コラム
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2023年7月号
今月の特集は
『生誕二〇〇年! ファーブルからひろがる世界』
『雨』
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
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今月の特集(一部抜粋)
『生誕二〇〇年! ファーブルからひろがる世界』
2023年。今年は何の年?
真っ先に思いつくのは「関東大震災100年」ですが、そのさらに100年前に、あの人が生まれています。
そう、今年は『昆虫記』のジャン=アンリ・ファーブル(1823~1915)の生誕200年なのです!
西暦1823年12月21日、南フランスのサン=レオンで誕生。チャールズ・ダーウィンと並ぶ初期の進化論者で探検家だったアルフレッド・ラッセル・ウォレスも、同年にウェールズで生まれています。
ちなみに勝海舟も同い年。日本は文政六年、ドイツ人医師シーボルトが長崎出島に着任した年。江戸時代後期で、幕末の胎動の時期ですね。
ファーブルといえば、何はさておき『昆虫記』をひもとくのが一番なのは間違いありません。奥本大三郎さんの労作『完訳ファーブル昆虫記』(集英社)は詳細な訳註と図版が付され、まさに決定版。しかし全10巻・20冊を並べると、それだけで「愛書家の楽園」の棚が埋まってしまいます(そもそも、多くの書店さんで『完訳ファーブル昆虫記』を備えておられるでしょう)。
そこでここでは、ファーブルの「本編」ではなく、「ファーブルからひろがる世界」を拾ってみました。
ファーブルへの入口
これは、ファーブルの全著作の解説目録をつくった昆虫学者カンブフォールによる『ファーブル驚異の博物誌』が最適です。巻頭「ファーブルの生涯」の後は『昆虫記』のダイジェスト。ファーブルの言葉、『昆虫記』の抜粋、厳選された美しいカラー写真を、しゃれたレイアウトで見せてくれます。最終章「ファーブルの後継者たち」では、死後の評価、動物行動学、芸術家たちへの影響に加え、ファーブルが日本で人気が高いことも紹介しています。
イヴ・カンブフォール/奥本大三郎・瀧下哉代訳『ファーブル驚異の博物誌』(エクスナレッジ・二六四〇円)
イメージがつかめたら、ファーブルその人に迫りましょう。それにはやはり伝記がいいです。
『ファーブル伝』は単なる伝記ではなく、『昆虫記』の世界やファーブルの思想についても踏み込んでいます。ファーブルがダーウィンの進化論を否定したことは有名ですが、それにも一章を割いています。著者ルグロ(1862~1940)はファーブルの同時代の医師で、国会議員にもなった人。おもしろいのは、ルグロは昆虫に興味があったのではなく、ファ ーブルの著作を読んで感動し、窮乏生活に陥っていたファーブルの不遇に義憤を感じて、その顕彰に尽くした人だということです。初版刊行はファーブル没後の1924年ですが、草稿に寄せたファーブルの序文が掲載されています。
ジョルジュ=ヴィクトール・ルグロ/奥本大三郎訳『ファーブル伝』(集英社・4,620円)
じつは母国フランスでは、ファーブルは日本ほど知名度は高くありません。二十世紀初頭まではよく読まれ、『失われた時を求めて』のプルーストや大哲学者ベルクソンにも影響を与えましたが、その後忘れられてしまったようです。日本では大正時代に薄田泣菫、賀川豊彦、大杉栄といった知識人に注目され(『昆虫記』という邦題をつけたのは最初の翻訳者・大杉栄だとか。原題を直訳すると『昆虫学的回想録』)、誰でも知っている「昆虫学の代名詞」になっているのですが(カンプフォールは「日本ではファーブルは西洋の偉人の一人に数えられている」と驚いています)。ただ近年、カンプフォールなどの働きもあってか、フランスでも再評価されつつあり、生地サン=レオンに昆虫博物館もできたそうです。
…続く
2023/07/01 掲載
