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ジュンク堂 大阪本店書店員レビュー一覧

ジュンク堂 大阪本店書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

ジュンク堂 大阪本店店員

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甘美なる作戦 (CREST BOOKS)イアン・マキューアン (著)

甘美なる作戦(CREST BOOKS)

読み終わったとき、あなたはどんな顔をしていますか?

主人公のセリーナは小説が大好きな文学少女であったが、数学が得意であったことと母の勧めもあって、ケンブリッジ大学の数学科に在籍していた。そんな普通の女子大生がある教授と不倫関係を持ったことから、彼女の人生は違う方向へと進みだす。
ひょんなことから諜報機関MI5で働くことになった彼女。ただ、MI5のスパイといっても現実は低賃金の下級職。彼女は地味な仕事をこなす日々を送っていた。
しかし、セリーナは小説好きがこうじてある任務を任されることになった。任務としてある若い小説家に近づいたのだが、彼女はいつの間にか恋におち、彼を深く愛するようになっていた.......
何が本当で何が嘘なのか。愛と裏切りが渦巻き、ひとりの女性スパイをその渦の中へと巻き込んでゆく.....

本書を手掛けたのは、イアン・マキューアン。
過去に書いた「アムステルダム」でブッカー賞を受賞し、「贖罪」は世界的ベストセラーとなった。その著者が手掛けた本書、「甘美なる作戦」。
本書の最終章では、読者はそれまでに作り上げてきたストーリーを見事にひっくりかえされ、驚きと笑みをもって本書を閉じることとなるだろう。

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本は友だち 池内 紀 (著)

本は友だち

友達を紹介するように

 ドイツ文学者、随筆家の池内紀さんが、とっておきの本を紹介してくれるエッセイ。本を通して出会った作家たち、懐かしい時代を思い出させてくれる本、自然、忘れてはいけない歴史、解説を頼まれた本、などに分けられて本は紹介されていきます。
 例えば、「会いたい人と会うように」と題された章で紹介される作家たち。東京の区役所に勤めながら、ありきたりで小心な人のこころをうたった詩をこつこつ書き続けた辻征夫。19世紀の終わりごろ、ポルトガルのエリートから世捨て人のようになって徳島で暮らしたモラエス。北海道の樹木図譜のために美しく精緻な植物の画を描いた下級役人の須崎忠助など。一冊の本を通して、作者達の生き方、楽しみ、哀しみが見えてくるよう。

 「この本は面白いから是非読んでみなさい」と熱心にすすめられるわけでなく、長い読書生活の中で出会ってきた大切な友人を紹介されているよう。紹介されているこちらも、思わず知り合いになった気がして、手にとって読んでみたくなります。

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2000days 過ごした日々が僕を進ませる 高橋 大輔 (著)

2000days 過ごした日々が僕を進ませる

苦悩を秘めて

 羽生結弦選手、負傷から復活のグランプリファイナル優勝や、町田樹選手の電撃引退など、2014-15年シーズンも話題豊富な男子フィギュア界。そんな中2014年10月に引退を表明したのが、長年第一線で活躍してきた高橋大輔選手である。本書では競技人生20年を振り返り、今後の人生について語る。

 競技生活については特に、バンクーバー五輪前の2009年からソチ五輪の開催された2014年までの6年間をシーズンごとに振り返る。700点以上掲載されている6年間のオン・オフショットに、赤裸々に語られたその時々の精神状態が顕著にあらわれている点が興味深い。特に印象的であったのは、モチベーションの維持に苦悩する高橋選手の心情である。情熱的で華のある演技の裏で、こんなにも思い悩んでいたのかと驚かされる。

 これからについて語る中での「今まで期待をされることに喜びは感じていたけれど、そこに疲れてしまった自分がいる。」「とにかく、疲れずに、心が元気になって、明るく帰ってこられたらいいなと思っている。」との言葉が、男子フィギュア界を牽引してきたその重圧の大きさを物語る。

 これまでで一番感動した場面、ベストマッチ、会心の演技について、コーチについて等も語られており、さらに特典メイキングDVDでは高橋選手の素顔も垣間見える、充実した内容となっている。

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寝ても覚めても夢 ミュリエル・スパーク (著)

寝ても覚めても夢

!!!!!。なんだ、夢か.....。

富、名声、美しい妻。全てを手に入れた映画監督、トム。

彼は映画の撮影中に大事故にあい、瀕死の重傷を負った。奇跡的に現場に復帰したが、撮影は思い通りに進まず、頭を悩ませていた。
そんな中、”ブサイクな娘”が行方不明に!警察の手を借り、必死の捜査が始まった......
が、これは単なる始まりだった。
この小さな出来事がぶくぶくと膨れあがり、事は思いもよらぬ方向へと横滑りしていく......

夢なのか現実なのか。まるでトムの頭の中を描きだしたように夢と現実が入り乱れている。それは読者をも混乱させるが、その混乱は決して心地悪いものではない。むしろ読み進めるにつれてクセになってくる感覚さえある。

本書を手掛けたのは、ブラックユーモアの女王“ミュリエル・スパーク”。
本書は彼女の邦訳最新作である。

ちょっとトゲのある面白さ。クセになります。

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THE ART OFベイマックス ジェシカ・ジュリアス (著)

THE ART OFベイマックス

サンフランソウキョウの秘密が明らかに!

 『ベイマックス』は、最愛の兄タダシを失い心に深い傷を負った天才少年ヒロ・ハマダが、兄の遺したケア・ロボット「ベイマックス」や仲間達と共に、仮面をつけた悪役に立ち向かう、ディズニー映画である。

 本書はそのメイキングを、コンセプトアートや制作者のインタビューから紐解く。作品の舞台について解説した「『ベイマックス』の世界」、登場人物にスポットを当てた「『ベイマックス』のキャラクターたち」、カメラやライティングに触れた「シネマトグラフィー -映画撮影法-」の3章で構成され、映画をより深く楽しむことが出来る内容となっている。

 特に印象的であったのが、物語の舞台「サンフランソウキョウ」についての記述である。映画を観て、サンフランシスコと東京をモチーフにしたこの街に魅せられた人も多いだろう。実際に二つの都市を訪れ感じた、東京の密集度の高さと、サンフランシスコのクールな光の性質が、落とし込まれているのだという。

 この「サンフランシスソウキョウ」は、ただビジュアル的にサンフランシスコと東京を組み合わせただけではない。「日系移民が1906年のサンフランシスコ地震の後、地震発生時に移動を可能にする技術と、その適応力を活かしてその場所を再建した」という背景まで設定されていることに驚かされる。

 作中に登場するヒロとタダシの部屋にも設定が。「タダシはとても優しい兄なので、ヒロによって隅に追いやられて」いるのだという。言われてみれば確かに、ベイマックスが出てきたのは隅のほうのタダシのスペースからだったことを思い出す。

 他にも、登場した建物や人物についての情報が満載である。こういった細かい設定の一つ一つが積み重なり合い、物語を支え、観る者を引き込むのだと心に響く。つくり手の想いの深さに触れ、もういちど映画を観たくなった。

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ユリイカ 詩と批評 第47巻第3号3月臨時増刊号 総特集150年目の『不思議の国のアリス』 高山 宏 (責任編集)

ユリイカ 詩と批評 第47巻第3号3月臨時増刊号 総特集150年目の『不思議の国のアリス』

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』特集号

英語で書かれたものとしては、シェイクスピアに次いで最も読まれている作品とも言われる『不思議の国のアリス』。白ウサギを追って、不思議な世界に迷い込んだ少女。その世界では奇妙な住人達と、元の世界の道理が全く通じないナンセンスが待っていた。日本でも絶大な人気を誇る『アリス』について、様々な視点から論じた特集号。
『アリス』は少女から女性へ成長する過渡期の通過儀礼の暗喩だとする(割とよく知られる?)議論から、『アリス』の世界には初期コンピューター言語的な認識システムが組み込まれているという議論、または初音ミクとアリスの共通点やら、1973年の金本位制システムの終焉と『アリス』人気の関係性、日本のサブカル系女子がなぜ『アリス』を愛するのかについての討論などなど・・・文学の話題にとどまらず、そうきたか!という感じの議論も多くて面白い。

 『アリス』は出版から150年経った今でも広く読まれている作品であり、他の作品に引用されたり、後代に与えた影響も大きい。この特集号は、『アリス』は何となく知っているけど読んだことがないという人でも、この作品を巡る議論の裾野の広さと大人達もが長く惹きつけられる理由を垣間見ることができて楽しめるのではないだろうか。

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21世紀の資本 トマ・ピケティ (著)

21世紀の資本

ピケティ、待望の邦訳

今年身の周りで一番話題になった本を挙げるとしたら、やはりこの本ではないでしょうか。

本書はフランスの経済学者トマ・ピケティによって書かれ、2013年に出版。14年初めに英訳が出ると欧米を中心に話題の書となり、ちょっとしたピケティブームを巻き起こしています。日本でもビジネス雑誌が特集を組むなどして注目を集めており、邦訳がでるのを楽しみにしていた方も多いかと思います。

しかし、この本の何がそれ程話題を呼んでいるのでしょうか?
ピケティの主張を簡単に言ってしまうと、「資本主義のもとでは経済成長率よりも資本収益率の伸びが大きい。そしてこの差は際限なく開いていく」となるのではないでしょうか。つまり資本を持っている人がより多くのお金を稼ぎ、労働者との格差がどんどん開いていってしまうという事です。

「お金持ちがよりお金を稼ぎ、格差が広がる」という主張は決して新しいものではありません。しかし彼が凄いのは、18世紀に遡り様々な国の経済データを分析しこの主張を実証しようと試みた点です。こうした研究から、18世紀から資本家と普通の人々との格差は一定で広がり続け、2度の世界大戦によりその格差が一時的に縮まったものの1980年代以降現在に至るまで格差がまた拡大していること彼は示しています。

豊かだった先進国内での格差の拡大が問題になっています。「1%の大金持ちVS99%の我々の戦い」と銘打ったオキュパイ運動がアメリカで盛り上がったのは記憶に新しいところです。特にアメリカで本書が大きな話題となったのは、こうした問題の議論に一石を投じる内容だったからではないでしょうか。勿論欧米先進国だけでなく日本でも格差の問題はますます重要となっています。この本は日本でも新たな議論をもたらすのではないでしょうか。格差が広がり続けることが資本主義そのものの性質だとすれば、これから先この問題にどう対処すべきなのか。21世紀に生きる我々が21世紀の資本とどう向き合うかが問われているのかもしれません。

ピケティは格差是正の策として、資本そのものへの累進課税を挙げています。しかし彼自身が指摘しているように、この案は高度な国家間の協調を必要とするため実現は容易ではありません。このように解決策も議論の余地がありますが、そもそも彼の実証の前提や解釈の仕方等についても批判・疑問の声は多くあります。それだけ話題になっているという事でしょう。賛成から反対まで様々な意見を著名な学者たちも述べており、こうした議論も併せて読むとより一層本書を楽しめるのではないでしょうか。

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原発ゴミはどこへ行く? 倉澤 治雄 (著)

原発ゴミはどこへ行く?

「原発ゴミ」とどう関わるか

 「原発ゴミ」を軸として、原発の今を見つめ、これからを考える。中心となるのはオンカロ、チェルノブイリ、スリーマイル、そして福島などの原発に深く関わる現地からの報告である。「『原発推進』にしろ、『脱原発』にしろ、このまま『高レベル放射性廃棄物』の処分問題を先送りにすれば、後世の人々は私たちを『犯罪的世代』と呼ぶだろう。」(序章より)という著者の言葉が、今考えることの重要性を訴えかける。

 特に印象的であったのは第1章「オンカロの挑戦」である。本章ではオンカロの概要や建設にいたるまでの経緯が現地の関係者の話を交え書かれている。オンカロとは、フィンランドのエウラヨキ自治体に建設中の、世界初の「高レベル放射性廃棄物処分場」である。建設地エウラヨキの議員たちの話からは、複雑な思いが感じられる。発生した使用済み核燃料はその地で処分する責任があるという意見や、原発を始めた当時はこのようなことになるとは思わなかったという声、何が起きるかを考えることなく原発を建設してしまったとの後悔。実際に処分場を引き受けた地の言葉は心に響く。

 専門的な用語や話も多く出てくるため、難しく感じる部分も多かった。しかし、それぞれの場所での取材をもとに書かれた文章からは臨場感が伝わる。他人ごとではなく今自分が直面している問題なのだということを再認識させてくれる。原発に賛成であっても反対であっても、もう存在する原発ゴミは必ずどうにかしないといけないのである。原発について、より自分の事として考えるきっかけとなるのではないだろうか。

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そして山々はこだました 上 カーレド・ホッセイニ (著)

そして山々はこだました 上

揺らぐことのない兄の想い

ある貧しい村にひとりの少年が暮らしていた。彼には、親代わりとなって育てている妹がいた。妹のなにげないしぐさが、きゃっと笑った顔が、日々少年に幸せを運んでくれていた。
兄妹はある日、ひとりの裕福な女性と出会う。豪邸、高級車、きらびやかな服、香水の香り。自分の生活とはあまりにかけ離れた光景を目にして、少年の心に違和感が広がる。
そしてその女性との出会いによって、少年と妹の人生は大きく掻き乱されることになる..........

時は過ぎ、戦争がはじまり、町は昔のきらびやかさと活気を失っていた。そんな中、ある男性のもとに届いた一通の手紙。そこで語られた事実..........

貧しいがゆえに抗うことができなかった兄妹、戦争という大きな流れに翻弄される人々。
幸せとは何なのか、正しさとは何なのか、偽善とは悪いものなのか。

本書に描かれている人々はみな何かを抱え、葛藤し、もがきながら、それでも生きている。本文を読み進めるうちに、彼らの苦悩と想いが強烈に伝わってくる。
あなたも彼らと共に苦悩し、生きるということの意味を考えさせられるでしょう。


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ワイフ・プロジェクト グラム・シムシオン (著)

ワイフ・プロジェクト

探しているのは「完璧な?」パートナー

ドン・ティルマン。 遺伝学者。 仕事場は大学。
ルックス良し、頭もいい(天才)、おまけに料理もできる。 誰が聞いても魅力的な男性。
でも、女性とはなぜかいつもうまくいかない。
そんなドンは、素敵な女性と結婚するのが夢。 何人もの女性とデートしてきたが、自分の求めている人にはなかなか出会わない。
そこで、効率よく自分に合う人を探すために思いついたのが「ワイフプロジェクト」。 チェック項目がびっしり詰まったアンケート用紙を作って女性に渡すだけ。 お酒は飲みますか? たばこは吸いますか? 肉は食べますか?..........
このアンケートのおかげで次から次へと「妻候補」から脱落していく女性たち..........

ある日、突然ドンの前にひとりの女性があらわれる。 彼女との出会いにより新たなプロジェクトが始動する.........


本書に登場する人物はみんな個性が強く、存在感があり、それでいて身近に実在しているかのような人間味がある。 その中でもドン・ティルマンは強烈な個性を放っている。

ドンは決して感情に左右されることなく、何事も論理的に考える。(それが、みんなから変わっているといわれる原因であろう。) 一見、感情のない冷たい人間のようだが決してそんなことはない。 彼の独特な思考回路やこだわりを知れば知るほど、その魅力があふれ出してくる。

常に冷静なドンが「熱さ」を見せる瞬間をぜひその目で目の当たりにしてください。

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Note Book 小林系作品集 2014 小林 系 (著)

Note Book 小林系作品集 2014

ボールペンが紡ぐ夢

 本書は小林系が2010年から2014年までに描きためたスケッチブックを本にしたものである。ボールペンと少しの筆ペンで描かれた世界は、見る者を幻想へと誘う。
 疾走する少年は閉ざされた空間を突き破り、ボールペンによってひかれたどこまでも続く道を行く。小さな宇宙船に乗った少女は、星々を飛び回る。気球に乗った異形の集団は神出鬼没だ。様々な物語が数ページごとに切り替わり、時に混ざり合う。断片的な構成に、つかみどころのない夢をみているかのような気分にさせられる。そうしてその夢は最後の数ページの展開によってぎゅっと収束される。そんな全体を流れるストーリーが心地よい。
 また絵1枚1枚も魅力的である。私が特に惹かれたのは、ワンピースを着た女性が広げた真っ白なシーツに、真っ黒な犬がじゃれつくページである。ワンピースと犬の黒、シーツや背景の白、というスケッチブックとボールペンのみで造られた2色の対比が美しい。
 ボールペン画という表現、1枚1枚の絵、紡がれた物語、と多面的に楽しむことが出来る。それぞれをじっくり味わうもよし、全体の雰囲気に夢見心地で浸るもよしの一冊である。

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モノグラム殺人事件 ソフィー・ハナ (著)

モノグラム殺人事件

39年ぶりに灰色の脳細胞を働かせるときがきた

 ロンドンの行きつけのレストランで夕食をとろうとしていたポアロは、怯えた様子で店に飛び込んできた女性と出会う。彼女は“自分は殺される”、そして殺されることは正当な処罰である、と言い残し逃げるように去ってしまう。同じ夜、豪華ホテルで3人の人間が別々の部屋で殺害されているのが発見される。死体は犯人の手によって整然と整えられ、しかも口の中には“PIJ”のモノグラムつきのカフスボタンが入れられていた。ポアロと友人でスコットランドヤードの刑事キャッチプールは事件の捜査を始めるが・・・。PIJのモノグラムは誰を指しているのか。そしてポアロがレストランで出会った女性と3人の殺害には関係があるのか。やがてポアロ達は殺された3人を結びつける、ある田舎の村で起こった陰惨な出来事にたどりつくのだが・・・。

 アガサ・クリスティーの名探偵ポアロシリーズ、39年ぶりの新作長編がこのモノグラム殺人事件である。シリーズ初の続編を執筆したのはイギリス人作家のソフィー・ハナ。今作の語り手、かつ相棒はポアロと同じ下宿先に住むキャッチプール刑事で、初登場の新キャラクターである。控えめで自分の推理力に自信がないキャッチプールと、素晴らしい知識と観察力、そしてたっぷりの自信をもったポアロのコンビが進めていく推理劇が楽しめる。冒頭の謎の女性との遭遇とショッキングな殺人事件、徐々に明らかになっていく過去の悲劇との関連性、証言者達の何重もの嘘また嘘、とストーリーも最後まで気の抜けない展開となっている。ポアロシリーズのファンは勿論だが、シリーズをほとんど読んだことがない人でも一気に惹きこまれてしまう作品ではないだろうか。ちょっとポアロに呆れられながらも一生懸命事件の真相について頭をひねるキャッチプール君と一緒に、あなたも“小さな灰色の脳細胞”を働かせてみるのはいかがだろう。

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中世武家官位の研究 木下 聡 (著)

中世武家官位の研究

中世武家官位の研究

とんでもない本である。
【史料の網羅的蒐集とその実証的分析から一つ一つの史実を明らかにしてゆく】といういまどき流行らない手法を用い、室町期の官途を主材料に同時代の政治意識を解明している論文集である。
特に第一部第一章の「左馬頭」。
義朝を嘉例として足利氏に独占される云々、は本書冒頭として相応しいばかりでなく、その後に収録されている論文の中身をも予感させるもので否が応にも期待は膨らむ。
佐藤進一・竹内理三を始めとする、【今なお必読の先行研究】とされるもの多くはこの手法に寄ったものであったように思う。
手っ取り早く成果を上げる為に論文を量産せざるを得ない現在に、このような研究に出会えるとは思ってもみなかった。
著者が蒐集した史料一覧は『全国官途状・加途状・一字状目録』として日本史史料研究会から刊行されている。これを見るだけでも気が遠くなる。

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カウンターアタック 返し技・反撃の戦略思考 永井 洋一 (著)

カウンターアタック 返し技・反撃の戦略思考

スポーツ関連書に置かれているが…

スポーツ関連書に置かれているが、真ん中より後ろのページは「ボードゲーム」「戦史」「武人の戦い」そして「戦略」と、スポーツ以外のテーマが取り上げられており、そちらの方が面白かった。
ただ守備をする、守りを固めるのでなく、その後どう攻めるかを意図していなければ、効果的に反撃に転ずることが難しい。逆に言えば、優勢な側も反撃を念頭に置いていないと、調子に乗って攻めるばかりでは油断から痛い目を見る、ということ。サッカーで、コーナーキックをとられた側が、ゴール前を全員で守るのではなくあえて前線に攻撃陣を残す、のがわかりやすい例である。
ロボット同士のロボカップサッカーに関する解説、また最後の、米長邦雄永世棋聖と将棋ソフトの対戦にまつわるエピソードにより、人間がコンピュータに敵わないこと、一方で人間でなければまだできないこと、が何かがよくわかる。

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ここは退屈迎えに来て 山内 マリコ (著)

ここは退屈迎えに来て

この小説はわたしたちの日常と地続きになっているのではないか。

この小説はわたしたちの日常と地続きになっているのではないか。
都会に出て、ハイカルチャーやサブカルチャーの洗礼をうけようと背伸びしながらも、その感覚に染まりきることもできない。かといって、田舎の純朴さ、つまりはダサさを馬鹿にすることで保たれてきたプライドも今さら捨てられない。わたしたちはソフィア・コッポラじゃない。そんなことはとっくに知っている。知っているけど、それでも、ここにはいたくなかった。だけど、なににもなれない日常もそう悪くもないのかもしれない。その証拠にこの小説はちっとも退屈じゃない。 桟奈津子

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ふくわらい 西 加奈子 (著)

ふくわらい

言葉にすることのできないもの、 言葉にしたとたん、色褪せてつまらなくなるもの。

言葉にすることのできないもの、
言葉にしたとたん、色褪せてつまらなくなるもの。
たとえば生きてる実感とか意味とかそうゆうもの。
『ふくわらい』を読むと、そうゆう、言葉なんかじゃあ、というものが伝わってくる。
それは定の毎日と子どもの頃の思い出を丁寧になぞることによって。
守口廃尊の奇妙な容姿やふるまいの描写によって。
登場人物を愛しく思うと同時に、
すべての人の人生が肯定されたような、幸福な読後感だ。

桟奈津子

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また逢えるといいね ホスピスナースのひとりごと 新装版 田村 恵子 (著)

また逢えるといいね ホスピスナースのひとりごと 新装版

宝塚ファンの悲しい性。 それは...

宝塚ファンの悲しい性。
それは、原作がある作品だと、観劇前、後の時間の差はあれど、
その原作本を読んでしまうこと。

先日、こちらの書籍をベースにしたドラマご覧になられましたか????
著者の田村恵子先生にあたる田辺さんを演じていたのは、
あの元花組のトップスター、真矢みきさん☆
もちろん、ノベライズではないので、ドラマとは異なりますが、
ドラマをご覧になられた「メイフラワー」から追っかけていた、みきさんファンのアナタ。
2回目の坂本龍馬からのアナタも、ぜひお勉強してください。

久しぶりに、医学書から発信できる医療従事者以外にも、
超オススメの一冊です。

大阪本店:雪組のトップさんのファンだった医学書担当者

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輸液のコツとポイント 原則から処方の具体例までわかる 畑 啓昭 (編集)

輸液のコツとポイント 原則から処方の具体例までわかる

ここ2年ほど、人気が出てきた分野がこちらの「輸液」...

ここ2年ほど、人気が出てきた分野がこちらの「輸液」。
そして、シリーズ刊行以来ハズレがないこちらの「BEAM」シリーズ。
この2つが重なれば…どんな化学反応を起こすのでしょうか?
ありゃ!?今回は今までよりもぶ厚い~↑
このぶ厚さに怯まないで!!
それだけ伝えたい内容が、ギッシリ詰まっているってことだから。

この春にこそ、コツとポイントを掴んで、輸液がわかる、できる
そんな、臨床医さんになってください。



本当にぶ厚いよ:大阪本店 医学書担当者

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症状と薬からひも解く生理学 當瀬 規嗣 (著)

症状と薬からひも解く生理学

医療従事者のはずなのに、なーぜかアウェイな感じの薬剤師...

医療従事者のはずなのに、なーぜかアウェイな感じの薬剤師。
看護師や理学療法士、作業療法士向けには、いっぱい生理学の本が出ているのに、
どうして私たちには出てないわけ!??
そんな不満を持った皆様に、密かに人気だった連載がついに1冊の本になりました!
「症候学」「病態生理学」「生理学」「薬理学」
この四味一体となった薬剤師のあなたにとっての春マストな1冊です。


大阪本店医学書担当者

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文芸あねもね (新潮文庫)彩瀬 まる (著)

文芸あねもね(新潮文庫)

アラサー女子のみなさ...

アラサー女子のみなさま、そのほか全ての方へ、読んでほしい。現実的なとほほな局面に目をそらしたくもなるけれど。なぜなら、文芸あねもねとわたしたちは、愚痴り、愚痴られの女友達だから。そんなおしゃべりから、自分の中で、もやもやしていた気持が、はっきり形になったりすることもある。そしてちっとも見通しのよくない、さして見たくもないときもある未来への希望にもなる。文庫担当 桟奈津子

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