書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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さらば愛しきサスペンス映画 逢坂 剛 (著)
映画好きと自称する人間は数多いが人前で公言する人間の半数は
映画好きと自称する人間は数多いが人前で公言する人間の半数はいわゆる最近の映画しか見ないし、3DやTVドラマの映画化に喜ぶ類の人種である。無論それは否定されるものではないが、仮にも「映画好き」などと人から認めてもらおうという人間なら最低限の映画的教養があって然るべきでは。
ならば本書のような本がいい。すでに西部劇で2冊本をものにしている二人が語るのは50年代のいわゆるフィルムノワール。推理もの、ギャングもの、スリラー、犯罪ものなどすべて包含するためタイトルはサスペンス映画と括っている。ファム・ファタール(運命の女)と呼ばれる悪女、西部劇との接点、J・H・ルイスやエドガー・G・ウルマーなどのB級映画監督、クルーゾーなどのフランス映画やヒッチコックを生んだイギリス映画の系譜など今更人には聞けない諸常識が網羅されている。
いわゆる「暗い映画」と括ってはフィルムノワールも台無しだが、現代のディジタル映像が失った光と闇のモノクロームの世界こそ映画の原点である。しかも本書に出てくる映画には安価なDVDも数多い。映画は映画館で、という拘りより中身の質こそ問題にした方がいい。
「黒」書店員 D