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コラム

丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2024年10月号

今月の特集は
『「この」翻訳がスゴイ!』


丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)

すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。





今月の特集(一部抜粋)




 『「この」翻訳がスゴイ!』

 翻訳者のお仕事ってめちゃくちゃすごい。同じ作品を訳しても、訳す人によって全く違う本になるんです。
 文体や訳語の選び方から、作品の設定の根幹に関わる解釈まで。原典あっての訳であることはもちろんなのですが、今回はより、「翻訳」のお仕事のすばらしさに注目してみようという企画です。
 書店員・編集者・出版営業など本を愛するメンバーに、「翻訳書を読むならコレ!」という推し本を挙げてもらいました。秋の夜長の読書ガイドとして、お役に立てましたら幸いです。
 ※選者名五十音順。
 ボリス・ヴィアン著/鈴木創士訳
 『お前らの墓につばを吐いてやる』
 (河出文庫・1,012円)
 架空の黒人作家をでっちあげ、白人の娘に恋をした〝罪〟で死んだ弟の復讐を企てる男を描いたヴィアン。本作は発売禁止処分を受け、のちに映画化されるもヴィアン自身のシナリオは拒否され、そのうえ彼は完成した映画の試写会場で心臓発作を起こして死んだ。小説の内容も、それにまつわるエピソードも、あまりに不穏で不吉。
 F・スコット・フィッツジェラルド著/上岡伸雄訳
 『美しく呪われた人たち』
 (作品社・3,520円)
 デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる「失われた世代」の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにある自らの転落を予言した恐るべき傑作。著者の五作品しかない長篇のひとつでありながら、2019年まで邦訳が刊行されなかった不思議な小説。
 オマル・ハイヤーム原著/高遠弘美訳
 『トゥーサン版 ルバイヤート』
 (国書刊行会・2,860円)
 「恋人よ、その柔肌を/我が身に寄せて/酒をくれ/酔ひしれるうち/せめても私は忘れたいのだ/蒙昧無知なる人の宿命を」(第二一歌)。一見すると酒飲み音頭のような歌が多くてしめしめと思うかもしれませんが、じっくり味わうと、現実を耐えられるものにするために「酔ひ」、そこから翻って「生の側に引き寄せる力」を感じ取れるはずです。
 マルセル・プルースト著/高遠弘美訳
 『失われた時を求めて』
 (光文社古典新訳文庫・①1,056円)
 プルーストを読むのにあらすじも挫折の心配も不要だと訳者は言います。一生をかけて味読すべき作品であるから、慌てて読み進めなくていい。博大な教養と彫琢された訳文に導かれて、私もプルーストと暮らしています。「私たちは誰でも、現実を耐えられるものにするために、身のうちに若干の小さな狂気を養わざるを得ない」(「花咲く乙女たちのかげにⅠ」)。


…続く

2024/10/01 掲載

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