書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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蜂起とともに愛がはじまる 思想/政治のための32章 廣瀬 純 (著)
『シネキャピタル』(洛北出版)同様、本書でも、
『シネキャピタル』(洛北出版)同様、本書でも、映画と現代思想との切り結びが面白い。
廣瀬によれば、映画作りとは、社会を形成する無数の映像のいくつかを歴史や人生の本流からはすこし外れた場に引き止め対流させ、そこで反復することなのである。
ジャン・リュック=ゴダールは言う。「物事はつねに正面から撮影されるべきであり、正面からまっすぐ見ればこそリアルに把握できるといったことが、世間では信じられています。レヴィナスのような哲学者ですら、顔をきちんと見ればその人を殺したくなることなどあり得ないと考えています〔……〕。他者を理解するためには、カメラをその人の背後におき、彼の顔を見ないようにする必要があるのです。そしてまた、その人の話に耳を傾けている第三者を通じて、彼を理解するようにしなければならないのです。」
覆面をして活動を展開することで有名なサパティスタたちも、言う。「顔を覆うことによってこそ、私たちは人々の目に見えるようになったのだ。」
他者の顔は「何時、殺すなかれ」の命令を告げるというレヴィナスの考えとは反対に、顔(素顔)を曝すことで黙殺され、虐殺されてきた人々も実際にいるのである。