スマホやSNSにおける文字の範疇においても、常に誰かと繋がり、共有することを常としています。
まるで果てることを恐れるかのように。
『R&B 馬鹿リリック大行進〜本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界〜』(スモール出版)の座談会ページでは、ハイタッチが変えた日本、という内容で近年のハロウィンノリが論じられています。『一般の人たちが大量に「参加」することで、美学やルールを超えていったから。』(西寺郷太さん)

芭蕉が言ったように、言葉が言い尽くされたときにほんとうに果てるのであれば、それが来るのはいつなのでしょうか。今後、「果てないために」というより、「果てることを恐れないために」私たちは、どんな言葉に触れていったらいいのでしょうか。
生きとし生ける者はいつか、かならず果てるときがきます。業田良家氏の漫画『詩人ケン』には、作中にこんなフレーズがありました。
『言葉よ 今日一日 僕達を励ましてください』
ブライアン・デ・パルマの映画、『スカーフェイス』においては、暗黒街でコカインの密売によりのし上がっていく主人公、アル・パチーノ演じるアントニオ・モンタナがこう言います。
『俺はいつも本当のことしか言わない。嘘をつくときでも、だ』
自分や他人の口から生まれる言葉に影響されるのが今日ならば、忘れられない言葉を、明日は覚えていけないものでしょうか。

 ジュンク堂書店福岡店では、近年、言葉に関する面白い本を数多く手がけられている編集者の須川善行さん、仕事における言葉が印象的な本を多数出版されているタバブックスの代表、宮川真紀さんのおふたりに「言葉をめぐる」フェアの選書をお願いしました。おふたりの制作されてきた本、また、その制作の原点となった本を選んで頂き、素晴らしいコメントもたくさん頂いています。おふたりの「ことば」で綴られる、「言葉」に関する本たちに、この機会に是非この場所でたくさん出会ってください。

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【須川善行さんの作った本】



○詩歌をめぐって
・柴田聡子『さばーく』(試聴室、2016)
・平田俊子編著『詩、ってなに?』(小学館、2016)
・穂村弘『短歌の友人』(河出書房新社、2007)




 2016年に詩に関わる本を2冊作れたことは本当に嬉しかった。これからは(というか、いつも)詩(というか、ポイエーシス)ですよ!
『さばーく』は、九州でもちょくちょくライヴをやっているSSW、柴田聡子の詩集。
なんだ、歌詞を集めたものか、とタカをくくっていると痛い目にあいますぜ。女性SSWにありがちな自己愛みたいなものがまるでない、作品に直接向かい合う姿勢が気に入ってます。『詩、ってなに?』では、ほとんどの対談の構成を担当。
詩というものが、読むところから始まる、ということを如実に示している点でユニークな本になっていると思います。『短歌の友人』は、このリストの中でもっとも古いものだけど、ことばをめぐる本ということであれば、これは外せないな、と。穂村さんには「穂村さんの中で、一番売れない本を作りましょう!」ともちかけたのだが、そのもくろみはあえなく挫折し、あまつさえ伊藤整文学賞まで受賞してしまった。(須川)





 バンド・どついたるねんのMVにもよく登場する丸眼鏡の、可愛い女の子。
そんなふうに柴田さんのことを思っていました。『さばーく』を開き、心底柴田
さんのことが怖くなりました。
「ニューポニーテール」という詩を読んだ時の衝撃は今でも忘れられません。
一部を抜き出してみます。


わたしからわたしが消えて真っ青な空と海 
目にみえるものはすべてサファイア、ルビー

肉となるための今日、血となるための昨日
骨となるための今日、すみれの花
すみれの花が、すみれの花が
すみれの花が、すみれの花が

ビル・シェンケヴィッチという漫画家がいます。
彼の漫画を読むと、ある漫画では、吹き出しをカラフルに色分けしています。
色とりどりの吹き出しは、4つ、5つの異なった声が重なっても、登場人物の
誰がどれの声の持ち主なのかを示すことができます。柴田さんの詩を読んで
すぐに思い出したのは彼のことでした。誰かの言葉に、誰かが色をつけている時間がある。



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○かわされることば
・高山宏+中沢新一『インヴェンション』(明治大学出版会、2014)
・沼野充義『世界は文学でできている』(光文社、2012)




 今、対談本ってけっこう多いらしいですね。これも本当に面白い本を作ることもできれば、粗製乱造とのそしりを免れえぬ本を作ることにもなったり、なかなか奥の深いものではあります。
『インヴェンション』は、碩学二人によるプロレスというか、じゃれあい? (笑)油断していると、すごく面白いが、読んだ後何も残らない……という印象を受けるかも。でも、そこからいろいろなものを汲み出せるよう、註を豊富につけてありますので、これを頼りに読み直してみると、思わぬ発見があると思います! 『世界は文学でできている』は、世界文学をめぐる基調報告と対話の記録。スゴいメンツです。内容は少々牧歌的に見えるかもしれませんが、これからの世界においてこの方向に巻き返していくために何が必要かを考えておかねば……。(須川)






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○人生の振り返り方
・新垣隆『音楽という〈真実〉』(小学館、2015)
・田中小実昌『新編 かぶりつき人生』(河出文庫、2007)
・松江哲明『セルフ・ドキュメンタリー』(河出書房新社、出版社品切れ、2010)



 皆さんも、人生にはいろんな可能性があったでしょう。だけど、こんなふうにしか生きられなかった、んじゃないかなあと思うんです。人生において、選択できることなんて、たかが知れている。それでも選ぶその姿から何かを学ぶ人も、またいるはず。
その姿を映し出してくれるのは、ことばという鏡だ。芸術家には、人生と作品作りが切っても切り離せない人が少なくない。ことばはその間にどうやって割りこんでいくことができるだろうか。
『音楽という〈真実〉』では聞き書きを担当。例の事件の当事者となってしまって人生の方向が狂ってしまった新垣さんは、TV等でご存知のとおりのお人柄で、聞いたことにはきちんと答えてくださるのだが、逆にそれ以外のことには話がなかなか広がっていかないので、難しい仕事でした。でも、自分の意思で引き返すことができたというのは、本当にいいことだったと思います! 今の日本は新垣さんを見習うといいよ! 『新編 かぶりつき人生』は、古本で高値を呼んでいるものとは内容がけっこう違い、『マンハント』の連載に立ち戻って編集し直したものだが、あまりそのことは指摘されない。これが田中さんの初連載のはずだが、この時点で自分の人生を振り返っているものになっているというのには驚かされた。今や『あれよ星屑』で有名な山田参助さんにカバーをお願いしました。
『セルフ・ドキュメンタリー』は、現在大活躍中の松江哲明監督の本。これ以前にも2冊本を出しておられるのだが、編集者としては、これが「第2の処女作」という意気込みのつもり。子供のころ、国語が苦手だったというのが信じられないほどの名文家だ。(須川)





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○遺稿集を編む
・間章『間章著作集』1〜3(月曜社、2013〜14)
・田中りえ『ちくわのいいわけ』(愛育社、2014)
・東谷隆司『NAKED』(東京キララ社、2015)
・柴田南雄『柴田南雄 音楽会の手帖』(アルテスパブリッシング、2016)




 亡くなった作家のアンソロジーを編む仕事は何度かやったけれど、遺稿集ということを初めて意識したのは大里俊晴『マイナー音楽のために』(月曜社)で、がんばった甲斐あり、版元でも品切れになったようだ。遺稿集を編むのは、追悼の意味もさることながら、世間に対する異議申し立ての気分があることも否定できない。さらに自分にとっては、亡くなったはずの著者を蘇らせる招魂の儀式のようにも感じられる。この世に遺したことばを集めることで、彼/女たちはいまだに自分の隣にいる、と感じられる。
『間章著作集』は、2010年代に手がけた大仕事のひとつ。「亡くなった作家のアンソロジー」のひとつでもあるが、他の作家に比べてより内容に入り込まねばとても完成できなかった。1巻『時代の未明から来たるべきものへ』は『編集ノート』を加えただけだが、2〜3巻は過去に刊行されたものを徹底的に組み直した。間章は毀誉褒貶の多い批評家だが、イメージだけが先行していて、いまだにテクストに本気でつきあおうという人間がいないことには、率直にいって憤りを覚える。『ちくわのいいわけ』の作者は、『ポロポロ』などで知られる作家、田中小実昌のご息女で、本作は最後の長編小説。行き当たりばったりに書かれた身辺雑記ふうの作品のように思えるかもしれないが、全体を把握しようとする統覚が働いていることがわかる。『NAKED』は、「時代の体温」展、「ガンダム」展、釜山ビエンナーレ2010などで優れた仕事を残したインディペンデント・キュレーター・東谷隆司の原稿を集めたもの。韓国で活動しているときには非常に生き生きとしていたのに、日本に戻ってからはみるみるうちに調子を崩していったのが痛ましかった。彼からはいくつか宿題をもらっているような気がしている。柴田南雄さんの本は、朝日新聞に掲載されたコンサート評をまとめたもの。短い評言の中に耳が行き届いていることがわかる。しかし、それだけでなく、ジャーナリズムの中で自分がなすべきことが何かを考えながら書いているのが伝わってくるのが感動的。つまり、これは単なる好き嫌いで選ばれたものではなく、何を読者に推すべきかの答えでもあり、つまりは一種の「政治」なのだ。(須川)






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【須川さんの制作の原点となったような、言葉(と批評)に関連する書籍】


いやまあ、そういうことをリクエストするのは簡単だと思うんですよ、でも書店のフェアのために選書するとなるといろいろ大変なこともありまして……。つまり、「制作の原点」だから、いきおい昔の本になってしまうものの、当時の本の多くは絶版になっているため、本当に古典的な名著が中心になってしまって、選ぶ立場としてはあまり面白い本を残せないんですよね。予期せぬ本が復刊してるのを発見するのは楽しいですけど。(須川)

 
(以下、*コメントは全て須川さんです)



○言語の臨界としての文学
・イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』(河出文庫)
*ことばがことばについて際限なく自らを編成し続ける驚異のドキュメント。

・フィリップ・ロス『素晴らしいアメリカ野球』(新潮文庫)
*祝・復刊。華麗・多彩・変幻自在なことばのピッチング・フォームをご覧じろ。

・ルイ=フェルディナン・ド・セリーヌ『夜の果てへの旅』上・下(文春文庫)
*ことばから世界への反撃。泥沼の中で喘ぎ、のたうちまわるのもまたことばだ。

・西脇順三郎『西脇順三郎詩集』(岩波文庫)
*「翻訳」(この場合は西洋)との緊張関係を生きた日本の詩人を代表するひとり。

・土方巽『土方巽全集1・2』(河出書房新社)
*特に『病める舞姫』。土俗のようでモダン、そして完全に振りきれてます。



○言語について
・丸山圭三郎『ソシュールを読む』(講談社学術文庫)
*まず20世紀言語学の出発点を踏まえるところから。人間は何でできているのか?


・ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(光文社古典新訳文庫)
*著者曰く「言語批判」。言語の権能を画定したその先には? 後から来るのは?

・ミシェル・フーコー『知の考古学』(河出文庫)
*歴史から考古学へ。ことばに対する態度の変更。人間主義批判を今どう見るか?

・蓮實重彦『反=日本語論』(ちくま学芸文庫)
*言語のあわいに生きることをめぐるエッセイ。こういう時代にこそ読みたい本。

・吉本隆明『初期歌謡論』(ちくま学芸文庫)
*日本語だって、成立の時点からして一枚岩ではない。こうした視点は常に重要。


○美学と批評、そして歴史
・柄谷行人『マルクス その可能性の中心』(講談社学術文庫)
*僕が日本の文芸批評を読み始めたころには定番だった本。

・ジル・ドゥルーズ『マゾッホとサド』(晶文社、出版社品切れ)
*ことばに関心をもつきっかけは間章だったけれど、批評に対しては確かこの本。

・イマニュエル・カント『判断力批判』上下(岩波文庫)
*作品を扱う批評に趣味判断は欠かせない。「美」とは何か? 役に立つのソレ?

・モーリス・ブランショ『来るべき書物』(ちくま学芸文庫)
*現代批評に反=人間主義インパクトを与えた重要人物。その前にはハイデガー。

・スーザン・ソンタグ『反解釈』(ちくま学芸文庫・一六二○円)
*現代文学からポップ文化までを捕捉する軽やかさ。その前にはロラン・バルト。

・菊地成孔、大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー』歴史編・キーワード編(文春文庫)
*今世紀の日本の批評に歴史と構造への新しいアプローチを示した功績は大きい。







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さて、次はタバブックス代表、宮川真紀さんの作られた本をご紹介していきます。





【宮川真紀さんの作った本】


・『仕事文脈』(タバブックス・現在は9巻まで刊行)


 年に2回のペースで刊行されるリトルマガジンです。特集が毎号毎号、表紙を見るたび目を疑うような特集で度肝をぬかれます。「女と仕事」、「安全と仕事」、「ごはんと仕事」など。仕事とはタイトルについていますが、職種選びの本や資格案内の本ではありません。狩猟する人、学生、無職、仕事とは何であるかを、さまざまなフィールドの人たちが話してくれています。
 クレーム対応の本を読みだしたらはまってしまい、クレーム関係の本ばかり読んでいた時期がありました。理由は、最初に読んだクレーム対応の本がなぜか全文、ガチガチの京都弁で書かれていたからです。別のクレーム処理の本では、なぜか「怒りにまかせて道の自転車を倒さないで!」というフレーズが頻発し、その言い回しはそんなにポピュラーなのかを確かめる為に、本を何冊も読んでしまいました。人は、仕事する人に人間臭さが垣間見えることで安心します。もっと知ろうという気になります。「仕事文脈」は、言わばそんな「いろんな人たちの、俺だけのやり方」が淡々と集められた雑誌です。仕事のやり方を見ることは、その人自身をも見ること。後に出てくるタバブックスの漫画『白エリと青エリ』にも通じる気がします。
宮川さんには、以下の2冊を、関連書籍として選書して頂きました。


・千松信也『ぼくは猟師になった』(新潮文庫)
・毛利嘉孝『はじめてのDIY  何でもお金で買えると思うなよ!』(ブルース・インターアクションズ、出版社品切れ)
 一般的ではない生き方をしている人の話はおもしろいなと(宮川)







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・植本一子『かなわない』(タバブックス、2016)


 写真家、植本一子さんの日記と散文で構成された本。ラッパー・ECDさんと子どもたちとの暮らしが綴られた『働けECD~わたしの育児混沌記』(ミュージックマガジン)後の、5年間の生活の様子です。前述の『働けECD』においては、節約をするために買ったのに、家に水筒を置いて職場に行ってしまったり、コーラを禁止されるなど切り詰める日々でも、甘いものをなんとか食べようとする石田さん(ECD)の姿が、その日にいくらふたりが使ったかのテキストから浮かび上がってくるさまが印象的でした。石田さんの職業はそれこそ、人々の前で言葉を綴るものです。しかし同じ家に暮らし、使ったお金を、生活を、一子さんが数字を用いて書いていくことが、言葉と同じくらいに、胸をうつ瞬間が何度もあります。早朝に石田さんが紡ぐラップ。『かなわない』においては、愛とはどんなものだと思うか、一子さんが自転車で並走しているときに好きな男性に尋ねる場面があります。彼は言葉でなく行動で示し、「愛とはこういうことだよ」と一子さんに言います。こう言うと、ありふれたラブソングのような言い方になってしまいますが、人間は時に言葉を欲しがろうとして、しかし、欲しかったのは言葉でなかったことにあとから気付くことがあります。言葉でないものに惹き付けられ、しかしそれをまた言葉で留めようとする。
一子さんの「かなわない」という言葉は、この世にあふれるさまざまな「かなわない」を示しているようにも思えます。宮川さんが、『かなわない』企画・制作時に、参考となった書籍を2冊、挙げて頂きました。



・瀬戸内寂聴『夏の終り』(新潮文庫)
・長島有里枝『背中の記憶』(講談社文庫)
 日記とはいえ文学の香りがしていたこと、写真家の視線も重要な魅力だと感じて(宮川)






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・関根美有『白エリと青エリ 1』(タバブックス、2014)
・関根美有『エリと青葉子』(タバブックス、2016)




絵柄を見ると可愛らしい漫画なのかな?と思いますが、吹き出しの中になにげなく置かれている言葉は、どれも最高に恐ろしいです。『白エリと青エリ 1』は、高校1年生のエリという女の子が大家族の中で、彼らの労働観と触れ合いながら成長していく様子が描かれます。エリの姉が、現実逃避し梅酒作りに精を出す家族を見ながら言います。
「現実なんて、しょせん遠くで待ちぶせしているだけで/ずっとチラチラ見えているじゃない?/逃げるまでもないのに」
続刊の、『エリと青葉子』では、さらに恐ろしい言葉のオンパレードです。
「やる気次第の社会って/きもちわるい/ロボットはもくもくと働くけど、彼らにやる気なんてないよ(中略)それじゃあさぞかし神様は/やる気まんまんで人間を造ったん…/でしょうねええ〜」
「忙しくロクでもないことをしている人もたくさんいますよ」
「えらくてもお金持ちでも高学歴でも誰だって傷つくんだ」
「なんでもない毎日が宝物なんて、ただの流行だ」などなど。
人の中で働くからこそ、そこには新しい言葉が生まれます。新聞配達の音で朝を知ることに気付いたエリは考えます。
「地球上にたったひとりになっても/ちゃんと朝に気付けるかしら」
働く彼らの言葉はシニカルに思えますが、自分以外の誰かを信じることで、産み落とされた言葉なのではないでしょうか。
宮川さんに選書していただいた関連書籍は以下の2冊です。



・高野文子『黄色い本』(講談社)
・100%ORANGE『ひとりごと絵本』(リトルモア)
 マンガ、深いことば、ユーモア、かわいさ、批評眼など(宮川)





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・小野一哉/かとうちあき『今日も盆踊り』(タバブックス、2015)



ミニコミ紙『恋と童貞』編集長の小野一哉さんと、『野宿野郎』編集長のかとうちあきさんがたずね歩く、日本全国の盆踊りについてのレポ本。中盤に、岐阜の郡上踊りについての記述がありますが、『ヤッチク』という踊りの歌詞は、江戸時代に郡上で発生した一揆をテーマにしており、体制側への抵抗を描く、まさにパンクソングだと、小野さんが書かれていました。
言葉は時に踊りへと、かたちを変えていくことがある。何百年も踊りとして伝わり、意味を知らない何百年後かの誰かも、手をかざし足を鳴らして踊ることができる。レポートのあいだにはさまれる栗原康さんの文章には一遍の踊り念仏とからめて、「ひとはなかなか自分が成仏していることに気づかない」とあります。
世間体や、言葉で縛られることから逃れる為に、人間は踊らないとならないことがある。死者だけでなく、過去に封じ込めた言葉に、現代の別の言葉から逃れるために生者も会いに行くのです。その重要性を教えてくれる本です。
宮川さんに選んで頂いた関連書籍です。


・坂口恭平『TOKYO O円ハウス O円生活』(河出文庫)
・都築響一『やせる旅』(筑摩書房、出版社品切れ)
 盆踊り紀行をとおしての成長物語として読んでもらえるような本になればと思い(宮川)






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 その他、タバブックスから刊行されたさまざまな本に、宮川さんが制作のヒントとなった関連書を選書してくださいました。どれも、併せて読むとその面白さが何倍にも増す本たちです。



・宮川真紀/中野幸英『東北コットンプロジェクト』(タバブックス、2014)↓
・『仙台学 vol.11東日本大震災』(荒蝦夷、一部のジュンク堂でお取り引きがあります)
・『OCICA~石巻 牡鹿半島 小さな漁村の物語』(一般社団法人つむぎや、amazonなどで購入できます)
 震災関連書籍を現地の外から出すにあたり、伝え方を考える参考に(宮川)


・栗原康『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス、2015)↓
・雨宮まみ『女の子よ銃を取れ』(平凡社)
・ブレイディみかこ『アナキズム・イン・ザ・UK』(Pヴァイン)
 王道の人文書ではなく、良質な読み物として読者層を広げたく、著者にもすすめた本
(宮川)


・長谷川町蔵『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス、2017)↓
・舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)
 東京郊外の女の子、疾走感のイメージ(宮川)


・久保憲司『スキゾマニア』(タバブックス、2017)↓
・チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文庫)
 無頼派小説、乾いた文体も海外文学のようで(宮川)





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 いかがでしたでしょうか。
先に挙げた、『スカーフェイス』で、主人公のモンタナは、邸宅のオブジェに描かれたある言葉の横で銃撃戦の末、絶命します。「The World is Yours(世界はあなたのもの)」。
肉体は滅んでも、言葉を通して広がってゆく世界がある限り、わたしたちは果てることはないのかもしれません。

(ジュンク堂福岡店・松岡)

2017/03/16 掲載