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文教堂 書店員レビュー一覧

文教堂 書店員レビューを60件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 60 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「文教堂 赤坂店」のレビュー

文教堂
文教堂|赤坂店

ボスの遺言 昭和四十九年、人間ロケットで富士山を飛び越した男 西村 眞 (著)

ボスの遺言 昭和四十九年、人間ロケットで富士山を飛び越した男

赤坂に実在した、あの火災で・・・

赤坂に実在した、あの火災で有名なホテルニュージャパンの775号室に「ボス」と慕われた男が興した「ノアの箱舟」の事務所があった。この部屋の横には、目つきの鋭いその筋のモノがいて、さらに上の階には政財界の重鎮が出入りする憂国の士と呼ばれる男の部屋があった。

ボスの回りには欲望と金の渦巻く世界が、正に目の前に広がっていた。「ノアの箱舟」は赤字経営で、週末は従業員には内密でラスベガスに出掛け、カジノでバカラの大勝負に打って出なければ、借金返済ができない状態にあった。

そんな矢先に、謎の中国人プロモーターから、あるイベント企画が持ち込まれた。アメリカからスタントマンを呼び寄せ、大型バイクを改造し、人間ロケットとして日本一高い富士山を飛び越えさせるという前代未聞のスペクタクルなショーである。これを成功させれば、数億円に膨らんだ借金が一気に返済できると踏んだボスは、この企画に乗ることにした。準備が整いテレビで生中継されるショーの当日、ボスがこつ然と姿を消した。果たしてショーは実演されるのか?

高度経済成長の終焉を迎えつつあった昭和40年代後半を一気に駆け抜け、常人離れした破天荒で哀切な「ボス」の物語である。

文教堂 カルチャーエージェント みなとみらい駅店店員

書店員:「文教堂みなとみらい駅店」のレビュー

文教堂
文教堂|カルチャーエージェント みなとみらい駅店

ウラミズ (角川ホラー文庫)著者:佐島 佑

ウラミズ(角川ホラー文庫)

ホラーの新しい幕開けを感じさせる快作

角川ホラー文庫は常に斬新なホラー作品を出し続けている革新的なレーベルだ。
そこからまた思わず唸らせられるような逸品が出た。
佐島佑の「ウラミズ」がそれだ。
哀しくも美しいイメージの表紙イラストと、キャッチーなタイトルに惹かれて読んだ。

「霊が視えてしまう真城と、視えないけれどペットボトルの水に霊を溶かす力を持つ早音。その水を二つ混ぜることで強力な霊を発生させる"ウラミズ"を作り出した二人は、その水を売ってみようと思いつくが……。」

導入部分は目新しい感じもなく、ありきたりな退魔師モノを手にしてしまったかと思った。過度な期待もせず、読みやすい文章に乗っかってサクサクと読み進んでいくと、途中から随分と変わった展開になってくる。
ちょっとダメな人間の香りがする3人がチームを組んで、幽霊狩りを始めるのだが、まず3人のダメっぷりがリアルでいい。
多くの小説は登場人物が、キャラ立ちバリバリで個性が溢れ過ぎている場合が多い。しかしこの「ウラミズ」は実に自然だ。例えるなら、知り合いとして話を聞くぶんにはいいが、友達にはなりたくない奴らだ。

微妙に共感出来るが、いまいち好感が持てない。中途半端ぶりがリアル過ぎて笑えてさえくる。そんな面々が、霊を敬いも恐れもせずに、道具のように扱って商売を始める。ついつい吹き出してしまったセリフなどもあり、これはコメディホラー路線なのかと勘違いしたくらいだ。
そして中盤を過ぎたあたりから、話の展開というか雲行きがあやしくなってくる。これはどこにでも転がっているホラー小説じゃないぞと、この辺から僕は居住まいを正して読み始めた。結論から言うと、「ウラミズ」は中盤から俄然面白くなる。
影のある美女、ヤクザなどが出てきて、物語の着地点がまったく想像出来なくなる。常に予想の斜め方向に向かうような展開で、もうここからはラストまで一気読みだ。
果たしてハッピーエンドで終わるのか、それともバッドエンドなのか。それはぜひ読んで確かめてほしい。
ホラーの新しい幕開けを感じさせる快作であることは間違いない。


(評者:文教堂みなとみらい駅店 中川浩成)

書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー

文教堂
文教堂|市ヶ谷店

機龍警察 月村了衛

機龍警察

日本SF大賞&吉川英治文学新人賞受賞作

かつて、これほどエキサイティングな警察小説が存在しただろうか?
リアルな警察描写と機甲兵装という近未来的なエッセンスを加えることで、SF警察小説というものに仕上がっている。かといってそれ一辺倒ではなく、人間関係などが複雑に絡み合う緻密なドラマが展開されている。
月村氏は幻冬舎から出版された『土漠の花』が大ヒットし今注目度が高い作家のひとりである。
また『機龍警察 完全版』も発売されましたので、そちらもおすすめです。


(評者:文教堂市ヶ谷店 福田洋介)

書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー

文教堂
文教堂|市ヶ谷店

出ない順試験に出ない英単語 普及版 中山 (著)

出ない順試験に出ない英単語 普及版

エキサイティングでワンダフルな著書

かつて、これほどエキサイティングでワンダフルな著書が存在しただろうか?
私の記憶からは導き出すことが困難だ。
その片鱗は、表紙からいきなりうかがい知ることができる。

「素敵な有刺鉄線(barbed wire)ですね」
「ありがとう。自分で編んだんです」

私はいままで有刺鉄線を見て、素敵だなどと感想を述べたことはなかった。
だが有刺鉄線とて、誰かがまごころをこめて編んだものなのだ。
当然、見せていただいたら感想を口にするのが最低限の礼儀であろう。
こんなことも知らなかったなんて、自分自身が恥ずかしい。

このように、とてもためになりつつ、さらに英語が身についてしまうという奇跡の書なのだ。
ぜひ手にとって読んでいただきたい1冊である。
(内容には暴力的な表現や性的な表現が含まれております。ご注意ください。)


(評者:文教堂書店市ヶ谷店 学参担当 関根秀樹)

書店員:「文教堂北野店」のレビュー

文教堂
文教堂|北野店

自閉症の僕が跳びはねる理由 正 会話のできない中学生がつづる内なる心 東田 直樹 (著)

自閉症の僕が跳びはねる理由 正 会話のできない中学生がつづる内なる心

もっともっとたくさんの人に読んでもらえることを願っています

この本に出会ったのは、NHKの番組「君が僕の息子について教えてくれたこと」でした。どのような内容だったのかというと、

「自閉症である自分自身の心の内をエッセイに書いた東田直樹さんと、それを英訳した作家のデイヴィッド・ミッチェル氏の交流を描いた番組です。自身も自閉症の息子を持つミッチェル氏は、この本を読み息子の気持ちがわかってきたと言います。日本の若者と外国人作家の出会いから生まれた、希望の物語」

(NHKオンラインから引用)とあります。20か国以上で翻訳されベストセラーになっています。私たちが抱く自閉症児のイメージとはまったく違う。豊かな感性、客感性、独創性、強さ、優しさ、家族への愛にあふれた内容の本です。放送直後は入手しにくかった本書も重版され今では手に取ることができるようになっています。

副題は「会話のできない中学生がつづる内なる心」現在24歳の彼が中学生の時につづった内なる心のその広大さに驚きをかくせませんでした。会話はできなくても「筆談」を母親と訓練の末に習得。その後文字盤やパソコンによるコミュニケーション方法を使って、そのまま執筆へとつながっているようです。おおまかに言うと、言葉、対人関係、感覚、興味・関心、活動についての五章と短編小説で構成されています。「自閉症を個性と思ってもらえたら、僕たちは、今よりずっと気持ちが楽になるでしょう」東田君のこの言葉にハッとしました。自閉症児を抱えるご家庭だけでなくもっともっとたくさんの人に読んでもらえることを願っています。


(評者:文教堂書店北野店 若木ひとえ)

文教堂 カルチャーエージェント新千歳空港店店員

書店員:「文教堂カルチャーエージェント 新千歳空港店」のレビュー

文教堂
文教堂|カルチャーエージェント新千歳空港店

北海道民のオキテ 「おせちは大みそかに食べる!?」他県民びっくりの道民の生態 さとう まさ (原作)

北海道民のオキテ 「おせちは大みそかに食べる!?」他県民びっくりの道民の生態

ご当地物のコミックエッセイですが、とにかく面白い!

いわゆるご当地物のコミックエッセイですが、とにかく面白い!一度読んでは又、読み直してしまいます。私も生粋の道民ですが「え?これ北海道弁になるの?」なんてことも。
そしてこの本あの「ミスター」の推薦本!野球のミスターではありませんよ。北海道民にとっての「ミスター」とは「水曜どうでしょう」の鈴井貴之氏のことです。本書でも「どうでしょう」ネタあり。

私的に「え?」はゴミステーションの件。これって北海道だけなんですかね?「投げる」は方言だとは知っていましたが・・・。私も普通に言いますよ「ゴミをゴミステーションに投げてきて」=「ゴミをゴミ集積所に捨ててきて」・・・

道民の私が読んでも面白いこの本。あらためてこれも方言だったのかなんて発見。地名クイズ・・・解けないのが有りました・・・道民ソウルフード・・・思わずにんまり・・・北海道在住の方はもとより内地の(道民本州のことをこう呼ぶ)方にもぜひお勧めです。

ちなみにこの本、当店では北海道旅行の「おみやげ」となっています。店頭で立ち読みされたお客様がそのまま「おみやげ」に。売れています!!

書店員:「文教堂 浜松町店」のレビュー

文教堂
文教堂|浜松町店

『孤独のグルメ』巡礼ガイド 1 週刊SPA!『孤独のグルメ』取材班 (著)

『孤独のグルメ』巡礼ガイド 1

『孤独のグルメ』という漫画をご存知でしょうか?

20年以上前に発売され、現在でも熱狂的ファンに語り継がれ、最近ドラマ化されたことでさらに売り上げを伸ばしています。なんと20刷で10万部に迫る勢いです。
サラリーマンがひとりでご飯を食べるとき、どんなお店に入るのか?
その後入ったお店で感想を淡々と語るだけなんですが、これが男心をくすぐります。『孤独のグルメ』を読んでいると主人公・井之頭五郎の行ったお店で食事をしたくなるんです。私も何件か行ってしまいました。

何年も前から五郎が訪れたお店のガイドブックが欲しい、と思っていたのですが、ついに出版されたのが『孤独のグルメ巡礼ガイド』です。発売前からの問い合わせがすごかったです。早くも重版が決まり全国の書店では品薄状態が続いています。

外食をするとき、安くて美味しくて安心なイメージがあるチェーン店で済ませてしまうことが多いですが、ニュースでも報じられているように、不衛生な外国の工場で薬漬けの外国産の野菜やお肉を一括調理して、お店で盛り付けるだけの食事をすることに私たちはもっと疑問を持たなければいけないと思うのです。
全てが見えるお店で食事をしたいと思ったら、こちらのガイドに載っているお店をおすすめします。
食べることは生きること。
生きることは食べること。
井之頭五郎のように素敵なお店を見つけたら是非教えてください。
お待ちしております。


(評者:文教堂書店浜松町店 前田)

文教堂  店員

書店員:「文教堂書店」のレビュー

文教堂
文教堂|

ルパン小僧 (中公文庫)モンキー・パンチ (著)

ルパン小僧(中公文庫)

「忘れられた漫画」ではないと、あえて断言したい。

ルパン三世を知っているひとは大勢いるが、ルパン小僧を知っているひとはグッと少なくなってしまうだろう。なにせ、某雑学番組で、ルパン三世には子供がいる、と紹介されたこともあるくらいだから。
僕は、この「ルパン小僧」が、子供の頃大好きだった。今の子供達がコナン君や金田二君にハマるように、僕はルパン小僧に夢中だった。当時、連載されていた「少年アクション」を、少ないお小遣いをやりくりして毎号買っていたほどだ。

ルパン小僧は、もちろんれっきとした泥棒なのだが、そこはさすがに少年誌作品ということで、多分に義賊的な要素が強い。子供の僕は毎回、胸のすくような気持ちで彼の活躍を楽しんでいた。
また、ルパン小僧が時折披露する仕掛けは科学的な知識などが盛り込まれ、少年向け科学漫画のような趣きもあって(しかもほんの少し「悪いコト」の匂いもあり)、子供心にはとってもツボだった。
そしてもちろんモンキー・パンチの作品らしくお色気も欠かせない。子供向けだから、あからさまな描写はないが、当節の言葉で言うなら「ラッキースケベ」的な展開もふんだんにあった。ヒロインのマリリンの恥じらい顔が大好きで、僕は彼女がモンキー・パンチ作品の中でいちばんのお気に入りだ。いや、多くの漫画やアニメのヒロインの中にあっても、五本の指に入るくらい好きだ。

父親であるルパン三世も相当大好きなのだが、自分と年の近かったルパン小僧が、頭脳戦で父親すらも打ち負かしたエピソードは今でも忘れられない。文字通り喝采を上げるほどに、我がことのように嬉しく感じたものだ。
キワモノや、仇花のような「忘れられた漫画」ではないと、あえて断言したい。ルパン三世サーガのスピンオフとして、確固たる存在を示す名作だと思う。


(評者:文教堂書店三軒茶屋店 中川)

書店員:「文教堂 赤坂店」のレビュー

文教堂
文教堂|赤坂店

30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由 杉本宏之

30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由

誰だって好きで失敗するわけではない。

人は誰でも・・・という事はないが、企業に属しているサラリーマンだったら、一度は夢をみる「起業」。誰の指図も受けず、自分の裁量で方針を決め、報酬もいまの何十倍・・・。しかし多くの人(私も含めてだが)は夢をみるだけで一歩を踏み出さない、いや踏み出せない。養っていかなければならない家族、家のローン、とてもじゃないが「絶対成功」が保証されてなければ渡れる橋ではない。

この紹介した本も第三章まで読んだときは、「起業なんてするもんじゃない」と感じる内容だった。人と市場に翻弄され、プライドだけが膨らんでいき、仲間すら信じられない状況に陥る様を、包み隠さず書いている。
それでも、読んでいるうちに「頑張れ」「負けるな」と応援している自分がいるのです。誰だって好きで失敗するわけではない。後は、是非読んでください。立ち直らせてくれるのも、やっぱり人です。


(評者:文教堂書店赤坂店 須藤)

文教堂  店員

書店員:「文教堂書店」のレビュー

文教堂
文教堂|

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場 佐々 涼子 (著)

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場

日本製紙石巻工場、舞台はここだ。

表紙の写真を飾るのは彼ら職人約80名、抄紙機を取り囲み胸を張る。

日本製紙石巻工場、舞台はここだ。あの震災の日、工場を襲った津波の被害は想像を絶するものでした。著者の佐々さんは丹念に取材を重ね、当日の様子を詳細に書き残してくれました。当時報道の中で映像を何度も目にした被害は、私たちの心を麻痺させていたのでしょう。無力感を勝手に抱いていました。ですが、工場の方々が語るのは想像をはるかに超える困難の数々でした。そんな中、当日この工場で勤務していた方々全員が無事であったことに驚きつつ安堵して、ページをめくります。

倉田工場長が掲げたのは、「半年後にマシンを一台動かす」ということ。4月1日からこの目標に向かって作業が行われました。停電の中、水もまだきていない状況下で、パイプの入り組んだところではスプーンを使い泥を掻き出すという人海戦術です。巻末には当日の工場の様子がわかる写真を数多く掲載しています。いかに困難であるか、胸に迫ります。心の中で手を合わせながら「どうか…」と祈りつつ。ページをめくる手は止まりません。

石巻工場が作っているのは主に本の紙。コミック・文庫・単行本などの紙です。「出版用紙を製造する巨大なマシンが止まったら、この国の出版が倒れてしまう」という危機感を抱きながらの懸命の作業が続きます。本社との意見の対立があっても、辛抱強くひとつひとつ困難を乗り越えてゆくその姿に胸が熱くなる!どうか読みながらいろんな本を触ってみてください。なにより本書の紙を!

佐々涼子さんには『エンジェル・フライト』(集英社)というノンフィクションもございます。国際霊柩送還士たちの人間の尊厳に迫る一冊です。

書店員:「文教堂 浜松町店」のレビュー

文教堂
文教堂|浜松町店

赤ヘル1975 重松 清 (著)

赤ヘル1975

大変個人的なことですが・・・

大変個人的なことですが、広島東洋カープの大ファンです。題名からしてカープの話ばかりの小説なんだろうと思ってこの本を読み始めました。ところが、戦争や原爆、家族や学校の話も詰まっていて本当に読んでよかったです。カープだけでなく広島という街がますます好きになりました。もちろん重松清も。このひとの書く物語は哀しくも温かい。老若男女全てのひとに受け入れられる数少ない作家さんなのでお客様にもおすすめしています。

戦争と原爆の悲惨さ、親の身勝手さ、淡い恋と転校・・・そのどれもが人間のしていることだけれど、どんなつらい状況でもあきらめず必死に生きているひとは素晴らしいし、素敵です。そして今も昔も彼らの夢と希望を背負ってがんばっている広島東洋カープを私も陰ながらずっと応援していきたいです。

お金持ち球団に4番打者とエース級のピッチャーをとられたって関係なく。お金に魂を売ることなく、安い年棒でもがんばっている一途な選手を応援し続けます。今年こそ優勝するぞ!!赤ヘル1975再び!!!


(評者:文教堂書店浜松町店 前田直希)

書店員:「文教堂 市ヶ谷店」のレビュー

文教堂
文教堂|市ヶ谷店

製造迷夢 新装版 (徳間文庫)若竹 七海 (著)

製造迷夢 新装版(徳間文庫)

渋谷区猿楽町署の刑事・一条風太は・・・

渋谷区猿楽町署の刑事・一条風太は、とある事件をきっかけに、モノに残っている残留思念を読むことができる井伏美潮と出会う。超能力の類を信じない一条は最初のうちは反発するものの、徐々に心を開き、二人は数々の事件の謎をといてゆく。
少しこわもての男刑事と不思議な能力を持った少女のコンビが奇妙な事件をといてゆく連作ミステリ、というとそれだけでサクサクっと読めてしまいそうなライトな印象を持ちがちだが、そんな軽い気持ちで本作を読んだら痛い目にあうだろう。

ネタバレになるので多くは語れないが、一人称の上手さがこの小説の面白さの一つだ。油断して読み進めていくと、見事に騙される(その一人称が誰なのか推理しながら読み進めていても騙されたが)。
また、各章を読み終わるごとに残る何とも言えない後味の悪さや、特殊な能力を持つ美潮とそれを持たない一条の苦悩から、事件の謎がとけたからといって全てが解決するわけではないという現実を思い知らされる。
刑事ものの要素と超能力の不思議さを融合させるエンターテインメント性を持った小説でありながら、人の心の闇の部分をところどころで匂わせる、いい意味で怖い小説であった。


(評者:文教堂書店市ヶ谷店 文庫担当 吉永文)

文教堂 三軒茶屋店店員

書店員:「文教堂 三軒茶屋店」のレビュー

文教堂
文教堂|三軒茶屋店

三軒茶屋星座館 柴崎 竜人 (著)

三軒茶屋星座館

住んだり勤めたりと三軒茶屋に・・・

住んだり勤めたりと三軒茶屋に関わって随分になるが、いまだに全体像を掴めていない。古き良き佇まいの映画館やバッティングセンター。店の外観とは裏腹にすこぶる旨い料理を出す長崎ちゃんぽんの店。果ては、かつて釣り堀まであったこの街は、時代も文化も渾然としている。それはまるで、夢の中の、西方浄土へと至る途上の異国の街を思わせる佇まいだ。

長く親しんでもまだまだ日々多くの発見があるのだから、初めて訪れた人は三軒茶屋の面白さに圧倒されるようだ。先日も上京した友人が三軒茶屋を歩き回ったあげく、「無いものはないんじゃないか」と感嘆の声を漏らした。
そこで僕はふと思ったのだが、三軒茶屋には星空がない。建物と建物に四角く切り取られた空を見上げても、星空と呼べるほどのものは見られない。思ったとおりに口にしたら、友人の顔が引きつったので、それ以上言わなかったが、僕は本当はこう続けたかった。
「星空はないけど、住んでる人ひとりひとりが星なんだ」と。

人は人生において明滅を繰り返し、人生という名の星座を成すのだと思う。こっぱずかしいポエミィなことを言ってると思われるだろうが、ここでぜひ読んでいただきたい素晴らしい本がある。
柴崎竜人「三軒茶屋星座館」(講談社)がそれだ。
三軒茶屋でプラネタリウムをいとなむ主人公のもとには、なぜか様々な悩みや問題を抱えた人達が集う。それを主人公が「気持ち良く、僕にしゃべっちゃいなよ」とうながし、星座にまつわる神話になぞらえて解決していくこの物語。

この物語の醍醐味は、主人公の星座の解説がやたらと面白いことだ。
神話の登場人物達がまるでギャルやチャラ男の風情で語られるのだが、なぜかこれが驚くほどしっくりくる。とっつきやすくするために換骨奪胎しているというより、神話の神々って元々そうなんじゃないかとすら思ってしまうほどストンとこちらの胸に落ちてくる。星座にまつわる神々の物語も、実は我々と何も変わらない。みんなずっと昔から同じで、これから先も変わらないんだろう。

人生の意味について考えることはあるだろうか? なぜ楽しいことと苦しいことが交互にやってくるのかと疑問に思ったことはあるだろうか?
ぜひ、この「三軒茶屋星座館」を読んでほしい。空に星はなくとも、地上は人という名の星で満ちている。人は輝いたり暗くなったりを繰り返しながら、ふたつとない星座をその人生で形作ることがわかっていただけるだろう。
「三軒茶屋星座館」これはあなたの心のプラネタリウムだ。


(評者:文教堂書店三軒茶屋店 中川浩成)

書店員:「文教堂 浜松町店」のレビュー

文教堂
文教堂|浜松町店

失踪日記 2 吾妻 ひでお (著)

失踪日記 2

赤裸々な告白で話題を呼んだ・・・

赤裸々な告白で話題を呼んだ前作「失踪日記」から8年かけ、ようやく出た続編「アル中病棟」。
前作の最後でも少し触れられていた、某病院精神科B病棟(通称アル中病棟)での生活が、今回も包み隠さず(ほぼ)語られている。前作に比べるとややシリアスな雰囲気になってはいるが、相変わらず淡々と、自身や周りの患者の日常が綴られていく。美化するでもなく、かといって卑下するわけでもない、本当に絶妙なバランスで描かれているので、多分読み手は必要以上に感情移入もせず、ライトな体験記のノリで読み進められるのだろう。

実際の生活はこんなもんじゃすまなかっただろうと思わせつつ、それでも筆者の行動に笑ったり顔をしかめたり、まるでエンターティンメント作品のような読後感を味わえるこんな作品にはめったにお目にかかれない(だって冷静に考えたら、こんなところ間違っても入りたくない、という場所なのだ、普通の人にとっては)。
月並みな台詞だけれど、前作を読んでいなくても全く問題ない。でも、この作者の通ってきた茨道の凄さを知るには、やっぱり2冊併せて読んでほしい。


(評者:文教堂書店市ヶ谷店 竹内一哉)

文教堂 三軒茶屋店店員

書店員:「文教堂 三軒茶屋店」のレビュー

文教堂
文教堂|三軒茶屋店

銀曜日のおとぎばなし 愛蔵版 2 萩岩 睦美 (著)

銀曜日のおとぎばなし 愛蔵版 2

子供へのクリスマスプレゼントなどに・・・

子供へのクリスマスプレゼントなどに最適なコミックがある。
平凡社から出ている「銀曜日のおとぎばなし 愛蔵版」だ。
愛蔵版と銘打たれてはいるが、昔を懐かしむ一部のマニア向けのものではない。愛蔵版すなわち完全復刻版と捉えられることが多いが、そうではない。そもそも、すでに単行本として世に出ているものを改めて出版する意義について考えると、この「銀曜日のおとぎばなし」に関していえば、新しい世代に良き物語を伝えるということだと思う。だから、この愛蔵という言葉は、初めてこの物語に接した新たな読者が、末永くこの物語を愛して大切にしていってほしいという願いになる。

妖精のお姫様ポーが人間の青年スコットと知り合うことから始まるこの物語、特色は“明暗併せ持っている”ということだ。ポーとスコット。ふたりの純粋で心優しい主人公が接する大人達は、エゴ剥き出しで、弱くて脆い。そしてそれを冷たい仮面で取り繕っている。彼らはポーとスコットに接し、その慈しみの心に包まれることで、初めて仮面を脱ぎ捨てる。

ろくでもないことも多いこの世界を生きていくにあたって、子供達に何を教えるか。ひとを見たら泥棒と思えではいかにもさもしい。かといってその真逆もまたそれはそれで危うい。ひとは他者も自分も明暗併せ持った存在であることを知ったうえで、それを包み込む柔らかさと強さが必要だ。
ポーの相棒にしてナイトたる鳥のリルフィーの存在も忘れてはならない。リルフィーがボソッとつぶやく言葉の数々はときにユーモラスで、ときに格言的だ。一歩引いて物事を見つめる冷静さと、ささいなことでは動じない落ち着きを教えてくれる。
ポーという真っ直ぐで、情熱に溢れ、夢と希望を持ち、よく笑いよく泣く小さな生き物。それはつまり『子供』のことだ。子供=ポーが外に飛び出し、泣いたり笑ったりを繰り返しながら、周囲を巻き込んで成長していく様は、読む者の心に確実に暖かな灯をともす。

見ているだけで笑顔になれるような愛らしいキャラクターに物語へと引き込まれ、何度見ても心和む絵画のようなカラーページに癒されて浸りつつ、笑いと涙のうちに、強くてしなやかな精神を育むことの出来る「銀曜日のおとぎばなし」。
ぜひ子供達にプレゼントしてあげてほしい。


(評者:文教堂書店三軒茶屋店 中川浩成)

書店員:「文教堂北野店」のレビュー

文教堂
文教堂|北野店

最強「ご当地定番」のつくり方 ヒット連発のお土産プロデューサーが教える 勝山 良美 (著)

最強「ご当地定番」のつくり方 ヒット連発のお土産プロデューサーが教える

食品に関する原材料…

食品に関する原材料等の偽装表示問題の最中、やけに元気な表紙の本に出会いました。

北海道は、なんといっても食べるものが美味しいというイメージ。いえ、イメージだけではなく実際に魚介類・肉・野菜など原材料の宝庫です。良いものを使い美味しいものを作る。観光にいらっしゃるお客様だけではなく、地元の消費者にも満足して買ってもらうための本当のノウハウとは!

観光地の名前の入った〇〇まんじゅう的なお土産が多い中、一風変わった北海道土産を日々世に送り出すべく元気に活動されている勝山さん。ススキノでレストランも経営する著者が語る、レストランがお土産を作ることになったのはなぜか。

一時的に売れるものではなく、売れ続けるものを作るためのステップ、ノウハウが本書には満載です。代表的な商品の「カリカリまだある?」このネーミングをきいた時、思わず吹き出しそうになりましたが、お菓子の名前としてちゃんと認識することができました。カレーせんべいとしてではなく、スープカリーのカリーとしての味もイメージできました。徹底して味を追求し、「もうちょっとだけ」をさらにさらに追い求める。その徹底ぶりに驚きます。


(評者:文教堂書店北野店 若木ひとえ)

書店員:「文教堂 赤坂店」のレビュー

文教堂
文教堂|赤坂店

『ろんぐらいだぁす!』ツーリングガイド 1 Comic REX編集部 (文・構成)

『ろんぐらいだぁす!』ツーリングガイド 1

元々は一迅社…

元々は一迅社 月刊ComicREXにて連載中、原案・企画協力LONGRIDERS 三宅大志著によるコミックである。
本書は、前半に実装レポート1編とツーリングガイド4編。中盤にアンソロジーコミック8編。最後にノベライズまで収録!の大ボリューム!!

最初のレポートは、フレッシュ(詳しい説明は非常に長くなるので割愛・・・本編を読んでください)というチーム走のロングラン。ガイドは嶺方峠・ヤビツ峠・渋峠・木崎湖と走りがいのあるコースで、途中食事処や絶景ポイントなど充実した内容になっています。

ガイドでお腹一杯になってきたところで、コミックゾーンに突入です。食べ過ぎに注意が必要です、何故なら先にも書きましたが8話もあるからです。ここでサイクリストなら誰もが思うであろうこんな台詞。
『自転車乗ってるときのご飯って、どうしてこんなにも美味しいの!?』
外で食べるしょぼグルメに対し『まンず~~~い、でもなんか知らんけど精神にはとてつもなく美味し~~~い』 まさにその通り!

最後は本編コミックの登場人物、一之瀬弥生の妹葉月(デ・ローザ乗り)が主人公の番外編にして、初のノベライズです。もうなにも食べられません、ごちそうさまでした。
『ろんぐらいだぁす!』ファンでなくともためになる、サイクリスト必携の1冊である。自転車で遠くへ行ってみませんか?


(評者:文教堂書店赤坂店 小池祐輔)

書店員:「文教堂 浜松町店」のレビュー

文教堂
文教堂|浜松町店

野球ノートに書いた甲子園 1 高校野球ドットコム編集部 (著)

野球ノートに書いた甲子園 1

夏の高校野球が…

夏の高校野球が終わっても売れ続けています。本書は高校球児がつけている日記を紹介しているだけの本ですが、甲子園を一途に目指している熱く真っ直ぐな気持ちが伝わってきてうるうるしてしまいます。

社会に出て働くようになった私たちは不満ばかりを口にします。残業が多いとか、給料が少ないとか、上司が馬鹿だから異動させてくれだとか。解決策は棚上げにして居酒屋でうさをはらす毎日・・・。しかし15歳~18歳の子たちは問題点を毎日ノートに書き記し、時には監督に、時には寮長に、時にはチームメイトにみてもらいます。そこからみんなで話し合い弱点を克服するための最善策を導いていきます。
甲子園という目標に届かなくても継続して書かれたノートは自分だけでなく、チームの財産に、そして脈々と受け継がれその高校の伝統になっていくのです。

また彼らを見守っているおとなが温かくて素敵です。野球に興味のない方でも感動必至!!特にやる気を失っているビジネスパーソンはきっと勇気をもらえるはずです。居酒屋に行く前に当店に立ち寄って本書を手にとってください。


(評者:文教堂書店浜松町店 文庫担当 前田直希)

文教堂 カレッタ汐留店店員

書店員:「文教堂 カレッタ汐留店」のレビュー

文教堂
文教堂|カレッタ汐留店

零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)堀越 二郎 (著)

零戦 その誕生と栄光の記録(角川文庫)

著者の堀越二郎は…

著者の堀越二郎は零戦の設計者である。
東京帝国大學航空学科を卒業、現在の三菱重工に入社した。明治36年の生まれで、奇しくもアメリカでライト兄弟の飛行機が初めて空を飛んだ年である。

今年の夏、主人公を堀越二郎にダブルイメージした宮崎駿監督のアニメ「風立ちぬ」が上映され、また百田尚樹の「永遠のゼロ」も12月の映画化に伴い再度ロングのベストセラーを続けている。堀辰雄がポール・ヴァレリーの詩句「風たちぬ、いざ生きめやも」をその題名とした物語は婚約者の死に捧げた美しいレクイエムで、散文詩とも言える小説である。飛行機に対するモチーフとしては対照的な作品が書店の平台で妙なコラボを演出し、ゼロ戦が注目されている。零戦関係の著書は膨大な数に上るが、この本はいわば設計者による零戦の基本書である。語り口はわかり易い。

著者は言う、「日本人が、もし一部の人の言うような模倣と小細工のみに長けた民族であったなら、あの零戦は生まれえなかったとおもう」と。
当時の航空機技術の世界水準を大きく上回った零戦は、日本の厳しく差し迫った情勢から来る戦略的・戦術的要請を〈常識を破る〉発想により設計された。それまで欧米に頼っていた航空機技術から独立し自力で開発・生産するには、一国の基礎学問から技術・資源・関連産業・人的資源までがトータルにマネジメントされなければならない。
この本を読むとすでに昭和10年代の日本海軍には、航空機を実戦配備するまでの工程が極めて組織だって出来ていたことが分かるが、しかしアメリカが恐れたこの優秀な戦闘機ときわめて錬度の高かったパイロットに頼り続け、後続の新航空機の開発・生産が間に合わなかったのが国力の限界であったことが良く分かる。改良はされ続けたものの後続するべき新航空機開発が間に合わないが故に、物量的に技術的にそして戦略的に敗北してゆく戦闘の中で、ついに「神風特別攻撃隊」が編成される。

「戦闘機」零戦の設計思想からみても、これは悲劇以外の何ものでもない。著者もまたあとがきで「飛行機とともに歩んだ私の生涯において、最大の傷心事は神風特攻隊のことであった。」と述べている。
零戦生みの親であった著者の胸中如何ばかりであったことであろうか。
この本は最初1970年、著者67歳の時に光文社から出版されたものの新装版である。


(評者:文教堂書店カレッタ汐留店 ビジネス書担当 森静男)

書店員:「文教堂北野店」のレビュー

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文教堂|北野店

“伝説のCA”の「あなたに会えてよかった」といわれる最上級のおもてなし 豊澤 早一妃 (著)

“伝説のCA”の「あなたに会えてよかった」といわれる最上級のおもてなし

2020年の東京オリンピック開催が決まった…

2020年の東京オリンピック開催が決まった国際オリンピック委員会の総会で、印象的だったことのひとつがフリーアナウンサーの滝川クリステルさんの「しぐさ」と「おもてなし」という言葉でした。同じ女性としてにこやかに且つしなやかに手を合わせるしぐさや言葉に心惹かれました。
そんな時期に店先で出会った1冊が本書『“伝説のCA”の「あなたに会えてよかった」といわれる最上級のおもてなし』です。

信じられないことに著者で元キャビンアテンダントの豊澤さんは、ご自身のことを落ちこぼれだったと語っています。私も落ちこぼれです。
それならばと手に取りました。読むまでは「意識のベクトル」というものを意識したことなどありませんでした。本書を読んで、それが自分の方に向いているのか、または相手の方へと向かっているのか、これによりお客様の声を心から聞くことができるようになるのだと知りました。では、どのようにすれば、意識して相手へとベクトルを向けることができるのか本書を読み終えたあと、いくつか思い当たる節が浮かんでくるはずです。

東京オリンピックは8万人のボランティアが必要になると新聞で読んだことがあります。この大会での「おもてなし」と接客業は、なにかしら共通点があるのではないかと感じました。


(評者:文教堂書店北野店 若木ひとえ)

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