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ジュンク堂書店 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビュー一覧

ジュンク堂書店 福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)書店員レビューを100件掲載しています。120件目をご紹介します。

検索結果 100 件中 1 件~ 20 件を表示

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

九十三歳の関ケ原 弓大将大島光義 (新潮文庫)近衛龍春 (著)

九十三歳の関ケ原 弓大将大島光義(新潮文庫)

弓一筋に生きた97年の生涯

生涯53度の戦場に立ち、93歳にして臨んだのは天下分け目の関ヶ原。3人の天下人に仕え、その弓の腕一つで大名にまで上り詰めた実在の武将・大島光義の半生を描いた歴史小説。

美濃の斎藤家に仕えていた光義ですが、その斎藤家が織田信長に滅ぼされたことにより、大きな転機を迎えます。すでに60歳となっていた光義ですが、その弓の腕を買われ、織田家に使えることとなります。ひたすらに弓の腕を磨き続け、ひたすらに戦場に立ち続ける。衰え知らずの光義は、少しずつ織田家の中で出世していきます。

物語を通して描かれるのが、弓を極めんとする光義の執念。より遠くまで届くように矢羽を工夫し、剛弓を引くための力を身につけるために米俵を担ぐ。自身の最高の一矢を追い続けるその生き様は、どこまでも愚直でありながら、鮮烈な印象を残します。

構えた弓の向こうから天下の移ろいを見つめ続けた、一人の老将の生涯。よろしければご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

麦本三歩の好きなもの 住野よる (著)

麦本三歩の好きなもの

彼女は生きているのか、死んでいるのか

『君の膵臓を食べたい』では、病気を治すために臓器を食べるという思想が元になっていましたが、今回は図書館で働く女性が主人公です。『君の膵臓を食べたい』のように、生死がテーマではありませんが、彼女の描写からは生きているという感じがあまりしないように思います。確かに、チーズ蒸しパンを食べ大好きな本の匂いを嗅ぎ、朝寝坊して仕事で失敗し恐ろしい先輩には怒られ、優しい先輩の働く姿勢に感動する。生きている人間のことを書いているはずなのに、この麦本三歩さんはどこかキャラクターのようで、彼女が図書館に閉じ込められた人間のように思えるのです。
象徴的な章は彼女が書庫に閉じ込められる場面にあるように思えます。その描写も暗闇と、彼女の心象風景ばかりなので、彼女がどうなったかが一瞬良くわかりません。もしかしたら恐ろしい先輩も優しい先輩も日常のキラキラしたものも、生きているから感じられるものではなく、死んだもの、書物の側から見たからここまでキラキラしているのではないかと思えてきます。彼女の印象的なせりふ、「今度から最初に残す二割をちょうだい」は、生きている人間が考えつけるせりふとはあまり思えません。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

父と私の桜尾通り商店街 今村夏子 (著)

父と私の桜尾通り商店街

くるまれた痛み

今村夏子さんの、さまざまな女の人を描いた短編集です。「あひる」「こちらあみ子」「星の子」では、いずれも子供の目から見た世界が描かれましたが、今回は大人を扱った短編が多く、しかしいずれも、読んでいると「子供がある日いきなり大人に変貌」するのではなく、「子どもがそのまま時間を経た」のが大人であることの尊さが、繰り返し繰り返し描かれているように思います。知り合いの小さな子供に、いきなり胸を殴られた痛み。痛みをおぼえたまま、殴られたときに着ていた恋人からもらったセーターを脱ぎ、また恋人にコートで匂いがつかないようくるんでもらい、お好み焼きを食べる。お好み焼きやジャムをはさんだパンや女教師が作ったおにぎりのように、今村さんの小説に登場する食べ物は、全て人が生きているうえで遭遇せざるをえない痛みをくるんで描かれ、そこに私たちは毎回目を見張らざるをえないのだなと痛感します。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

ジャップ・ン・ロール・ヒーロー 鴻池 留衣 (著)

ジャップ・ン・ロール・ヒーロー

繰り返し演奏される文学

文章の大部分が「ダンチュラ・デオ」というバンドについて書かれたウィキペディア、という構成の小説です。このダンチュラ・デオは、大学のバンドサークルに所属する、ある男がネット上に創り出した架空の存在だったはずでした。しかし、その楽曲をコピーし、発表したことで、バンドメンバーたちは国家的陰謀と、荒唐無稽ともいえる情報戦に巻き込まれていき、命を狙われるようになります。
ダンチュラ・デオのボーカルは、「僕」というアーティスト名を持ちます。その結果、彼の出てくるウィキペディアの記述が、ことごとく「僕」の一人称に読めてしまうことは素晴らしく面白いし、読んでいて、すごく不思議な気分になります。カメルーンの農耕民ボンガンドには「ボナンゴ」というツイッターによく似た発話形式があります。村で、関心のある事柄や個人的な不満などを大きな声でいきなり言い放ち、周りの人は関心があれば反応していいし、なければないで終わりますが、言い放たれた側は自然に、言い放った側の情報を共有することになります。よって村には朝の挨拶は存在しなくなる。「私が知っていることを相手が知っている、そのことを私が知っている」という認識の入れ子は、バーチャルでもリアルでも人間の行動を変えていくのです。「僕」の客観視された行動をあたかも「僕」になったかのようにして読めること、それはまさしく、鴻池留衣さんによって巧妙に仕組まれた「ウィキペディアを使ったボナンゴ」なのではないでしょうか。

髪で耳のある位置をいつも隠していたゆえ、耳を持たないと、噂された踊り子がいました。片方の手だけを着物でいつも隠していたゆえ、手がないのではないかと噂されたお姫様もいました。隠されると人びとは、ものをそこにあるのだとは思わずに、失くしてしまいます。それは、消されることを暗にファンから期待される、ダンチュラ・デオのようです。対し、バンドメンバーのベース担当アルルは、ダンチュラ・デオとは、神から与えられしもの、という意味の造語だと言い放ちます。そのことに、すごく感動しました。

ある発話形式が時代と共に消えても、そこで培われた文化はまた新たな発話形式に移行して、継承されていきます。ボナンゴのように、ウィキペディアのように。ダンチュラ・デオという名を持つメンバーが、僕という名を持つメンバーが、粛清されても、誰かによって「名付けられる」ことの下でバンドとして存在していくことのように。神から奪われるのではなく、与えられしダンチュラ・デオだから、彼らの行き着く先は、きっと新しいツアーに他ならない、そう思うのです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

番付屋新次郎世直し綴り 長編時代小説書下ろし (祥伝社文庫)梶よう子 (著)

番付屋新次郎世直し綴り 長編時代小説書下ろし(祥伝社文庫)

エンターテイメントな時代物がお好きな方へ

たった一枚の番付が世間を大きく変えることもある。
相撲の番付の形式を真似て、庶民が興味を惹きそうなあらゆるものを格付けする見立番付は、人気料理屋から有名寺社、歌舞伎役者などなど、その時の流行りものや話題がすぐに知れるので人気がある。
ただ喜ばしいことばかりではなく番付にのったことでひどい憂き目にあう人もいる。
番付に因縁のある事件の真相に番付屋たちが迫る時代物。

主人公・廻り髪結いの新次郎には「番付屋」というもう一つの顔がある。
新次郎の実家もまたかつて番付にのったことがきっかけで潰れてしまい父と兄は死罪、兄の妻子も行方不明。勘当の身でどうすることもできなかった新次郎は真相を探るために番付屋になった。
番付屋の仲間は料理屋の女将に板前、摺師彫師の兄妹にワケあり武士。
事件の真相を追う一方で作り上げられる番付をもっとくわしく知りたくなる。
おまけに昼行燈な役人に謎のご老体、人気歌舞伎役者とこの一冊で終わってしまうにはもったいない登場人物ばかり。
ここからはじまるシリーズ一冊目。ぜひご一読を。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

おんなの城 (文春文庫)安部龍太郎 (著)

おんなの城(文春文庫)

戦国の世を生きた四人の“おんな”の話

時代に翻弄されながらも、戦国の世を生き抜いた四人の「おんな」を描いた歴史小説。

 男女平等が謳われる現代とは違い、戦国時代というのは、日本の歴史の中でも男尊女卑の色濃い時代です武士、特に戦国大名にとっては、娘というのは外交の道具であることも普通のことでした。嫁入りというのは他家と友誼を結ぶための手段であり、嫁=人質であることも珍しくありません。

 その様な時代でも、強く生きようとした女性はいたのです。夫のため、息子のため、家のため、信仰のため。四人の女性たちは、「おんな」という立場や自分自身の心の弱さを乗り越えて、自分の守りたいもののために奮闘していきます。命を賭けることすら厭わないその生き様は、鮮烈な印象を残します。

 四編ともに素晴らしい出来なのですが、個人的におすすめなのが単行本未収録であった『希望の城』。立花道雪の娘で立花宗茂の妻である立花ぎん(門構えに言)千代を主人公としており、関ヶ原の合戦の裏で行われていた、九州での戦いを描いています。この作品ではぎん千代はキリスト教徒であったとされており、同じキリスト教徒である黒田如水と謀り、キリスト教徒が安心して暮らせる国を作ろうと目論みます。
 立花宗茂・ぎん千代夫妻の不仲の理由や、黒田如水の真意などに対して独自の解釈が試みられており、福岡出身の作家である安部龍太郎だからこその作品に仕上がっています。

 各話百ページにも満たない短~中編ですが、非常に濃い内容となっており、あえて最後まで書かない手法は強い余韻を残します。戦国時代を生き抜いた四人の「おんな」たち。その雄姿をぜひご一読ください。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

私に付け足されるもの 長嶋有 (著)

私に付け足されるもの

鋳型の話

鋳型、ということをたくさん書いた短編集だと思います。長嶋有さんの小説に登場する女の人は、みな日常の業務をこなすさまが魅力的ですが(仕事、プライベートにかかわらず)この短編集では、女性が業務をこなしていくうえで彼女たちがよりそう「鋳型」がたくさん登場します。それは、ネイマールの西川マットレスであったり、ゴキブリをつかまえる道具であったり、ベータのビデオデッキであったりします。
作中には、「同じ鋳型におさまりつづけているうち眠りだけでない、肉体が、暮らしが、象られるような感じがしないだろうか」とあります。(「桃子のワープ」より)この話の主人公・桃子は、警備員という仕事をしながら毎日「誰かに指示された場所」に出向くことを、「仕事の面白み」だと感じています。彼女は移動をすることで、同じように移動し、世界の競技会場に出向くアスリートを思い、坂を降りる乳母車を見ながら、「戦艦ポチョムキン」を思い出します。鋳型は、そうなりたいという願望であり時に呪いでもありえます。そのことをじゅうぶんに長嶋作品の女の人たちがわかっている気がするから、読んでいてここまで安心感を私たちは抱くことができるのではないでしょうか。
鋳型は、ひとによってつくられたもの。「かつて、大昔に、誰かや誰かに対して抱いた自分の気持ちに、今また瞬時に降り立ったのだ」と桃子は思います。そのような感覚をもちながら生きる、正直な登場人物がいるからこそ、やはりまた今日も長嶋有作品を読もうと思えるのです。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

夜汐 東山彰良 (著)

夜汐

激動の幕末模様よりも大きい情念

幕末の志士を扱った小説は星の数ほどありますが、志士の道筋を他者の目線から詳細に描いたものは、なかなか少ないかもしれません。
『夜汐』という殺し屋がいます。彼の狙った獲物により、新選組の道程に波乱が含まれることになりますが、著者の東山彰良さんがインタビューで述べられていた通り、この小説は日本の時代小説としてのセオリーはクリアしながらも、きっちりと往年の西部劇のテイストを含んでいます。西部劇の最大の特色として、ガンマン、殺しのプロは素性を明かさず、それを暗黙の了解として観客が納得し、あかされないぶんガンマンを取り囲む登場人物の心情が浮き彫りになるという利点があります。この場合は新選組や、主人公の男女の心情をそうすることによって際立たせています。
泉鏡花の『海神別荘』という戯曲では、人身御供にされたらしき美女が「ここは極楽ですか」と海底の公人に問うたところ、こう突き放されます。「そんなところと一緒にされてたまるものか、女の行く極楽に男はおらんぞ、男の行く極楽に女はいない」
日本のあるアウトローの死期が近づいた時、奥様はそのアウトローに「峰不二子」柄のパジャマを着せてベッドに寝かせたとされています。女遊びが激しかったアウトローへの、奥様からのはなむけ、いえ、復讐だったのかもしれません。いくら大きな世の中の流れに組み込まれようとしたところで、男女を取り囲む情念は時を超えても変わりません。
『夜汐』でも大きな範疇を占めているのが、やくざ者の蓮八と、その幼馴染八穂の心の動きですが、彼らの恋愛模様やどう生きるかといったことは、殺し屋や新選組によってたしかに振り回されます。しかし、読んでいると、彼らが影響を受けた世間の動向など、とても小さなものに見えてくるから不思議です。それは、手を失っても八穂の顔をどうしても見ようと思った蓮八のたぎるような思いや、別の男にいったんは抱かれながらも、蓮八の死期は誰にも決めさせない、と宣言した八穂の叫び声が読者に響き、激動の時代の裏にあったさらに激しい情念を想起させるからではないのでしょうか。
人が思想を持って他人と移動、もしくは一人で移動しようとするとき、現代のようにSNS文化などが発達していなかった世の中では、天候や山の荒さや、そのとき口にしたものが大きな意味を持つようになります。新選組はもろくて崩れやすい側面を持つ組織でもありました。その綻びはたくさんの書物に触れられていますが、彼らの歩いた道筋を想像しながら夜汐とたどることにより、我々はまったく現代の自分たちも同じであることに気付かされます。恋愛も、革命も、すべておなじ。物事が変わったことに気付くのは、それがなにより終わってしまってから。だから常に前を見て、蓮八のように歩いて行かなくてはならないことの大切さを、この小説では教えてくれているように思います。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

アニマル・ファーム (ちくま文庫)石ノ森章太郎 (著)

アニマル・ファーム(ちくま文庫)

本当に怖いもの

本著はジョージ・オーウェルの「動物農場」、小松左京の「くだんのはは」、
そして「牡丹燈籠」を原作、またモチーフとして石ノ森章太郎がコミック化したものである。
表題の「アニマルファーム」は人間に使役され続けた動物たちが反旗をひるがえす物語だ。
リーダーシップをとった豚を筆頭に、人間と戦い、そして勝利をおさめた彼らは自由となり、平等で幸福な生活を得るはずだった。
戒律を定め、組織化し働き続ける動物たちはこれからどうなっていくのか。
平等を謳うロシア革命がスターリンの独裁体制へと変質していく様子を描いた風刺的な作品であるが、そういった歴史的背景を知れば、より動物たちの台詞に込められたものがみえてくるだろうし、たとえそれを知らなくとも、きっと読者は最後のページにぞっとするものを感じずにはいられないだろう。
「くだんのはは」「カラーン・コローン」は怪談でありそしてSF的な要素もある作品だが「アニマルファーム」とは違った「人」の恐ろしさがみえてくる。
濃厚な1冊をぜひ楽しんでいただきたい。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査 劇団雌猫 (著)

だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査

現代の饗応夫人たち

本書籍は、劇団雌猫の大人気同人誌『悪友DX 美意識』のグレードアップバージョン。 様々な女性たちの、メイクや美に関する論考が書かれた本です。化粧、ダイエット、マネージャー業、エステ、整形、ネイル、ロリータ、パーソナルカラー診断、育乳……。

太宰治の『饗応夫人』では、上品な夫人が下品なお医者連中に家を下宿のように扱われ、財産を崩し、身体を病み血を吐きます。しかし、夫人はさんざんいいようにされても、お医者連中を気高く、優しくもてなすことを止めません。

笑いと悲しみは表裏一体。お医者連中は目に見える暴力をふるいますが、夫人は誰かに尽くす、その姿をまざまざと女中のウメちゃんに見せます。それは、優しい、目に見えない暴力です。そういう暴力なら恥じるべきでない。リスクが伴わない人生など、死んでいるのと同じ、夫人は行動で、そうウメちゃんに伝えたんです。劇団雌猫さんたちの本を読むと、いつも、優しいその暴力のことを思い出します。

「デパートの販売員だった女」は、売り場の店員として求められる容姿になるために試行錯誤を繰り返します。「やぼったい」と言われた彼女は、他人の視線に囲まれる中で、「求められる顔」を作り上げていきます。そうして、デパートで自分の地位を築き、確固たる成績を残します。デパートが閉店することになり、彼女はあたらしい職を探すことになりました。履歴書のために写真を撮り、自身の顔を見た彼女はこう言います。

 〈私はこんな顔していたのか。メイク、笑顔、接客。すべてが、今の私になるために必要だったのだ。正直、自分の顔が好きだと思える瞬間がくるなんて、思ってもみなかった〉

彼女の顔を作ったのは言うまでもなく彼女自身。職場の環境、お客様や同僚に真摯に向き合った結果なのではないでしょうか。逃げないこと。リスクに美意識というツールを使って、堂々と立ち向かっていくこと。そのような人のことを、現代の饗応夫人というのだと思います。
自分の痛みがダイレクトにわかるのは自分だけです。痛みの限界をわかって戦う人は美しいです。
着飾ること、自分を美しく見せることは、傷ついた自分はもちろん、周りの人々を守ることにもつながる。登場する女性たちが、ヒリヒリするような実体験を持って教えてくれています。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

異類婚姻譚 (講談社文庫)本谷有希子 (著)

異類婚姻譚(講談社文庫)

似たもの夫婦、似てきた夫婦

たんたんとした日々の中でふと鏡をみたとき、もし自分の顔のパーツの位置がいつもと違っていたら。
主婦の「私」はある日自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気が付く。
似たもの夫婦、という言葉はよく耳にするし、これまで実際にとある恋人同士や夫婦をみて「似ているな」と感じたこともあった。
そこに嫌悪感を感じることなどなかったし、むしろ仲の良さを体現しているように思えて微笑ましくあったが、第154回芥川受賞作品である『異類婚類譚』に限ってはそういう話ではない。
いとおしいから、相手に近づきたいから似ていくのではなく、まるで相手を覆うように浸食していくそれ。
慈しみはそこにないし、愛情かといわれればそれも何か違うような気がする。
けれど覆われて「同じ」になるのは、とても気持ちがいいことのような気もしてしまい、ずぶずぶと溶けていく。
「私」は「私」で、「あなた」は「あなた」。
そうあることは当たり前のことのようでとても難しい。
違う人間であるはずなのに、「夫婦」という括りは時々そのことを忘れさせてしまうのかもしれない。

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ブルックリンの少女 (集英社文庫)ギヨーム・ミュッソ (著)

ブルックリンの少女(集英社文庫)

フランスの大ベストセラーミステリー

人気小説作家ラファエルはまもなく女医のアンナと再婚する。
式を三週間後に控え二人は休暇を楽しんでいたが、けして過去を明かそうとしないアンナに対してその夜は自制がきかなかった。
なぜ打ち明けてくれないのかと激しく問い詰めた結果、観念したアンナが自分の過去だとタブレットをひらいてみせたのは、ある一枚の写真。
想像だにしなかった衝撃的な内容に、彼は絶句し、彼女のすべて受け入れるはずだった決意はいとも簡単に崩れ去ってしまう。
問い詰めなければ、知らなければ。どんなに悔いても、時はもとには戻せない。
全てを知りたいと思うのははたして愛だったのか?
不安や独占欲からではなかったからか。
その後アンナは失踪する。
この作品は失踪した彼女を捜索するなかで彼女がけして明かそうとしなかった忌むべき過去にむきあおうとする男と、そしてその過去に人生をからめとられた人々の物語である。
冒頭から一気に読者をひきこみ、衝撃的な展開から目が離せない。そしてラストの余韻。
海外ミステリに苦手意識がある方にもぜひ一読いただきたいフランスミステリーである。

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ジュンク堂書店
ジュンク堂書店|福岡店/MARUZEN 福岡店(文具)

村上春樹の100曲 栗原 裕一郎 (編著)

村上春樹の100曲

サザンオールスターズもB`zも村上春樹作品には登場します

新しい小説の楽しみ方を確立した本です。
とにかく、情報量がすごい!どの作品のどこにどの曲が使用され、どんな傾向の曲をどの場面で春樹が使うのか、事細かに研究されています。ジャズ、ポップス、80年台以降の音楽、ロック、クラシック・・・それを詳細に分析できるのは、それぞれの音楽に詳しいスペシャリストのライターが、独自の目線で春樹を見つめているから。
デュラン・デュランの春樹作品への登場歴、ジェネシスというロックバンドに対する春樹の難癖、マイケル・ジャクソンへの冷淡な態度、読み進むほどに村上春樹作品を読み返したくなる衝動にかられます。
とにかく一読を!執筆者達によるあとがき座談会も必読。ディスクガイドとしても、まったく遜色ない1冊になっています。

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れもん、よむもん! (新潮文庫)はるな檸檬 (著)

れもん、よむもん!(新潮文庫)

親友からの読書案内

「本があるから生きてこられた」
この言葉に何か感じるものがあった人は、ぜひこの本を手に取ってみてほしい。
本著は幼少期は江戸川乱歩に夢中になり、中学時代にはアイドルではなく椎名誠に恋をした、漫画家はるな檸檬の読書遍歴を綴った自伝的コミックエッセイである。
どんなに良い本にもその人にとっての出会うべきタイミングというものがあるらしい。
中学時代に友人にすすめられたよしもとばななが理解できなかったはるな檸檬が、少し年齢を重ねた頃に突然その良さがわかるようになったというエピソードがあるのだが、
そういうタイミングがぴったりとあったときこそ、忘れられない読書体験が待っているのかもしれない。
読書遍歴を語るということは自分を語ることにも等しいという。
あのころに感じていたやわらかいものが、彼女の人生を追うごとに、自分の中を通り抜けていく。
まるで夢中になって読んだ本の思い出を語り合える、親しい友人からの読書案内のようだ。
未読の作品も、あなたがそんな気持ちで読んだのならばと、そっと手にとってみたくなるのだった。

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ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介 柄刀一 (著)

ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介

二人のやさしい探偵

個性ある探偵小説の主人公たちが作品の垣根をこえて謎を解く”探偵競演”ワクワクしてしまいますね。
柄刀一の『ミダスの河』に登場するのはIQ 190の天才・天地龍之介。ともに謎解きに挑むのは、なんとあの国民的名探偵・浅見光彦。
ルポライター浅見光彦は例によって取材先で事件に巻き込まれ、天地龍之介もまた別の殺人事件に巻き込まれてしまう。
二つの事件はやがて甲斐武田時代に金山奉行を務めた名家・小津野家の秘密につながっていく。

さて天地龍之介という青年。柄刀一の生み出した名探偵。三十手前でのどかな島育ち。IQ 190という知性のきらめきは鋭利だけれどおっとり穏やかな性分。お人好しで素朴。あれ?と思われた方!なんとなく似ていますよね。この二人の出会いが読みたくてページを繰る手も逸るばかり。
作中には浅見光彦シリーズでおなじみの方々もしっかり登場!お楽しみいただけます。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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片想い探偵追掛日菜子 (幻冬舎文庫)辻堂ゆめ (著)

片想い探偵追掛日菜子(幻冬舎文庫)

ストーキングする探偵

『何があっても推しに迷惑はかけない』

女子高生の追掛日菜子は、好きになった人を全力で追い掛けずにはいられない、生粋のストーキング体質。若手の舞台俳優や、外国人力士、天才子役。はては総理大臣と、好きになった人の情報をひたすらに集め続けることを生きがいとしている。しかしそんな彼女の“推し”たちは、なぜか事件に巻き込まれることが多い。日菜子は"推し"の疑惑を晴らすためにと、殺人容疑や不倫スキャンダルなど、"推し"が巻き込まれた事件を、ストーキング行為で集めた情報をもとに解決していくのだが……。

ミステリーの探偵役というのは、おおよそ個性的なことが多いものですが、この物語の主人公・追掛日菜子もそんな個性的な探偵の一人。犯罪一歩手前どころかバレたら犯罪レベルのストーキング行為を繰り返しています。しかしそうして集めた情報が、結果的に彼女の“推し”たちを助けることに繋がっていくのですから、一概に否定しづらいのがなんとも言えないところ。

冒頭の言葉は日菜子が掲げる信条なのですが、迷惑かけなければなにをしても良いわけではない、と思うんですよ。はい。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

ジュンク堂書店
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瑕疵借り (講談社文庫)松岡圭祐 (著)

瑕疵借り(講談社文庫)

泣いた

心理的瑕疵物件とは、その場所で殺人、自殺、変死、など通常一般人が嫌悪感を持つであろうとされる出来事が過去にあった物件の事である。
誰か一人でも住めば、瑕疵の度合いがかなり軽減されると考えられ、大家から管理会社から依頼を受けて瑕疵について説明義務が生じた物件にあえて住む者を「瑕疵狩り」と呼ぶそうだ。
この物語は瑕疵借りを生業とする男性が短い間住むことになった四つの物件と、そこで過去に起きた四つの死が描かれた連作短編集である。
亡くなったのは、そこで生きていたのは、家族でも、恋人でも、友人でもなかった。
ただの他人だ。
そう思えど、涙がただ溢れては落ち、を繰り返す。
誰かを大切に想って暮らす、誠実で愛おしい人々たちが確かにそこで生きていた。
悲しみや切なさだけではない、温かい気持ちがぐっとこみあげて、もうたまらなかった。
何も知らずに死に触れ傷ついていたひとが「瑕疵借り」に出会い、真実を知った時、生じた瑕疵は本当に軽減されるのだろう。

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水上博物館アケローンの夜 蒼月海里 (著)

水上博物館アケローンの夜

東京国立博物館に行きたくなってしまいます。

人気シリーズ「幽落町おばけ駄菓子屋」の蒼月海里の最新作。

大学生の出流(いずる)は高校時代のつらい思い出からなかなか抜け出せないでいる。
気分が落ち込んだ時に行くのは博物館。
その日も訪れていた閉館間際の東京国立博物館。ふいに湧き上がった大量の水に溺れかけた出流は不思議な青年・朧(おぼろ)に助けられる。

出流が溺れかけたのは自分が作り出す「嘆きの川」だという。朧はその渡し守。
本来なら見えるはずもない嘆きの川で朧と出会い、やがて出流は自分の悲しみの原因である高校時代の思い出に向き合えるようになる。
「時には、声を上げて泣くことも必要だ」
朧の言葉はどれも凝り固まって動けない心をじんわりほぐしてくれる。一歩踏み出したい、でもなかなか踏み出せない背中をそっと支えてくれる。

タイトルの“アケローン”はギリシャ神話に登場する嘆きの川の名。
ではその川の渡し守の朧は何者なのか。
ギリシャ神話をご存知の方には察せられるかもしれないが、その彼がなぜ東京国立博物館に現れるのか。
朧の正体に迫る物語終盤、読み進めながら出流と朧ふたりの語り合いを読み返したくてしかたなかった。朧が出流にかけてあげた言葉を今度は朧に返してあげたくなってしまった。

さてこの作品、舞台が東京国立博物館だけあってトーハク所蔵の展示物たちも登場する。
みんな愛敬たっぷりで読んだら魅了されること間違いなし。
ちなみに表紙にもちゃっかりいらっしゃるので、ぜひ手にとってお確かめを。

書店員:「ジュンク堂書店福岡店スタッフ」のレビュー

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海うそ (岩波現代文庫)梨木香歩 (著)

海うそ(岩波現代文庫)

心地よく、そして寂しい。

佐伯教授亡きあと研究をひきつぎ現地調査のため南九州の遅島に赴いた秋野は、島民に見せてもらった地図に「海うそ」という文字が書かれていることに気付く。
「海うそ」とは一般的にはニホンアシカのことであるが、地図にあるその場所に海はない。
そこではニホンアシカではなく、別のものをみることができるのだという。
彼は島を歩き寺院を巡りながら、次第に自らが喪ったものへと想いをはせていく。
この物語には多数の植物や虫が登場する。
例えば他の植物の上に根を下し成長する絞め殺しのアコウの木、手のひらが上をむいているようにみえるというミツガシワ、先導するように目の前を飛んだリュウキュウベニイトトンボ。
読書中は呼吸をすれば山の冷たく深い緑が肺をしめるような気持ちになる。
梨木香歩氏の文章は読者をその場に呼ぶ力があるのかもしれない。
心地よく、そして寂しい。
同じ場所を旅したくなるように、またこの物語を読み直したくなるのだろうと思う。

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ふなふな船橋 (朝日文庫)吉本 ばなな (著)

ふなふな船橋(朝日文庫)

ふなっしーに興味がなかったあなたにもおすすめです

何かしてくれるわけではないけれどそばにあるだけで心強い、そういう存在。
15歳で親元から離れ、母の妹である奈美おばさんと船橋で暮らすことを決断した立石花にとってのそれは、母からもらった梨の妖精(ふなっしー)のぬいぐるみだった。
誰にも手を伸ばす事の出来ない寂しさの中では、そんなよりどころになる何かが、きっと私たちには必要なのだと思う。
花はしばしば夢の中で、自分と同じように梨の妖精を心の支えにしていた「花子」という少女に出会うのだが、この梨の妖精が結びつけた不思議な絆は、大人になり新しい決断の時を迎えることになった花に大きな影響を与えることになった。
生々しい現実があらわになっているのに、激しい感情がわいてこないのは、登場人物たちの思慮深さが常に流れているからだろうし、言って欲しかった言葉が、ちりばめられていたからだろう。
この物語は誰かにとって、花や花子にとっての梨の妖精のような存在になるかもしれない。
梨の妖精ふなっしーに興味がなかったあなたにも、おすすめしたい1冊です。

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