ジュンク堂 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビュー一覧

ジュンク堂 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)白鷺 あおい (著)

ぬばたまおろち、しらたまおろち(創元推理文庫)

第2回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞作

両親を亡くし、岡山の伯父のもとで暮らす14歳の少女綾乃には、秘密があった。
それは彼女の親友がひとの言葉を話すことのできる白蛇だということ。
この村に不満があるわけではなかったが、今までよくしてくれた伯父の期待通り、この村で伴侶をみつけ
子を産みそして年をとるのだろうかと想像すると、心が晴れないことも、白蛇のアロウにだけは相談できた。
しかしその生活も、祭の夜に起きた事件によって一変することになる。
彼女は村をとびだして、妖怪と人間がともに魔法を学ぶことのできるデリアーヌ学院に入学することになるのだ。
妖怪、魔女、ここではないどこか、鬱屈した想いを一層するかのような変化、自分だけを愛してくれる存在、そして運命的な絆。
もし過去に飛ぶことができるならば、「特別な存在」に憧れ、まだ自ら生きる場所を選ぶことができなかった十代の頃の自分にもすすめたい。
わくわくさせる要素がこれでもかというくらい詰め込まれた宝箱のような1冊は、その心を確実にときめかせてくれるだろう。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

冬を待つ城 (新潮文庫)安部龍太郎 (著)

冬を待つ城(新潮文庫)

九戸政実はなぜ天下人に戦いを挑んだのか

九戸城を囲むのは豊臣方6万。それに対するは九戸軍3千。豊臣秀吉の下に天下が統一され、国内での争いが収まりつつある中、九戸政実はなぜ天下人に戦いを挑んだのか。

戦国最後の戦であるとされる『九戸政実の乱』は、一般にあまり知られていません。後北条氏が滅ぼされた『小田原征伐』の直後であったことの影響も大きいでしょうが、予想外の苦戦を強いられたため、豊臣政権による情報の隠ぺいが行われたためだとも言われています。舞台となるのは陸奥国糠部郡、現在の岩手県二戸市にあった九戸城。東北の一地方で起きた争いは、天下諸侯を巻き込んだ大きなモノへと変貌していきます。

物語の背景となる要素は主に三つあり、まずは一つ目は南部氏と九戸氏との関係性。本来ほぼ同格であった両氏の立場は、豊臣秀吉による『奥州仕置き』によって大きく変わり、両家の間で争いが起きる大きな要素の一つとなりました。

二つ目の要素は文禄・慶長の役。いわゆる朝鮮出兵です。『九戸政実の乱』が起こったのは天正19年(1591年)のことであり、文禄元年(1592年)に始まった文禄・慶長の役の準備がすでに始まっている時期のことです。なぜそんな時期に、東北への大規模な遠征が行われたかというのが、この作品の一つの肝となります。

三つ目の要素となるのは、『東北』という地域。古くはヤマトタケルや坂上田村麻呂による蝦夷討伐や、源頼朝により奥州藤原氏が滅ぼされた奥州合戦。近代においては戊辰戦争での奥羽列藩同盟など、『東北』という地域は、常に中央政権からの圧力にさらされて来た場所です。そうした歴史や地域性が、物語の根幹となります。

語り手となる九戸(久慈)政則、九戸実親などの九戸一族や郎党、そして敵方となる豊臣軍の諸将、蒲生氏郷や南部信直らも丁寧に描いている本作。しかしその中でも別格の存在感を放つのが、やはり主人公である九戸政実。九戸党の当主として長く南部家を支えてきた武辺者でありながら知略も備えおり、『東北』のために信念をもって戦いの道を選ぶ姿は見事の一言。

一人の男の気高い生き様が、巧みな筆致で描かれた素晴らしい作品となっていますので、興味を持たれた方はぜひご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

酒が仇と思えども 中島要 (著)

酒が仇と思えども

下戸でも楽しめるよい酔心地

酒にまつわる連作時代小説。
呑んでも呑まれるな、とはいうものの酒にふりまわされてしまう人たち。
酒屋の跡継ぎの幹之助は、そんな悩める人たちに手を貸したいと相談にのっている。

持ちこまれる相談は、酒をやめたいのにやめられない、酒で失敗をくりかえしてしまう、酒癖の悪さから騒動にまきこまれるなどなど。
幹之助の助言もあるけれど、なによりも酒に悩む当人の気持ちを動かすのは、周囲の人たちの気配りや手助けだったりする。

幹之助はいつも傍観者の立場で、相談者をさとし、大人びた風情なのだが最後に22歳の若造らしさを見せてくれる。うってかわって酒にふりまわされる立場になってしまった幹之助の奮闘ぶりには、がんばれ若造と応援したくなってしまう。

すっきりして、ふふっとほほえましい後味のよい作品。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

人生の旅をゆく 3 吉本 ばなな (著)

人生の旅をゆく 3

人気シリーズの第3弾。

ハハとなった吉本ばななの今を知りたくて、そして帯に惹かれて本書を購入。疲れた心に沁みました。ハハとして、妻として、作家として忙しい日々を送っているが、大切にしている日課がある。朝、子どもと夫の見送りをする。夜、家族みんなにおやすみの声をかける、こと。ほんの些細なことだが、見守っていたいという想いこそが、大切だと思うのである。若い頃は、そんなことだったはず。今、新しい家族を得て、両親を見送り、いろんな経験をしてきたから分かる。かけがえのないものは、永遠に存在するわけではないのだと。だから、悔いのないよう、今を大切に丁寧に生きようと。毎日、その繰り返し。そうすることしかできないよ。と力強く伝えてくれる。ここには、彼女の小さな想い・気付きが散りばめられている。あわせてオススメなのが、『開店休業』。故・隆明氏(父)の食エッセイ集でハルノ宵子氏(姉)の追想文を収録。とても贅沢な1冊となっている。吉本家を知ることができます。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

どこの家にも怖いものはいる (中公文庫)三津田信三 (著)

どこの家にも怖いものはいる(中公文庫)

この物件曰く付き!

怪談好きの作家と編集は、酒を酌み交わしながらどこか似通っている怪異について語り合う。
みえない友達と遊ぶちいさな娘。
屋根の上にとあるものをみた男。
どこまでも追いかけてくる「割れ女」
信仰におぼれていく家族をとめたい少女。
人間離れした力を持ち、まわりを不幸にしていった女。
時代も関わる人物も異なるのに、それらの怪異にはとある共通点がある。
その繋がりに気づいてしまえば、あなたの耳にも届いてきてしまうかもしれない。
雨など降っていないのに、小石をまいているような、何か予感めいたその音が。
汗がほとばしる真夏の昼間にいるはずなのに、ぞわりぞわりと冷たいものが足元から這い上がってくる。
最強幽霊屋敷登場。
この物件、なかなかの曰く付きです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

猫の傀儡 西條奈加 (著)

猫の傀儡

猫にあやつられちゃってます。

物語の語り手は猫。
名はミスジ。二歳のオスの野良猫で傀儡師(かいらいし)になったばかり。
傀儡師とは、人との厄介ごとに巻きこまれた仲間を助けるために、人を遣い、人を操り、働かせるのが役目。そう、猫の傀儡師が操るのは人なのです。
ミスジの傀儡に選ばれたのは、ひまな狂言作者の阿次郎。気のいい猫好きの男。
おもしろいのは、傀儡になる人を選ぶのは傀儡師自身ではないということ。傀儡師の頭領によって指名された傀儡を操らねばならないのです。
どうすれば相手の気を引けるのか、自分の思うように導けるのか。ミスジと阿次郎のかけひきも読みどころのひとつです。とはいえ猫の傀儡にされているとは思ってもいない阿次郎は、ただの猫好き、珍し物好きを発揮しているだけだったりするので、ミスジとの温度差も楽しめます。
一匹とひとりで挑むのは日常のささやかな謎。けれど困っている、悲しんでいる猫が人がいる。謎解きの後味はほっこりするものもあるけれど、苦いものもある。やがて謎解きのひとつが、先代の傀儡師・順松(よりまつ)の突然の失踪の謎へとつながっていきます。
ミスジが憧れ傀儡師になろうというきっかけになった順松は侠気あふれる頼れる兄貴分で惚れ惚れしてしまいます。ほかにもミスジとは過去に因縁のある烏の三日月に、阿次郎と暮らす可憐なのに手に負えないお転婆な一面を持つ仔猫のユキ。ちゃっきり男勝りな辰巳芸者の春奴(はるやっこ)などなど。ミスジと阿次郎をとりまく面々のことももっと知りたくなって、この一冊だけで終わりなんてもったいない。シリーズ化を期待してしまう作品、西條奈加『猫の傀儡』ぜひご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫)松岡圭祐 (著)

シャーロック・ホームズ対伊藤博文(講談社文庫)

大津事件の謎にあのシャーロック・ホームズが挑む!

「ライヘンバッハの滝」で『死人』にならざるを得なくなったシャーロック・ホームズは、兄であるマイクロフトに勧められ、極東の島国・日本へと旅立つ。彼の滞在先となったのは、初代内閣総理大臣で現在は枢密院議長である伊藤博文邸。かつてロンドンで出会った二人は、遠く日本で再会し、「大津事件」の謎に挑む!

古くはルパン、最近では夏目漱石やインディ・ジョーンズなど、シャーロック・ホームズと様々な人物たちとの邂逅が描かれてきたホームズ・パスティーシュ。そして今回、満を持して登場したのが、この「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」です。ホームズ最大の謎とされる「ライヘンバッハの滝」から「空き家の冒険」までの大空白期間。その期間に、ホームズが日本を訪れていたというのは、日本人作家によるパスティーシュではそれなりに見かける設定です。しかし、来日したホームズが、実在の事件、しかもあの「大津事件」に関わっていくという展開は、実に大胆であり、歴史ミステリーでもあるという点で、他の作品とは一線を画しています。

伊藤博文らの手を借りつつ、「大津事件」の真相を探っていくホームズですが、彼の前に、言葉や風習の壁、ロシアの陰謀など様々な壁が立ちはだかります。しかしそこはシャーロック・ホームズ。卓越した頭脳を駆使し、時にはその腕っぷしをも披露し、徐々に真相へと迫っていきます。歴史的な事実を押さえつつ、数々の伏線を回収した上で最後に明かされる真実は驚愕の一言。ぜひご自身の目でお確かめください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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政と源 (集英社オレンジ文庫)三浦しをん (著)

政と源(集英社オレンジ文庫)

二人あわせて146歳

真面目で頑固なところもある元銀行員の国政。豪快な性格と繊細な技でつまみ簪を作る職人の源次郎。まるっきり正反対の二人は、ともに七十三歳の幼なじみだ。
この二人のお爺ちゃんが本当に魅力的。若い頃から、つまみ簪職人として生きてきた源次郎は弟子にも慕われる職人気質で、その強引さと自由さが粋である。対する国政は、自由な源次郎に嫉妬したり、熟年別居に悩んだり、国政の感情には読んでいてホッとするような人間味が溢れている。
正反対の二人ゆえ喧嘩もしばしばあるのだが、感情的になれる相手がいること、そこからまた仲直りしてお互いの家を行き来できる関係性があること、それがとても羨ましく思える。
後半には、妻を早くに亡くした源次郎と、妻と離れて暮らす国政が描かれる。そんな二人を見守る弟子の徹平や、その彼女のマミとの関わりも素敵だ。
幼なじみ同士の掛け合いを楽しく読み進めるうち、お爺ちゃん達からたくさん元気を貰った。読後また「政と源」コンビに会いたくなる心温まる一冊。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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探偵が早すぎる 上 井上真偽 (著)

探偵が早すぎる 上

「人を殺させない」探偵と「いつも蚊帳の外」な被害者

女子高生の十川一華は、父の莫大な遺産を相続したことで、一族から命を狙われ始める。そんな一華を守るため、使用人である橋田が雇ったのは、「事件を未然に防ぐ」探偵。アレルギーを使った殺人、毒蜘蛛を使った殺人、子供を使った殺人は、なぜ計画段階で暴かれてしまったのか!?

講談社ノベルス刊「その可能性はすでに考えた」で、多くの作家や評論家から絶賛された新進気鋭のミステリ作家・井上真偽の文庫初登場となる書下ろし作品。著者特有の「探偵」という存在へのアンチテーゼは今作でも健在で、同時にロジカルで軽妙な倒叙ミステリとしても楽しめます。

構成としては、計画を練って実行に移す犯人たちの視点を主に描写していく、典型的な倒叙ミステリ。しかし展開は一般的な倒叙ミステリとは大きく異なり、犯罪の計画段階・実行段階のほんの些細なミスから、未然に事件を防がれていきます。小さな穴を大きく広げていく論理展開が実に小気味よく、さらには「仕返し」まで行う勧善懲悪な展開には爽快感があります。

一華の命を狙う一族の面々や、その一族からの依頼で殺人計画を練る者、殺人を実行する者など、犯人側だけでも多彩な登場人物の加え、「トリック返し」の異名を持つ探偵や、謎多き使用人である橋田など、個性の強い人物たちの中で逆に光るのが、主人公である十川一華。倒叙作品である上に、そもそも事件が未然に防がれてしまい、一華本人は命を狙われていたことにも気づかず、だいたい蚊帳の外。しかも大金持ちであるにも関わらず、おつりの500円を募金するかくじ引きに使うかで悩むなど、作品中でほぼ唯一の良心的かつ真っ当な感性の持ち主であり(他の人物は良心的ではないか真っ当な感性ではない)、読者からの共感を得やすい人物として描かれています。

たまには変わったミステリを読みたい方や、倒叙ミステリが好きな方にはお勧めできる作品ですので、気になった方は是非ご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ぼくの宝物絵本 (河出文庫)穂村弘 (著)

ぼくの宝物絵本(河出文庫)

大人の娯楽

字がたくさん読めるようになったら絵本はおしまい。
大人になって絵本をひらくときは、子どもに読み聞かせるためにだけ。
もし、そんな風になんとなく絵本を遠ざけてしまっていたなら、ぜひこの1冊をてにとってみてほしい。
歌人穂村弘が初めて絵本を意識し、そして心をどっぷりとつかまれたのは社会人になってからのこと。
朝から晩まで働いた、わずかな休憩のひとときに、彼は「全てを忘れさせる熱湯のような<夢>。」の1冊とめぐりあったのだ。
本著では彼が心動かされた古今の名作絵本をオールカラーで紹介している。
絵本は多様に楽しめる。絵だけを眺めても良いし、すきな頁だけもう1度めくってみてもいい。
何か意味を見いださなくてもいいし、あるかどうかわからない意味を見いだしてもいい。
子どもの頃夢中になって読んだ絵本は今でも特別な1冊だろう。
けれど大人になった今だからこそ、特別になるであろう1冊がきっとどこかであなたを待っているに違いないのだ。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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まぬけなこよみ 津村 記久子 (著)

まぬけなこよみ

季節のことば(お題)に沿って、綴られた歳時記エッセイ。

花見。新じゃが。七夕。日本の四季は豊かで美しいー。ばかりではない!中には、骨正月。わかめ。カビ。なんてものも。彼女の選ぶことばは、らしくて、さすが!おもしろい!が、しかし、季節ごとの日常をエッセイにするという作業は、とても大変だったよう。それは、ずぼらでまぬけで、ぼーっと暮らしているから(本人談)。今と昔を行ったり来たりして、楽しかったこと、思い出したくなかったことー自分の全て(おそらく)をさらけ出している。そこには、30代女子の今まで、そしてありのままの日常(今)が、ユーモアたっぷりに素直に記されている。決して、おしゃれではないけれど、飾らない人柄が滲みでている。津村ワールド全開である。巷には、おしゃれなエッセイ本が溢れているー。自分とはかけ離れている暮らしだと、わかっているのに、うらやましさでいっぱいになるのに、つい買ってしまう。マネできることだけマネしようと思い直すも、ちょっとモヤモヤしてしまうー。そんなストレスなしに楽しめるのが、本書。笑えて、背伸びせずに、ただただ、共感できる庶民派エッセイ。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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捨てる女 (朝日文庫)内澤 旬子 (著)

捨てる女(朝日文庫)

おもしろいけど心配になります!

子どもの頃からものを集めることが好きだった著者、内澤旬子。
それは大人になっても変わることはなく、40年の人生でため込んだもので部屋に隙間はほぼ、ない。
そんな状態だった彼女の人生が、乳癌の治療をきっかけに大きく変化をむかえた。
とつぜん、今まで平気で暮らしていた隙間のない部屋に耐えられなくなったのだ。
ものを捨てたい!その欲求で頭はいっぱいで、あれもこれもどれもいらない。
ずっと一緒に旅してきた靴も、古めかしい大きなドレッサーも、今まで手掛けてきたイラスト原画も、蒐集本も。
そしてついには配偶者とも別れを選び、彼女はどんどんどんどん身軽になる。
ちなみにこのエッセイは断捨離の良さや、断捨離の方法について語ったものではない。
ものを集め続けそして捨てまくった内澤旬子という女性の生き様、「捨てる」に至る経緯や「捨てたもの」についての想いがつまりにつまった1冊なのである。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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絶叫 (光文社文庫)葉真中 顕 (著)

絶叫(光文社文庫)

早く誰かと語り合いたい

マンションで孤独死体となって発見された女性、彼女の足跡を追うほどに平凡な人生から深い闇の世界へと落ちていく。
この物語は、平凡な日常を送る女性が転落していく半生と、彼女の死の真相を追う女性警察官、そしてある事件で捕まった被告人の証言の三方向から進められていく。ごく普通の人生として語られる彼女の生活を読み進めるうち、これは私が体験しているのではと錯覚するほど、誰もが持っているであろう心の黒い部分を突いてきて、すっかり取り込まれたしまった。少しずつ歯車は噛み合わなくなり、無縁社会、生活困窮者、ブラック企業、目にするだけで辛くなる出来事が絡み合ってくるのだが、それだけでは終わらない。この壮絶な物語の真相、そしてラストのエピローグまで辿り着いたとき、その結末を見届けた解放感と爽快感に包まれる。すぐにでも読んだ人と語りたくてたまらない。
闇の中に光が射すような「自由」をぜひ体感してほしい。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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漱石漫談 いとうせいこう (著)

漱石漫談

国民的作家をイジりすぎ!

いとうせいこうと奥泉光という組み合わせだけで、何やら一筋縄ではいかない感じがするが、その二人が夏目漱石をどう料理するか。
タイトルから漫談と謳っているので中身はふざけたものかと思いきや、さすが独自の視点からの切り口で腑に落ちることの連続であり、読んだつもりであった作品群をまた再読したくなった。
読後、文豪代表のような漱石が、なぜかPOPな作家に思えてきたのが不思議。
漱石を読んだことがない人もある人も、非常に楽しめる一冊である。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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人工知能の核心 (生活人新書)羽生 善治 (著)

人工知能の核心(生活人新書)

羽生善治が視る、人工知能の最前線と未来

本書は2016年5月に放送され、第58回科学技術映像祭・文部科学大臣賞を受賞した、NHKスペシャル『天使か悪魔か——羽生善治 人工知能を探る』での取材をもとに、羽生善治が自ら書き下ろたものだ。その内容は単なる番組の文章化ではなく、それをもとにさらに深く踏み込んだものとなっている。取材を通じて羽生が感じたこと、考えたことが細かに描写されており、その語り口は読者の目を意識したものであり、非常に分かりやすい。

第一章は、「アルファ碁」の開発者である、ディープマインド社のデミス・ハサビス氏との対話をもとに、現在の人工知能の能力と開発環境について書かれている。
囲碁界のトップ棋士の一人であるイ・セドルが、「アルファ碁」に1勝4敗で敗れたというニュースは、2016年3月当時の囲碁・将棋界を震撼させたが、本書における羽生・ハサビスの対話が行われたのは、なんとその1か月前である2016年2月のこと。直前に取材していたはずの羽生善治でさえも予想外であった、イ・セドルの敗北。その結果を生み出した要因の一つである「ディープラーニング」についての解説は、非常に興味深いものであった。

第二章・第三章は、人間と人工知能・ロボットの違いをテーマにしている。
第二章では、人間にあって人工知能にないものとして、「美意識」という観念が挙げられている。将棋を例に、経験から「形の良し悪し」を直観的に処理する人間と、計算で「一手の良し悪し」を判断する人工知能。その思考プロセスの違いについて記されている。
第三章に登場するのは、ソフトバンク社が開発している「pepper(ペッパー)」を初めとするロボットだ。これまでは将棋や囲碁の盤面という「二次元での思考」であったものが、「三次元での活動」に切り替わってくると、途端に状況は変わってくる。実際に単独で行動させるとなると、人間の五感に相当するモノに加えて感情や倫理観を理解させなければならないからだ。ロボットには接待が出来るのか、ロボットは人に寄り添うことは出来るのかといったテーマを切り口に、人工知能を搭載したロボットの現状が解説されている。

第四章では、現在の人工知能開発現場での課題である「汎用性」、これまでの章でも度々語られてきたいわゆる「なんでもできる」人工知能についてより踏み込んでいる。
現状の人工知能というのは、おおよそ何かの分野に特化しているモノであり、他の分野に対しての応用をほとんど行えない。つまりここでいう「汎用性」というのは、パソコンのOSのように、一つのプログラム(人工知能)で様々な作業を、自律的に行えるようにするということだ。「フレーム問題」に見る判断力、「チューリングテスト」に見る言語など、現在の人工知能の問題点が深く説明されている。

最終章である第五章は、人類と人工知能の未来の話だ。羽生善治が取材を通じて感じ、考えたことがまとめられている。
私たち人類は、人工知能と共存共栄するために、急速に発達している人工知能をどう活用すればいいのか。また、どのように付き合っていけばいいのか。羽生善治なりの結論を知ることが出来る。

本書で一貫して描かれているのが、人間と人工知能の対比である。人間に出来て人工知能に出来ないこと、その差が少なくなれば人工知能はより人間に近づき、人工知能にしか出来ないことを人間が出来るようになる未来が訪れるかもしれない。ついに現役の名人が人工知能に敗れ、追いつめられた将棋界。そのトップ棋士の一人が感じているのが、失望ではなく希望であるというのは、非常にすばらしいことだと思える。

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桜疎水 大石直紀 (著)

桜疎水

短編集はお好きですか?

長い話を読む気力はないけれど、なにか読みたい、短い話がいい。
でも読んだ後の満足感は欲しい。
そんな欲張りな気持ちの時におすすめしたい一冊。
京都を舞台に六つの短編が描かれる『桜疎水』

「おばあちゃんは詐欺師だった。」という衝撃的な一文からはじまる「おばあちゃんといっしょ」
いいように作者に翻弄されてしまいます。
詐欺師が登場する物語は、現実世界で被害者がいるような犯罪が描かれているとなかなか楽しめないのですが、読後のなんと爽やかなこと。
おばあちゃんの憎めないずうずうしさとかわいらしさが印象的です。

表題の桜疎水が登場する「二十年目の桜疎水」は二十年という歳月を経て、向き合うかつての恋人たちの物語。
桜舞う疎水道で交わされるふたりの約束は、切なさと優しさがあふれていて胸がいっぱいになります。

どの短編も読み終えた後に、嫌な後味がないものばかり。どれを選ぶも自由です。まずはお一つ読んでみてはいかがですか?

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突撃ビューティフル (廣済堂文庫)ヒキタ クニオ (著)

突撃ビューティフル(廣済堂文庫)

突撃してしまうその心

受付には人形にしかみえない人工的な美しさを持つ女の子が鎮座し、裸足でホットパンツを履いた短髪の看護師が患者を迎え、診察室には銀髪をきれいに撫で付け、品のあるスーツを着こなした医者が待つ。
こんなに強烈なキャラクターがそろっており、テーマは「美容整形」とくれば、正直なところ、どんなゴシップ的な内容だろうかと身構えていたのに、一話読むたびに、泣きたくなるような、優しい気持ちでいっぱいになった。
綺麗になりたい。とにかく綺麗になりたい。
綺麗になりさえすれば、きっと私の人生はすべて良い方向へと動き出す。
その姿はまさに猪突猛進、突撃ビューティフルだ。
そしてそんな気持ちは、実は大なり小なり、多くの人がひそかに抱えている想いではないだろうか。
どうして綺麗になりたいのか、どうしてそういう気持ちになったのか、前をむいて生きていくにはどうすればよいのか。
自分ですら見えなくなっていた気持ちを個性豊かな彼らはがっしりと受け止める。そこでようやく、突撃ビューティフルは一度、立ち止まることができるのかもしれない。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ファースト・エンジン (集英社文庫)未須本有生 (著)

ファースト・エンジン(集英社文庫)

日の丸エンジンは大空に飛び立つのか!?

様々な最先端技術を持っている日本ですが、こと航空機のエンジンに関しては、アメリカを初めとした諸外国の後塵を拝しています。この小説で描かれるのは、そんな現状に異を唱えんとする人々の物語です。

彼らの目標は、アフターバーナーを搭載した超音速エンジンを開発する事。このアフターバーナーというのは主に戦闘機に搭載される装置であり、ジェットエンジンの排気に燃料を吹きつけて燃焼させ、さらなる推力を得るという、仕組みとしては単純な物です。しかしその技術を蓄積していない日本においては、非常に開発の難しい代物でもあります。

本庄直紀をリーダーとする「超音速エンジンプロジェクト」のメンバーたちは、そんなアフターバーナーエンジン開発に挑みます。予算は限られている上に、技術的な困難は数知れず。さらには新たに就任したプロジェクトマネージャーによる妨害の数々。そして実験の失敗による、メンバーの死。様々な困難に直面しながらも、それでもあきらめずに知恵を絞り解決し続けていく姿からは、ものづくりに懸ける情熱と誇りが感じられます。

航空機に強い関心を持っている方や、仕事や勉強に行き詰りを感じている方には特におすすめの作品です。よろしければぜひご一読ください。

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出版禁止 (新潮文庫)長江俊和 (著)

出版禁止(新潮文庫)

一筋縄ではいかないミステリー

とある理由で掲載禁止となったいわくつきのルポタージュを手に入れた長江俊和は、
ルポタージュの著者である「若橋呉成」がちりばめた仕掛けに戦慄することになる。

カルト的人気を誇った番組「放送禁止」のファンならばこの『出版禁止』の楽しみ方をご存じであろう。
素直に読めば隠された「事実」は見えてこないし、本著には解説はあるものの、隠された仕掛けがすべて明かされているわけではない。
「放送禁止」を観たことがない読者は、「いったいこれはなんなのだ」と困惑することになるかもしれない。
それでも仕掛けを知れば、もう一度ページをめくりなおさずにはいられないのではないだろうか。
はっとする瞬間を、ぜひ楽しんでいただきたい。

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ネコと昼寝 群ようこ (著)

ネコと昼寝

こんな暮らしに憧れる!!

大人気!!「れんげ荘」シリーズ第三弾。会社の人間関係に疲れ果て、45歳で退職したキョウコ。それ以来、古い安アパート・れんげ荘で、慎ましくも自由気ままで穏やかな日々を送っている。安定した収入を捨てて、手に入れた生活とはー。れんげ荘の住人は、若者2・中年2人の女子ばかり。彼女達とのささやかな交流に励まされ、刺繍をしたり、読書をしたり、ひとり暮らしを満喫している。そこには、よそんちの猫・ぶっちゃん(本名・アンディ)も登場し、勝手に世話を焼き、癒されている。会社員時代より生活の質は落ちるが、煩わしいこともなく、体調はすこぶる良い。空が青い!とか空気が澄んでる!とか些細なことに感動したりー。いつしか心に余裕ができていたー。しかし、心配事なないわけではない。中年独身女子としては、将来が不安である。これからどうするのか?何を大事に生きるのか?答えはひとそれぞれー。なるようにしかならないのだけども。キョウコの自分探しの旅は続く。

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