コラム
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2024年7月号
今月の特集は
『武器は資源、経済はもう戦争?』
『一年間で会話ができるようになるために』
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)
すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。


今月の特集(一部抜粋)
『武器は資源、経済はもう戦争?』
アジア・太平洋戦争の終結から来年で八十年を迎えます。陸上の国境線を持たないせいでしょうか。1960年代に社会運動となったベトナム反戦のような例外を除くと、日本では海の向こうの戦争に対する関心が長続きしない傾向があるような気がします。今般のウクライナ、パレスチナ報道の減少ぶりを見ていると、その感は強まるばかり……。
しかし、グローバリゼーションの到達地点とも言うべき現代社会は、高度に情報化された経済・金融システム、世界中に張りめぐらされたサプライチェーン、それらを支える資源・エネルギーのやりとりが一体となって成立しており、どれほど政治的に無関心であろうとも、知らぬ間に戦争の一端に関与している可能性があります。あるいは、私たちの日常生活が突然、海の向こうの戦争の余波を受けることだって十分ありえるのです。
近年、経済を一種の「武器」として捉える考え方が急速に広まっています。今年に入って「アメリカはいかにして世界経済を脅しの道具にしたのか」というサブタイトルを掲げたファレルの『武器化する経済』(日経BP・2,750円)と、アレンの『中国はいかにして経済を兵器化してきたか』(草思社・4,180円)が相前後して刊行されたのは偶然ではありません。
今日、国際社会における「パワー」とは、単なる軍事力に留まらず、通貨をコントロールする力であったり、通信ネットワークを管理する力であったり、自分たちのルールを他国に呑ませる力であったりするわけです。世界の基軸通貨であるドルを支配し、インターネットを構築・管理し、国内法を域外適用させる強制力を持つ米国と、巨大な市場へのアクセスを期待する国々に経済的威圧をかけ、とりわけコロナ以降、米国(近代西欧型)とは異なるルールに基づいた影響力を行使しようとしている中国の動向を、半導体、ワクチンなどを含む医療、金融決済など様々な分野から探った両書は、自分たちの日常と地続きの世界で何が起こっているかを知るために重要な手がかりとなるでしょう。
こうした状況を背景に、近年、「経済安全保障」という言葉を耳にする機会が増えています。同テーマについて十一人の専門家による最新の分析をまとめたのが、国際文化会館地経学研究所編『経済安全保障とは何か』(東洋経済新報社・2,640円)です。ウクライナ侵攻後、ロシアに対する経済制裁に参加したポーランドやブルガリアは、天然ガスの輸出を止めるとロシアから経済的恫喝を受けました。ロシアと直接パイプラインで結ばれてはいませんが、自前のエネルギー資源を持たない日本にとって、こうした事態は他人事ではありえません。本書においても、エネルギーやテクノロジーに加えて健康・医療分野、技術基盤などの安全確保が論じられ、経済力を国際秩序とそのルールの再構築のため戦略的に使うことの意味が問われます。また本書の執筆者の一人である鈴木一人さんが編者を務める『経済安全保障と技術優位』(勁草書房・3,520円)は、情報化によって戦争と平和の境界が曖昧になりつつあることに注意を促しつつ、国防の観点から技術覇権や輸出管理の重要性を指摘しています。
…続く
2024/07/01 掲載
