書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店千日前店」のレビュー
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奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)森 晶麿 (著)
突如として屍僕(=ゾ...
突如として屍僕(=ゾンビ)に溢れた江戸の町。
原因究明の命を帯びた松尾芭蕉は、弟子の曾良と共に江戸を旅立つ……。
ネタ小説かと思って読んだら狂っていた。
物語は基本的に曾良の視点で進みます。
……が、まずもって曾良が男の娘になっています。
しかもそこにはそれ相応の動機があるという。
そして変態か変人かゾンビしか出ません。
芭蕉は変人。
屍魚、屍鳥、屍馬、屍蟹、屍不如帰、屍ミイラ。
形式や筋などは『奥の細道』をちゃんと踏襲していて、「行く春や鳥啼き魚の目は泪」など実在の句も詠まれるのに、そこに至る流れがゾンビ。
無理なくゾンビ解釈で詠まれる一句。
わけがわからないよ。
『奥の細道』をベースに、ゾンビと変態、忍者と陰謀に陰間趣味で彩った奇作。
明らかに続編のありそうな終わり方をしており、その点は注意していただく必要がありますが、ゾンビもの好き、大間九郎作品や舞城王太郎「九十九十九」あたりを楽しめる方なら、ある意味オススメ出来る作品です。
ところでこの著者、先日「アガサ・クリスティー賞」を受賞したとか。
ギャップがありすぎてそちらも期待しちゃいますね。
(卯・オブ・ザ・デッド)