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ジュンク堂 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビュー一覧

ジュンク堂 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

人工知能の核心 (生活人新書)羽生 善治 (著)

人工知能の核心(生活人新書)

羽生善治が視る、人工知能の最前線と未来

本書は2016年5月に放送され、第58回科学技術映像祭・文部科学大臣賞を受賞した、NHKスペシャル『天使か悪魔か——羽生善治 人工知能を探る』での取材をもとに、羽生善治が自ら書き下ろたものだ。その内容は単なる番組の文章化ではなく、それをもとにさらに深く踏み込んだものとなっている。取材を通じて羽生が感じたこと、考えたことが細かに描写されており、その語り口は読者の目を意識したものであり、非常に分かりやすい。

第一章は、「アルファ碁」の開発者である、ディープマインド社のデミス・ハサビス氏との対話をもとに、現在の人工知能の能力と開発環境について書かれている。
囲碁界のトップ棋士の一人であるイ・セドルが、「アルファ碁」に1勝4敗で敗れたというニュースは、2016年3月当時の囲碁・将棋界を震撼させたが、本書における羽生・ハサビスの対話が行われたのは、なんとその1か月前である2016年2月のこと。直前に取材していたはずの羽生善治でさえも予想外であった、イ・セドルの敗北。その結果を生み出した要因の一つである「ディープラーニング」についての解説は、非常に興味深いものであった。

第二章・第三章は、人間と人工知能・ロボットの違いをテーマにしている。
第二章では、人間にあって人工知能にないものとして、「美意識」という観念が挙げられている。将棋を例に、経験から「形の良し悪し」を直観的に処理する人間と、計算で「一手の良し悪し」を判断する人工知能。その思考プロセスの違いについて記されている。
第三章に登場するのは、ソフトバンク社が開発している「pepper(ペッパー)」を初めとするロボットだ。これまでは将棋や囲碁の盤面という「二次元での思考」であったものが、「三次元での活動」に切り替わってくると、途端に状況は変わってくる。実際に単独で行動させるとなると、人間の五感に相当するモノに加えて感情や倫理観を理解させなければならないからだ。ロボットには接待が出来るのか、ロボットは人に寄り添うことは出来るのかといったテーマを切り口に、人工知能を搭載したロボットの現状が解説されている。

第四章では、現在の人工知能開発現場での課題である「汎用性」、これまでの章でも度々語られてきたいわゆる「なんでもできる」人工知能についてより踏み込んでいる。
現状の人工知能というのは、おおよそ何かの分野に特化しているモノであり、他の分野に対しての応用をほとんど行えない。つまりここでいう「汎用性」というのは、パソコンのOSのように、一つのプログラム(人工知能)で様々な作業を、自律的に行えるようにするということだ。「フレーム問題」に見る判断力、「チューリングテスト」に見る言語など、現在の人工知能の問題点が深く説明されている。

最終章である第五章は、人類と人工知能の未来の話だ。羽生善治が取材を通じて感じ、考えたことがまとめられている。
私たち人類は、人工知能と共存共栄するために、急速に発達している人工知能をどう活用すればいいのか。また、どのように付き合っていけばいいのか。羽生善治なりの結論を知ることが出来る。

本書で一貫して描かれているのが、人間と人工知能の対比である。人間に出来て人工知能に出来ないこと、その差が少なくなれば人工知能はより人間に近づき、人工知能にしか出来ないことを人間が出来るようになる未来が訪れるかもしれない。ついに現役の名人が人工知能に敗れ、追いつめられた将棋界。そのトップ棋士の一人が感じているのが、失望ではなく希望であるというのは、非常にすばらしいことだと思える。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

桜疎水 大石直紀 (著)

桜疎水

短編集はお好きですか?

長い話を読む気力はないけれど、なにか読みたい、短い話がいい。
でも読んだ後の満足感は欲しい。
そんな欲張りな気持ちの時におすすめしたい一冊。
京都を舞台に六つの短編が描かれる『桜疎水』

「おばあちゃんは詐欺師だった。」という衝撃的な一文からはじまる「おばあちゃんといっしょ」
いいように作者に翻弄されてしまいます。
詐欺師が登場する物語は、現実世界で被害者がいるような犯罪が描かれているとなかなか楽しめないのですが、読後のなんと爽やかなこと。
おばあちゃんの憎めないずうずうしさとかわいらしさが印象的です。

表題の桜疎水が登場する「二十年目の桜疎水」は二十年という歳月を経て、向き合うかつての恋人たちの物語。
桜舞う疎水道で交わされるふたりの約束は、切なさと優しさがあふれていて胸がいっぱいになります。

どの短編も読み終えた後に、嫌な後味がないものばかり。どれを選ぶも自由です。まずはお一つ読んでみてはいかがですか?

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

突撃ビューティフル (廣済堂文庫)ヒキタ クニオ (著)

突撃ビューティフル(廣済堂文庫)

突撃してしまうその心

受付には人形にしかみえない人工的な美しさを持つ女の子が鎮座し、裸足でホットパンツを履いた短髪の看護師が患者を迎え、診察室には銀髪をきれいに撫で付け、品のあるスーツを着こなした医者が待つ。
こんなに強烈なキャラクターがそろっており、テーマは「美容整形」とくれば、正直なところ、どんなゴシップ的な内容だろうかと身構えていたのに、一話読むたびに、泣きたくなるような、優しい気持ちでいっぱいになった。
綺麗になりたい。とにかく綺麗になりたい。
綺麗になりさえすれば、きっと私の人生はすべて良い方向へと動き出す。
その姿はまさに猪突猛進、突撃ビューティフルだ。
そしてそんな気持ちは、実は大なり小なり、多くの人がひそかに抱えている想いではないだろうか。
どうして綺麗になりたいのか、どうしてそういう気持ちになったのか、前をむいて生きていくにはどうすればよいのか。
自分ですら見えなくなっていた気持ちを個性豊かな彼らはがっしりと受け止める。そこでようやく、突撃ビューティフルは一度、立ち止まることができるのかもしれない。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ファースト・エンジン (集英社文庫)未須本有生 (著)

ファースト・エンジン(集英社文庫)

日の丸エンジンは大空に飛び立つのか!?

様々な最先端技術を持っている日本ですが、こと航空機のエンジンに関しては、アメリカを初めとした諸外国の後塵を拝しています。この小説で描かれるのは、そんな現状に異を唱えんとする人々の物語です。

彼らの目標は、アフターバーナーを搭載した超音速エンジンを開発する事。このアフターバーナーというのは主に戦闘機に搭載される装置であり、ジェットエンジンの排気に燃料を吹きつけて燃焼させ、さらなる推力を得るという、仕組みとしては単純な物です。しかしその技術を蓄積していない日本においては、非常に開発の難しい代物でもあります。

本庄直紀をリーダーとする「超音速エンジンプロジェクト」のメンバーたちは、そんなアフターバーナーエンジン開発に挑みます。予算は限られている上に、技術的な困難は数知れず。さらには新たに就任したプロジェクトマネージャーによる妨害の数々。そして実験の失敗による、メンバーの死。様々な困難に直面しながらも、それでもあきらめずに知恵を絞り解決し続けていく姿からは、ものづくりに懸ける情熱と誇りが感じられます。

航空機に強い関心を持っている方や、仕事や勉強に行き詰りを感じている方には特におすすめの作品です。よろしければぜひご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

出版禁止 (新潮文庫)長江俊和 (著)

出版禁止(新潮文庫)

一筋縄ではいかないミステリー

とある理由で掲載禁止となったいわくつきのルポタージュを手に入れた長江俊和は、
ルポタージュの著者である「若橋呉成」がちりばめた仕掛けに戦慄することになる。

カルト的人気を誇った番組「放送禁止」のファンならばこの『出版禁止』の楽しみ方をご存じであろう。
素直に読めば隠された「事実」は見えてこないし、本著には解説はあるものの、隠された仕掛けがすべて明かされているわけではない。
「放送禁止」を観たことがない読者は、「いったいこれはなんなのだ」と困惑することになるかもしれない。
それでも仕掛けを知れば、もう一度ページをめくりなおさずにはいられないのではないだろうか。
はっとする瞬間を、ぜひ楽しんでいただきたい。

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ネコと昼寝 群ようこ (著)

ネコと昼寝

こんな暮らしに憧れる!!

大人気!!「れんげ荘」シリーズ第三弾。会社の人間関係に疲れ果て、45歳で退職したキョウコ。それ以来、古い安アパート・れんげ荘で、慎ましくも自由気ままで穏やかな日々を送っている。安定した収入を捨てて、手に入れた生活とはー。れんげ荘の住人は、若者2・中年2人の女子ばかり。彼女達とのささやかな交流に励まされ、刺繍をしたり、読書をしたり、ひとり暮らしを満喫している。そこには、よそんちの猫・ぶっちゃん(本名・アンディ)も登場し、勝手に世話を焼き、癒されている。会社員時代より生活の質は落ちるが、煩わしいこともなく、体調はすこぶる良い。空が青い!とか空気が澄んでる!とか些細なことに感動したりー。いつしか心に余裕ができていたー。しかし、心配事なないわけではない。中年独身女子としては、将来が不安である。これからどうするのか?何を大事に生きるのか?答えはひとそれぞれー。なるようにしかならないのだけども。キョウコの自分探しの旅は続く。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

廻る素敵な隣人。 (メディアワークス文庫)杜奏 みなや (著)

廻る素敵な隣人。(メディアワークス文庫)

社畜に恋は難しい。

回転寿司店で副店長を務める金森将輔は、横暴な上司に逆らうことも出来ず、部下である従業員との関係もあまりうまくいっていない。仕事に追われる日々を送っていた将輔がある日出会ったのは、明るくて優しくて美人な、関西弁のお隣さん。素敵な隣人との出会いをきっかけに、かつて誰かのヒーローになることに憧れていた青年は、もう一度前へと進もうと決意するのだが……。

昨年の第22回電撃小説大賞応募作からの拾い上げとなる、杜奏みなやのデビュー作。物語はほぼ全編に渡って、主人公である金森将輔の一人称で進んでいきます。数年間の社畜生活で荒んでしまったがための捻くれた言動がなかなかに面白く、会社や上司って結構こんな感じだよな~と、ところどころに親近感を覚えました。それでありながらストーリーは、仕事に疲れた青年が一人の女性との出会いをきっかけに自分を変えようとする、という王道展開。新人らしからぬ軽妙な語り口でありながら、新人らしくどこか青臭い展開という、個人的にはかなりツボにはまった作品です。

忙しい日々を送る方にこそ読んでもらいたい、そんな小説ですので、よろしければご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

野良猫を尊敬した日 穂村弘 (著)

野良猫を尊敬した日

エッセイストとして好き

著者は歌人として有名であるが、私のようにエッセイや対談の名手としてのファンも多いのでないだろうか。あまり良いファンではないかもしれませんが。
本書はタイトルからもわかるとおり、下から目線・自意識過剰なエッセイのオンパレードだが、みじめで卑下した感じはなく、なんともせつなくて共感してしまうところが魅力である。
「めんどくさくて」などはあんまり共感したくないのだが、すっごく分かる感じでぜひ一読を!

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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がっかり行進曲 (ちくまプリマー新書)中島たい子 (著)

がっかり行進曲(ちくまプリマー新書)

がっかりを抱えたあなたへ

この小説は誰かにとってのかけがえのない1冊になるかもしれない。
読了後そんな風に思った。
自分が思春期だった頃に出会いたかった言葉がそこにあったからだ。
大切な日に限って喘息の発作がでてしまい、その都度がっかりしてきた少女、実花。
彼女の学校でのあだ名は「佐野さん」。何か違うあだ名を考えてみてくれない、と頼んでみても、結局は「佐野さん」に落ち着いてしまうし、
ようやく学校へいくことができても、休んでばかりの実花とクラスメイトたちの仲はなかなか縮まることがなかった。
そんな彼女には独特な感性を持ち、自分の意見をまげることのない光樹くんという幼馴染がいた。
喘息によってもたらされていた「がっかり」は、次第に光樹くんと自分の生き方を比較してしまって感じる「がっかり」へと変わっていくが、そんな彼女には、はっとするような言葉をかけてくれた一人の大人がいた。
そして「そのままでいい」ことを教えてくれた音楽があった。
ふつうにも特別にもなれないと悩んでいた実花が救われたように、「がっかり」を抱えて落ち込んでいるひとが、この物語に出逢えればいいのにとそう思う。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

くりかえす桜の下で君と (メディアワークス文庫)周防 ツカサ (著)

くりかえす桜の下で君と(メディアワークス文庫)

繰り返される11日間のボーイミーツガールストーリー

繰り返される11日間。そのループから抜け出す方法はただ一つ。同じループに囚われた誰かと両想いになること。

電撃文庫で活躍する作家・周防ツカサの、メディアワークス文庫での第一作目。ボーイミーツガール+タイムリープという、わりとよくある設定の作品……なのですが、ループを抜け出すのに恋愛する必要があるという設定により、その組み合わせに必然性を持たせたという点で、他の作品とは一味違います。とは言ってもストーリーはド本命な王道展開。タイトルや表紙からこの作品に興味を持たれた方には、期待通りに楽しんでいただけるかと思います。タイムリープものでありながら、物語が冗長になっていない点も好印象。SF要素の小難しい部分や、繰り返される時間を上手く省略しているため、テンポよく読み進むことが出来ます。

がっつりなSFではなく、ボーイミーツガールストーリーの一要素としてSFを楽しめる方には強くおすすめできますので、よろしければご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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恋糸ほぐし 花簪職人四季覚 田牧大和 (著)

恋糸ほぐし 花簪職人四季覚

優しすぎて人を傷つけてしまうけれど、 優しさで人を救うこともできる。

優しすぎる男の奮闘を描いた連作時代小説。
仕事場を失い、住んでいた長屋も追い出されてしまった花簪(はなかんざし)職人の忠吉。
そもそもは優しすぎるから。
途方に暮れているところに手をさしのべてくれたのは、子どもの頃に世話になっていた寺の杉修(さんしゅう)和尚。

花簪職人としての仕事はもちろん続けるが、寺に住まわせてもらうかわりにやらねばならぬこともある。寺男として料理をすること。そしてもうひとつ、さきという少女の心をほぐしてあげること。
寺にひきとられているさきは十歳ばかりの少女。心を閉ざしていて耳も聞こえず、声も出せない。そんなさきに忠吉はゆっくり受け入れてもらおうと優しく語りかけ、飯をつくる。
さきが少しずつ忠吉に心を許していく様子は本当にかわいらしくて、自然に顔がほころんでしまう。

寺に持ち込まれるちょっとした悩みや愚痴。かつては和尚がやっていたその聞き役を命じられてしまった忠吉。厄介事が絡んでいても、聞くだけでいいというより聞くことしかできない。優しすぎて動けない。かわりに動くのは幼馴染みで住職の以風(いふう)。こちらは気が短すぎて怒りっぽく聞くことができない。すぐ口や手が出てしまう。二人でようやくなんとか一人前。なんとかことを収めても実は杉修和尚の掌の上転がされている。そんな三人の関係性も楽しい。

こじれてしまった心は容易にはほぐれないけれど、忠吉はまわりの人々の手も借りて、気持ちを一歩踏み出す手助けをしてくれる。読後あたたかな気持ちになれる一冊。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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死にカタログ (だいわ文庫)寄藤文平 (著)

死にカタログ(だいわ文庫)

死を知る1冊

いつか絶対自分も死ぬ。
でもそれはずっとずっと遠い未来のことでしょうと、毎日大勢の誰かのもとに死は訪れているのに、根拠もなくそう信じている自分がいる。
死んだらどうなるのか、死んでみないとわからない。
わからないから怖い。だから向き合いたくない。
でもその死がいざ突き付けられてしまったら、一体どうなってしまうのだろうと思うさらにまた、怖い。
『死への態度』という章を読むと、そんな私は「恐れる人」にぴったりとあてはまる。
本著には人が死んだあとどうなるのかという問いに対しての答えはないが、ただ悲しくて恐ろしいものというイメージだった「死」を丁寧に分解して、説明してくれている。
読了後、カチコチだった「死」のイメージが少しだけ、柔らかくなった。
完全に顔をそむけていた「死」に、おそるおそるではあるけれど、目をあわせることができたように思う。
毎日毎日きちんと生きるのは苦しい。
けれど、気づいたときにでも、死にむかって、私はちゃんと日々を過ごしているのだと意識することができれば、「恐れる人」ではなく、「受け入れている人」にいつかなれるのではないか。
そんな風に期待している。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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崖っぷち町役場 (祥伝社文庫)川崎 草志 (著)

崖っぷち町役場(祥伝社文庫)

過疎の町はどうすれば復活できるのか!?崖っぷちな町役場を舞台にしたお仕事ミステリー

愛媛県にある南予町、その町役場に勤め始めて二年目の沢井結衣は、窓際部署とも噂される『推進室』へと配属される。何をするかもよく分からないその部署にいたのは、狸似な室長の北耕太郎と、一ツ木幸士という変人な先輩。やることがほとんどないせいで、室長と一ツ木が勤務時間に将棋を指してばかりいる推進室だが、たまに舞い込む仕事は決まって厄介な問題ばかりで……。

『長い腕シリーズ』の川崎草志によるお仕事ミステリー。長い腕と同じく愛媛が舞台(川崎草志は愛媛出身)かつ女性主人公ではあるものの、こちらはかなり明るいテイストの作品で、いわゆる人の死なないミステリーとなっています。ストーリーとしては、変人な探偵役に振り回される常識人な語り手というミステリーのお約束を踏襲しているのですが、過疎化が進みつつある町とその役場という設定が巧い変化を与えており、ありがちな展開では終わらせません。過疎化を回避するために打たれた手が問題を引き起こし、その解決のために奔走する結衣たちの姿からは、市町村合併や少子高齢化という、現代日本の諸問題をあらためて感じさせられます。

推進室のメンバーだけでなく、ぼんくらと陰口を叩かれている町長やなぜか一ツ木のことが気になっている様子の美人な町長秘書、はては様々な問題を持ち込む新旧住民たちなど、個性的な人物ぞろいの本作ですが、そんな面々の中で調整役として踏ん張るのが、主人公で語り手も務める沢井結衣。基本は一ツ木に振り回されている結衣ですが、その役目はただのつっこみ係で終わりません。人当たりの良い性格もさることながら、さらに重要なのはその絶妙な立ち位置。自身も余所の町の出身であるため新しい住民の気持ちが理解でき、その一方で昔から長い休みの度に祖母の家がある南予町に遊びに来ていたため古くからの住民の気持ちも分かる。そんな結衣が住民や一ツ木の間に立つことで、巧い具合に厄介事の当事者たちから話を聞き出していきます。物語の進行とともに少しずつ成長していくのが分かる人物でもあり、読んでいて気持ちのいいキャラクターです。

お仕事ミステリ―として秀逸な完成度であり、過疎の町というものについて知るにも非常に読みやすい作品となっていますので、興味を持たれた方は是非ご一読ください。

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なんでわざわざ中年体育 角田光代 (著)

なんでわざわざ中年体育

タイトルに惹かれて購入!そう、私も中年なのである。

運動嫌いの著者による、運動エッセイ。マラソン・登山・ボルタリング・ヨガと、若い友人・知人、仕事仲間と共に様々な運動に日々、励んでいる。運動を始めるきっかけは、人それぞれ。階段の上り下りがきつい(体力の低下を実感)、去年買った服が入らない(腹部の脂肪がおちない)など。中年ともなると、かなり切実なものがあり。著者も同じであるが、運動嫌いでもあるし、初めて挑戦するものもあり、専門家のアドバイスを受けるも、頭で理解するも、体はついていかず、四苦八苦。だが、できないことにクヨクヨせず、目的の為というより、やり通すことを目標に、がんばり過ぎず、楽しんでやっているのである。そう、運動後の飲み会を楽しみにがんばっている~。”折角、消費したカロリーが倍返しになってもいい”のだそう(笑)そして、もうひとつ、ずっと続けられているのは、続けていれば”できなかったことが、できるようになる”ことに気付くことができたから。今日もこれからもがんばれるのである。読んでいるこちらも、走ってみようかな~などと思えてくる。今から始めても、遅くない!勇気をもらいました。中年の皆さんにオススメしたいエッセイです。ぜひ、巻末の”中年体育心得8ケ条”を参考にして下さい!

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あしたはひとりにしてくれ (文春文庫)竹宮ゆゆこ (著)

あしたはひとりにしてくれ(文春文庫)

1人の少年の物語。そしてある家族の物語。

都内の難関高校に通い、仲の良い友だちもいる。父と母の自慢の息子であり、妹にも懐かれている。居候の高野橋さんとの仲も良好だ。……でもこんな生活はまやかしだ。本当は自分のモノではない。心に湧き上がるそんな衝動を、彼は秘密の場所に埋めているくまのぬいぐるみにぶつけることで解消していた。地面の中から伸びてきた手に、自分の手を掴まれた今日までは。

「とらドラ!」などで知られる作家・竹宮ゆゆこの、文春文庫での第一作目。切れ味の鋭いギャグと、心に迫るシリアス。一つの作品に二つの要素を融合させる技術は、今作でも健在。少し変わった家族のアットホームなコメディと、心に闇を抱えた少年の葛藤とを、絶妙なバランスで描写しています。

本作の主人公となるのは月岡瑛人。優等生で家族との仲も良いという、外見にはごく普通の高校生です。しかしある事情から、誰にも言えない衝動を心の中に抱え込んでいました。そんな瑛人の前に突然現れたのが、謎の女性・アイス。彼女との出会いをきっかけに、瑛人は自分と家族について、あらためて考えさせられていきます。

色々と秘密を抱えている人物が出てくる本作ですが、そんな作品に明るさをもたらしてくれるのが、瑛人の家族である月岡家の面々。居候を2人も受け入れる度量の広い両親に、バカだけど底抜けに明るい妹。この3人の存在が、この物語をシリアスなだけでは終わらせません。

竹宮ゆゆこの作品を知らない方には、はじめての一冊として。竹宮ゆゆこのファンには、期待通りの一冊として。どちらの方にもおすすめできる作品ですので、よろしければご一読下さい。

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目囊 (光文社文庫)加門七海

目囊(光文社文庫)

耳嚢は聞き取った珍談、奇談。では、目嚢は・・・・。

いとこの嫁ぎ先の古い土蔵で見つかった『目嚢』という古文書。その内容が怪談にまつわるものだと知ったとき、怪談作家の鹿野南は喜び勇んで預かった。
『目嚢』には抱えた生首をかじる女の幽霊画が載っており、それは素人が描いたような稚拙なものだったが、読み始めと終わりでこれほど印象が変わることになろうとは想像していなかった。
虫がでる。
体調を崩す。
なにかを、みた気がする。
些細なことだと、そんな風に片付けられるような出来事も続いて起これば、不安は澱のように沈んでいき、主人公でなくとも、あの『目嚢』に原因があると思わざるをえなくなる。
ひらきはじめた怪異がゆっくりと、彼女の冷静さや客観性を失わせていく様子が静かに恐ろしかった。
人の想いとはこれほどまでも重く、そして手におえないものなのか。
好奇心やささいな善意などなんの役にも立たない。その場をすみやかに立ち去ることが最善の策であるような、そんな手におえない恐怖がここにある。
温かい布団の中で読むのにふさわしい、悪寒の走る1冊である。

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トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業 梶山 三郎 (著)

トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業

あの自動車トップ企業でなにが

経済小説は数多くあれど意外にも自動車会社を舞台にしたものは少ない。
しかも本書はあのトップ企業をあきらかにモデルにしており
事実に基づいたと思われるエピソードも満載で興味深く読める。
とくに創業家との関係が非常に日本的で考えさせられる。

ただ暴露本のような内容ではなく、世界を相手に戦う日本のトップ企業で,どのような経営や人事が繰り広げられているのかが人間ドラマとしてよく描かれており,一気に読破してしまう。
タフな自動車産業の内実にふれることができ、下手な業界本を読むよりオススメである。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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悪いものが、来ませんように (角川文庫)芦沢 央 (著)

悪いものが、来ませんように(角川文庫)

驚きだけでは終わらない

育児中の奈津子は夫や実母、そして社会ともうまくなじむことができないでいた。
孤独の中で思わずわが子に対して黒い感情がこみあげては、瞬時に今度はこの子がいなくなればきっと自分は生きていけない、という想いが波のように押し寄せて、奈津子は子供を抱きしめながら、強く祈らずにはいられなくなる。
どうかこの子のもとへ「悪いものが、来ませんように」と。
そんな不安定な状態の奈津子の拠り所は、不妊と夫の浮気に悩んでいる紗枝という女性だった。紗枝の拠り所もまた奈津子その人であり、二人は誰よりも相手を称え、頼りあって生きてきたのだが、とある他殺体が発見されたことで物語は大きく動き始めてしまう。
奈津子と紗枝が抱く相手のイメージと、他者が証言する二人のイメージには大きく開きがあり、そのちぐはぐさが物語全体に、妙な違和感を与えていた。
その違和感にはきっと答えがある。そんな気がして、頁をめくる手がとまらなくなり、やがて、とある頁にさしかかった際の「なんだこれは」という気持ちが、「ああ、やられた」という気持ちに変わるのにさして時間はかからなかった。
依存と愛情、その差はいったいなんなのだろうか。
驚きだけでは終わらない、1冊だ。

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七日間の幽霊、八日目の彼女 (メディアワークス文庫)五十嵐 雄策 (著)

七日間の幽霊、八日目の彼女(メディアワークス文庫)

繰り返される七日間と、訪れを待つ八日目の物語。

ある日突然、僕の前に僕の“彼女”を名乗る女性・一夏が現れた。家族や友人も、一夏のことを僕の彼女として扱うが、僕は一夏という人物を知らないし、そもそも彼女もいなかったはずなのに……。

五十嵐雄策の手による、繰り返される七日間と、訪れを待つ八日目の物語。“彼女”はいったい何者なのか。その答えを知るための物語は、心に強く響く恋愛小説であり、非常に巧い構成で練られた推理小説でもあります。比較的短い作品なのでさらりと読むことが出来る一方で、物語自体の満足度はかなり大きく、強くおすすめできる一冊です。

読み始めてしばらくは、おそらく色々なところにちょっとした違和感を覚えるでしょう。その違和感は中盤にかけてさらに大きくなっていきます。そして終盤、ようやく訪れた八日目の物語は、全ての違和感を解消し、かわりにある種の充足感を与えてくれるでしょう。興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

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春夏秋冬雑談の達人 堀本裕樹 (著)

春夏秋冬雑談の達人

季語に親しむ本。

「わたしは暦とともに生きていますから」が口癖の一風変わった「俳句先輩」と、
その後輩「男子くん」の会話が織りなす不思議な俳句本。

2人と、彼らを取り巻くゆるーい人たちとの、
何とも言えないゆるーいやりとりの中には響きの良い季語が散りばめられており、
小難しい俳句指南本ではなく、季語に親しむための1冊なのです。

プロローグで著者が「季語の集大成である歳時記は、雑談ネタの宝庫」と言うように、
季節や天候、ふと話題に困ったときに季語を使いこなすことが出来れば、
スマートで美しい会話が生まれると気付かされました。

私のように「俳句は少し苦手…」と二の足を踏んでいる方がこの本を手に取って、
季語を通してほんの少し俳句に興味を持つきっかけになれば、と思います。

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