書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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思想史家が読む論語 「学び」の復権 子安 宣邦 (著)
「学ぶというのは、古えに学ぶことであり、先人に学ぶことである...
「学ぶというのは、古えに学ぶことであり、先人に学ぶことである。」と子安は言う。そして、2千年の時を距てた『論語』を、その距たりを埋めてくれる先人(何晏、朱子、仁斎、徂徠、渋沢栄一)の注釈を思想史家として重視しながら読み直し、孔子の問いを自ら問い直すことによって学ぼうとする。
その開巻第一章が学ぶことの喜びをいう『論語』自体が、「学び」の重要性を説く。但し、「教育」を問うことはない。近代の制度としての学校教育は少年たちの学のモチベーションを奪っているのではないか、と子安は疑問を投げかける。
例えば「仁」とは何かを問われて、孔子は常に、質問者の人となりや事情に応じて具体的に答える。決して「仁」一般を語ったり、「仁」の定義を示すことはない。後世の継承者の解釈が、普遍的な規範的言語としていったのだ。が、言い換えれば、『論語』という書物が、それだけ長きに渡って、読み継がれ、解釈されてきたことの証左でもある。注釈者たちが様々な解釈を施し、その堆積に学びながら更にそこから学び解釈を加える。書物を通してそうした営為が連綿と受け継がれている様を学ぶことも、「また説ばしからず乎。」