書店員レビュー一覧
丸善・ジュンク堂書店・文教堂書店の書店員レビューを100件掲載しています。1~20件目をご紹介します。
書店員:「ジュンク堂」のレビュー
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世界をダメにした経済学10の誤り 金融支配に立ち向かう22の処方箋 フィリップ・アシュケナージ (著)
世紀の変わり目を跨いで世界の経…
世紀の変わり目を跨いで世界の経済政策をリードした「金融資本主義」は、21世紀最初の10年で躓いた。金融市場は効率的であり、国の市場介入は過剰だという新自由主義の論拠は、銀行破綻や金融危機によって完全に失われた筈だ。だが、いまだに金融市場の優位は揺るがないようにも見える。
こうした状況を前に、著者たちは経済学者の責務として声を上げることを決意したと言う。そして、「金融市場は効率的」「金融市場は経済成長に資する」「公的債務を削減するためには、国の支出を減らすべきだ」などという定説を否定し、その対案を提出する。
本書の趣旨に賛同し署名した経済学者の数は、630人。
だが、ならばこれまで彼らは何をしていたのか?世界的な経済破綻まで「新自由主義経済」の危険に気づかなかったのか、それとも気づいていても黙っていたのか?「経済学者の責務」を言うなら、いずれにしても無罪放免というわけにはいくまい。とはいえ、後ろを振り返ってばかりいても仕方がないから、本書の提言に耳を傾けよう。翻って、日本の経済学者が、どのように発言し「責務」を果たしているのか、注視していこう。