書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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ニュートンと贋金づくり 天才科学者が追った世紀の大犯罪 トマス・レヴェンソン (著)
あのニュートンが「プリンキピア」を著した頃
あのニュートンが「プリンキピア」を著した頃英国は名誉革命後の対フランスの戦争中だった。太陽王ルイ14世との拡大する戦争は極度な財政難を招く。そんな中通貨の流通量の不足が明らかになり国家の一大事にイングランド一の頭脳が担ぎ出される。他ならぬニュートンその人である。
新造幣局監事は貨幣の改鋳のみならず治安判事の役目も負わされた。相対する宿敵は鍛冶屋や漆工をしながら詐欺の技術を磨き組織的な贋金造りに手を染める稀代のペテン師・チャロナー。巧妙な詐術で度々逮捕の網を逃れ、逆に鋳造法の改良を意見し造幣局に入り込もうとさえする大胆不敵な犯罪者に対し、ニュートンはあくまで科学的に犯罪を暴いていく。大勢の情報屋・密偵と膨大な証言者による証拠集めは鬼平顔負けである。
ニュートンの執拗な熱意がその残忍な性格のためとする意見に対し、著者は仕事に精通する能力の高さと国王の神聖を侵す犯罪に対する宗教的怒りを挙げている。彼の性格については岩波書店「専制君主ニュートン」もあわせて読まれるといいが、科学的・戦略的思考はいつの世にもどんな職業にも通用するということか。当時の世相の描写も実に興味深い。
黒書店員 D