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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2019年9月号

今月の特集は
『ごく“普通の人びと”とナチ・ドイツ』
『数人で読む外国文学』

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)



 『ごく“普通の人びと”とナチ・ドイツ』

 ナチ・ドイツについての本は数え切れない。ただしそれは「ヒトラー、ナチのエリート、軍隊の役割」の分析を好み、「ユダヤ人迫害と殲滅」を中心にする傾向が強い、と一九六八年生まれの歴史家ムーアハウスは言う。なぜ、どのように、と歴史に問いかけるとき、社会の大多数がどう生きていたのか思い描くことにも意味はあるのではないか。敢えてフィクションも含め、やや斜めの角度から“普通の人びと”の表情を探してみた。

 板橋拓己・小野寺拓也監訳『ナチズムは再来するのか?――民主主義をめぐるヴァイマル共和国の教訓』(慶應義塾大学出版会・1,800円)は、2017年ドイツのラジオと新聞で展開された専門家たちによる小論集。近年ドイツに起こっている新たな「敵」イメージや右派急進主義の傾向は、共和国末期の再来なのか。多党制システムへの移行、英国のブレグジットで示された国民投票のあり方に不安はないか。とりわけメディアの「オフレコ」が歴史の曲がり角になったという分析には教わるところが多い。

 ピーター・ロス・レンジ、菅野楽章訳『1924――ヒトラーが“ヒトラー”になった年』(亜紀書房・3,000円)は、1923年11月、ミュンヘン一揆(プッチ)の失敗で獄中の身となった男が『我が闘争』を書いて再出発するまでをリアルに綴ったノンフィクション。ビアホールでのドタバタ、ホテルのような刑務所でのハンストの描写も上手いが、さりげない引用が秀逸だ。プッチ挫折後に「鉤十字と突撃隊は消え、ヒトラーの名前はほとんど忘れられた」と、ツヴァイクは書いた。しかし、そうはならなかった。

 ミュンヘンのヒトラー宅の向かいで育った老歴史家の聞き書き、エドガー・フォイヒトヴァンガー、平野暁人訳『隣人ヒトラー――あるユダヤ少年の回想』(岩波書店・3,100円)は、多層的な読み方のできる本だ。家族や使用人のふとした会話から、緊迫感が刻々と伝わってくる。父親の職業柄、訪れるブレヒトやらブーバーやら凄い顔ぶれが談じているのを、脇でじっと聞いている。1934年のある日、「カール・シュミットさんはもうずっと前から顔をみせなくなっていた。(……)ママは、ユダヤ人の編集者なんかと仲良くしていた自分が恥ずかしいとでも思っているのかしらね、と言った。パパはなんにも答えなかった。」

 1930年頃、出来ちゃった婚の若い二人が失業で困り果て、ベルリンに職探しに出てくるというユーモア小説が、ハンス・ファラダ、赤坂桃子訳『ピネベルク、明日はどうする!?』(みすず書房・3,600円)。まさにその時代に書かれた作品であり、給料、保険、家賃など、お金と生活の細部が軽妙な会話のなかに頻出、世間の空気が流れている。

 1933年1月30日。ヒンデンブルク大統領がヒトラーを首相に任命し、その夜のベルリンでは一万人のナチ党員が隊列をつくり官邸に向けて行進した。

 1989年(壁崩壊の年)に刊行されたミステリー『偽りの街』に始まるベルリン・ノワール(新潮文庫)は、往年のベストセラーだが、その主人公グンターが久しぶりに戻ってきた。フィリップ・カー、柳沢伸洋訳『死者は語らずとも』(PHP文芸文庫・1,400円)の前半はオリンピックを二年後に控えた34年のベルリンが舞台。警察を辞め今はアドロン・ホテルの警備に雇われているグンターが「反ナチなのか?」と問われたときのハードボイルドぶりが変わらない。「ナチとはヒトラーを信奉する者だ。反ナチとは、ヒトラーの言いぶんに耳を傾ける者のことだ。」水門で上がったボクサーの水死体、五輪競技場建設をめぐる不正。タフなグンターの目に映る社会が生々しい。

 この小説にアメリカ女性が登場する。事実、戦間期のマルク通貨安もあってベルリンにはとくに、外交官やジャーナリストとその家族、若き建築家フィリップ・ジョンソンなど、アメリカ人が大勢いた。彼らが書き送った記事や後世の回想をもとに書かれたのが、アンドリュー・ナゴルスキ、北村京子訳『ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々』(作品社・2,800円)。ヴァイマル共和国における性風俗の退廃や華やかな社交の見聞とともに、貧しい街角のようすも伝える。

 ナチが政権を取ってすぐ、トーマス・マンの長女は父親の滞在先スイスに亡命する。その後ニューヨークに渡りアメリカ人に反ヒトラーを訴えるべく開戦直前に出版したのが、エーリカ・マン、田代尚弘訳『ナチズム下の子どもたち――家庭と学校の崩壊』(法政大学出版局・2,300円)。教育が全面的に国家の統制にしたがい、警察の監視が徹底する社会では、「父親が母親を疑い、母親が娘を、姉が弟を、息子が父親を疑い(……)家庭は本当に危機に晒された」。
 『名取洋之助写真集 ドイツ・193 6年』(岩波書店・3,200円)はベルリン・オリンピックの式典と競技(「前畑ガンバレ」)が中心だが、日本選手団を迎える市民の姿や、夫妻がベンツで回るドイツの地方情景は凝視に値する記録。

・・・・つづく

2019/09/02 掲載

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