書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂書店池袋本店」のレビュー
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台湾海峡一九四九 龍 應台 (著)
台湾の1949年といえばまさに台湾史上の大転換点で
台湾の1949年といえばまさに台湾史上の大転換点で、蒋介石国民党政府が台湾へ撤退した年だ。このタイトルだけでこの本がどれだけのドラマを秘めているか想像できると思う。
想像は軽く上回り、一つ一つのドラマに心が引き裂かれそうになる。国共内戦の荒れ狂った時代の中で餓え、戦い、なんとか生き延びた当事者達に聞き取りをし、その貴重な歴史を著者の息子に向けて語る、といった体裁でありながら膨大な資料を読み込んだ上で書かれているため客観性に欠く事はない。記録上の死者数のような無味乾燥さではなく、かけがえのない人の物語を書くような細やかな筆致の、そのバランスが素晴らしい。
この本は中国では禁書となっているようだ。日本でも国共内戦についての書物は極めて少ない。私自身、この本を読むまで台湾の現代史をきちんとわかってはいなかった。全434ページ。気軽にとれる厚さの本ではないかもしれない。しかし過去は現在と無縁のものではない。台湾の60年の痛みを、ぜひ多くの方に読んでもらいたい。
(評者:ジュンク堂書店池袋本店 人文書担当 森暁子)