永野護の「ファイブ...

　永野護の「ファイブスター物語」（以下ＦＳＳ）を文学的に読もうというのは果たして無意味なことか。
　本書は連載当時の構成に戻したものである。連載と単行本との差異に目を凝らし、年表や設定が次第に膨大化しファティマやモーターヘッドの新登場に一喜一憂するのはただ単にファンの嬉しい悲鳴というに留まらない。「源氏物語」のようなテクストとしての〈読み〉を深めたいという人間にも応える重層的な構造を持つ。
　一見鏡の裏返しのような「重戦機エルガイム」との関係性や数々の変化する設定を丁寧に順序づけて読み直すことで作家・永野護の勝手気儘に思える連載の方向性を考察することは、「ものがたり」としての「ＦＳＳ」（作者はおとぎ話としている）を過不足なく享受できる手段である。コスプレやガレージキットだけが「ＦＳＳ」の本質でないことを強調したい。
　とはいいつつ、本書ならびに雑誌「ニュータイプ」を購入して「ＬＥＤミラージュ」をゲットしたい欲望は克服できぬ。映画「ゴティックメード　花の詩女」ともども永野ワールドに首まで浸かろう。
　　　ＭＪ梅田店　黒書店員　Ｄ