あえてこの時期に出さなくても…

あえてこの時期に出さなくてもいいのに、という本がある。刊行されたのと翻訳される時期とがずれた場合残念な結果をもたらすことがある。本書などはその好例だろう。昨年バルサをやぶりリーガの戴冠を果たした直後ならどれほど説得力を持ったことか。
　しかし今シーズンのマドリーは文字通り満身創痍だ。「慢心相違」と変換したくなるほど選手と監督の心は離反し、モチベーションの低さは目を覆いたくなるばかりだ。故に本書を片手にモウリーニョはどこを間違えたのかと検証したくなる。レジェンドのラウールを切り捨てた結果がカシージャスやセルヒオ・ラモスらスペイン人選手との軋轢につながったのか、同時代のバルサとの比較が稀代の戦術家から創造性を奪ったのか。過去の輝かしいフットボールは影を潜め、インテル以降のカウンター一辺倒に堕した「スペシャル・ワン」はチームをいつ離れるのか。違約金の高さで地位を守る醜悪さは見たくない。
　手段と目的を混同しフィジカルと効率性のみ重視する退屈な「名監督」はマンＵとのＣＬ、クラシコ二連戦でどう輝きを取り戻すのか見ものだ。
　　黒書店員　Ｄ