コラム
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ) 2024年11月号
今月の特集は
『古典を読むなら 訳でいい? 訳がいい!』
『子どもと一緒に絵本を読む』
丸善ジュンク堂のPR誌 書標(ほんのしるべ)。今月の特集ページを一部ご紹介致します。
気になった書籍はネットストアでご注文も可能です。
(※品切れ・絶版の書籍が掲載されている場合もございます。)
すべての内容を、WEB上でお読み頂けます。


今月の特集(一部抜粋)
『古典を読むなら 訳でいい? 訳がいい!』
『源氏物語』や『平家物語』などの古典作品、一生のうちいつか読もうと思いながら、なかなか手が出せずにいる方も多いのではないでしょうか。わたしも、せっかく買って読み始めたけれど、途中で挫折している本も少なくありません。もちろん、原文をそのまま味わうことは素晴らしいですが、まずは現代語訳から手をつけてみてはいかがでしょう。今回の特集では、古典の研究者や、小説家、歌人や俳人の方たちが魂をこめて著した古典の現代語訳を紹介します。
現代語訳で読むメリットは、「いまの言葉で簡単に読める」だけではありません。ここに挙げる書籍には、それぞれの訳者の方たちならではの、作品を楽しむ工夫がたっぷり。ぜひこの機会に、お手にとってみてください。
ベストセラー『口語訳 古事記』の三浦佑之先生による新刊『口語訳 日本霊異記』(KADOKAWA・2,420円)が発売になりました。日本霊異記とは、現存する日本最古の説話集。仏教を庶民の間に浸透させるために、お坊さんが語った短いお話集です。仏教説話ときいて想像するような、説教くさくてお勉強っぽいものではありません。「死者を迎えにきた地獄の鬼が、お供えのごちそうを食べてしまったために死者を見逃してやろうとする話」とか、「カニの恩返し」とか、不思議さやユーモアを感じるものも。原典は漢文で記されていて非常に難解ですが、実際にお坊さんが語っているような、三浦先生の口語訳により鮮やかに生まれ変わりました。
三浦先生といえば、古事記ブームの先駆けとなった『口語訳 古事記[神代篇]』(文春文庫・781円)、『口語訳 古事記[人代篇]』(文春文庫・880円)。「なにもなかったのじゃ……、言葉で言いあらわせるものは、なにも」。全編がこのような「~のじゃ」「~たよのう」の古老の語り掛ける口調で訳されています。昔話をおじいさんから聞くように古事記を楽しめる、画期的な翻訳です。
三浦先生の訳よりもさらに一歩踏み込んで、破天荒な超絶文体(講談社公式サイトでの紹介文より)で記されているのが、町田康さんの『口訳 古事記』(講談社・2,640円)。「汝、行って、玉取ってきたれや」「ほな、行ってきますわ」! 疾走感あふれる新生古事記をご堪能ください。
古事記の語り直しでは、こうの史代さんの『ぼおるぺん古事記 (一)天の巻』(平凡社・1,100円)もおすすめです。ボールペンのみで描かれた漫画によって、日本という国の誕生の瞬間や、神々の姿に血肉が宿っていて感動的です。
高松で出版社をたちあげた佐々木良さんによる『愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1』(万葉社・1,000円)も大人気です。佐々木さんの手によれば、「さのかたは実になりにしを今さらに春雨降りて花咲かめやも」が「うち 人妻やのに 付きあえるわけないやん ワンチャンないで」に。
大河ドラマ「光る君へ」もクライマックスに向かっていく年末、源氏物語を読み直そうとしている方も多いのでは。数々の名訳があって、どのバージョンで読むか選ぶのも楽しいです。なかでも、個人的には『潤一郎訳 源氏物語』(紫式部著・谷崎潤一郎訳・中公文庫・1,100円)を推したいと思います。『春琴抄』や『痴人の愛』のような谷崎潤一郎のこってりしたイメージとは違っていて、平安貴族の気品は表現しつつも、さらっと訳されている印象。意外にすっきりと頭にはいってくるんです。誰の訳で読もうか迷っている方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。
…続く
2024/11/01 掲載
