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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2022年6月号

今月の特集は
『フィクションとノンフィクション ~べつのしかたで向き合えば~』
『日常的養生をどうぞ』

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)





 『フィクションとノンフィクション ~べつのしかたで向き合えば~』

 人がなにか心に響く出来事を体験したり見聞きしたりしたとき、作品の「芽」は生まれます。
 ある著者は関係者の声を聞き、調査を重ねて真実を求めます。
 またある著者は取材をもとに想像をふくらませ、物語を紡ぎます。
 今回のフェアでは、同じ事件や事故をテーマにして書かれた、ふたつの作品を並べてご紹介していきます。フィクションから読むか、ノンフィクションから読むか。よろしければ、ぜひ両方お手に取ってみていただけるとうれしいです。
社会党委員長浅沼稲次郎
刺殺事件
 1960年10月12日、日比谷公会堂で演説中の社会党委員長浅沼稲次郎が、当時十七歳の少年、山口二矢に刺殺された事件です。親中派の浅沼に対する右翼少年の犯行でしたが、誰かの陰謀による政治抗争事件ではありません。山口が犯行に全霊をかけるに至った理由について示したふたつの作品を紹介しましょう。
 作家の大江健三郎は、『性的人間』(新潮文庫・605円)収録の「セヴンティーン」で、山口二矢をモデルにした主人公の内面を描きました。家族からも大事にされず心許ない自分の存在が、右翼活動に傾倒する中で確かに感じられるようになり、凶行に突き進む姿が浮かび上がります。
 一方、ノンフィクション作家の沢木耕太郎は『テロルの決算』(文春文庫・781円)で被害者の浅沼稲次郎の人物像を掘り下げることで、ふたりを対照的に描きました。山口が抱えていたのは、誰もが思い当たるような気持ち。大江健三郎と沢木耕太郎は別の道をたどった末、同じような結論にたどり着いているように思うのです。
白瀬矗の南極探検とアイヌ
 第162回直木賞を受賞した川越宗一の『熱源』(文藝春秋・2,035円)は、明治維新の後、和人への同化を強制的に進められた樺太アイヌ、ヤヨマネクフ(山辺安之助)と、ロシアの同化政策により苦役囚となったポーランド人ブロニスワフ・ピウスツキの友情を描く歴史小説。感染症の流行や厳しい自然、弾圧される民族など当時の社会を鮮明に再現しながら、作家の想像力でしか補うことのできない友情を描き出しました。
 『熱源』の直木賞受賞をうけて、山辺安之助の自伝が2021年に復刊されました。山辺安之助著、金田一京助編『あいぬ物語 新版』(青土社・2,860円)です。自伝を読むと、山辺安之助の聡明で優しい性格がひしひしと伝わってきて胸を打たれます。同時に、当時のアイヌが「和人とアイヌのどちらが優れているわけではない」と声高には言えなかった社会の様子も想像することができます。

…続く

2022/06/01 掲載

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