フェア ジュンク堂書店 難波店
難波店店長が選んだ2017年ベスト5+6
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『みすず』1.2月号 読書アンケート特集
1947年、日本政府が日本国籍を持つ在日コリアンに強いた「朝鮮籍」は、1952年のサンフランシスコ講和以後も引き継がれ、今に至る。欺瞞に満ちた政策による在日コリアンの不安定な立ち位置を、在特会は「特権」と見なし、ヘイトスピーチを浴びせつづける。『日本的ヘイトスピーチとは何か』(影書房)で梁英聖は、それを「ひどすぎて本来ありえないほどのレイシズム」と糾弾する。「朝鮮籍」を選び続ける人びとの統一祖国への思いを取材した『思想としての朝鮮籍』(岩波書店)も、是非。
歴史についての無知・誤解は、人びとの認識を歪める。『世界史の哲学』シリーズ(講談社)で大澤真幸が問い続けるのは、“なぜ今日、〈世界史〉の中ではむしろ後発である西洋が、世界の覇権を握っているのか?”いよいよ西洋が台頭してくる『第五巻 近世編』で大澤が解く誤解は、西洋中世/近世の断絶だ。中世ー近世を貫き結ぶのは、キリスト教。
S・フェデリーチの『キャリバンと魔女』(以文社)は、被支配層が支配層から徐々に解放されてきたという単線型の史観の誤解を正してくれる。封建領主の貢納や賦役が過酷になっていった時、まず闘争を開始して緒戦を制したのは、農民たちの方だった。13世紀の異端信仰は幅広い支援ネットワークを形成した、最初の「プロレタリア国際機構」だったのだ。時代が下り、支配層となった資本家が労働力を囲い込もうとする反撃に対し堕胎術などで労働力の再生産に抗した女性を迫害したのが、「魔女狩り」であった。
日本の異端信仰に目を向けたのは、栗原康の『死してなお踊れ 一遍上人伝』。修行も損得打算もなし、何もかも捨てて念仏に徹することによって、自分を縛りつけていた一切合財から自由になっていく一遍上人たちの様子を、栗原の踊り跳ねるような文章が、いきいきと伝えてくれる。一遍教団の全国行脚は、権力が最も恐れる民衆のエネルギーの爆発だった。
そして、現代世界の見方を大きく揺さぶりながら、大きな説得力をもつのが、D・グレーバーの『官僚制ユートピア』(以文社)。現代は、「全面的官僚制化」の時代であり、官僚制の蔓延こそが、技術の進化を止めた。インターネット?そんなもの、「超高速でアクセスできる図書館と郵便局とメールオーダーのカタログ」に過ぎない。痛快!文句なし、今年のベスト1。
2018/02/11 掲載
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