書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店広島駅前店」のレビュー
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運命の人 1 (文春文庫)山崎 豊子 (著)
山崎豊子という作家は...
山崎豊子という作家はこれまでも事実を取材し、小説的に構築したフィクションを世に出してきた。今回の題材は外務省機密漏洩事件。
全4巻構成のなか、3巻までの展開は早い。そしてこの『運命の人』という小説の中で一番大切な4巻へ突入した途端、時はゆるやかに流れてゆく。
主人公、弓成亮太の転落、そして再生。4巻はそれまでの弓成の人生を全て引き受けた形で進められていく。よって、心が締めつけられてしょうがない。
沖縄は唯一の本土決戦のあった土地で、戦後はアメリカの占領下におかれ、本土復帰後も様々な苦悩を強いられてきた。米軍基地移設問題が一時期ニュースのトップ記事を飾っていたことがあったが大部分の本土の日本人たちはいつのまにか記憶の片隅へと追いやっていることと思う。確かに存在したこの事実を多くの人が知ることによってこの問題を改め、考え直すことだろうと思う。そして最後にタイトル『運命の人』の意味することをそれぞれが考えてほしいと思う。
広島駅前店 文芸・文庫担当 石田