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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2018年12月号

今月の特集は
『あえて旅行の荷物を増やす』
『中国古典のチカラ』

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)



『あえて旅行の荷物を増やす』

 旅の荷物は少ないに限る。
 アルバイトとバックパッキングに明け暮れた学生時代はそう思っていました。もちろん大荷物を抱えての道行などまっぴら、という気持ちに変わりはありませんが、あの頃とひとつだけ違うのは、旅に出るとき、バッグに数冊、出かけた先で読むための、割とかさばる本を持っていくようになったことです。
 きっかけはジョン・フリーリの『イスタンブール』(NTT出版・三〇〇〇円)でした。「三つの顔をもつ帝都」という興趣に満ちたサブタイトルを付す本書は、ビザンティウム、コンスタンティノープル、イスタンブールと名を変えた小アジアの古都が辿った変転を、エピソードのみならず文化史や建築など様々な切り口から紹介してくれる歴史書兼ガイドブックで、所々に添えられた東ローマ帝国以来の遺跡のスケッチに、無性に旅心をかき立てられました。
 聞けばヨーロッパには昔から、この手のたっぷり読ませる歴史書風旅行ガイドというジャンルがあって、それをバッグに放り込んで旅に出る若者も多いとか……。何ですか、そのカッコイイ感じ(笑)。かつて沢木耕太郎さんの『深夜特急』シリーズ(新潮文庫)に影響されつつも、アレを片手に旅するのはいささか気恥ずかしいと思った私でしたが、以来、旅の空で読む、しかもその道中や目的地にまつわる歴史や文化や風俗を追体験させてくれる書物が、懐中に欠かせないものとなっています。
 実際、その場に身を置いて本を読むという行為は書物の持つ物質性にも適うもので、私はそのことをベトナム・ホーチミン(旧サイゴン)で強く感じました。開高健さんの『夏の闇』(新潮文庫・五 五〇円)は定番として、今回は日野啓三さんの『地下へ/サイゴンの老人』(講談社文芸文庫・一六〇〇円)をご紹介します。本書は、読売新聞の記者としてベトナム報道に携わった作家の手になる短編小説の集成です。わざと雑然としたドミトリーに投宿し、エアコンの入った部屋を出て路上のベンチに腰掛け、ボンヤリとした明かりの下で本書に収められた「悪夢の彼方」を読むと、「日本からやってきた男」と「二十年、戦争の中で生きてきた女」の会話のむこうに見たこともないはずの戦争当時の風景や人々の息づかいが立ち上がってきて、本当に「ベトナムの夜の底」へ降りていくような気持ちになります。
 それは強烈な日差しが照りつけ、大勢の観光客が愉しげに行き交うバリ島のビーチで、粘り着くような熱帯の大気を全身にまといつつ読んだ倉沢愛子さんの『9・30 世界を震撼させた日』(岩波現代全書・二三〇〇円)からも感じる温度です。一九六五年のこの日に勃発し、凄惨極まる大虐殺事件の引き金を引いたインドネシアの軍事クーデターのあらましと、なぜ人々が昨日まで共に暮らしてきた隣人たちを死に追いやったのか、そして亡くなった人々がどうなったのかを考えながらデンパサールやウブドを歩くと、たった今、笑顔ですれ違ったモノ売りの少年の生死さえ定かに感じられなくなってきます。
 同じような経験はヨーロッパでもありました。豪雨とヴルタヴァ川の増水によってホテルに降り籠められたプラハで、私の旅行鞄に入っていたのはウンベルト・エーコの長編小説『プラハの墓地』(東京創元社・三五〇〇円)。ほぼ一昼夜、衒学的なまでに繰り出される膨大な宗教的、政治的、歴史的情報を浴びつつ、「ユダヤ人嫌い」の主人公シモニーニが「シオン賢者の議定書」を偽造する過程に寄り添うと、それがナチスにインパクトを与え、終局的にホロコーストへ帰結することを知る読者の耳には、旧市街のカタコンベから声ならぬ声が聞こえてくるように思われてならないのでした(幸か不幸かカタコンベに浸水があって翌日の見学ツアーは中止に……)。
 あまり爽やかでない取り合わせのご紹介が続きましたね。近年、ヨーロッパでは戦跡や災害の爪痕をめぐるダークツーリズムが流行っているそうですが、けしてそれを推奨しようというわけではありません。たとえば南イタリアにもギリシャにもベルリンにも行ったことのない私が、その旅が実現したおりには必ず携えようと準備しているのがグスタフ・ホッケの小説『マグナ・グラエキア』(平凡社ライブラリー・一五〇〇円)、松永伍一さんの随筆『光の誘惑』(紀伊國屋書店・一九四二円)、多和田葉子さんの小説『百年の散歩』(新潮社・一七〇〇円)です。「マグナ・グラエキア」を私なりに意訳すると「偉大なギリシャの痕跡」とでもなりましょうか。舞台は、かつて古代ギリシャの植民市が置かれた南イタリアで、その各地に残された、ローマとは異なる文化の基層をめぐる随想風の小説とともにイオニア海と出会ったら、紺碧の海原を渡ってギリシャへ向かうのです。目指すは聖山アトス。
・・・・つづく

2018/12/01 掲載

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